法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づくオキシダントに係る緊急時の措置を執るべき場合のオキシダント濃度の変更等について

公布日:昭和52年04月02日
環大企64号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・各政令市市長あて
 大気汚染防止法施行令の一部を改定する政令(昭和52年政令第66号)及び大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和52年総理府令第6号)は昭和52年4月2日に公布され、即日施行された。改正内容は、(1)オキシダントに係る緊急時の措置を執るべき場合のオキシダント濃度(以下「緊急時発令基準値」という。)の算定に昭和51年11月に制定された日本工業規格(JIS)B7957「大気中のオキシダント自動計測器」(以下「JIS」という。)に定める測定法を採用すること。(2)この場合従来の測定法に比較し、同一のオキシダント濃度に対し、指示値が低下することとなるので、緊急時の措置の発令レベルを従来と実質的に同一に保つため、緊急時発令基準値を改めることであるので、この点を十分了知されるとともに、下記第1の事項に留意されその施行に遺憾なきを期されたい。
 また、窒素酸化物及びオキシダントに係る緊急時の措置による窒素酸化物の減少措置について、下記第2のとおり、工場・事業場の操業短縮のほか、窒素酸化物排出低減対策を講ずることによつてそれと同程度の効果を図りうる場合には、当該措置を講ずることができることとしたので、その実施についても遺憾なきを期されたい。

第1 大気汚染防止法施行令及び大気汚染防止法施行規則の改正について

 1 改正の理由

   従来、環境大気中のオキシダント濃度測定においては、吸収液として中性緩衝沃〈よう〉化カリウム又は臭化カリウム溶液を用い、等価溶液による静的校正法により校正されたオキシダント測定器がひろく用いられてきたところであるが、各方面で測定法改善のための研究開発が進められた結果、昭和51年11月大気中のオキシダント測定についてJISが制定され、JISにおいては吸収液は2%濃度の中性燐〈りん〉酸塩緩衝沃〈よう〉化カリウム溶液に統一し、校正法にはオゾンガスを用いる動的校正法が採用されることとなつた。
   JISによる測定法は従来の測定法に比し、環境大気中のオキシダントをより正確に測定することができるものであるが、一方同一のオキシダント濃度について、JISの測定法による指示値は、従来の測定法による指示値よりおおむね20%の率で低くなることが判明した。
   このような理由から今般、大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省・通商産業省令第1号。以下「施行規則」という。)の改正を行い大気中のオキシダントの測定についてJISに定める測定法を採用するとともに、現状の緊急時発令レベルを実質的に同一に保つために大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号。以下「施行令」という。)に定める発令基準値の改正を行つたものである。

 2 改正の要点

   今回の改正は、施行令の別表第5について、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「法」という。)第23条第1項に係る緊急時発令基準値を0.15ppmから0.12ppmに改め、第4項に係るものを0.5ppmから0.4ppmに改めるとともに、施行規則第18条第1項第5号に定めるオキシダントの1時間値の算定方法について、JISに定める2%濃度の中性燐〈りん〉酸塩緩衝沃〈よう〉化カリウム溶液を吸収液として用いた吸光光度法又は電量法のオキシダント測定器であつて、JISに定める動的校正方法により校正を行つたものを用いることとしたものである。
   なお、改正後の測定法の詳細については、別添資料「日本工業規格(JIS)B7957に基づくオキシダント測定法について」を参照されたい。

 3 経過措置

   新測定法及び新基準値が適用されるものは、本年4月2日以降であるが、経過措置として同日において現に設置されている既存の測定器については昭和53年4月1日までの間は、従前の方法によることができることとし、この場合には測定値に0.8を乗じて、近似的に新測定法に基づく値に換算することとした。これは、測定法の変更には一定の準備期間を必要とし、また光化学大気汚染のシーズン中に行うことにより生ずるおそれのある混乱を避けるためのものである。なお、この場合従来の静的校正法を採用している既存の測定器について、吸収液濃度のみをJISに定めるものに改めることは不適当であるので、注意されたい。

 4 その他

  (1) 警報発令基準値等の取扱い

    各都道府県(市)において、施行令に定める緊急時発令基準値以外に、従来の測定法による測定データに基づいて警報発令基準値等を定めている場合には、今回の施行令及び施行規則の改正に準じて所要の措置を執られたい。

  (2) 光化学オキシダントに係る環境基準値等

    光化学オキシダントの環境基準値は、新測定法と同等と認められる測定法によつて得られた環境データに基づき設定されたものであるので、新測定法の採用により影響を受けるものではない。
    また、光化学オキシダント濃度の測定については、オキシダント測定値を窒素酸化物濃度について補正することとされているが、JISに定める測定法の採用によりオキシダント測定値に及ぼす窒素酸化物の影響は従来の測定法に比べ大幅(約5分の1)に低下するものと推定されるので、オキシダント濃度が高く、しかも同時に窒素酸化物濃度が低い夏季の昼間においては、光化学オキシダント濃度を得るために補正を行う必要はないと判断される。ただし、オキシダントが比較的低濃度であつたり、窒素酸化物が高濃度である場合の測定値の取扱いについては、なお検討を継続することとしている。
第2 窒素酸化物及びオキシダントに係る緊急時の措置による窒素酸化物の減少措置について窒素酸化物及びオキシダントに係る法第23条の緊急時の措置については、昭和46年の貴職あて本職通達「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について」(昭和46年8月25日環大企第5号)第7の3の(4)において、「これらの物質が工場・事業場に起因する場合には、関係工場・事業場に対しばい煙排出量の減少を図るため操業短縮を行なわせる」よう指示したところであるが、緊急時対策の趣旨は汚染物質排出量の削減にあるため、固定発生源からの窒素酸化物排出低減対策の進捗状況等にかんがみ、これらの物質に係る緊急時の措置として次の内容を加えることとする。
  当該工場又は事業場において窒素酸化物排出低減対策(良質燃料への転換等)を講ずることにより所要の操業短縮と同程度の窒素酸化物の減少を図ることができるときは、操業短縮に代えて当該措置を執ることができる。
  なお、当該措置は排出ガス中の窒素酸化物の測定等によつてその効果を的確には握できるものでなければならないので、実施に当たつては、あらかじめ、関係工場・事業場と協議し、適切な実施体制を採られたい。