法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づくいおう酸化物の排出基準の改訂について

公布日:昭和47年01月18日
環大規3号

(各都道府県知事・政令市長あて環境庁大気保全局長通達)
 標記については、かねていおう酸化物の排出実態調査等につきご協力を願つてきたが、昭和四六年一二月二五日付けをもつて、標記事項を内容とする大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(昭和四六年政令第三七九号)および大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和四六年総理府令第五九号。以下「改正府令という。)が制定公布され、いずれも昭和四七年一月五日から施行された。
 いおう酸化物の排出基準については、いおう酸化物に係る環境基準を所定の期間内に計画的に達成することを目標に、これが改訂強化を図つてゆくこととしているが、今回の改訂は昭和四八年には、大部分の地域において、この環境基準を達成することを目標としており、いおう酸化物による大気汚染を克服するうえで重要な意義をもつているので、左記の事項にご留意のうえ、法令の施行に遺憾のないようにされたい。

第一 基準改訂の基本方針

  今回の基準改訂にあたつては、(ⅰ)東京、大阪、横浜、川崎、四日市および尼崎のいわゆる過密五地域以外の地域のうち、政令特掲地域については、昭和四八年には環境基準を維持達成することとし、その他の地域については昭和四八年以降も環境基準を維持達成することはもとより、いおう酸化物による汚染を現状より進行させないという観点から基準の強化を図ること、(ⅱ)いわゆる過密五地域については、昭和四八年に再度基準を強化することとし、昭和四八年には中間目標を達成することを、基準改訂の基本方針とした。
  各地域における具体的な排出基準値の算定にあたつては、地域全体に排出されるいおう酸化物の総量を一定量以下におさえることを念頭におき、各地域における大気汚染の現況(昭和四五年度値)ならびに各都道府県知事および札幌市等の九政令市の市長の協力を得て実施したいおう酸化物排出実態調査、燃料需要量予測調査等を基にし、また、総合エネルギー調査会低いおう化対策部会の低いおう化計画をも勘案した。この場合、特別排出基準(大気汚染防止法(昭和四三年法律第九七号。以下「法」という。)第三条第三項に基づく特別の排出基準をいう。以下同じ。)が適用される地域にあつては、一般排出基準(法第三条第一項に基づく排出基準をいう。以下同じ。)および特別排出基準により目標を達成するようにした。

第二 基準改訂の要点

 一 一般排出基準に関する事項

  (一) 特掲地域の追加、拡大

    従来、令別表第三第二一号に規定され、最もゆるやかな規制基準が設定されていた地域のうち、八戸市、釜石市、仙台市、塩釜市等、石巻市等、名取市等、酒田市、金沢市、福井市等、敦賀市、清水市等、瀬戸市等、大津市等、相生市、赤穂市等、岡山市、備前市、広島市等、三原市、尾道市等、下関市彦島地域、下関市彦島以外地域、防府市、福岡市、福岡県苅田町、長崎市等、延岡市および川内市の二五地域については、特掲してより厳しい排出基準を適用することとするとともに、既特掲地域(改正前の令別表第三の第一号から第二〇号の三までに掲げられていた地域)のうち、新潟市、富山市、高岡市等、半田市等、京都市等、姫路市等、徳山市等その他の一八地域については、区域の拡大を図つた(令別表第三の改正)。

  (二) 一般排出基準の強化

    令別表第三に掲げる七一の地域につき、全般的に一般排出基準を大幅に強化するとともに、改訂基準が四割以上の大幅強化となつた地域のうち、四二地域については、昭和四七年一二月三一日までに限り、これを若干緩和した基準(昭和四六年六月二四日から令別表第三に新たに独立して追加された地域については原則として引き続き改正前と同一の基準)を適用することとした(大気汚染防止法施行規則(昭和四六年厚生省、通商産業省令第一号。以下「規則」という。)第四条および別表第一の改正ならびに別表第一の二の追加)。

  (三) 経過措置

    新一般排出基準は、昭和四七年一月五日から施行することとしたが、施行の日から直ちに一般排出基準が強化される地域においては、当該新一般排出基準は、法第一三条第一項に係る場合にあつては、昭和四七年三月三一日まで(ただし、令別表第一の三の項に掲げる焼結炉(ペレツト焼成炉を含む。以下同じ。)については他の施設に比して対応が困難であるので昭和四七年六月三〇日まで、さらに航空法(昭和二七年法律第二三一号)第四九条第一項等の規定により排出口の実高さを増すことができない焼結炉については昭和四八年一二月三一日まで)適用を猶予することとした(改正府令附則第一項、第三項)。

  (四) 規則附則第二項の条例等によるKの値の適用関係

    規則附則第二項の規定により、法により全国的に規制が実施された際における地方公共団体の条例または規則のいおう酸化物の排出基準を定めた数値が当分の間そのまま法によるKの値とされた地域については、当該数値が今回の改訂後の法のKの値のより小さく(厳しく)なくなつた場合には、法のKの値が適用され、Kの値よりなお小さい場合には引き続き当該数値が適用されることを明確にした(改正府令附則第二項)。

 二 特別排出基準に関する事項

  (一) 特別排出基準適用地域の追加拡大

    特別排出基準適用地域として、新たに福岡県京都郡苅田町を追加するとともに(規則別表第四第一七号)、東京都三鷹市等(同第三号)、兵庫県西宮市塩瀬町等(同第一〇号)、兵庫県明石市・加古川市等(同第一一号)、千葉県市原市の馬立等の地域、京都府宇治市等の地域、山口県宇部市大字小野等の地域(以上の三地域はそれぞれ令別表第三第五号、第一一号の三、第一六号の改正に伴うものである。)の六地域について拡大した。
    また、横浜市および川崎市と横須賀市とは、ことなる特別排出基準値を適用することとしたため分離して掲げた(規則別表第四第四号および第四号の二)。
    なお、規則別表第五の改正も行なわれているが、これは、別表第四を引用しているために所要の整理を行なつたものであり、ばいじんの特別排出基準の適用地域には実質的な変更はない(規則別表第五)

  (二) 特別排出基準の強化

    特別排出基準を定めるKの値は、従来、各地域一律に五・二六であつたが、今回これを強化し、二・九二、三・五〇、五・二六の値によることとした(規則第七条の改正)

  (三) 新特別排出基準の適用関係

    新特別排出基準は、法第一〇条による設置の実施制限期間の末日の翌日が、昭和四七年一月五日前であるばい煙発生施設(電気工作物またはガス工作物であるばい煙発生施設については、電気事業法またはガス事業法による当該施設に係る工事計画の認可の日が一月五日前であるもの)については適用しないこととした(改正府令附則第四項)

  (四) 旧特別排出基準の効力

    旧特別排出基準適用地域において、特別排出基準の適用をうけ、またはうけることとなる施設であつて、改正府令附則第四項により新特別排出基準の適用をうけないこととされているものについては、旧特別排出基準を適用するものとした(改正府令附則第五項)

第三 基準改訂に伴い特に留意すべき事項

  今回の基準改訂については、かねてより周知してきたところであり、貴職におかれても、ばい煙排出者に対して必要な指導を行なつてきたところと思われるが、全般的に基準の大幅な改訂となつており、新排出基準の遵守の徹底を期するためには、ばい煙排出者において相当の努力が必要とされるので、その指導には格段の努力を煩わしたい。

  1.  一 改正府令の施行の日から直ちに一般排出基準が強化される地域については、当該新排出基準は、法第一三条第一項の規定に係る場合にあつては、本年三月三一日まで(焼結炉に関してのみ本年六月三〇日まで)適用が猶予されているが、今回の基準改訂は、かねて周知させてきたこと等も考えあわせ、この期間は、新一般排出基準を遵守するための低いおう原燃料への切替、ばい煙処理施設の改善等に要する期間としては最少限になつているので、ばい煙排出者が最大限の努力を払い新一般排出基準を遵守するよう指導されたい。
       特に、先に実施されたいおう酸化物排出実態調査等を基にし、新一般排出基準に不適合となるばい煙発生施設については、当該ばい煙排出者に対して早急にその旨を通知し、所定の期間内に所要の改善等の措置を講じさせるようにされたい。
  2.  二 改正府令施行の日から直ちに一般排出基準が強化される地域における令別表第一の三の焼結炉であつて、航空法第四九条第一項等の規定により排出口の実高さを増すことができないものに関しては、法第一三条第一項に係る場合にあつては、昭和四八年一二月末まで新一般排出基準は適用しないこととしている(第二の(三)参照)。この規定は、排出口の実高さが制限されているため、高煙突化による対応ができないこと、焼結炉用の排煙脱硫設備が未開発であることなどを考慮して定められたものである。
       この規定が適用になる焼結炉は極めて少ないと思われるが、該当施設のある地域にあつては、低いおう原料への切替等により、昭和四八年一二月三一日までのなるべく早い時期に新一般排出基準を遵守できるようにばい煙排出者を指導されたい。
  3.  三 改正府令の施行の日から直ちに一般排出基準が強化される地域においては、法第一三条第一項の規定に係る場合には、所要の適用猶予期間が設けられている(第二の(三)参照)。この期間にあつては法第一四条第一項(改善命令等)の規定は適用になるが法第一三条第一項の規定が適用猶予されている趣旨にかんがみ慎重に取り扱われたい。
       なお、この期間にあつても「なお従前の例による。」(改正府令附則第三項)とされているとおり、改正前の一般排出基準に違反するばい煙排出者に対しては、法第一三条第一項の規定は適用になるものである。
  4.  四 昭和四六年六月二四日から新たに令別表第三に追加された地域で、昭和四七年一二月三一日まで改正前の一般排出基準がすえおかれている地域にあつては、昭和四八年一月一日から適用されるより厳しい一般排出基準をばい煙排出者に周知させるとともに、その遵守方につき指導されたい。なお、この排出基準には、適用猶予はなく、昭和四八年一月一日から直ちに適用になるので留意されたい。
  5.  五 改正府令の施行の日から直ちに一般排出基準が強化される地域のうち、引き続き、昭和四八年一月一日からさらに一般排出基準が強化される地域にあつては、ばい煙排出者にその旨の周知徹底を図られたい。なお、この地域においては、昭和四八年一月一日から適用されるより厳しい一般排出基準についても適用猶予はないので留意されたい。
  6.  六 規則附則第二項の規定の適用のある地域で、当該規定による数値が、改正府令によるKの値より小さくなくなつた場合には、改正府令附則第二項の規定により法に基づく規則のKの値が適用になるので、該当地域にあつてはこの点誤解のないようにばい煙排出者に周知されたい。
       また、逆に、なお当分の間、規則附則第二項の規定が適用になる地域にあつては、当該地域のKの値として適用される数値を明確にし、ばい煙排出者に周知しておかれたい。
  7.  七 令別表第八条で定められているいおう酸化物に係るばい煙発生施設(昭和四六年六月二四日に新たにばい煙発生施設となつたものに限る。)については、法第一三条第二項(法第一四条第二項で準用する場合を含む。)により、法第一三条第一項および第十四条第一項の規定は、昭和四七年六月二三日まで適用にならないことになつているため、これらの規定に関しては、同日の翌日から今回の改訂基準が直ちに適用になるので留意されたい。
  8.  八 新特別排出基準の適用関係は第二の二の(三)のとおりであるが、これは、すでに設置され、または設置の工事に着工しているばい煙発生施設のほかに、法令上設置の工事をなし得る状態にあつたばい煙発生施設も含め、新特別排出基準は適用しないこととしたものである。
       したがつて、例えば、法第一〇条第一項の規定により六〇日間設置工事の実施が制限をうけるばい煙発生施設については、昭和四六年一一月四日以前に法第六条第一項の届出が受理されたものであれば、新特別排出基準は適用にならない。
       なお、すでに法第六条に基づく届出が受理されているばい煙発生施設であつて、新特別排出基準が適用になるものがある場合には、新特別排出基準を遵守させるため、早急に設置計画の変更等必要な指導をされたい。

第四 今後の基準改訂等

  今回の基準改訂により過密五地域を除く各地域においては、昭和四八年には環境基準の維持達成がはかられるものと考えているが、昭和四八年時点において再度全国のいおう酸化物排出実態について総点検を実施する予定である。
  この結果に基づき、過密五地域については、昭和四八年末までに再度基準の改訂強化を図る方針であり、また、その他の地域についても、総点検の結果、大気汚染の程度、昭和四九年以降の工場立地、原燃料消費の動向等を勘案し、必要があれば基準の改訂を行なう予定である。
  なお、大規模な工業開発等により、工事立地の動向、原燃料消費の動向等に急激な変化を生じ、大気の汚染が著しく増加するような地域がある場合には、昭和四七年末においても基準改訂を行なうこととなるので、この旨お含みおかれたい。