法令・告示・通達

大気汚染に係る環境基準について

  • 公布日:昭和48年6月12日
  • 環大企143号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・各政令市長あて

 大気汚染に係る環境基準については、これまでに、いおう酸化物、一酸化炭素および浮遊粒子状物質についての環境基準がそれぞれ設定されていたところであるが、現下の大気汚染の状況からいおう酸化物、窒素酸化物および光化学オキシダントの対策の徹底が緊急の課題となつていることにかんがみ、中央公害対策審議会からの答申(昭和48年4月26日)にそつて、二酸化窒素および光化学オキシダントに係る環境基準の設定を行ない、従来の一酸化炭素および浮遊粒子状物質に係る環境基準と合せて、今般「大気汚染に係る環境基準について」(昭和48年5月8日環境庁告示第25号)として告示するとともに、いおう酸化物に係る環境基準の改定を行ない、二酸化いおうについて、同月16日環境庁告示第35号(前記環境庁告示第25号の一部改正)により告示した。(別添1参照〔省略〕)

 今般告示された大気汚染に係る環境基準は、公害対策基本法第9条第1項の規定に基づき、大気汚染に係る環境上の条件について、人の健康を保護するうえで維持されることが望ましい基準を定めたものであり、大気汚染防止に関する施策について、大気汚染が進行している地域にあつては、汚染の改善の目標となり、大気汚染が進行していない地域にあつては、汚染の未然防止の指針となるべきものである。

 上記の趣旨にかんがみ、政府においては、同法同条第4項の規定により、本環境基準が確保されるよう万全の努力を払うこととしているが、貴職におかれても本環境基準の維持達成が図られるよう格段の努力をお願いする。
 とくに、今般、改定または新たに設定された二酸化いおう、二酸化窒素および光化学オキシダント(以下「二酸化いおう等」という。)に係る環境基準については、現下のエネルギー情勢、防除技術の開発の状況等にかんがみ、その維持達成には相当の困難が伴うものと考えられるので、施策を進めるにあたつては、本職はもとより関係行政機関と連絡を密にするとともに、以下の事項に十分御留意のうえ、その取扱いに遺憾なきを期されたい。

  1. 第1 二酸化いおう等に係る環境基準について
    1.  1 二酸化いおう等に係る環境上の条件について
         二酸化いおう等に係る環境基準として定められた環境上の条件は、WHO(世界保健機関)の大気の質に関する指針のレベル1(ある値またはそれ以下の値ならば現在の知識では直接的にも間接的にも影響が観察されない濃度と暴露時間の組合せ)に相当するものとして、現在までに得られた知見に基づき、次のような各物質ごとの人への影響の特性を考慮し、わが国における大気汚染の実態等をふまえて、二酸化いおう等による大気汚染が人の健康に好ましからざる影響を与えることのないよう、十分安全を見込んで設定されたものである。
      1.   ア 二酸化いおうは、呼吸器系器官に対して長期的影響および短期的影響をおよぼすことならびに、それが浮遊粒子状物質や窒素酸化物と共存することによりその影響が強められること。
      2.   イ 二酸化窒素は、肺深部に容易に到達して肺およびその他の臓器に悪影響をおよぼすなど、それ自体としての長期的な影響は二酸化いおうに比較して強くそれが二酸化いおうあるいは浮遊粒子状物質と共存することによりその影響が強められること。
      3.   ウ 光化学オキシダントは、眼に対する刺激あるいは呼吸器系器官への短期的な影響を与えること。
            このように二酸化いおう等に係る環境上の条件は、いずれも人の健康を保護するうえで、十分安全を見込んで定められらものであり、とくに二酸化いおうおよび二酸化窒素については、それらによる大気汚染の人への長期的な影響を防止することを目的として厳しい水準に環境上の条件を定めたものであるので、これらの環境上の条件を若干こえる測定値が得られた場合においても、直ちにそれが人の健康被害をもたらすものではないことに留意されたい。
    2.  2 二酸化いおう等の測定について
         二酸化いおう等について、適正な測定結果を得ることは、これらの汚染物質による汚染の現状のは握のみならず、その傾向のは握、その影響の判定および防止対策の樹立とその効果の評価等今後の大気汚染防止行政を推進するうえで重要なことであるので、測定場所の選定、測定方法の採用等にあたつては、以下の事項に十分配意するとともに、測定器の適正な維持、管理に努められたい。
      1.   (1) 測定場所
            二酸化いおう等の測定は、原則としてそれらの汚染物質による地域における大気汚染の状態を的確には握することが可能な場所で行なわれるべきであるが、必要に応じて局地的な汚染状態のは握にも努めるべきである。
            試料空気の採取は、人が通常生活し呼吸する面の高さで行なわれるべきであり、原則として地上1.5m以上10m以下の高さにおいて行なうものとするが、高層集合住居等地上10m以上の高さにおいて人が多数生活している実態がある場合には、試料空気を採取する高さは適宜その実態に応じ選択すべきものとする。
      2.   (2) 測定方法
            二酸化いおう等の測定方法はそれぞれ以下のとおりとする。(別添2参照〔省略〕)なお、以下に示す測定方法と同等の結果が得られる他の方法を用いてもさしつかえない。
        1.    ア 二酸化いおうの測定方法
               二酸化いおう濃度の測定は、過酸化水素水溶液を用いる導電率法により行なうものとする。なお、本測定方法においては、試料空気採取部にフイルターを使用することにより、試料空気中の硫酸ミストその他の浮遊粒子状物質を除去するものとする。
        2.    イ 二酸化窒素の測定方法
               二酸化窒素濃度の測定は、ザルツマン試薬を用いる吸光光度法により行なうものとする。この場合二酸化窒素の亜硝酸イオンへの転換係数(ザルツマン係数)は0.72とする。
        3.    ウ 光化学オキシダントの測定方法
               光化学オキシダント濃度の測定は、中性ヨウ化カリウム溶液を用いる吸光光度法もしくは電量法により行なうものとする。本測定方法においてはオキシダント測定値を二酸化窒素濃度について補正するものとする。また、本測定方法においては、二酸化いおう等の還元性物質の影響を受けるので、その妨害を除去するため、三酸化クロム含浸ロ紙(スクラバー)を使用するものとするが、この場合大気中の一酸化窒素が二酸化窒素に酸化され、光化学オキシダント測定値に影響するので、一酸化窒素濃度についても補正するものとする。以上の二酸化窒素濃度および一酸化窒素濃度についての補正方法については、おつて通知するのでそれに従つて補正を行なうようお願いする。
      3.   (3) その他
      4.    ア 二酸化いおう等の測定は連続測定を行なうことが望ましく、また、測定結果の整理にあたつては、1時間を単位として整理するものとする。ただし、二酸化窒素については、1日(24時間)を単位として測定結果を整理することとしてさしつかえない。
      5.    イ 測定装置の目盛範囲は大気中の二酸化いおう等の濃度により適宜選択するものとする。
      6.    ウ 光化学オキシダントの測定値は前述のとおり二酸化窒素および一酸化窒素についての補正を行なう必要があるので、光化学オキシダントの測定場所で二酸化窒素および一酸化窒素の測定を行なうものとする。
    3.  3 環境基準による大気汚染の評価について
      1.   (1) 短期的評価
            二酸化いおう等の大気汚染の状態を環境基準にてらして短期的に評価する場合は、環境基準が1時間値または1時間値の1日平均値についての条件として定められているので、前記測定方法により連続してまたは随時に行なつた測定結果により、測定を行なつた日または時間についてその評価を行なうものとする。
            この場合、地域の汚染の実情、濃度レベルの時間的変動等にてらし、異常と思われる測定値が得られた際においては、測定器の維持管理状況、気象条件、発生源の状況等について慎重に検討を加え、当該測定値が測定器に起因する場合等地域大気汚染の状況を正しく反映していないと認められる場合には、当然評価対象としないものとする。
            なお、1日平均値の評価にあたつては、1時間値の欠測(上記の評価対象としない測定値を含む。)が1日(24時間)のうち4時間をこえる場合には、評価対象としないものとする。
      2.   (2) 長期的評価
            本環境基準による評価は、当該地域の大気汚染に対する施策の効果等を適確に判断するうえからは、年間にわたる測定結果を長期的に観察したうえで評価を行なうことが必要であるが、現在の測定体制においては測定精度に限界があること。測定時間、日における特殊事情が直接反映されること等から、次の方法により長期的評価を実施されるようにされたい。
            長期的評価の方法としては、WHOの考え方をも参考に、二酸化いおうまたは二酸化窒素に係る年間にわたる1日平均値である測定値(前記の評価対象としない測定値は除く。)につき、測定値の高い方から2%の範囲内にあるもの(365日分の測定値がある場合は7日分の測定値)を除外して評価を行なうものとする。ただし、人の健康の保護を徹底する趣旨から、1日平均値につき環境基準をこえる日が2日以上連続した場合には、このような取扱いは行なわないこととして、その評価を行なうものとする。
    4.  4 環境基準の適用範囲について
         二酸化いおう等に係る環境基準は、人の健康を保護する見地から設定されたものであるので、都市計画法(昭和43年法律第100号)第9条第8項に規定する工業専用地域(旧都市計画法(大正8年法律第36号)による工業専用地区を含む。)、港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第4項に規定する臨港地区、道路の車道部分その他埋立地、原野、火山地帯等通常住民の生活実態の考えられない地域、場所については適用されないものである。
         このことは、当該地域、または場所における大気汚染の改善の目標、あるいは未然防止の指針として、本環境基準を用いないという意味であつて、当該地域または場所における環境大気についてはすべて大気保全行政の対象としない趣旨ではないので念のため申し添える。
  2. 第2 二酸化いおう等に係る環境基準の達成期間およびその達成の方途について
      二酸化いおう等に係る環境基準は、前述のようにきわめてきびしいレベルに設定されていることなどから、これが維持達成は容易ではないと考える。したがつて、これが維持達成には、今後着実かつ計画的に大気汚染の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講じていく必要がある。このため告示において物質ごとに環境基準の達成に必要な期間が定められているところであるので、この趣旨を十分留意され、その施策の遂行に遺憾のないようされたい。
    1.  1 達成期間
      1.   (1) 大気汚染の状態が二酸化いおう等に係る環境基準を満足している地域にあつては、当該環境基準が維持されるよう努めるものとする。
      2.   (2) 大気汚染の状態が二酸化いおう等に係る環境基準をこえている地域にあつては、二酸化いおうおよび二酸化窒素については原則として5年以内に、光化学オキシダントについてはできるだけ早期に、当該環境基準が達成されるよう努めるものとする。
            二酸化窒素については、特に当該環境基準が5年以内に達成することが困難な地域については、5年以内に中間目標を、8年以内に当該環境基準を達成するものとする。
            なお、中間目標を設定する必要がある地域については、当該地域の大気汚染の実態、発生源の状況およびその汚染への寄与、発生源に適用しうる防除技術の状況および技術開発の見通し等について十分検討を加えたうえで達成の困難性につき総合的に判断する必要がある。このため、これら地域については、別途関係都道府県知事と本職と協議を行ないたいので、該当すると考えられる地域については、汚染の現況、発生源の状況および今後5年間にわたる排出量予測等に関する資料の整備等に努められたい。なお、協議の対象となりうる地域は、おおむね公害防止計画策定または策定予定地域に該当すると考えられるので、これらの地域のある都道府県におかれては、公害防止計画の策定または見直しとも関連することになるので、これらの点との整合性にも十分配意しておかれたい。
    2.  2 達成の方途
         二酸化いおう等に係る環境基準を達成するための方策については、告示においてはとくに示されていないが、政府においては中央公審対策審議会からの答申において環境基準の改定または設定に伴う課題として示された諸施策を中心に各般にわたる対策を推進していくこととしており、これに関しては関係省庁の協力が必要なので閣議において協力を要請したところである。
         貴職におかれてもこれら施策を参考に必要な対策の推進に努められたい。
         なお、これら施策の具体的内容、取扱い等については、それぞれ排出規制の実施、低いおう化計画の策定等に際して別途通知する予定である。
  3. 第3 その他
    1.  1 一酸化窒素、オゾン等の測定
         一酸化窒素濃度をは握しておくことは、光化学オキシダントの測定値を補正するためにも、また窒素酸化物による大気汚染の状態を明らかにするためにも必要である。したがつて一酸化窒素濃度についても測定を行なうものとする。この場合における測定方法は第1の2の(2)に示した二酸化窒素の測定方法の例によられたい(別添2参照〔省略〕)。
         また、窒素酸化物濃度について補正した光化学オキシダント濃度の大部分はオゾンによるものと考えられており、光化学反応による大気汚染の実態を明らかにするため、オゾンの測定を直接行なうよう努めることが望ましい。オゾンの測定は、エチレンとの反応を利用した化学発光法により行なうものとする(別添2参照)が、この場合、排気中のエチレンを除去する装置を装着することとし、またエチレンを装入したボンベの取扱いに十分注意するよう配慮されたい。
         さらに、光化学オキシダントの発生機構にかんがみ、炭化水素の測定を行なうよう努められたい。
    2.  2 従来の環境基準の取扱い
         いおう酸化物、一酸化炭素および浮遊粒子状物質に係る環境基準は、従前、それぞれ「いおう酸化物に係る環境基準について」(昭和44年2月12日閣議決定)。「一酸化炭素に係る環境基準について」(昭和45年2月20日閣議決定)および「浮遊粒子状物質に係る環境基準について」(昭和47年1月11日環境庁告示第1号)により設定されていたところであるが、今般大気汚染に係る環境基準として一括して告示されたこと等に伴い、いおう酸化物に係る環境基準については従前の閣議決定が廃止されて、あらたに閣議了解がなされ(別添3参照〔後掲〕)、また、浮遊粒子状物質に係る環境基準については従前の告示が廃止された。
         なお、今回改定が行なわれなかつた一酸化炭素に係る環境基準についての閣議決定は存続しているので念のため申し添える。
         おつて、今般の告示による一酸化炭素および浮遊粒子状物質に係る環境基準は、従前の環境基準の内容を変更したものではなく、一酸化炭素に係る環境基準のうち、環境上の条件および適用範囲の規定については他の物質の環境基準の規定に合わせるため若干の修正を行なつたものであり、その意味するところは変つていない。また、浮遊粒子状物質に係る環境基準の測定方法については、「浮遊粒子状物質に係る測定方法について」(昭和47年6月1日環大企第88号本職通知)の趣旨にしたがい誤解のないよう改めたものである。
         また、浮遊粒子状物質による大気汚染などのように、その汚染の状況を環境基準にてらして長期的に評価することが必要な場合にあつては、その評価は第13の(2)に示した二酸化いおうおよび二酸化窒素に係る長期的評価の例により行なうものとする。
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