法令・告示・通達

ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる大気の汚染に係る環境基準について

  • 公布日:平成9年2月12日
  • 環大企37号

各都道府県知事・各政令市長あて環境庁大気保全局長通知

 大気の汚染に係る環境基準については、これまでに、二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント及び二酸化窒素について、それぞれ設定されているところであるが、これら5物質以外にも、近年、我が国の大気中から低濃度ではあるが種々の有害な物質が検出されており、これらの中には、その有害性に係る内外の知見に照らし、長期間の曝露による健康への影響が懸念される物質がある。このような有害大気汚染物質については、長期曝露に伴う健康影響が顕在化してから対策に取り組むのでは手遅れになるため、健康影響の未然防止の観点に立って、国民の健康に影響を及ぼすおそれ(健康リスク)を低減するため着実に対策を実施していくことが必要となっている。
 こうした状況にかんがみ、有害大気汚染物質のうち、その有害性に関する知見や我が国の大気環境における検出状況からみて特に健康リスクが高いと評価される物質であるベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについて、中央環境審議会からの答申(平成8年10月18日、平成8年12月18日)
に基づき、平成9年2月環境庁告示第4号により「ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる大気の汚染に係る環境基準について」を別紙のとおり告示した。
 今般告示されたベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン(以下「ベンゼン等」という。)による大気の汚染に係る環境基準は、環境基本法第16条第1項の規定に基づき、大気汚染に係る環境上の条件について、人の健康を保護するうえで維持されることが望ましい基準を低濃度長期曝露による健康影響を未然に防止する観点から定めたものであり、大気汚染が進行している地域にあっては汚染の改善の目標となり、大気汚染が進行していない地域にあっては汚染の未然防止の指針となるものである。
 政府においては、同法同条第4項の規定により、ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準が確保されるよう施策を総合的かつ有効適切に講ずることとしているが、貴職におかれても、下記の事項に留意の上、これらの環境基準が維持達成されるよう有効かつ適切な施策の推進を図られたい。
 なお、平成5年4月9日付環大企第193号・環大規第56号による大気保全局長通知「トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる大気汚染の防止について」は、これを廃止する。

第1 ベンゼン等に係る環境基準について

 1 ベンゼン等に係る環境上の条件について

  (1) 環境上の条件

    ベンゼン等に係る環境上の条件は、次のとおり設定された。

  •     ベンゼン:1年平均値が0.003mg/m3以下であること
  •     トリクロロエチレン:1年平均値が0.2mg/m3以下であること
  •     テトラクロロエチレン:1年平均値が0.2mg/m3以下であること
  (2) 設定の考え方

    ベンゼン等は、労働環境等において、一般大気中に比べて相当高濃度な曝露による健康影響が明らかとなっているが、一般大気中のような低濃度曝露による健康影響は明らかとなっていない。
    しかしながら、低濃度ではあっても、継続的にベンゼン等が摂取される場合には人の健康を損なうおそれを否定できないことから、ベンゼン等に係る環境基準として定められた環境上の条件は、将来にわたってこれら物質による人の健康に係る被害が未然に防止されるよう十分安全を見込んで設定されたものである。
    環境上の条件の設定に当たっては、現在までに得られた知見に基づき、次のような各物質ごとの人への健康影響の特性を考慮している。

  1.    ア ベンゼンは、労働環境において一般大気中に比べて相当高濃度の曝露により発がん性が認められること
  2.    イ トリクロロエチレンは、労働環境において一般大気中に比べて相当高濃度の曝露により神経系への影響が認められること
  3.    ウ テトラクロロエチレンは、労働環境において一般大気中に比べて相当高濃度の曝露により神経系への影響が認められることベンゼン等に係る環境基準は、いずれも労働環境における高濃度曝露の条件を一般環境の低濃度曝露に外挿し、さらに、将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるよう、一生涯という長期にわたる曝露を想定して条件が設定されているといった、従来の環境基準設定物質とは異なる性質を有している。

 2 ベンゼン等の測定について

   ベンゼン等について、適正な測定結果を得ることは、これら物質の大気環境濃度の現状の把握のみならず、その傾向の把握、その影響の評価及び排出抑制対策の樹立とその効果の評価等今後の有害大気汚染物質対策を推進する上で重要なことであるので、測定方法の採用、測定地点の選定等に当たっては、以下の事項に十分配慮し、適正な大気環境濃度の把握に努められたい。

  (1) 測定方法

    ベンゼン等の測定は、キャニスター又は捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法を標準法とする。また、当該物質に関し、標準法と同等以上の性能を有することが確認された測定方法についても使用可能とする。
    なお、標準法に関する詳細並びにそれと同等以上の性能を有することを確認するための要件等については、別途通知を行う「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」によるものとする。

  (2) 測定地点等

    ベンゼン等の測定に関し、測定地点、測定頻度及び試料採取口高さ等については、別途通知を行う「有害大気汚染物質モニタリング指針」にのっとって行うものとする。

 3 環境基準による大気環境濃度の評価について

   ベンゼン等の大気環境濃度の状態を環境基準に照らして評価する場合は、環境基準が1年平均値についての条件として定められていることから、前記の測定方法及び測定地点等により、同一地点における1年平均値と認められる値との比較によってその評価を行うものとする。
   なお、ベンゼン等に係る環境基準は将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるようにすることを旨として設定されていることから、同一地点における経年変化を把握することが重要であり、また、1回の測定で得られた測定値と1年平均値として定められている環境基準の数値とを比較することは不適当であること、1年平均値が基準値を超える場合でも、直ちにそれが人の健康に影響を及ぼすとは言えないことに留意されたい。

 4 環境基準の適用範囲について

   ベンゼン等に係る環境基準は、人の健康を保護する見地から設定されたものであるので、都市計画法(昭和43年法律第100号)第9条第12項に規定する工業専用地域、港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第4項に規定する臨港地区、道路の車道部分、事業場の敷地境界、その他原野等一般公衆が通常生活していない地域又は場所については適用されないものである。なお、道路沿道や事業場の周辺のうち、一般公衆が通常生活している地域又は場所については、環境基準が適用されるので念のため申し添える。

第2 ベンゼン等に係る環境基準の達成期間等について

  ベンゼン等に係る環境基準は、継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質に係るものであることにかんがみ、将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるようにすることを旨としてその維持又は早期達成に努めることが必要であり、この趣旨に十分留意して、施策の遂行に遺憾のないようにされたい。

 1 達成期間

   大気環境濃度がベンゼン等に係る環境基準を満足している地域にあっては、当該環境基準が維持されるよう努めるものとする。
   大気環境濃度がベンゼン等に係る環境基準を超えている地域にあっては、当該物質の大気環境濃度の着実な低減を図りつつ、できるだけ早期に当該環境基準が達成されるよう努めるものとする。

 2 その他

   ベンゼン等に係る環境基準を達成するための方策については、告示においては特に示されていないが、平成8年5月9日に公布された大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成8年法律第32号。以下「改正法」という。)により大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に有害大気汚染物質対策が位置づけられた。特に、ベンゼン等は、平成9年1月24日に公布された大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(平成9年政令第6号)により大気汚染防止法附則第9項の指定物質として指定されるとともに、指定物質排出施設が指定され、その排出抑制対策を積極的に推進することとされた。また、平成9年環境庁告示第5号及び第6号により、ベンゼン等の指定物質抑制基準も定められたところである。
   貴職におかれても、平成9年4月1日施行される改正法により新たに位置づけられた有害大気汚染物質対策にのっとり、必要な対策の推進に努められたい。

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