法令・告示・通達

環境基本計画

  • 公布日:平成18年4月17日
  • 環境省告示84号

-環境から拓く新たなゆたかさへの道-

平成18年4月7日


  1. 目次
  2. 前文
  3. 第一部 環境の現状と環境政策の展開の方向
  4. 序章 目指すべき持続可能な社会の姿
  5. 第1章 環境の現状と環境政策の課題
    1.  第1節 社会経済と環境の現状
      1.   1 我が国の社会経済と環境問題の現状
      2.   2 世界の問題と密接に関わる日本の環境問題
      3.   3 複雑化・深刻化する環境問題
      4.   4 国土と環境問題の現状
    2.  第2節 第二次環境基本計画策定後の取組による主な成果と今後の環境政策の課題
      1.   1 地球温暖化対策の分野
      2.   2 廃棄物・リサイクル対策の分野
      3.   3 大気環境対策の分野
      4.   4 水・土壌・地盤環境対策の分野
      5.   5 化学物質対策の分野
      6.   6 自然環境の保全の分野
      7.   7 環境教育・環境学習等、環境配慮の織り込みの分野
      8.   8 科学技術の分野
      9.   9 国際的な取組の分野

  6. 第2章 今後の環境政策の展開の方向
    1.  第1節 環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上
      1.   1 環境効率性の向上、環境と経済の好循環の実現による「より良い環境のための経済」と「より良い経済のための環境」の実現
      2.   2 地域コミュニティ再生を通じた「より良い環境のための社会」と「より良い社会のための環境」の実現
      3.   3 100年後の世代にも伝えられるライフスタイルへの転換に向けて
    2.  第2節 環境保全上の観点からの持続可能な国土・自然の形成
      1.   1 自然環境の多様性の維持と質の回復・向上による、ストックとしての国土の価値の増大
      2.   2 既存ストックの活用や農林水産業の機能にも着目した、環境保全上の観点から考えられる持続可能な国土づくりの推進
    3.  第3節 技術開発・研究の充実と不確実性を踏まえた取組
      1.   1 科学的知見、科学技術の充実
      2.   2 施策決定における最大限の科学的知見の追求
      3.   3 予防的な取組方法の考え方などによる、不確実性を踏まえた施策決定と柔軟な施策変更
    4.  第4節 国、地方公共団体、国民の新たな役割と参画・協働の推進
      1.   1 国、地方公共団体、国民の役割を踏まえた連携の強化
      2.   2 施策プロセスへの広範な主体による参画の促進
      3.   3 行政と国民とのコミュニケーションの質量両面からの向上
    5.  第5節 国際的な戦略を持った取組の強化
      1.   1 国際的枠組みでの持続可能な開発を目指した戦略的な取組の強化
      2.   2 国際的なルールづくりへの積極的な参画
      3.   3 国際社会の状況を意識した我が国における持続可能な社会づくり
    6.  第6節 長期的な視野からの政策形成
      1.   1 50年といった長期的な視野を持った取組の推進と超長期ビジョンの策定
      2.   2 長期的な取組のための知見の充実
  7. 第二部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開

    1. 第1章 重点分野ごとの環境政策の展開
       (事象面で分けた重点分野政策プログラム)
      1.  第1節 地球温暖化問題に対する取組
      2.  第2節 物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組
      3.  第3節 都市における良好な大気環境の確保に関する取組
      4.  第4節 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組
      5.  第5節 化学物質の環境リスクの低減に向けた取組
      6.  第6節 生物多様性の保全のための取組

         (事象横断的な重点分野政策プログラム)
      7.  第7節 市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり
      8.  第8節 環境保全の人づくり・地域づくりの推進
      9.  第9節 長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備
      10.  第10節 国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進
    2. 第2章 環境保全施策の体系
      1.  第1節 環境問題の各分野に係る施策
        1.   1 地球環境の保全
        2.   2 大気環境の保全(地球規模の大気環境を除く。)
        3.   3 水環境、土壌環境、地盤環境の保全
        4.   4 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策
        5.   5 化学物質の環境リスクの評価・管理に係る施策
        6.   6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
      2.  第2節 各種施策の基盤となる施策
        1.   1 環境影響評価等
        2.   2 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等
        3.   3 環境情報の整備と提供
        4.   4 地域における環境保全の推進
        5.   5 環境保健対策、公害紛争処理、環境犯罪対策
        6.   6 技術開発などに際しての環境配慮及び新たな課題への対応
        7.   7 各主体の自主的積極的取組に対する支援施策
        8.   8 環境教育・環境学習等の推進
      3.  第3節 国際的取組に係る施策
        1.   1 地球環境保全等に関する国際協力の推進
        2.   2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等
        3.   3 多様な主体による活動の推進

  8. 第三部 計画の効果的実施

    1.  第1節 政府をはじめとする各主体による環境配慮と連携の強化
    2.  第2節 財政措置等
    3.  第3節 各種計画との連携
    4.  第4節 指標等による計画の進捗状況の点検及び計画の見直し

 平成5年に成立した環境基本法の規定を受けて、平成6年に第一次、平成12年に第二次の環境基本計画が策定されました。これまで、それらの計画に基づき多方面にわたって環境保全のための施策の具体化が試みられてきました。「循環」、「共生」、「参加」、「国際的取組」の4つの長期的な目標は、各施策を通じて浸透し、環境問題の広がりに対して私たちがどのような方向を目指すべきかを考える上での基本的な指針として定着しているものと考えられます。また、第二次環境基本計画において提示された各府省における環境配慮の方針は、すべての府省で策定され、取組が進められています。
 しかしながら、様々の取組にもかかわらず、化石燃料などの天然資源の大量使用に起因する地球温暖化など地球環境全体の持続性に関わる問題などへの取組が一層緊急性を増してきています。そのような中で、環境問題と社会経済活動全体の深い結びつきを踏まえて経済的側面、社会的側面、環境的側面という社会経済活動の各側面を統合的に捉える「統合的アプローチ」等、第二次環境基本計画において示した基本的考え方を深化させ、具体的な施策をより一層強力に進めなければならない状況に至っています。
 このような状況を踏まえ、第二次環境基本計画を見直して第三次となる環境基本計画を策定しました。
 本計画では今日の社会と環境の状況の変化を踏まえて、「環境の世紀」としての21世紀をより良き100年としていくための理念と道筋をはじめ、今後の環境保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱などを示しました。
 本計画に基づき、国は各行政部門において環境保全の施策を一層強力に進めていきます。そして、同時に、この環境基本計画の基本的な方向と取組の枠組みが社会のすべての主体によって共有され、取組が着実に進められていくことが期待されます。すなわち、国民一人一人やいろいろな民間団体、事業者、地方公共団体と国が協力し合い、すべての構成員が参画することによってこれらの目指すものの実現が可能となるものといえましょう。
 それらの取組を総合した成果として恵み豊かな環境の中で幸福に暮らせる持続可能な社会を実現していくことが現世代の務めです。
 本計画が、それぞれの主体の取組を進める上で有効に利用され、また、環境教育・環境学習などの場において広く活用されることを期待します。

第一部 環境の現状と環境政策の展開の方向

序章 目指すべき持続可能な社会の姿

1 我々が目指すべき社会

 今日我々は地球温暖化問題をはじめ様々の環境問題を抱えています。我々の生存を支える自然環境全体について、地球温暖化による影響等を含め、人間の活動による劣化が一層懸念される状況となっています。近年、世界で多くの自然災害が発生しており、因果関係に関する科学的根拠は十分に確立されていませんが、地球温暖化による気候変動がその原因の一つなのではないか、との指摘がなされています。現在、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素(CO)は、その人為起源による排出量の約半分は大気中に蓄積され、地球の平均気温は明らかに上昇しています。また、地球の有するエネルギー資源、水資源、生物資源をはじめとする限られた資源の大量な採取を通じても、将来の人間活動の基盤が失われ、人間社会の持続性にも影響が及ぶ可能性が生じています。
 さらに、世界には、人間活動が増大するとともに一層のグローバル化が進むことに伴い、地域の環境の劣化が生じている場合があり、住民が生活を送ることが困難になったような事例も生じています。そのことが直接・間接的に将来の我々の生活にも大きな影響を与えることを想定しなければなりません。
 国内でも、アスベスト問題のように、引き続き政府が一体となって対応することが必要な、人の健康にも関わる深刻な課題もあります。様々な対策にもかかわらず、廃棄物の不法投棄も続発し産業廃棄物の不法投棄残存量は千数百万トンに及んでいます。また、外来生物による生態系や農林水産業への被害も発生し、国民の生活を脅かすような問題も生じています。
 平成12年12月に第二次環境基本計画を策定して以来、21世紀の最初の5年が過ぎました。この間の状況を見ると、政府は各分野で環境保全のための取組を進めており、国民、各種団体、事業者、地方公共団体といった様々な主体による取組も進められています。しかしながら、ここまで述べてきたように、環境の改善は十分であるとはいえません。むしろ、地球環境が取り返しのつかない破局に向かっているのではないかという懸念が現実のものとして認識され始めている状況にあるといえます。

 環境的側面、社会的側面、経済的側面が複雑に関わっている現代において、恵み豊かな環境を継承していくためには、社会経済システムに環境配慮が織り込まれていく必要があります。逆に、環境的側面から持続可能であるためにも、社会、経済の側面についても健全で持続的でなければなりません。

 特に、今日では、地球規模での人口増加や経済規模の拡大の中で、先にも述べたように、人類の生存基盤に関わるような課題が生じており、その解決のためには持続可能な社会の構築に向けて社会経済活動や生活の様式を根本から見直すことが急務となっています。
 現在、日本社会は、人口が減少するというこれまでにない局面を迎えています。これは環境負荷の減少要因にもなる一方で、健全な社会経済と環境保全の担い手の減少をも意味しています。また、戦後長期にわたる経済成長により、我が国は世界有数の物質的な豊かさを得た反面、今日では経済規模の拡大が必ずしもすべての国民の恩恵につながらなくなってきています。そのような中で、環境の面だけでなく社会的な面からも個人生活の面からも持続可能であるとともに真に公正で公平であるような、新たな豊かさを求める動きが出てきています。
 我々が豊かな社会を享受し続け、さらには、将来世代にも引き継いでいくためには、このような環境、社会、経済の関係や現在の時代状況を踏まえて、また、国際社会における動向も注意しつつ、持続可能な社会を構築していくことが必要になっており、それが真に豊かな社会を構築する道であると考えます。

 持続可能な社会の構築を目指すに当たって、改めて我々と環境との関係について考えてみる必要があります。我々は、一生物として、太陽の光、大気、水、土壌及び動植物などの生物といった要素からなる環境に囲まれ、これらに関わり、利用しながら生きています。同時に我々は、心を持ち、意思を持って、社会的な活動を営んでいます。これらのことから、以下の3つの関わりを意識しつつ、環境の保全を考えていくことが重要です。

  1. ① 物の面から見た環境と我々の関わり
     我々をとりまく自然環境は、生活可能な気候、水、食料、生活のために必要な資源など生存にとって必要な物を産み出すという形で我々に大きな恵みを与え続けてくれています。我々はその中で、生産・消費活動を拡大させ、それに伴ってエネルギーや資源の利用、熱の廃棄を増大させてきました。しかしながら、自らの活動を巨大化・活性化してきた結果として、我々は環境が無尽蔵で無限なものではないということを知ったと言えるでしょう。
     すなわち、我々は、人類史上で初めて地球規模における種々の「有限性」を意識して社会への変革に現実に取り組まなくてはならない世代となったと言えるでしょう。したがって、長期的に見た影響や環境負荷が蓄積することによって環境のバランスが崩れることを防ぐという観点も持って、環境に負荷を与えないように努める必要があります。
  2. ② 心の面から見た環境と我々の関わり
     我々の生活、生き方は環境との関わりによって条件付けられています。そして我々は、四季を通じて折々の変化を見せる環境の中で、健やかな、豊かで幸せな生き方を求めています。
     我々の社会、文化、生活感覚は良好な環境との関わりを保ちその様々な恵みを受け続けることにより形成されていくものであり、これが我々の幸せな生活の基盤となっています。
     このような観点から、環境の保全を考える際には、我々の精神生活を豊かにするという観点からも自然環境を適切に保全するとともに、環境と我々との生き生きとした関係を守り育てていくように努めていく必要があります。
  3. ③ 将来世代や世界の様々な地域の人々の環境と我々の関わり
     将来世代は、我々の活動の影響を受けて形作られた環境の中で生きなければなりません。また、環境問題は特定の地域での問題ではなく、地球温暖化などの影響は全世界に及ぶものであり、地球環境は一体であることを認識しなければなりません。また、国内・国際を問わず広範な物の行き来によっても、我々の生活は様々な地域やその環境とつながりを持っており、我々の社会が豊かで健全であるためにも世界の環境全体が健全であることが求められています。このような、世代や地域の異なる人々やその環境と我々とのつながりを意識して、環境の保全に努めていくことが不可欠です。

     このようなことを考え合わせれば、本計画で目指すべき"持続可能な社会"とは、"健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域までにわたって保全されるとともに、それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき、将来世代にも継承することができる社会"であり、そのためには、多様化する国民の期待が実現する社会の基盤としての環境が適切に保全されるとともに、経済的側面、社会的側面も統合的に向上することが求められると言えます。
     すなわち、目指すべき持続可能な社会とは、物質的な面だけでなく、精神的な面からも、安心、豊かさ、健やかで快適な暮らし、歴史と誇りある文化、結びつきの強い地域コミュニティといったものを、我が国において将来世代にわたって約束するような社会であるとともに、それを世界全体に波及させていくような社会であると考えることができます。言い換えると「健やかで美しく豊かな環境先進国"HERB(注参照)"」が、我が国として目指すべき姿であると言うことができます。
     また、同時に我々には、地球上の他の国々、異なる地域に対する配慮や、世界的・国際的な枠組みで「有限性」への対応も必要となってきています。それぞれの国や地域の状況に応じた持続可能な国づくり・社会づくりを進めるに当たって必要となる国際的な連携に、我が国がどのように貢献をしていくのかも総合的に考察する必要があります。
  • (注)健やか(Healthy)、美しい(Beautiful)、豊か(Rich)の頭文字に環境と経済(Ecology, Economy)の頭文字を加えて環境先進国の姿を表している。

2 本計画の目標

 これまでの環境基本計画では、環境基本法に定められた理念を実現するために「循環」「共生」「参加」「国際的取組」の4点を長期的な目標としてきました。本計画において、1に述べた意味での持続的な社会の構築を目指すに当たっても、これらについては引き続き維持するべきものと考えられます。一方、最近の環境問題を巡る変化やこれまでの議論を加味すると、次のような点がその内容として重要であると考えられます。

(「共生」の内容として)
  • ○健全な生態系が維持、回復され、自然と人間との共生が確保されること。

(「循環」の内容として)
  • ○自然界全体の物質循環から、各種の規模の生態系・地域における人間の社会経済活動を通じた物質循環までを含む、様々な系において健全な循環が確保されること。

(「共生」及び「循環」に関わる内容として)
  • ○現在に加え将来においても環境への負荷が環境保全上の支障を生じさせることのないように、環境への負荷が環境の容量を超えないものであること。
  • ○地域の風土や文化的資産がいかされ、環境的側面から安全・安心で、質の高い生活が確保されること。

(「参加」の内容として)
  • ○世代間、地域間、主体間で健全で環境の恵み豊かな持続可能な社会を作るための負担が公正かつ公平に分かち合われること。
  • ○国民が自発的に環境保全のために行動できるとともに、環境に影響を与える行政機関などの意思決定に適切に参加できること。

(「国際的取組」の内容として)
  • ○地球環境保全が人類共通の課題であり我が国にとって重要なものであることを踏まえ、地球全体における環境の保全と世界のすべての人々がそのための行動をとることに向けて地球規模の協力、連携が行われること。

 先に述べたような現状及び問題意識を踏まえ、これらの目標を実現するために、今後の環境政策は次のような方向性を重視して展開していくべきであると考えられます。

  •  ○環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上
  •  ○環境保全上の観点からの持続可能な国土・自然の形成
  •  ○技術開発・研究の充実と不確実性を踏まえた取組
  •  ○国、地方公共団体、国民の新たな役割と参画・協働の推進
  •  ○国際的な戦略を持った取組の強化
  •  ○長期的な視野からの政策形成

 施策の展開に当たっては、第一部第2章に示すように、「汚染者負担の原則」、「環境効率性」、「予防的な取組方法」、「環境リスク」といった従来から環境政策の指針として示されてきたような考え方を活用することに加え、「拡大生産者責任」などの新しい考え方についても活用していくことが必要です。

 また、本計画が念頭に置いているのは当面の国としての取組ですが、環境問題は大きな広がりを持ち、長期的な取組を必要とする自然環境・地球環境の保全を対象としていることから、当面の施策目標についても長期的な将来ビジョンが念頭に置かれる必要もあります。将来像の設計には不確実な要素が多いことも確かですが、大きな問題が発生する前に事前の対応を採っていくことが将来の世代に対する現代に生きる我々の責任です。

 このような目標、考え方のもとに、あらゆる場面に環境面からの持続可能性への配慮が盛り込まれることを目指して政府全体として地方公共団体とも相協力しながら総合的に政策を進め、健全で環境の恵み豊かな持続可能な社会を作っていくこととします。

 このため、本計画では、我が国及び世界の将来を長期にわたって展望しつつ、2025年頃までに実現すべき社会を見据えながら、当面の環境政策の方向と取組の枠組みを明らかにしていきます。

第1章 環境の現状と環境政策の課題

第1節 社会経済と環境の現状

 今日の環境問題の態様は、産業公害と開発に伴う自然の減少が課題の中心であった高度経済成長期までの環境問題とは大きく変化しています。本節では、環境問題の現代的特徴を踏まえながら社会経済と環境の現状を考察します。

1 我が国の社会経済と環境問題の現状

(1)日常活動からの負荷が課題となっている環境問題の現状

 我々は、日常生活や通常の事業活動を通じて様々な面から環境に負荷を与えています。社会経済構造の変化とともに、これらの幅広い社会経済活動が原因となる環境への負荷が、今日の多くの環境問題にとって無視できない要因となっています。また、その影響は様々な形で我々自身の暮らしに及んできています。
 社会経済活動が原因となる環境負荷に関係する要素として、例えば、単身世帯の増加、新たな電化製品の普及、24時間対応の店舗やサービスの急増、郊外居住人口の増加等に伴う公共施設や大規模店舗等の郊外立地の増加といったまちの郊外化、自動車の保有台数・1人当たり走行キロ数の増加など、我々のライフスタイルが変化してきていることが挙げられます。こうした変化を背景に、エネルギー使用、中でもオフィスなどの業務部門や家庭部門のエネルギー使用が大きく増加しています。こうしたエネルギー使用の増加は、化石燃料資源の枯渇だけでなく、温室効果ガスの排出による地球温暖化、大都市における熱環境の悪化(ヒートアイランド現象)による熱帯夜日数や熱中症の増加といった形で我々の日常生活に影響を与えています。また、都市に人口が集中することに伴い、大都市部での自動車に起因する局地的な高濃度汚染や、幹線道路周辺での騒音が依然として問題となっています。
 また、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済構造が定着しています。最終処分場の残余容量のひっ迫や不法投棄が深刻な問題となっていると同時に、廃棄物の処理自体にも多くのエネルギーを要しています。
 また、生活排水は、水質汚濁負荷の主要な発生源の一つであり、特に湖沼や内湾などの閉鎖性水域において、汚濁の改善が十分には進まない原因ともなっています。これらの水域においては、富栄養化に伴い、アオコや赤潮の発生などにより、水生生物の生育・生息や水域利用上の障害などの影響が生じています。

(2)環境問題と密接に関わる社会経済の現状

 我が国の経済は、バブル後の負の遺産の処理が進み、回復が続いてきています。一方、持続的な社会経済の発展を確保するために考慮すべき、環境とも密接に関わる様々な課題が顕在化しています。
 例えば、我が国の長期債務残高は名目GDPの約1.5倍と先進国の中で最も高い水準にあり、財政は危機的な状況となっています。さらに、我が国では高齢化が進むとともに、2005年の人口は前年に比べ減少し、我が国の人口は減少局面に入りつつあるとみられています。人口の減少はエネルギー需要の低下につながるなど環境にプラスの影響を与える面もありますが、労働力人口の減少、財政制約等の影響により、国土のストックとしての質の水準を維持していくために必要な管理を行うことが困難となるおそれが生じるなど、環境にマイナスの影響を与える面もあります。
 また、今後10年以内に集落が消滅する危機感を持っている市町村が2割近く存在するなど、自立的・持続的発展が困難になっている地域が数多く存在します。

 一方、環境問題への対応が経済成長や地域の自立的な発展にプラスの効果を及ぼす可能性もあります。
 例えば、我が国経済の持続的な発展のためには、21世紀の我が国経済のけん引役となる主力産業の構築が必要となっています。こうした中、消費者の意識の変化、環境制約への対応等を背景とした市場のニーズの拡大等により、環境に関わる市場・雇用の規模が今後大きく伸びることが予測されています。
 また、世界一厳しい自動車の排出ガス規制への対応が世界市場への日本製自動車躍進の一因ともなったように、今後、我が国やアジアでの環境に関わる市場規模の増大が予測される中で、環境制約への対応や環境分野の研究・技術開発に対する戦略的な投資を通じて、世界の環境関連市場において我が国が優位性を発揮することができる可能性もあります。
 また、自然とのふれあい志向、脱物質(精神的な豊かさ)志向の高まり、LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability健康と環境面を中心とした持続可能性を重視した生活スタイル)といわれるようなライフスタイルの広まりなど、人々の志向が変化してきています。

2 世界の問題と密接に関わる日本の環境問題

 世界の様々な問題が、国境を越えて我が国の環境問題や持続可能性と深い関わりを持っています。
 例えば、2005年時点で約65億人と推計されている世界の人口は、今後も増加を続け、2030年には81億人になると推計されています。また、アジアを中心に高い経済成長が見込まれる国や地域があり、世界経済の中で、中国等BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の比重が大きくなっていくとの予測もあります。このような世界の人口増と経済成長を背景に、エネルギー需要の増加などを通じて環境への負荷も増大していくことが予想されます。
 また、世界では開発途上国を中心に水不足や栄養不足が深刻な問題となっています。我が国も、降水量は多いものの1人当たり水資源賦存量は世界平均を下回っており、水資源に恵まれている国とは言えません。さらに、我が国が輸入する食料を生産するために海外で多量の水資源が消費されており、我が国は海外から食料という形で間接的に多量の水資源を輸入していると言えます。また、我が国は、生物資源である食料の6割(カロリーベース)、木材の8割を輸入しており、その意味でも地球規模での生態系の変化と無縁ではありません。
 また、経済活動のグローバル化や、アジアでの急速な経済成長による資源需要の増大を背景に、再生資源や廃家電製品などの国際移動が活発化しています。例えば、プラスチックくずの輸出量が平成10年から平成16年の間に6倍以上に増加し、そのほとんどが中国・香港向けとなっています。
 酸性雨や黄砂、大気汚染、海洋汚染等の現象が国境を越えて広がっています。また、日本列島は、変化に富んだ地形や気候等を反映し、数多くの固有種をはじめ多くの希少種が生息・生育する豊かな生物多様性を有していることや、アジア太平洋地域等に生息する多くの渡り鳥の渡り経路上にあることなどから、日本の国土における生態系の破壊・分断・劣化が、世界における生物多様性にも影響を与える可能性があります。また、海外から導入された外来生物による日本の生態系等への影響も懸念されています。

3 複雑化・深刻化する環境問題

 今日の環境問題の中には、影響の発現に長期間を要する問題やその影響が長期間にわたる問題、発生の仕組みや影響の科学的解明が十分でない問題が増えてきています。これらの中には、このまま放置しておけば甚大な被害を将来もたらす可能性が指摘されている問題もあります。
 地球温暖化問題に関しては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第3次評価報告書では、気温・海面の上昇、洪水、干ばつ等の異常気象の増加、一部の動植物の絶滅、水の需給バランスの変化など、人間の健康や経済社会活動への広範かつ深刻な影響が予測されています。また、一次産品中心の開発途上国での大きな経済損失などの影響を予測しています。また、氷河の後退、永久凍土の融解等の結果、地域的な気候変化をもたらし、既に世界の多くの地域の種々の物理・生物システムに影響を与えているとしています。このような影響を回避するためには、温室効果ガスの大気中濃度を自然の生態系や人類にとって安全な水準で安定化させる必要があります。安全な水準がどの程度か、ということについては現在議論されているところですが、地球温暖化の進行を防ぐため、温室効果ガスの濃度を安定化させるという気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「気候変動枠組条約」とします。)の究極的な目的を達成するには、世界全体の二酸化炭素の排出量を早期に少なくとも現在の半分以下にすることが必要とされています。京都議定書の削減目標は先進国の排出量の約5%削減であり、濃度の安定化に向けた第一歩に過ぎません。さらに、2003年度における我が国の温室効果ガス排出量は8.3%の増加であり、京都議定書における我が国の6%削減約束との差は14.3%にものぼります。
 また、我々の生活を支えている多くの種類の化学物質については、環境に影響を及ぼすリスクもありますが、それが科学的に完全には解明されていないものが数多くあります。このような中で、現時点でどのような対応をどの程度行えばよいのか、難しい意思決定が必要となることもあります。こうした中、アスベストの問題のように、各時点においてその当時の科学的知見に応じて対応を行ってきたが、予防的な取組方法の考え方が浸透していなかったためこれに基づく対応が講じられなかった事例や、殺虫剤DDTのように、環境汚染の観点から世界的に製造・使用が規制されながら、途上国の事情に応じ、伝染病防止のための使用を個別に認めざるを得ない事例もあります。
 こうした問題を適切に対処するためには、研究・技術開発による知見と技術の蓄積に加えて、より長期的な影響や不確実性・リスクを前提とした政策手法の開発・活用等が必要となっています。また、正確な情報を出来るだけ分かりやすく提供することが必要です。

4 国土と環境問題の現状

(1)自然環境等の現状

 国土における良好な自然環境や景観、伝統文化といったいわば「正の資産」を持続可能な社会経済の発展基盤として継承していく必要があります。

 自然環境に関しては、社会経済や人口構造の変化等を背景に量的な減少や質的な劣化が懸念されています。国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、二酸化炭素の吸収源、林産物の供給など多面的な機能を持つ森林については、人工林における間伐等の手入れが不足することにより機能の発揮に支障をきたすおそれが生じています。農用地については、都市的土地利用への転換は減少傾向にありますが、地方で特に顕著な高齢化・人口減少の進展などを背景に減少が続くとともに、耕作放棄地等適切な管理がされない土地が拡大しています。沿岸域の埋立面積は減少傾向にあるとはいえ、藻場・干潟や自然海岸は依然として減少しています。さらに、侵略的な外来生物の移入による生態系等への影響も懸念されています。
 このような中、絶滅のおそれのある野生生物の種数が増加傾向にある一方で、ニホンジカやイノシシなど一部の野生鳥獣については、その分布域が拡大し、特に中山間地域において農作物への被害が増加するなど、人と鳥獣とのあつれきも生じています。また、身近なところでも、ペット放棄の問題など、人と自然のかかわりに関する問題が顕在化しています。

 国民の意識についても、良好な自然環境等の「正の資産」を適切に扱っていこうとする機運が高まっているといえます。国民が自国について誇りに思う内容として、「長い歴史と伝統」、「美しい自然」、「すぐれた文化や芸術」を挙げる人の割合が増えてきています。また、伝統文化、自然環境等と調和した景観の保全・形成を地域の活性化につなげている地域もあります。さらに、「もったいない」という言葉に込められた精神を世界に広げ、環境負荷の低減や環境と経済の好循環につなげようという取組も始まっています。

(2)「負の遺産」の現状

 環境に負荷を与える物質が蓄積され、適切な処理を行わなければ不可逆的なあるいは長期にわたる影響を将来世代に残してしまう、環境上の「負の遺産」としては、難分解性の有害化学物質による土壌、底質、地下水の汚染及びその人や野生生物への蓄積の問題があります。また、これまでに不法投棄された廃棄物や、アスベスト、PCB等難分解性の有害化学物質等の処理の問題もあります。これらの「負の遺産」を適切に処理することにより、国土の質を改善していく必要があります。特に、過去における有害物質の不適切な取扱い、地下浸透等により生じた土壌・地下水汚染については、汚染を放置すれば人の健康に影響が及ぶことが懸念される場合には、速やかな汚染状況の把握と対策等の実施が必要とされています。

第2節 第二次環境基本計画策定後の取組による主な成果と今後の環境政策の課題

 第二次環境基本計画は、「理念から実行への展開」を図るため、地球温暖化対策の推進など11の戦略的プログラムを定めるなど、持続可能な社会の構築に向けて、計画の具体性や実効性を強化しました。本節では、第二次環境基本計画策定以降の環境政策の進展を概観し、主要な課題ごとに主な成果と今後の課題を考察します。

1 地球温暖化対策の分野

 京都議定書の締結に向けた国内体制の整備を進めるとともに、京都議定書の早期発効を目指して未締結国への働きかけを継続した結果、ロシアの批准により京都議定書が2005年2月に発効しました。これを受け、京都議定書目標達成計画を策定し、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するために必要な措置を定めました。このように、第二次環境基本計画の策定以降、地球温暖化対策の枠組みの構築には一定の成果を見ているものの、第1節で述べたように温室効果ガスの排出量削減そのものについては進んでいません。今後、あらゆる主体が参加・連携して我が国の削減約束を確実に果たすことが当面の重要な課題となっています。
 また、第1節で述べたように、長期的にはさらに大幅な温室効果ガスの排出削減を行う必要があり、社会経済のあらゆるシステムを構造的に温室効果ガスの排出の少ないものとすることが課題となっています。また、将来像を設定し、そのために必要な政策が何かを求めていくバックキャスティングの手法など、将来の見通しが不確実な中でも長期的な目標を達成していくための新たな政策手法の開発・活用が必要となってきています。
(第二部第1章第1節参照)

2 廃棄物・リサイクル対策の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、循環型社会形成推進基本法(以下「循環基本法」とします。)と一体となって、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」とします。)等の改正や、容器包装、家電、建設資材、食品及び自動車に関する各種リサイクル関連法が制定され、循環型社会の形成に向けた法的基盤の整備が進められてきました。また、第二次環境基本計画を受け、循環基本法に基づく循環型社会形成推進計画(以下「循環基本計画」とします。)が策定され、その中で物質フローに関する数値目標が掲げられるなど、循環型社会の構築に向けてあらゆる主体が取り組むための枠組みづくりも大きく前進しました。
 このような取組の結果、最終処分量の減量化は進んできている一方、廃棄物等の発生の抑制は十分に進んでいません。例えば、平成12年度から15年度の間に、最終処分量は約29.8%減少しましたが、ごみ総排出量は約1.4%の減少に留まっています。その根本的な要因としては大量消費、大量生産、大量廃棄型の社会経済構造が定着化していることが考えられ、循環型社会の形成に即した社会経済システムへの転換を図ることが課題となっています。
 また、3R(リデュース、リユース、リサイクル)に関する国際的な取組としては3Rイニシアティブ閣僚会合の開催などの取組を進めています。廃棄物等の国際移動については、アジア諸国等の関係国と情報共有等を行うネットワークの構築など、適切な輸出入管理のための取組を強化していくことが重要です。
(第二部第1章第2節参照)

3 大気環境対策の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、大都市を中心とする自動車による大気汚染については、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下「自動車NOx・PM法」とします。)に基づく車種規制をはじめとした取組を進めてきました。同法の対策地域における二酸化窒素や浮遊粒子状物質に関する環境基準については、平成14年4月に閣議決定した総量削減基本方針において、平成22年度までにおおむね達成するとの目標を掲げています。全国の環境基準の達成状況については、平成14年度と平成16年度を比較すると、自動車排出ガス測定局において、二酸化窒素については83.5%から89.2%へ、浮遊粒子状物質については34.3%から96.1%へと改善し、一般環境大気測定局においては二酸化窒素の環境基準達成率が100%となりました。また、自動車単体の排出ガスについては世界で最も厳しい新長期規制を実施しました。さらに、低公害車の普及促進については、補助、税制、政策金融による支援を行っており、平成13年7月策定の「低公害車開発普及アクションプラン」における実用段階にある低公害車の保有台数は、平成17年3月末で約968万台(軽自動車等を除く)となっています。
 一方、第1節で述べたように、大都市部での高濃度汚染や幹線道路周辺での騒音問題が依然として厳しい状況にあるだけでなく、24時間営業の店舗や大規模小売店舗の郊外立地の増加などに伴うエネルギー消費の増大、人口集中や地表面の人工化などに伴うヒートアイランド現象といった、都市での活動の集中を背景とした課題も顕在化してきており、緑地の保全、緑地や水面からの風の通り道を確保する等の観点から水と緑のネットワークの形成など都市形態の改善にわたる取組が必要となってきています。また、光化学オキシダントについては、全国のほとんどすべての測定局で環境基準が達成されていない状況です。夏期の光化学オキシダント生成の要因については、工場等からの揮発性有機化合物(VOC)や窒素酸化物といった原因物質の排出のほか、ヒートアイランド現象との関連性も指摘されています。(第二部第1章第3節参照)

4 水・土壌・地盤環境対策の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、各種の取組を進めたことにより、公共用水域における生活環境の保全に関する水質の環境基準の達成状況は、有機汚濁の代表的指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)又はCOD(化学的酸素要求量)について見ると、公共用水域全体としては、平成16年度に環境基準達成率が過去最高の85.2%になるなどの成果が見られました。一方、生活環境の保全に関する水質の環境基準の達成状況が湖沼、内湾などの閉鎖性水域等で十分に改善されていない状況が続いており、より一層の負荷低減を含め総合的な対策のさらなる推進が課題となっています。地下水においては、都道府県等の調査等によって、施肥、家畜排せつ物、生活排水等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による汚染が顕在化しています。したがって、地域の実情に応じた窒素負荷削減対策を一層推進することが課題となっています。
 また、環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組については、参考となる事例や知見として、「健全な水循環系構築のための計画づくりに向けて」が平成15年10月に関係省庁の連絡会議において取りまとめられました。これまでに流域ごとの計画策定と関連施策の実施が進みつつあり、さらに推進する必要があります。
 さらに、有害物質に汚染された土壌などの処理のための調査・対策が必要となっています。第二次環境基本計画では、土壌汚染の対策に係る制度の構築が課題となっていましたが、平成15年2月に土壌汚染対策法が施行されました。この法律により人の健康被害の防止の観点から土壌汚染の調査、対策の在り方が定められ、また、地方公共団体の条例等の整備も進められています。今後は、新たな土壌汚染の発生を防止するとともに、土壌汚染対策法などの法令に基づき土壌汚染の調査、対策を一層推進することが課題となっています。さらに、人の健康の保護の観点からだけではなく、油含有土壌に起因する油臭や油膜のような生活環境保全上の問題に対する取組も必要となっています。また、土壌汚染の懸念があるために十分に利用が進まない土地についての現状や課題を把握し、対応方策を検討することが課題となっています。
(第二部第1章第4節参照)

5 化学物質対策の分野

 第二次環境基本計画以降、どのような化学物質が、どこからどれだけ排出されているかを把握するための届出制度(PRTR制度)の運用を開始したほか、環境中の動植物への影響に着目した審査・規制制度などを導入しました。また、ダイオキシン類の排出については、平成15年において、平成9年と比べて95%削減を達成するなど、取組が着実に進展していますが、なお一層の削減が今後の課題となっています。有害性の高い化学物質の環境残留状況の把握や環境リスク評価についても、一定の成果を上げていますが、数万種の既存の化学物質のうち有害性等の情報が明らかになっているのは一部に過ぎず、ばく露に関する情報も不足するなど、これらの情報をさらに充実させていくことが今後の課題となっています。
 また、第1節で述べたように、不確実性がある中で環境リスクの低減を図るため、各主体間で情報を共有し、信頼関係を構築することが必要となっています。
 国際的な化学物質対策の観点からは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の締結など、国際的な取組を進めていますが、東アジア諸国における化学物質の生産・排出量の急増、欧州での化学物質規制の動向等を踏まえ、化学物質管理に関する経験・技術の国際社会への発信を積極的に行っていく必要性が高まっています。
(第二部第1章第5節参照)

6 自然環境の保全の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、「新・生物多様性国家戦略」を策定しました。その中で、生物多様性に関する3つの危機として、「人間活動による生態系の破壊」、「人為の働きかけの減少に伴う里地里山の劣化」、「外来生物等による生態系の攪乱」を掲げ、政府一体となって生物多様性の保全に係る取組を進めてきました。
 また、新たな法律として、損なわれた自然環境を積極的に再生することを目的とした自然再生推進法、遺伝子組換え生物等の使用等による生物多様性への影響を防止することを目的とした遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律及び侵略的な外来生物による生態系等の被害の防止を目的とした特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律を制定・施行しました。さらに、国立公園や国指定鳥獣保護区などの保護地域拡大、知床の世界自然遺産登録や特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(以下「ラムサール条約」とします。)に基づくラムサール条約湿地の増加、森林生態系保護地域等の保護林及び緑の回廊の拡大等の保全強化をはじめとした取組を進めてきました。また、森林の有する多面的機能の発揮及び林業の持続的かつ健全な発展の実現のため、森林・林業基本法に基づき、森林・林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進が図られました。一方、第1節で述べたように、社会経済構造の変化を背景とした自然環境の質の劣化等による生物多様性保全への影響や、人と自然とのかかわりに関する身近な問題の顕在化への対応などが課題となっています。
(第二部第1章第6節参照)

7 環境教育・環境学習等、環境配慮の織り込みの分野

 第二次環境基本計画では、持続可能な社会を構築していくために、あらゆる場面において各主体が自らの行動に環境配慮を織り込むことの重要性を訴えており、以下に示すように、一定の成果を上げていますが、今後、更に取組を充実させていく必要があります。

(1)経済活動の面

 国等の機関では、平成13年度より、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以下「グリーン購入法」とします。)に基づき、各機関が目標を定めて環境負荷低減に資する物品及びサービスの調達を推進しています。例えば、平成15年度の国等の機関におけるグリーン購入の効果は、CO2排出削減量4万5千トン(家庭からの二酸化炭素排出量の約2万2千人分に相当)と試算されるなど、着実な効果を上げています。また、環境報告書や環境会計のガイドラインの策定、環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(以下「環境配慮促進法」とします。)の制定等の取組を進め、環境報告書の作成企業数は着実に増加するなど、事業者による積極的な環境への取組が着実に進展しています。消費者の環境保全意識も向上してきています。
 一方、こうした消費者や企業の環境保全意識の向上が、エコ商品の販売・購入といった個別の商品選択や、環境に配慮した企業に対する投資行動などに十分に結びついていません。このため、経済的なインセンティブが働くような仕組みなど、環境の価値が市場において適切に評価されるような仕組みを形成していくことが課題となっています。
(第二部第1章第7節参照)

(2)環境教育・環境学習の面

 環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律が制定され、また同法に基づく基本方針が策定されました。学校では各教科や総合的な学習の時間において、地域では社会教育やNPO等の民間団体により、職場では環境関連法、ISO14001及び社会的責任の観点から、それぞれ環境教育の取組が進んでいます。これらの取組により国民一人一人の環境保全への意識は高まってきたものの、具体的な行動に結びついていない場合が見受けられます。行動に結びつくような質の高い環境教育の実施のため、学校、民間団体、事業者、行政等が連携し、様々な資源を有効活用する等適切な役割分担のもと進めることが必要です。
 また、2005年から「国連持続可能な開発のための教育の10年」が始まるなど、環境的側面に加え、経済的側面、社会的側面を統合した教育を実践し、持続可能な社会づくりに参画する人づくりを進める必要があります。
(第二部第1章第8節参照)

(3)地域づくりの面

 「持続可能な地域づくりのガイドブック」の作成や「地域環境行政支援情報システム(知恵の環)」の運営、「環境と経済の好循環まちモデル事業」、「エコタウン事業」「環境共生まちづくり」などを通じ、地域の取組への支援を進めてきました。地方公共団体による環境基本条例及び地域環境基本計画の策定や環境管理システムの導入も進んでいます。また、地域において様々な自発的取組が進められ、成果を上げる取組も見られます。さらに様々な主体のパートナーシップによる取組も見られるようになってきました。
 このような環境的側面、経済的側面、社会的側面を統合的に向上させる取組を全国に広げるために、情報提供や持続的な事業運営ができる人材の確保及びそれらの活動に対する様々な主体による支援、様々な主体が対等な立場で参画できるようなパートナーシップづくりが課題となっています。
(第二部第1章第8節参照)

8 科学技術の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、科学技術基本計画において国家的・社会的課題に対応したいわゆる重点4分野の一つに環境分野を掲げ、優先的な資源配分を行ってきました。その結果、環境分野を含む重点4分野への予算配分率は増加し、資源配分上は重点化が着実に進みました。平成18年度から始まる第3期科学技術基本計画においても、環境分野を引き続き重点推進4分野の一つに掲げるとともに、分野内の戦略的重点化も含め選択と集中を図ることとしています。同計画では、政府研究開発投資の総額についても、対GDP比率で欧米主要国の水準を確保することが求められており、GDP名目成長率3.1%等の前提の上で、平成18年度から平成22年度までの規模を約25兆円とすることが必要であるとしています。また、国民の意識に関しても、国民が、環境・エネルギー問題の分野において科学技術が貢献することを強く求めているという調査結果があります。
 今後は、第1節で述べたように、複雑化・深刻化する問題への対応や、環境と社会経済の新たな関係の追求などを模索する中で、これまで以上に重点的・戦略的な資源配分を行っていく必要があります。
(第二部第1章第9節参照)

9 国際的な取組の分野

 第二次環境基本計画の策定以降、国連、アジア太平洋環境会議(エコアジア)等の各種枠組みによる国際会議への積極的参画、各種国際機関への邦人職員の採用に向けた働きかけ等を通じ国際協調や国際的な環境政策の推進に寄与してきました。平和と安全、開発と貧困、環境等を重視して数値目標を掲げたミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)の設定や2002年の国連持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)における「ヨハネスブルグ実施計画」の採択など、世界における持続可能な開発に向けた取組が進展しています。また、ロシアの批准により京都議定書が発効するなど、地球規模での環境問題への取組も進展してきています。
 一方、第1節で述べたように、我が国の持続可能性と密接な関係を持つ世界の環境問題は今後ますます深刻になっていくことが見込まれます。また、経済のグローバル化に伴い形成されていく国際ルールは様々な面で我が国の国益と大きく関わってきています。このような状況の中で、我が国が世界の環境問題の解決に更に積極的に参画していくため、国際的な枠組みや国際ルール形成等に積極的に参画していく必要があります。特に、我が国と密接な関わりを持つ東アジア地域を拠点として、我が国の経験を踏まえ、持続可能な開発の具体化に向けて取り組む必要があります。
(第二部第1章第10節参照)

第2章 今後の環境政策の展開の方向
(持続可能な社会をつくり出すための考え方)



 これまでに述べたような現在の社会及び環境の状況や課題を踏まえると、序章でも述べたように、「環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上」、「環境保全上の観点からの持続可能な国土・自然の形成」、「技術開発・研究の充実と不確実性を踏まえた取組」、「国、地方公共団体、国民の新たな役割と参画・協働の推進」、「国際的な戦略を持った取組の強化」、「長期的な視野からの政策形成」を、今後の環境政策の展開の方向として重視すべきであると考えます。

第1節 環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上

1 環境効率性の向上、環境と経済の好循環の実現による「より良い環境のための経済」と「より良い経済のための環境」の実現

 これまでの日本の経済の姿には、均一のモノを大量に生産して大量に消費し、結果として大量に廃棄する面がありました。一方で、世界レベルで見ると、人口は増え続け、エネルギーや資源の消費も増加する圧力が高まり続けているのに対して、地球温暖化問題に見られるように、地球全体又は特定の系における環境面からの負荷の許容量には限界があります。そういった観点から、長期的に見れば、環境保全の観点から持続可能な社会・経済の姿を目指すことが、我が国経済の将来にわたる持続的な発展にも結びついていくものと考えます。特に、我が国がその一次エネルギーの多くを海外に頼っており、国際情勢が必ずしも安定しているとは言えないことを踏まえれば、社会経済の安定性の観点からも、エネルギーや資源利用の効率の高い持続可能な社会経済が望まれます。
 そのような持続可能な社会経済を環境保全の視点から実現していくためには、環境効率性を高める、すなわち一単位当たりの物の生産やサービスの提供から生じる環境負荷を減らすべく努力することにより、我々が生み出す豊かさ、経済の付加価値が拡大しても環境負荷の増大につながらないようにする(デカップリング)必要があります。さらには、環境保全の観点から性能がすぐれた技術や製品をいち早く創り出すことにより、新たな経済活動が生み出されるといったような、むしろ、環境を良くすることが経済を発展させ、経済が活性化することによって環境も良くなっていくような環境と経済の関係(環境と経済の好循環)を生み出していくことを目指します。
 このような社会経済の姿を実現するためには、経済活動に伴って発生する、公共財としての環境に対する影響が、市場経済の中で評価される必要があります。すなわち、知的付加価値が高い商品を開発することや、モノの機能に着目し、最終的に提供する価値を重視して、これをサービスの形で提供すること等、一定の価値を生産するために必要となる資源消費や環境負荷が少ない事業活動が、社会や消費者に評価され、発展していくような経済の姿に変えていく必要があります。
 社会経済に環境配慮を織り込み、希少な環境資源の合理的利用を促進するための最も基本的な方策は、生産と消費の過程における環境の汚染のコストを市場価格に内部化することです。そのような観点から、汚染者負担の原則を環境保全のための措置に関する費用配分の基準として活用します。
 また、製品の製造者など製品の設計や市場への投入を決めた者が、物理的または財政的に製品の使用後の段階で一定の責任を果たすという、拡大生産者責任の考え方も重要です。
 持続可能な循環型の社会経済の姿を具体的に考えると、省エネルギーや3R推進等に向けた技術革新、製品設計や製造過程における環境配慮、さらには新たなビジネスモデルの構築等、環境負荷を減少させる努力が正当に評価され、報いられるために、仕組みづくりや消費者の意識改革を進める必要があります。
 このような考え方に基づく施策として、例えば経済的手法は、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して各主体の経済合理性に沿った行動を誘導することによって政策目的を達成しようとする手法であり、情報的手法や自主的取組手法、手続的手法などとともに、環境的側面と経済的側面の統合的向上に寄与し得るものです。
 環境への配慮を促す仕組みをつくる際には、できるだけ環境負荷の削減効果が高く、それに対して、社会全体として負担する費用ができるだけ少ない方法を用いるべきです。そのためには、製品やサービス、使用後も含めた物流システム等、製品やサービス提供全体に関して設計を行う段階において、トータルで見た環境負荷を減らすことにつながるように、仕組みの設計を行う必要があります。そのためには、様々な手法をベストミックスの考え方の下に適切に組み合わせて用いる必要があります。例えば、製品やサービス等の設計を行う者にとって環境配慮を行うインセンティブが働くような合理的な仕組みづくりや、そのように環境に配慮された製品を消費者が選択的に購入することを促すことが重要です。そのような仕組みをつくる際には、環境への影響が大きい分野から優先的に対象としていくように努めます。
 また、先進的な企業の取組に学びつつ、産業活動全体に広げていく視点も重要です。さらに、民間のガイドラインや基準等のうち、適切なものについてより広範に活用されるような条件整備に努める必要があります。
 自然との関わりにおいても、自然を活用して経済活動を行うことが、活動の場となる自然の保護や維持・管理を適切に行うことを促し、また、それらの自然を適切に保全することによって、産業の基盤が保たれるような関係を創り出し、適切に保持していく必要があります。例えば、林業や漁業については、木材生産や水産物採捕によって得られた利益を、自らの生産活動の基盤である森林や海の整備及び保全に充てることにより、適切な林業や漁業の生産活動を継続することが、その場の環境保全にもつながります。また、今日では、経済の成熟化に伴い、自然とのふれあいの価値が増大しており、エコツーリズムへの関心が高まっています。エコツーリズムは地域経済を活性化させる効果がありますが、資源である自然を保全することが、その持続的な発展につながります。
 また、環境に関わる新たな取組を国内の各主体が自主的に進めていくための、参考ガイドライン策定や標準づくりを国内で積極的に推進し、さらにはそれらを世界中に広めて、各国共通の取組としていくことが、世界的に我が国の役割を果たしつつ、我が国社会経済を持続可能な形で発展させていくためにも効果的と考えられます。

2 地域コミュニティ再生を通じた「より良い環境のための社会」と「より良い社会のための環境」の実現

 我が国全体において持続可能な社会を実現するためには、すべての人にとって、すなわち各地域、各世代を通じて公平な形で、環境が保全されるとともに、他の側面における公平、公正に関わる様々な社会問題の解決が図られる必要があります。
 そのためには、環境の保全と社会問題の解決の両面から、地域コミュニティの再生が重要な課題となります。地域共有の課題としての環境保全への取組を通じて社会問題解決の基盤にもなる地域コミュニティが活性化することが期待できる一方、地域コミュニティに活力がある場合には、環境保全の取組も積極的に行われる傾向があり、地域コミュニティによる、環境を保全する取組と社会問題解決能力の間に好循環を創り出す必要があります。
 また、歴史的に見ても、里山や水路の管理等が地域コミュニティの社会的な課題として取り組まれ、それにより地域の環境保全がなされてきたように、環境問題と社会問題は近い関係を持っています。最近でも、企業による環境保全活動が社会的な責任の一環として行われるなど、環境的側面と社会的側面を同一の制度や運動の中で向上させようとする場面が増えてきています。このような関係を踏まえると、地域の実情に根ざした、地域で自発的に行われる環境保全の取組が重要です。このため、各地でそのような取組が行われるための条件を整備していきます。その際には、環境保全に対する国民の一般的な意識の高揚をいかすとともに、自らの行動が環境の保全に結びついているという実感を持てるような取組に結びつけていくという観点からも、コミュニティ・ビジネスにつなげ、あるいは雇用の機会を増やすことに資するということ等も含め具体的に環境保全に資する活動を行う機会を提供する視点が重要です。そのような活動を通じて、地域において環境保全活動を行う人材が育成され、ネットワークが形成されるとともに、地域の様々な人々が地域コミュニティに積極的に関わることによって、地域コミュニティのつながりが強化されると考えられます。このことにより、社会教育や助け合いに関する機能等、地域コミュニティの社会的側面も統合的に向上していく効果が期待されます。

3 100年後の世代にも伝えられるライフスタイルへの転換に向けて

 環境的側面、経済的側面、社会的側面が統合的に向上する持続可能な社会の実現のためには、制度的、技術的に環境効率性の向上を求めるだけでなく、各主体の生活や行動の選択が重要な課題となります。
 具体的には、日本に昔からある「もったいない」という考え方もいかしつつ、経済活動や国民生活のそれぞれの局面で、エネルギーや資源の無駄をなくしていくとともに、大量生産、大量消費、大量廃棄につながるようなビジネススタイルや生活習慣の見直しを行っていく必要があります。
 そのような観点から目指すべき持続可能なライフスタイルは、環境効率性が高く、かつ、個人個人にとって豊かで質が高い生活と考えられます。そのようなライフスタイルは画一的なものでなく、単純に何かを我慢することを求めるものでもありません。そして、実現のためには、国民一人一人がそれぞれに持続可能なライフスタイルを考えて実行することが重要です。
 そのためには、欧州のスローフードの取組や、アメリカにおけるLOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability健康と環境面を中心とした持続可能性を重視した生活スタイル)という考え方に見られる、生活を豊かにしつつ持続可能な社会を求めるような、個人の価値観に基づく積極的な取組が一つの参考となります。日本国内においても、物的な豊かさや時間的な効率を優先する生活を見直して、自然と調和した新しい豊かさを求めるスローライフという考え方が出てきています。そのような、環境保全と新しいかたちの豊かな暮らしを同時に求める、個人が主体となる取組を促進する条件整備が必要です。
 そのような社会づくりを実現するためには、まず、各個人が環境保全について一般的な必要性を認めるだけでなく、情報を積極的に集めて行動に移すようにするための、環境保全の人づくりを進める必要があります。
 さらに、持続可能で豊かなライフスタイルの選択を可能にする、様々な技術や地域コミュニティ活用のための取組手法が開発され、供給、提供される必要があります。
 このような取組を通じ、あらゆる場面に環境面から持続性への配慮を盛り込むことにより、持続可能な社会づくりを進める必要があります。

第2節 環境保全上の観点からの持続可能な国土・自然の形成

1 自然環境の多様性の維持と質の回復・向上による、ストックとしての国土の価値の増大

 自然環境は、それ自体としての価値に加え、例えば、緑地、水辺等によって都市に風を呼び戻すことや水資源を供給すること等様々な恩恵を我々の生活に与えてくれています。自然環境について、多様性の維持と質の回復・向上等を通じ、持続的に前述の価値や望ましい影響を生み出せる状態を保ち、さらには生み出される価値や恩恵がより大きなものとなるよう働きかけていく必要があります。そのような、ストックとしての国土の価値の増大が重要な課題となっています。そのため、国土に対する正負の両面からの働きかけが蓄積された結果としての、現在及び将来における状態に着目して国土の価値を高める視点が必要です。具体的には、自然環境の適切な保護・管理に加え、自然再生や、不法投棄された廃棄物の処理等負の遺産の処理や、多様で健全な森林の維持・整備など正の遺産の保全・創出を進めていきます。
 生物多様性保全のために、生物の生態特性に応じた、生息・生育空間のつながりや適切な配置が確保された生態系ネットワークを構築するような視点を持って、国土・自然の形成を進めていきます。
 これらのことを考えるに当たっては、自然環境の回復には長期間必要であることも踏まえ、50年、100年といった長期にわたる視点が必要になります。

2 既存ストックの活用や農林水産業の機能にも着目した、環境保全上の観点から考えられる持続可能な国土づくりの推進

 自然と人間の共生を考慮し、持続性に着目した、環境保全と環境の賢明な利用の観点からの国土づくりや地域づくりを行います。すなわち、生態系の自然的価値の維持と両立させた方法で人類の利益のために環境要素を持続的に利用するワイズユースの考え方を取り入れます。その際には、自然や地域の環境に関わる様々な情報も活用する必要があります。また、国土づくりにおける環境効率性向上のため、『既存物にも着目し、ストックとしての国土の価値を高める』という視点も重視します。そのため、既存の施設や人工林等、人為的な働きかけなどにより形づくられてきた様々なものについて、現在の利用状況や果たしている役割及び将来予測に基づいて当初の機能に新たな機能を付加するために手を入れることなども含めて、適切に維持管理することによって有効活用されるようにすることが重要です。
 農林水産業の活動及び森林が地域・流域や沿岸域の環境及び地球環境を保全する機能を発揮している面もあります。それに対して、産業構造や社会構造の変化もあり、それらの機能が十分に発揮されにくくなってきているのではないかと懸念されています。今後、それらの機能が十分に発揮されるよう、国はそれらの機能を評価した上で支える仕組みを、地域は地域の財産として支える取組を、国民は自分の生活を支えているそれらの機能を守るという観点からの支援を進めることなどが必要になってきています。
 また、全体構造や生活インフラ、さらには、地域コミュニティの活力が維持・活性化されるために必要なネットワークづくりの場の確保等、様々な面から、持続可能な社会生活を送ることができるように配慮したまちづくりが行われる必要があります。
 環境保全上の観点から考えられる持続可能な国土づくりを推進するためには、諸制度に基づき国が策定する国土づくりに関わる計画や、地方公共団体が策定する地域づくりの計画の策定に当たっても、このような考え方を踏まえる必要があります。

第3節 技術開発・研究の充実と不確実性を踏まえた取組

1 科学的知見、科学技術の充実

 持続可能な社会の形成に向けては、環境保全に関して、科学的知見の充実を図るとともに、各種の技術開発を一層推進することが不可欠です。
 環境効率を高めるための技術開発のうち、製品やサービス開発に直接結びつく技術開発については、民間の営利企業等が自主的に行うことが期待されますが、そのような分野についても、特に将来の状況予測などについてできるだけ幅広い情報を提供するように努めます。
 一方で、大学や公的な研究機関には、直接の企業活動としては行われにくい、将来的な発展、深化の基礎となるような技術開発や学術研究を進めることが求められます。

2 施策決定における最大限の科学的知見の追求

 環境に関わる施策を検討する際には、環境リスクの考え方などを用いてできるだけ合理的な判断を行う必要があります。そのためには、関係者と適切な役割分担をしつつ、その時点において合理的なコストの下で得ることができる最善の科学的知見を活用する必要があります。特に、不可逆的な環境保全上の問題が発生するおそれがある施策決定に際しては、その問題の影響の大きさ等に応じて、知見を得る努力を十分に行う必要があります。その知見を基に、現在のみならず、将来世代への影響も踏まえつつ、当該施策の必要性と施策実施に伴う社会全体に生じるコストをできるだけ幅広く客観的に明らかにしつつ施策決定を行うよう努めます。

3 予防的な取組方法の考え方などによる、不確実性を踏まえた施策決定と柔軟な施策変更

 科学的知見は常に深化するものである一方、常に一定の不確実性を有することは否定できません。しかしながら、不確実性を有することを理由として対策をとらない場合に、問題が発生した段階で生じる被害や対策コストが非常に大きくなる問題や、地球温暖化問題のように、一度生じると、将来世代に及ぶ取り返しがつかない影響をもたらす可能性がある問題についても取組が求められています。このような問題に対しては、完全な科学的証拠が欠如していることをもって対策を延期する理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら対策を講じるという、予防的な取組方法の考え方に基づく対策を必要に応じて講じます。予防的な取組方法の考え方に基づく対策が必要になるような場合には、どの程度の不確実性があるのかも含めた、それぞれの時点において得られる最大限の情報を基にしつつ、迅速に具体的な対策の検討を進めていく必要があります。
 また、一定の不確実性を残しつつ政策判断を行うためには、関係者や場合によっては国民全体との合意づくりが不可欠になります。そのためには各主体と適切なコミュニケーションがとられる必要があります。まずは、できるだけ幅広い情報をわかりやすく提供するとともに、情報へのアクセス機会を増やす必要があります。しかしながら、すべての関係者の合意を得ることを優先して対策を遅らせることができない場合もあります。その場合は、どのような検討を行ってどのような理由で政策判断を行ったかについて、十分な説明を行う必要があります。このような予防的な取組方法の考え方を具体的な場面でどのように当てはめていくかということについては、国際的な議論の動向も踏まえつつ、検討していくことが必要です。
 一度政策判断を行った問題についても、その後の研究等により当該問題に関する知見が向上したり、新たな事実が判明したりすることによって、前提となる判断材料に変更が生じた場合は、説明責任を果たしつつ、柔軟に施策変更を行う必要があります。
 特に、生態系については複雑で常に変化し続けていることから、そのすべてはわかり得ないことを認識し、謙虚に慎重に行動することを基本としつつ、その管理と利用については、モニタリング調査の結果などに応じて順応的に、柔軟に行う必要があります。

第4節 国、地方公共団体、国民の新たな役割と参画・協働の推進

1 国、地方公共団体、国民の役割を踏まえた連携の強化

 環境は有限な公共財であり、かつ、環境問題は複雑な因果関係によって発生する場合が多くあります。そのため、政府が何もせずに市場に任せるだけでは適切な状態に保たれない場合があります。また、環境保全を願う国民や、企業やNPO等を含む民間の各種組織の意欲や行動が、必ずしも環境を持続可能なものにする効果につながっていない場合があります。そのため、国は、単純に市場に任せるだけでは適切でない点を補正することに加え、環境保全への意欲が適切な実践や参加につながるように、仕組みづくりやパートナーシップづくりを、地方公共団体と役割分担しながら進めていきます。
 ナショナルミニマムの確保等、国全体や地球規模の視点から基本的なルールを策定することや必要な施策を展開することは引き続き国の役割として進めていきます。ただし、そのような際にも、できるだけ現場に根ざした判断を行う必要があり、地方公共団体の取組を参考にする等、現場の情報の収集に努めます。また、民間において自主的に設けられた基準やガイドラインと行政の施策との有機的な連携に努めます。
 一方で、より小規模で地域に密着した主体の方が自らの周辺状況に関する情報を密に持つ等、個別の事情に応じてより効率的、効果的に環境保全の取組を行うことができる場合も多くあります。そのような観点から、地方公共団体の役割が重要になっています。また、三位一体の改革にも見られるように、日本社会の成熟化に伴い、地方公共団体の自立が強く期待されているところです。ただし、地方公共団体が実施する事務についても、問題によっては、日本全体にとって最適な選択となるよう、国単位で施策を考えることが求められるものがあり、そのような場合には、国が法令に基づく一定の基準の作成や調整を行います。特に、環境政策の基盤となる、環境の状況に関する監視・観測等については、全国で整合性のあるデータが得られるように適切な関与を行う必要があります。
 また、行政の施策展開においても地域における市民や民間の各種組織の活動が重要な役割を担うようになってきており、今後さらにそのような働きを促進していきます。
 これらを踏まえて、国、地方公共団体、国民それぞれの役割を明らかにしつつ、同時に、十分なコミュニケーションを図りながら連携を図っていく必要があります。

2 施策プロセスへの広範な主体による参画の促進

 人類の活動が質量ともに拡大し、複雑化している中、環境保全に関わる課題についても、不確実性のある中で対策を検討すべき課題や、価値観に関わる問題等、従来の社会システムや科学的知見に基づくだけでは、客観的な条件に基づいて単純な判断を下すことが難しい課題が増えてきています。また、施策の実施段階で国民や民間の各種組織の協力を求める必要のある施策も増えてきています。そのため、施策の形成・決定過程について、女性の参加・参画を拡大することをはじめ、国民や民間の各種組織が、持続可能な社会づくりの観点から十分な参加・参画をできるようにしていくための仕組みづくりを進めていきます。
 国民や民間の各種組織の積極的な参加・参画を促進するためにも、そのような施策決定に際しては、できるだけ幅広い情報を示しつつ、かつ、どのような検討を経てどのような理由でその施策決定がなされたか、行政として説明していきます。
 さらに、施策の実施や事後の評価プロセスについても、国民や民間の各種組織の参加・参画を得ながら進めていきます。

3 行政と国民とのコミュニケーションの質量両面からの向上

 環境の観点から持続可能性を高めていくためには、環境に関わる情報が豊富に存在し、十分に活用される必要があります。そのためには、国民や民間の各種組織が有する情報と行政が有する情報が、お互いにとって活用しやすい状態にある必要があります。そのような観点から、民間・行政を問わず環境に関わる情報が効率的・効果的に収集され、かつわかりやすい形で提供される必要があります。また、そのような情報の交流と、それに基づく国民や民間の各種組織の意見が、政策決定にいかされる必要があります。例えば、欧州を中心としたオーフス条約への対応の中に見られるように、諸外国においても、行政の保有する環境に関する情報を国民が容易に得られるようにするための取組が、政策決定への参画と併せて行われています。我が国においても、行政の保有する環境に関わる情報が国民にとって有益な形で有効活用されるとともに、そのような情報を活用した意見が政策決定にいかされるようにしていく必要があります。

第5節 国際的な戦略を持った取組の強化

1 国際的枠組みでの持続可能な開発を目指した戦略的な取組の強化

 我が国として、地球環境を保全するため、地球規模や地域レベルの取組、開発途上国をはじめとする各国における取組に、効果的かつ長期的に協力していく必要があります。そのため、多数国間での取組に積極的に関与するとともに、各国と政策対話や情報交換等を行うことにより環境の状況とニーズを把握します。その上で、日本の持つ持続可能な開発に資する施策や技術を、相手国にとっても、また我が国にとっても有益な形で提供するための取組を行う必要があります。
 特に地理的近接性が高い東アジア圏における相互依存が高まっており、中国をはじめとする近隣諸国と協働して推進すべき取組や、解決を図るべき課題がこれまで以上に出てきています。そのような中で、例えば、アジア域内における廃棄物等の輸出入について、その動向を踏まえ、適正管理を進める取組や、越境大気汚染問題に対応するための共同モニタリングの実施によって環境管理能力を強化する取組を推進します。
 また、東アジア圏と日本の生態系の間では渡り鳥など様々な野生生物の往来があります。したがって、東アジア圏の生態系が豊かなものであることが日本の生態系を支えています。一方で、中国内陸部の砂漠化が日本にも黄砂という形で影響をもたらしています。そのような観点から、東アジア圏の生態系の保全やそれを支える森林保全に対して日本としても協力していく必要があります。
 さらに、日本の経験、施策や技術も活用しつつ、東アジア圏のみならず、インド等のアジア・太平洋各国を中心とする開発途上諸国における、持続可能な開発に対する制約・波乱要因としての環境問題の解決に、積極的な役割を果たすように努めます。特に、環境保全に密接な関係がある貧困問題の解決にも資するような形で開発途上国の環境を保全するために、各地域における自然資源の適切な管理に協力していきます。
 その際、政府による取組に加えて、地方公共団体、NGO/NPO、企業といった多様な主体が、それぞれの特性や知見をいかしながら連携して国際協力の取組を進めていくことが重要です。

2 国際的なルールづくりへの積極的な参画

 様々な面で国際的な相互依存が強まり、環境保全に関わる国際的な枠組みやルール策定の動きが増加しています。地球環境が保全され、世界的に持続可能な社会づくりが適切かつ効率的に進められるように、これらの策定に我が国としても積極的に参画していきます。
 国際的なルールについては、行政によって定められるものだけでなく、民間主導の規格等も増えており、国と各種団体等が役割分担しつつ、相協力して、積極的に国際標準提案を行う等我が国としての役割を果たしていく必要があります。
 また、貿易と環境保全の在り方が相互に良い影響を与え合うような関係づくり(貿易と環境の相互支持性の強化)に、積極的に関わっていきます。

3 国際社会の状況を意識した我が国における持続可能な社会づくり

 国際社会の状況を考えれば、我が国国内においては、京都議定書の削減約束の達成をはじめとする地球温暖化対策や、3R推進の視点による取組に加え、国際的な不安定要因、特に日本がエネルギーや資源を獲得したり輸送したりする地域における不安定要因が存在するという課題を踏まえた取組が必要です。そのため、エネルギーセキュリティ確保の観点も持ちつつ、省エネルギーや省資源の取組を進めるとともに、国内に存在する再生可能なエネルギーや資源の有効活用を進めていく必要があります。

第6節 長期的な視野からの政策形成

1 50年といった長期的な視野を持った取組の推進と超長期ビジョンの策定

 環境面から持続可能な社会を考えるとき、地球温暖化問題のように、現在の政策や社会の在り方の結果が50年以上にわたるような長期間大きな影響を与える懸念のある課題や、むしろ将来において影響が現れる課題があります。一方で、そのような課題の解決のためには、経済や社会の在り方そのものに関わり、長期間にわたる対策が求められる場合があります。
 これらの長期的な環境影響や、長期的な対策が必要な課題については、実感を持って対処することが難しい面がありますが、対策が遅れることによって、より困難な対応が必要となる場合も少なくありません。今後、政策を検討するに当たっては、このような長期的な視野に立った取組に努めます。このような、例えば50年後といった時期における、環境の状態や、それと相互に影響を及ぼし合う経済や社会の姿の展望に当たっては、現状の延長による積み上げを行う手法だけでなく、あるべき将来像から考えていくバックキャスティングの手法も用います。すなわち、あるべき将来像を示し、そのような将来像を実現するためには、それまでの間のいつまでに何をしなければいけないか、長期的な対策と中期的な対策、さらには当面の対策についてバランスのとれたシナリオを示すことにより施策の展開を図っていくため、50年といった長期間の環境政策のビジョン(超長期ビジョン)を示します。

2 長期的な取組のための知見の充実

長期的な視野を持った取組を行うためには、幅広い分野に関わるできるだけ詳細なデータを収集、分析する必要があります。その上に立って、前提条件を変えて複数のシナリオを立てる等しながら、将来像を展望する努力が求められます。

第二部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開

 第二部では、第一部に示された環境政策の方向性に沿って、21世紀最初の四半世紀を視野に入れて、今後具体的に展開すべき環境政策について述べます。
 第1章においては、重点的に取り組むべき10の分野について、それぞれに現状と課題、中長期的な目標、施策の基本的方向、重点的取組事項、さらには取組推進に向けた指標を示します。次に、第2章においては、環境問題の各分野、各分野の施策の基盤、国際的取組の各項目について、体系的に整理し、環境保全施策の全体像を示します。
 政策の展開に当たっては、新たな政策手段の開発や既存の政策手段の改良、適用範囲の拡大などを行いながら、以下に示すような社会経済に環境配慮を織り込むための各種の仕組みをはじめ、環境投資、環境教育・環境学習、情報提供及び科学技術の振興など、あらゆる政策手段の適切な活用を図ります。その際、できるだけ環境保全の効果を高め、それに対して、社会全体として負担する費用ができるだけ少なくすることに努めます。また、政策のベスト・ミックス(最適な組合せ)の観点からそれらを適切に組み合わせて政策パッケージを形成し、相乗的な効果を発揮させることに努めます。

(社会経済の環境配慮のための仕組み)
  1. ア 直接規制的手法
     直接規制的手法は、社会全体として達成すべき一定の目標と最低限の遵守事項を示し、これを法令に基づく統制的手段を用いて達成しようとする手法です。生命や健康の維持のように社会全体として一定の水準を確保する必要がある場合などに効果が期待されます。
  2. イ 枠組規制的手法
     枠組規制的手法は、目標を提示してその達成を義務づけ、あるいは一定の手順や手続きを踏むことを義務づけることなどによって規制の目的を達成しようとする手法です。規制を受ける者の創意工夫をいかしながら、効果的に予防的あるいは先行的な措置を行う場合などに効果が期待されます。
  3. ウ 経済的手法
     経済的手法は、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して各主体の経済合理性に沿った行動を誘導することによって政策目的を達成しようとする手法であり、持続可能な社会を構築していく上で効果が期待されます。
  4. エ 自主的取組手法
     自主的取組は、事業者などが自らの行動に一定の努力目標を設けて対策を実施するという取組です。技術革新への誘因となり、関係者の環境意識の高揚や環境教育・環境学習にもつながるという利点があります。事業者の専門的知識や創意工夫をいかしながら複雑な環境問題に迅速かつ柔軟に対処するような場合などに効果が期待されます。
  5. オ 情報的手法
     環境保全活動に積極的な事業者や環境負荷の少ない製品などを、投資や購入等に際して選択できるように、事業活動や製品・サービスに関して、環境負荷などに関する情報の開示と提供を進める手法です。製品・サービスの提供者も含めた各主体の環境配慮を促進していく上で効果が期待されます。
  6. カ 手続的手法
     手続的手法は、各主体の意思決定過程に、環境配慮のための判断を行う手続きと環境配慮に際しての判断基準を組み込んでいく手法です。各主体の行動への環境配慮を織り込んでいく上で効果が期待されます。

第1章 重点分野ごとの環境政策の展開

 限られた人的、物的資源を有効に活用して政策を展開するためには、総合的な観点から諸施策についての選択肢を検討し、優先的施策を選択して、持続可能な社会の構築を戦略的な観点から進める必要があります。このため、現状と課題を踏まえ、国民のニーズや対応の緊急性、今後の環境政策の展開の方向に沿った環境政策全般の効果的実施のための必要性などの観点から見て、前進を図る必要性が高い10の分野を「重点分野」として取り上げます。
 「地球温暖化問題に対する取組」(第1節)、「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」(第2節)、「都市における良好な大気環境の確保に関する取組」(第3節)、「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」(第4節)、「化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」(第5節)、「生物多様性の保全のための取組」(第6節)という6つの事象別の分野を取り上げます。
 次に、これらの分野について横断的に関わる、事象横断的な分野として、
 「市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり」(第7節)、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」(第8節)、「長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備」(第9節)、「国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進」(第10節)の4分野を取り上げます。
 第1章では、この10の重点分野について、現状と課題、中長期的な目標、施策の基本的方向、重点的取組事項、さらには取組推進に向けた指標に分けて政策のプログラムを示します。

(重点分野政策プログラム)
第1節 地球温暖化問題に対する取組

1 現状と課題

(1)地球温暖化に関する科学的知見

 地球温暖化問題は、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つです。
 地球全体の平均気温の上昇やこれに伴う海面水位の上昇など、気候変動の影響は既に世界各地で顕在化しつつあります。今後も、21世紀中の平均気温の1.4~5.8℃上昇、また、世界の多くの地域における変化として、豪雨などの異常気象の増加、生態系への悪影響の拡大などが予測されています。また、穀物生産への影響、感染症や熱ストレスによる被害の拡大など、人間の健康や経済社会活動にも広範かつ深刻な影響を及ぼすと予測されています。さらに、仮に気温の上昇を止めることに成功しても、海面の上昇などの影響はその後1世紀以上にわたって続くと予測されています。
 地球温暖化の主たる原因は、地球上の人間活動に起因する温室効果ガスの排出に伴う大気中の温室効果ガス濃度の上昇であり、この問題への対応は、究極的には、濃度を一定のレベルで安定化させる必要があるとされています。しかし、現時点では、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量は自然吸収量の2倍程度であり、さらに、途上国の経済発展に伴う一定の排出増加は避けられません。人類の生活と地球生態系を未来にわたって維持する上で不可避となる濃度の安定化のためには、非常に長期間にわたり、社会経済システムの抜本的な変革や人々の意識・価値観の転換を伴った排出削減努力を全世界的な取組として積み重ねていく必要があります。

(2)国際的な対策の枠組み

 この問題に対応するため、国際的には、1992年(平成4年)5月に気候変動枠組条約、1997年(平成9年)12月に京都議定書が採択(2005年(平成17年)2月に発効)されています。京都議定書は、先進国全体の2008年から2012年までの排出量を1990年比で少なくとも5%削減することを目的として、各国ごとの数値目標(日本は6%削減)を定めたものです。地球温暖化問題に対応するための重要な取組ですが、濃度の安定化という気候変動枠組条約の究極的な目標に向けた長きにわたる取組から見れば、その第一歩に過ぎません。
 また、2005年11~12月に開催された気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)及び京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)においては、すべての国が参加する長期的な行動に関する対話、先進国の更なる約束に関する検討の開始等が合意され、2013年以降の国際的な取組に関する検討の場が整えられています。

(3)国内における対策

 国内においては、当面、京都議定書で定められた6%削減約束を確実に達成することが必要です。しかし、2003年度(平成15年度)の排出量は基準年比8.3%の増加であり、6%削減約束との差は14.3%と広がっています。このような状況を踏まえ、削減約束を達成するために必要な対策・施策を定めた「京都議定書目標達成計画」が2005年4月に閣議決定されています。今後は、定められた対策の確実な実施と、そのために必要な施策の展開を図ることが必要です。
 また、さらなる長期的・継続的な排出削減を目指し、社会経済のあらゆるシステムを、構造的に温室効果ガスの排出の少ないものへと抜本的に変革させることが必要となっています。

2 目標

(1)究極の目標

 国際的な連携の下に、気候変動枠組条約が究極的な目的に掲げる「気候系に対する危険な人為的影響を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を目指します。

(2)中長期的目標

 さらなる長期的・継続的な排出削減に向け、技術革新等を通じて、社会経済のあらゆるシステムを、構造的に温室効果ガスの排出の少ないものへと抜本的な変革を遂げることを目指します。
 このため、我が国として、国際的な取組や国内の取組の枠組みの目安となる中長期的な目標(注1参照)について検討することが必要になっています。
 具体的な目標の在り方についてはなお検討が必要ですが、我が国においても、究極の目標に至るためのいわば中間目標として、30~50年を射程とする中長期目標を策定することとし、必要な作業を進めます。

(3)当面の目標

 京都議定書で定められた、2008年から2012年までの第1約束期間における我が国の6%削減約束を確実に達成します。

3 施策の基本的方向

 地球温暖化対策に当たっては、環境問題への積極的な取組が、新たな投資や技術革新を生み出し、さらには企業や国の競争力を高め、経済の活性化が環境を改善させる環境と経済の好循環を実現することが重要です。
 そのような好循環を生み出す鍵となる、省エネ機器の開発・普及、エネルギー利用効率の改善、技術開発の一層の加速化、環境意識の向上に加え、広範な社会経済システムの転換を伴う地球温暖化対策を大胆に実行します。また、省エネルギー、未利用エネルギーの利用等の技術革新を加速し、効率的な機器や先進的なシステムの普及を図り、世界をリードする環境立国を目指します。さらに、我が国の優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていきます。
 また、日本の温室効果ガス排出量の約9割がエネルギー起源であることから、実効性のある地球温暖化対策を進めるためには、エネルギー政策との連携が重要です。

(1)京都議定書の6%削減約束の確実な達成

 6%削減約束の確実な達成に向け、当面、京都議定書目標達成計画に位置付けられた対策・施策を着実に推進します。対策・施策の実施に当たっては、以下の考え方を十分に踏まえることが重要です。

  1. ア すべての主体の参加・連携の促進と各主体に期待される役割
     地球温暖化対策には、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体が参加・連携して取り組むことが必要です。このため、地球温暖化対策の進捗状況に関する情報を積極的に提供・共有することを通じて、各主体の対策・施策への積極的な参加や各主体間の連携の強化を促進します。また、あらゆる場で様々な主体が参加した環境教育を進めます。
     そのため、国は次のような取組を行います。また、各主体には、以下の役割を担うことが求められます。

    1. (ア)国
      • ・地球温暖化対策の全体枠組みの形成とその総合的実施、多様な主体の連携の枠組みの整備
      • ・多様な政策手段を動員しての対策の推進
      • ・施策の実施に当たっての温室効果ガス排出抑制等への配慮
      • ・自らの事務及び事業に関しての温室効果ガスの排出削減並びに吸収作用の保全及び強化の率先実施

    2. (イ)地方公共団体
      • ・気象条件、土地利用、産業構造、文化・生活環境などの自然的社会的条件に応じて、また、各団体の権限などにも応じて、温室効果ガスの排出削減等のための総合的かつ計画的な施策の策定、実施(温室効果ガスの排出削減に資する都市等地域整備、社会資本の整備、地域資源をいかした新エネルギー等の導入、木材資源の積極的利用等の推進、森林の保全及び整備等を盛り込んだ先進的モデル地域づくり、地域の各主体間のパートナーシップの形成、環境教育等)
      • ・自らの事務及び事業に関しての温室効果ガスの排出削減並びに吸収作用の保全及び強化の率先実施
      • ・都道府県地球温暖化防止活動推進センター、地球温暖化対策地域協議会の活用、役割の強化を図りつつ、地域住民等への情報提供と活動推進
      • ・国内外の地方公共団体との連携・協力

    3. (ウ)事業者
      • ・創意工夫を凝らしつつ、事業内容等に照らして適切で効果的・効率的な地球温暖化対策を幅広い分野において自主的かつ積極的に実施
      • ・国や地方公共団体の施策への協力
      • ・提供する製品・サービスのライフサイクルを通じた環境負荷の低減

    4. (エ)国民
      • ・大量消費・大量廃棄型の生活様式の変革(住宅の断熱化、省エネルギー機器や燃費性能の優れた自動車への買換え、公共交通機関や自転車の利用促進、地域材の積極的利用等)
      • ・リサイクル運動、森林づくり・都市緑化などの緑化運動等の温暖化対策活動への積極的な参加

    5. (オ)民間団体(NGO)
      • ・個々の国民、事業者等の連携の結節点として、幅広い温暖化対策活動を自律的、組織的に実施
      • ・専門的能力をいかし、各主体の温暖化対策・施策に関する提言、国民等への情報提供

  2. イ 多様な政策手段の活用
     分野ごとの実情をきめ細かく踏まえて、削減余地を最大限発現し、あらゆる政策手段を総動員して、効果的かつ効率的な温室効果ガスの抑制等を図るため、各主体間の費用負担の公平性に配慮しつつ、自主的手法、規制的手法、経済的手法、情報的手法など多様な政策手段を、その特徴をいかしながら、有効に活用します。
     また、幅広い排出抑制効果を確保するため、コスト制約を克服する技術開発・対策導入を誘導するような経済的手法を活用したインセンティブ付与型施策を重視します。

  3. ウ 評価・見直しプロセス(PDCA)の重視
     6%削減約束を確実に達成していくため、評価・見直しのプロセス(PDCA(Plan-Do-Check-Action))により、温室効果ガス別その他の区分ごとの目標の達成状況、個別の対策・施策の進捗状況について、適正に透明性をもって評価・点検し、柔軟に対策・施策の見直し又は追加を行っていきます。

(2)さらなる長期的、継続的な排出削減等

  1. ア バックキャスティング手法の重要性
     温室効果ガスの濃度の安定化を達成するためには、早期に世界全体の温室効果ガスの排出量を増加傾向から減少基調に転換し、さらには現在のレベルの半分以下に減少させ、その状態を維持していく必要があるとされています。
     このような将来像は、現状からの延長で描かれるものとは大きく異なるものです。したがって、地球温暖化に関する長期的な取組については、バックキャスティングの手法(注2参照)を開発・利用することにより、長期的視点から目指すべき社会像を描き、今取り組むべき課題を抽出し、必要な対策を実行に移していくことが重要です。また、地球温暖化は極めて深刻かつ不可逆的な影響をもたらすおそれがあることから、予防原則に基づいて対策を進めることが必要です。このような観点から、国内及び国際的な長期的対策に関する検討を進めます。

  2. イ 中長期的な国内対策の在り方
     国内対策については、長期的、継続的な排出削減のためには、様々な分野においてエネルギー需給構造そのものを省CO型に変革していくことが重要です。そのため、技術革新を進めるほか、地域・都市構造や交通システムの抜本的な見直しを行います。また、既存の住宅・建築物の断熱化などの社会ストックに関する対策、設備や商品のフロー(新設・製造等)について環境性能のよいものの必要に応じた規制等の施策による普及、持続可能な森林経営のような、中長期的に持続的に効果を発揮する対策を行います。そのような対策の普及には時間を要するため、早い段階から中長期的な視点に立って戦略的に対応を進めていきます。

  3. ウ 新たな国際枠組みの検討
     国際的には、第1約束期間の終了する2013年(平成25年)以降の取組について、気候変動枠組条約及び京都議定書に基づき、すべての国が参加する長期的な行動に関する対話の開始や、先進国の更なる約束に関する検討を開始し第1約束期間との空白を生じないようなタイミングでの結論を目指すことなどが合意されています。
     これまでの取組や国際合意の経緯を踏まえつつ、米国や開発途上国(注3参照)を含むすべての国が参加する実効ある枠組みを構築することが重要です。我が国はその成立に向けて、条約及び議定書に基づく検討のプロセス等において、官民の連携を図りつつ、多面的にリーダーシップを発揮していきます。

(3)避けられない影響への適応策

 温室効果ガス濃度が現在の水準で安定化することは現実的には想定されない以上、地球温暖化によるある程度の影響は避けられません。このため、我が国のみならず地球規模での海面上昇、農業生産、水資源や生態系に対する影響、異常気象の増加への対応など避けられない影響への対応(適応策)を行うことが必要となります。このような適応策は、温暖化の影響の実態から見て、今後非常に重要になると考えられます。
 国際的な連携のもと、適応策の在り方に関する検討や技術的な研究を進めます。また、研究の成果を活用しながら、地球環境の変化を早い段階で検出するモニタリングを拡充・強化し、我が国において必要な適応策の実施、気候変動の影響に脆弱な国等における適応策への支援を行います。

4 重点的取組事項

(1)温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

  1. ア 温室効果ガスの排出削減対策・施策
    1. (ア)社会経済システムの見直し等を伴う対策の重要性
       我が国の排出量の9割を占めるエネルギー起源二酸化炭素の排出削減対策については、個別のエネルギー関連機器や事業所ごとの対策を引き続き推進することはもとより、これにとどまらず、中長期的には、地域・都市構造や交通システムの抜本的な見直し、エネルギー消費主体間の連携等による社会経済システムの見直し等により、エネルギー需給構造そのものを省CO型に変えていくことがより重要になっていきます。
       したがって、「脱温暖化社会」の構築に向けて、中長期的視点に立って、地域ぐるみの面的対策、原材料や部品の調達から、製品の製造、配送・販売に至る流れや廃棄物の排出からリサイクル・処分に至る流れ全体の温室効果ガス排出量削減のための対策など、多様な主体の協力による対策を早期に開始します。

    2. (イ)具体的な対策
       具体的な対策については、①エネルギーの面的利用や緑化等のヒートアイランド対策等による省CO型の地域づくり、②地域レベルの協議会を通じた通勤交通マネジメントやカーシェアリング等の利用者による具体的な取組を伴った公共交通機関の利用促進、環境に配慮した自動車使用の促進、円滑な道路交通を実現する体系の構築、環境的に持続可能な交通の実現等による交通システムの効率化、③荷主と物流事業者の協働による取組の強化・拡大、モーダルシフト、トラック輸送の効率化等による物流体系全体のグリーン化、④地域のバイオマス資源を活用したバイオマスタウンの構築や未利用エネルギー、新エネルギー等の特色あるエネルギー資源の効率的な地産地消による、地域全体での省CO化を推進します。また、都市再開発など別目的で行われる関係の取組や事業においても、二酸化炭素削減や熱環境改善に必要な配慮をします。さらに、これらを円滑に進めるための社会的な枠組みや基盤についても、必要に応じて整備します。
       また、施設・主体単位の対策(各主体が自らの活動に関連して排出される二酸化炭素の総体的な抑制を目指して行う取組)についても引き続き推進します。このうち、エネルギー供給部門の対策については、二酸化炭素排出原単位の小さい原子力発電、新エネルギー、天然ガス等の活用を図ります。さらに、機器単位の対策(機器単体の省エネルギー性能の向上等)についても、引き続き推進します。
       さらに、エネルギー起源二酸化炭素以外の温室効果ガスの排出削減対策を行います。

  2. イ 温室効果ガス吸収源対策・施策
     森林の整備・保全、都市緑化等の吸収源対策を行います。
     森林吸収源対策については、現状程度の水準で森林整備等が推移した場合、確保できる吸収量は目標を大幅に下回ると見込まれることから、森林整備、木材利用等を一層推進します。

  3. ウ 京都メカニズムに関する対策・施策
     京都メカニズム、とりわけクリーン開発メカニズム(CDM)や共同実施(JI)、具体的な環境対策と関連付けされた排出量取引の仕組みであるグリーン投資スキーム(GIS)は、削減約束の達成とともに、地球規模での温暖化防止と途上国等への技術・資金の移転等によりその持続可能な開発に寄与するという意義を有するものです。政府として、これらについて、国内対策に対して補足的であるとの原則を踏まえつつ、適切に活用していくことが必要です。

(2)横断的施策

 国民運動の展開や公的機関の率先的取組といった横断的な施策に取り組みます。
 また、対策・施策の実施に当たっては、自主的手法、規制的手法、経済的手法、情報的手法などあらゆる政策手法を総動員し、それらの特徴をいかしつつ、有機的に組み合わせるというポリシーミックスの考え方を活用します。その最適な在り方については、対策・施策の進捗状況を見ながら、総合的に検討します。
 そのうち、経済的手法については、その活用に際して、ポリシーミックスの考え方に沿って、効果の最大化を図りつつ、国民負担や行財政コストを極力小さくすることが重要です。
 環境税については、価格インセンティブを通じ幅広い主体に対して対策を促す効果や、二酸化炭素の排出削減対策、森林吸収源対策などを実施するための財源としての役割等を狙いとするものとして関係審議会等において様々な観点から検討が行われていますが、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題です。
 国内排出量取引制度については、他の手法との比較やその効果、産業活動や国民経済に与える影響等の幅広い論点について、総合的に検討していくべき課題です。

(3)基盤的施策

 対策技術の開発の推進や、気候変動に係る研究・監視観測、国際的連携の確保などの基盤的施策に取り組みます。
 技術開発については、将来にわたり大きな削減効果が期待できる取組であり、中長期的視野に立って省エネルギー、未利用エネルギーの利用、二酸化炭素回収・貯留・隔離技術等の技術革新を加速します。また、地域・都市構造の変革、経済社会システムの変革を促すための技術、各種対策を部門横断的に下支えする技術についても、重点的に推進します。
 気候変動に係る研究・監視観測は、地球温暖化への対処の必要性を科学的に示すことにより対策推進の駆動力となるものとして、また、効果的な対策の検討の基盤として、重要な取組です。国際的な連携のもと、我が国のリーダーシップを発揮しつつ、観測、モデルデータ統合を連携させ、地球温暖化の現状把握と予測、社会・経済に与える影響の評価等について、科学的知見の充実を図ります。
 国際的連携の確保については、我が国の有する優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を活用し、開発途上国における環境負荷の削減やエネルギー効率の向上に向けて、環境上適正な技術やノウハウの移転等幅広い国際協力を行っていきます。また、NGO/NPO、学界、事業者団体等を通じた国際的連携にも努めます。
 さらに、将来枠組みの検討に関し、すべての国が参加する実効ある枠組みの構築に向けて、関係国間対話を促進すべく国際会議を開催する等、リーダーシップを発揮していきます。また、島嶼国や後発開発途上国のように地球温暖化に対する対応能力が低く脆弱な国々に対し、適切な適応対策等への支援を行います。

5 取組推進に向けた目標

(1)取組全体に関する目標

 京都議定書目標達成計画の定めるとおり、2010年度の温室効果ガスの排出抑制・吸収の量に関する目標及び各部門の目安としての目標は、以下のとおりです。

<エネルギー起源二酸化炭素の排出量の目標及び各部門の目安としての目標>
(単位:百万t-CO



 
基準年(1990年度)
2003年度実績
2010年度の目標(各部門については、目安としての目標)
エネルギー起源二酸化炭素
1048
1188
1056
 
産業部門
476
478
435
業務その他部門
144
196
165
家庭部門
129
170
137
運輸部門
217
260
250
エネルギー転換部門
82
86
69
  • ※各部門の試算・設定された目安としての目標は、今後、対策・施策を講じなければ、経済成長その他の要因を通じて排出量が増加していくことが見込まれる中、対策・施策により2003年度実績から産業部門43百万t-CO、業務その他部門31百万t-CO、家庭部門33百万t-CO、運輸部門10百万t-CO、エネルギー転換部門17百万t-COの削減が図られることにより実現される。

<非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出量の目標>
(単位:百万 t- CO

 
基準年(1990年度)
2003年度実績
2010年度目標
非エネルギー起源二酸化炭素
74
71
70
メタン
25
19
20
一酸化二窒素
40
35
34
<代替フロン等3ガスの排出量の目標>
(単位:百万t-CO

 
基準年(1990年度)
2003年度実績
2010年度目標
代替フロン等3ガス
50
26
51
  • ※オゾン層破壊物質からの代替が進むことによりHFCの排出量が増加することが予想されること等、いくつかの排出量の増加要因もあることから、その増加を抑制することとするもの。

<温室効果ガス吸収源に関する目標>

 京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で4,767万t-CO程度の吸収量の確保(2010年度)

(2)個々の主体からの二酸化炭素排出量等に関する目安

<1世帯当たりの二酸化炭素排出量、エネルギー消費量>

 二酸化炭素排出量 2010年度において2003年度比約22%削減
 エネルギー消費量 40,100MJ/年(2002年度)→36,200MJ/年(2010年度)

  • ※削減割合が異なる理由は、主に、電力の二酸化炭素排出原単位の改善効果が含まれる(二酸化炭素)、含まれない(エネルギー)の違いのため。

<業務その他部門の床面積当たりの二酸化炭素排出量>

 二酸化炭素排出量2010年度において2003年度比約21%削減

  1. (注1)中長期目標の設定に関する取組の例
     気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3次報告書などにより、一定程度を超える気温上昇がリスクの増大を招くことなどについて、科学的知見が明らかになってきました。これらを受け、究極目標の具体化を図るべく、EUにおいては、1996年(平成8年)に、工業化前と比較した気温上昇を2℃以下に抑える長期目標を設定しています。また、その長期目標を念頭に、2020年や2050年の先進国の排出削減の必要量も打ち出しています。
     また、IPCC第4次評価報告書においては、長期的な緩和・安定化のシナリオや戦略など、長期的な緩和策の状況に関する章が置かれることとなっており、2007年(平成19年)の採択に向けて、作成作業が進められています。

  2. (注2)バックキャスティング手法の考え方
     「バックキャスティング」は、将来社会の姿をまず描き、そこに到達する道程を設計する手法の一つで、過去の趨勢を将来に引き伸ばして予測する「フォアキャスティング」に対置されるものです。過去の趨勢でいくと深刻な影響の発生が予想される問題について、そうならないような予防的な取組方法を考えるための有効な手法となります。
    バックキャスティング手法による将来像の設計に当たっては、目指すべき社会像に到達するための将来の実現可能な複数の政策ビジョンを描くことがかなめとなります。

  3. (注3)米国や開発途上国の参加の意義
     米国は世界の総排出量の約1/4を占めますが、京都議定書を締結していません。また、開発途上国は、京都議定書では「共通だが差異のある責任」の考え方により、先進国と同様の数値目標は課されていませんが、今後その排出量は増加し、先進国の排出量を超えることが確実となっています。
     したがって、次期枠組みにおいては、米国の参加と、「共通だが差異のある責任」を踏まえた上での開発途上国(例えば、排出量が多く、今後さらに増加が見込まれる中国やインド)の対策の推進が、地球規模での温暖化対策の有効性を確保するために重要となります。

(重点分野政策プログラム)
    第2節 物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組

1 現状と課題

(1)現状

 従来の大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環の阻害に結び付く側面を有しています。
 このため、我が国では、毎年、約4億5千万トンという膨大な量の廃棄物が生ずるとともに、廃棄物等(注1参照)の多様化に伴う処理の困難化や不適正な処理による環境負荷の増大、最終処分場(埋立場)の残余容量のひっ迫等様々な局面で深刻な状況が生じています。
 また、こうした活動様式は化石資源を中心とした天然資源の枯渇への懸念や地球温暖化問題等の地球的規模での環境問題にも密接に関係しています。

 近年の我が国経済社会におけるものの流れ(物質フロー)の傾向をみると、約20億トンの総物質投入量に対し、全体の約5割がエネルギー消費や廃棄物として環境中に排出されています。また、リサイクル等により循環的に利用されている量を示す循環利用量は、若干改善しつつあるものの、全体の約1割に過ぎません。
 一方、循環型社会形成に向けた取組をみると、法的基盤の面では、平成12年に循環基本法の制定、数次にわたる廃棄物処理法の改正、平成17年の使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)の施行までの各種リサイクル法の制定等により、その充実が進みつつあります。
 特に、循環基本法では、適正な物質循環の確保に向け、廃棄物等の①発生抑制、②再使用、③再生利用、④熱回収(注2参照)、⑤適正処分という対策の優先順位を定めています(ただし、この順位によらない方が環境への負荷を低減できる場合には、この優先順位にこだわることなく、より適切な方法を選択します)。また、同法に定める基本原則を踏まえ、廃棄物の処理に伴う環境への負荷の低減に関しては事業者や国民等の排出者が一義的な責任を有するという「排出者責任」の考え方と、製品の製造者等が製品の使用後の段階等で一定の責任を果たすという「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」の考え方が、廃棄物処理法や各種リサイクル法に取り入れられました。
 また、これらの法的基盤の整備と併せて、平成15年に策定された「循環基本計画」に基づき、循環型社会の形成に不可欠な施設の整備、調査研究の実施、科学技術の振興等が進められています。さらに、ごみの分別や製品への環境配慮の取組等、国民、NGO/NPO、事業者、地方公共団体、国等の関係主体による取組も広がりつつあります。

 国際的な視点に立つと、中国等のアジア諸国をはじめとした途上国の経済発展等を背景として、廃棄物を含む循環資源の国際的な移動が増加しており、地球規模での適正な資源循環を確保することが重要となっています。
 このため、平成16年のG8サミットでは、我が国の提案により、廃棄物等の3R(発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル))を通じて国際的に循環型社会の構築を目指す「3Rイニシアティブ」が合意され、これを踏まえた取組が求められています。

(2)課題

 以上のような社会経済システムや物質フローの現状を踏まえると、現在の取組を一層充実させ、ライフスタイルの変革も含め、天然資源の消費の抑制と環境負荷の低減を目指した持続的な循環型社会の形成を実現していくことが喫緊の課題となっています。
 特に、循環基本法に掲げる政策目的の達成に向け、廃棄物等の発生抑制を最優先の課題としつつ、国内外において、循環資源の循環的な利用の促進、適正な処分の確保を進めるよう、廃棄物処理法や個別のリサイクル関連法の充実等により、施策体系の一層の強化充実を図ることが必要です。また、地域の実情に即した循環型社会づくりの取組や、国際的に適正な資源循環を確保するための取組等を早急に講じていくことが必要となっています。
 これらに合わせて、循環型社会の形成を担う、関係主体それぞれの役割を明確化するとともに各主体間の連携を促進していくことが急務となっています。

2 中長期的な目標

 上記課題に取り組むに当たり、以下に示すように、循環を基調とした社会経済システムの姿を2025年頃に実現していくことを中長期的な目標とします。

(1)資源消費の少ない、エネルギー効率の高い社会経済システムづくり

 環境と経済の間に、環境を良くすることが経済を発展させ、経済が活性化することによって環境もよくなっていくような関係(環境と経済の好循環)を国内のみならず、国際的にも広く実現していきます。
 特に、化石燃料や鉱物資源等、自然界での再生が不可能な資源の使用量を最小化し、再生資源や再生可能な生物由来の有機性資源であるバイオマスの利活用を促進していきます。また、その一環としての自然エネルギーの普及に関する技術開発と基盤整備を進めます。
 また、資源採取、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて、資源やエネルギー利用の一層の循環と効率化を進め、廃棄物等の発生抑制や循環資源の利用等の取組により、資源消費の少ない、エネルギー効率の高い社会経済システムづくりを進めます。

(2)「もったいない」の考え方に即した循環の取組の広がりと関係主体のパートナーシップによるその加速化

 生活の豊かさと環境の保全を両立させたライフスタイルへの意識が国民の大多数の間で高まり、例えば、我が国の伝統物品である「ふろしき」を活用するなど、その中で、エネルギー利用や、ものやサービスの選択、消費活動等、暮らしのあらゆる場面において、そのものの本来の値打ちを無駄にすることなくいかしていく「もったいない」の考え方に即した様々な行動を広げていきます。
 また、このような国民の意識・行動の変化を通じて、地域での住民・NGO/NPO・事業者・行政のパートナーシップに基づく、様々な関係主体が一体となった循環型社会づくりの取組を進め、さらに、意識・行動の変革を加速するとともに、地域の活性化にも結び付けていきます。

(3)ものづくりの各段階での3Rの考え方の内部化

 拡大生産者責任に基づく制度の拡充や事業者による自主的取組等を通じ、環境へ配慮した設計(エコデザイン)や、使用後の製品回収の取組等が進み、生産、流通、販売の各段階で3Rの考えを広く取り入れていきます。その一例として、環境負荷低減型のレンタル・リースやサービサイジング等の進展により物の販売からサービスの提供への移行も進めます。
 これらの取組を通じて、資源利用量は大きく低減するとともに、経済活動ごとにその効果が的確に把握・評価されるよう、よりよい仕組みづくりを不断に行っていきます。

(4)廃棄物等の適正な循環的利用と処分のためのシステムの高度化

 循環型社会の基盤としての各種リサイクル施設やバイオマス活用プラント、循環資源の広域移動に対応したリサイクルポート等の整備を進め、新たな循環資源を供給する資源産出拠点となり、自然界からの新たな資源採取の最少化に寄与していきます。
 これらの施設では、循環基本法に定める循環型社会における施策の優先順位を踏まえ、有害廃棄物も含め、可能な限り再使用・再生利用が推進されるとともに、再使用・再生利用ができない廃棄物等の焼却処理が行われる際には、発電や熱供給といった熱回収を高効率で行っていきます。
 また、廃棄物等の移動の把握等のための情報基盤や、不法投棄防止等のための人的基盤も整備され、適正な最終処分を図ります。これらの取組を通じて、廃棄物等の不適正な処理を未然防止し、清潔な生活環境を実現していきます。

3 施策の基本的方向

 上記の中長期的な目標を達成するため、国が講じていく施策の基本的な方向は以下のとおりです。

(1)基本的な考え方

 自然の物質循環とその一部を構成する社会経済システムの物質循環とは密接不可分な関係にあり、その両方を視野に入れ、適正な循環が確保されることが重要です。このため、自然環境の保全や環境保全上適切な農林水産業の増進等により、自然界における窒素等の物質の適正な循環を維持、増進する施策を講じます。
 また、社会経済システムにおいては、廃棄物等の発生の抑制を最優先に、適切な再使用、再生利用の一層の促進を図るなど循環機能を高める施策を講じていきます。

(2)各主体の連携とそれぞれに期待される役割

 循環基本計画に即して、すべての関係主体の連携の下で、その積極的な参加と適切な役割分担により、各種施策を総合的かつ計画的に推進していきます。

 その際、各関係主体は、以下のような役割を果たしていくことが期待されており、国は、そのための施策を講じていきます。

  1. ア 国民
     国民は、消費者・地域住民として、廃棄物等の排出を通じて環境への負荷を与える一方で、循環型社会づくりの担い手でもあるとの認識を踏まえた行動をとることが求められます。

  2. イ NGO/NPO
     NGO/NPOは、自ら循環型社会の形成に資する活動や先進的な取組を行うとともに、各主体による活動のつなぎ手となることが求められます。

  3. ウ 事業者
     事業者は、環境に配慮した事業活動に取り組むことなどにより、自らの持続的発展に不可欠な、「社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」を果たしていきます。
     具体的には、法令遵守(コンプライアンス)を徹底し、不法投棄等の不要な社会コストの発生を防止することをはじめ、排出者責任や拡大生産者責任の考え方を踏まえた廃棄物等の適正な循環的利用及び処分への取組等を透明性をもって一層推進していきます。

  4. エ 地方公共団体
     地方公共団体は、地域の自然的・社会的条件に応じた法・条例の着実な施行等に加え、産業の垣根を越えた事業者間の協力も含め、各主体間の連携の場の提供等において重要な役割を果たします。特に、都道府県等は、広域的な観点から、管下の市町村等の調整機能を果たすことが、市町村は、地域単位での循環システムの構築等、住民の生活に密着した基礎的自治体としての役割を果たすことが求められています。

(3)国の取組の基本的な方向

  1. ア 国は、循環基本計画の見直しを行うとともに、他の関係主体とのパートナーシップの育成を図るとともに、以下の重点的取組を中心に、国全体の循環型社会形成に関する取組を総合的に進めます。
      その際には、各府省間の連携を十分に確保しながら、政府一体となって、環境基本法、循環基本法に即して、各種法制度の適切な運用や事業の効果的・効率的な実施を推進します。

  2. イ これらの取組の推進に当たっては、従来からの国の施策の枠を超えて、より広い視野で施策の検討を行い、技術(テクノロジー)、価値観、社会システムといった政策の重要な要素を考慮しながら、様々な政策手法を整合的に組み合わせて実施していくことが必要です。
      特に、近年新たな課題となっている国と地方との連携による循環型社会の形成、東アジア等における国際的な循環型社会の形成、さらには地球温暖化対策等の他の環境分野と連携し相乗効果を発揮する取組を推進します。

  3. ウ 施策の進捗状況や実態の適切な把握に向け、物質フローや廃棄物等に関するデータの迅速かつ的確な把握、分析及び公表を一層推進します。
      特に、現在循環基本計画に位置付けられている物質フロー指標に加え、より詳細な実態把握等を行うための補助指標の内容を検討します。
      また、これらの情報を各主体が迅速かつ的確に入手し、利用・交換できるよう、情報基盤の整備を図ります。

4 重点的取組事項

 循環型社会の形成に向け、以下の重点的施策を中心に、情勢の変化を踏まえて施策の詳細を具体化しつつ、その効果的・効率的な実施を推進していきます。

(1)循環型社会の形成に向けた重点施策

  1. ア 自然界における適正な物質循環の確保等の促進
     大規模な資源採取による自然破壊の防止や、自然界における適正な物質循環の確保に向け、生態系や生物多様性にも配慮しながら、天然資源のうち化石燃料や鉱物資源等の自然界での再生が不可能な資源の使用量の増大を抑制します。
     また、再生資源の持続的利用を推進する観点から、バイオマス・ニッポン総合戦略の見直し内容を踏まえたバイオマス等の利活用の促進や、森林の適切な整備・木材利用の推進を図るとともに、自然環境の保全・再生のための施策を講じます。さらに、化学肥料や化学合成農薬の使用低減等による環境保全型農業や漁場環境の改善に資する持続的な養殖業等環境保全を重視する農林水産業への移行を促進します。

  2. イ 一人一人のライフスタイルに根ざした地域重視の循環型社会づくり
     循環型社会の構築には、国民一人一人に「もったいないバッグ(買物袋)」の持参等の行動が広まるなど、循環に配慮した持続可能なライフスタイルへの変革が重要です。このため、幅広い年齢層を対象に、学校、地域等の多様な場において、環境教育・環境学習等を総合的に推進します。
     また、国民、NGO/NPO、事業者等によるコミュニティに根ざした循環型社会づくりを促進するため、例えば、リユースカップの活用等、各主体が連携した発生抑制対策等の先進的な取組を支援します。また、今後急増が見込まれる高齢者の持つ知識や技術の活用・継承等も図りつつ、地域住民の積極的な参画による生活用品のリサイクルの取組やフリーマーケットの開催等を促進します。なお、これらの先進的な取組の情報を広く提供する際には、NGO/NPO等の民間団体等と連携しながら、各種キャンペーンの効率的な実施やインターネット、マスメディア等の様々な媒体の活用を推進します。
     さらに、このような地域における取組を反映しながら、国全体の観点と地域の実情を踏まえて、国と地方が構想段階から協働して循環型社会の形成のための地域計画を策定し、循環型社会の形成のための基盤の整備を推進していきます。

  3. ウ 循環型社会ビジネスの振興
     グリーン購入を通じて再生品等のグリーン製品・サービスや再生可能エネルギー等を積極的に利用するとともに、物の供給に代えて環境負荷の低減に資するサービサイジング等の活用による取組を推進します。
     また、循環型社会ビジネス市場が拡大するよう、環境ラベリングやグリーン製品・サービス関連情報の提供、再生品等に関する規格化の推進等を行います。
     さらに、3Rに配慮した製品の製造等を含め、事業活動における環境配慮を確実に実施していくため、環境管理システムの導入、環境報告書や環境会計の作成・公表等の自主的取組を促進します。
     加えて、関係者が市場メカニズムに基づき、循環型社会の形成に自主的に取り組むことを促すための経済的手法の効果等について検討します。
     一方で、循環型社会ビジネスの役割の一つとして、廃棄物等を適正に処理していくことも重要であることから、廃棄物の処理に係る法規制の徹底を図りつつ、「悪貨が良貨を駆逐する」ことのないよう、産業廃棄物処理業等の分野における優良企業の育成を推進します。

  4. エ 循環資源の適正な利用・処分に向けた仕組みの充実
     循環基本法に定める優先順位に基づき、排出者責任や拡大生産者責任の考え方を踏まえ、廃棄物等の発生抑制並びに適正な循環的利用及び処分に向けた取組を推進します。
     特に、廃棄物の処理に伴う環境への負荷の低減に関しては、国際的な整合性の観点を踏まえつつ、製品の特性に応じたライフサイクルを考慮した設計・製造の推進等、廃棄物の発生抑制につながる上流対策等の一層の充実を主眼に、各種リサイクル制度の強化を図ります。加えて、経済的なインセンティブを活用した取組として、一般廃棄物処理の有料化の取組を推進していきます。
     また、製造工程や製品に使用される有害物質について、日常生活への影響の大きさに照らし、国際的な動向も踏まえながら、その使用量を極力低減しようとする自主的取組の促進やその管理・情報提供を促す仕組みを整備します。加えて、廃棄物等の有害性の評価をはじめ、廃棄物等の循環的利用及び処分が環境に与える影響等の調査研究、適正処理技術の開発や普及等を実施します。
     さらに、廃棄物等の適正処理の確保に向け、地域住民との対話の推進を図りつつ、環境への配慮を十分に行いながら、廃棄物処理施設や最終処分場の整備等における広域的な対応を推進します。
     加えて、アスベストやPCB等、有害性や処理の困難性に照らして特別の対応が必要な物質について、その時々の科学的知見を最大限に活用しつつ、社会コスト低減の観点を踏まえ、その適正処理の仕組みの充実を図ります。
     このほか、不法投棄の防止については、「不法投棄撲滅アクションプラン」を踏まえ、国民、事業者、地方公共団体、国等の各主体が一体となって、施策の着実な推進を図ります。

  5. オ 循環型社会の形成に向けた国際的な取組の推進
     国際的に適正な資源循環を確保していくため、中央環境審議会における検討を踏まえつつ、「ゴミゼロ国際化行動計画」に沿って、人材育成や技術協力を通じた途上国における循環型社会形成の支援や、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約による有害廃棄物の適正管理の取組等廃棄物等の国際的な移動による汚染を防止するための方策を講じます。
     その際には、多様な関係主体の参画・連携を促進し、政府部内においても、リサイクルポートの整備等を通じた適切かつ効率的な国際静脈物流システムの検討等を推進します。
     さらに、これらの取組を通じて、平成24年までに東アジア地域における循環型社会のビジョンの策定を図っていくなど、将来的には、予防的な取組方法といった国際的な原則を踏まえつつ、循環資源をめぐる国際的なルール・枠組みづくりへの貢献を目指します。

  6. カ 地球温暖化対策等の他の環境分野との連携の強化
     循環型社会づくりと脱温暖化社会づくりの取組は、いずれも社会経済システムやライフスタイルの見直しを必要とするものであり、両者の相乗効果(シナジー)を最大限に発揮するよう、分野横断的な対策を推進していきます。特に、廃棄物等の3Rの進展が阻害されないよう十分留意しながら、「京都議定書目標達成計画」に沿って、廃棄物熱回収の促進や廃棄物発電の導入促進を図ることとし、廃棄物やバイオマスを利用した高効率の熱回収・発電施設の整備等を促進します。

  7. キ 循環型社会形成に関連した情報の的確な把握・提供
     我が国の物質フローの状況や、廃棄物等の発生量とその循環的な利用及び処分の状況、将来の見通し、廃棄物等の素材・組成・設計等の技術データ、廃棄物等の利用・処分の環境影響等について、正確な情報を迅速に把握し、分析を行います。
     また、これらの情報を関係者が入手し、利用・交換できるようにするとともに、それぞれの廃棄物等の適正な処分の確保についても、電子マニフェストなどの情報技術の一層の活用を図ります。

(2)施策のより効率的・効果的な実施に向けた取組

 本基本計画に基づく施策の実施に当たっては、循環基本計画の進捗状況の評価・点検の仕組みも活用しながら、その効果的・効率的な実施を図ります。
 また、本基本計画を受けて実施すべき具体的な施策の詳細については、社会経済の変化に柔軟かつ適切に対応して、平成19年度中を目途に、新たな循環基本計画において体系的に位置付けます。特に、個別リサイクル法については、関係者間の適切な役割分担を踏まえ、平成17年度から施行開始年度に応じ順次、評価・検討を着実に実施します。

5 取組推進に向けた指標及び具体的な目標

 上記の重点的取組の着実な実施に向け、循環基本計画に含まれている物質フロー指標、取組指標を中心に、その着実な達成を図りつつ、より的確に物質循環の状況を把握するための補助的指標の整備を図ります。

(1)物質フロー指標

 適正な物質循環を確保するため、平成22年度までに、循環基本計画における以下の指標について、同計画の目標の着実な達成を図ります。

  •  ・資源生産性 約 39万円/トン
  •  ・循環利用率 約 14%
  •  ・最終処分量 約 28百万トン

 また、より的確に物質フローの動向を把握していくため、例えば、一時的な土石等の大量採取による資源生産性の変動や海外への古紙等の輸出量の増大による循環利用率の変動等について、その影響を把握できる補助的な指標等について検討を行います。さらに、将来的な課題として、こうした物質フロー指標と結び付けて、他の環境分野とも連携した取組や、現在進んでいる各種経済活動ごとの取組の効果等を把握・推進していく指標等の在り方についても検討を行います。

(2)取組指標

 循環型社会の形成に向けた取組の進展度を測る取組指標については、循環基本計画に掲げられている「循環型社会形成に向けた意識・行動の変化」、「廃棄物等の減量化」、「循環型社会ビジネスの推進」の指標について、平成22年度までに目標の達成を図ります。なお、これらの指標は、より先進的な地域独自の取組指標を設定していくことも含め、地域における目標設定の参考となることが期待されています。

  1. (注1)
     廃棄物に加えて使用済物品、副産物等を含む概念であり、そのうち有用なものについては、循環型社会形成推進基本法第2条において、「循環資源」として捉えています。

  2. (注2)
     廃棄物から熱エネルギーを回収することを意味しており、循環型社会形成推進基本法第2条にも規定されています。ごみの焼却から得られる熱は、ごみ発電をはじめ、施設内の暖房・給湯、温水プール、地域暖房等に利用されています。

(重点分野政策プログラム)
     第3節 都市における良好な大気環境の確保に関する取組

1 現状と課題

(1)都市の現状

 我が国は、成熟社会といわれるようになってから、かなりの期間が経過し、環境保全に対する国民の関心は社会に確実に定着しようとしています。しかしながら、こうした状況にもかかわらず、都市における大気環境については、まだ多くの課題が残されています。
 これからの我が国は本格的な少子高齢時代が定着しようとしています。また、高度成長期を中心として集中的に形成された様々な都市基盤が更新の時期を迎えようとしています。さらに、人々の生活様式や経済活動にも、様々な変化が生じようとしており、21世紀最初の四半世紀の社会を見通したとき、環境保全上の課題との関わりにおいて、都市や交通のすがたが大きく問われようとしています。

  1. ア 都市のすがた
     我が国ではこれまで、人口や経済活動の都市への集中化の道を進んできました。都市への立地による集中や生活様式の変化などにより、都市でのエネルギー消費は増加・集中の傾向にあります。また地表面の人工化が進み、都市から水面や緑地が減少しています。さらに公共施設や大規模小売店舗の郊外立地、郊外居住の増加、自動車への依存の高まりや移動距離の長距離化などの傾向もみられます。このように現在の都市のすがたは、必ずしも環境への配慮が十分なものとは言えない状況となっています。

  2. イ 交通のすがた
     交通は、経済活動、生活様式と密接に関連した都市のすがたのひとつの側面ですが、環境への負荷の深刻さが特に懸念される都市における活動です。具体的には、自動車交通量は未だに増加傾向にあり、大都市地域を中心として、自動車交通が集中し、恒常的な交通渋滞が発生しています。また、一台あたりの自動車の性能は改善されてきていますが、自動車保有台数が増加する傾向が見られます。さらに、地方都市を中心に、公共交通機関による輸送の機関分担率は低下しており、自動車への依存率がますます高まっています。

(2)都市における大気環境問題

 都市の活動に起因する大気環境問題としては、これまでは、主として自動車に起因する大気汚染問題、騒音問題などが課題となっていましたが、上で述べたような都市での活動の増大と過密化により熱環境の悪化(ヒートアイランド現象)も生活環境に影響を及ぼす深刻な問題となってきました。また、都市におけるエネルギー消費の増大は地球温暖化にもつながることにも目を向ける必要があります。

  1. ア 大気汚染
     二酸化窒素、浮遊粒子状物質に係る大気汚染の状況については、改善傾向にありますが、大都市地域においては、局地的な高濃度汚染が解消されていない地域が依然として存在しています。光化学オキシダントについては、全国のほとんどすべての測定局で環境基準が達成されていない状況です。有害大気汚染物質については、低濃度ながら、多様な化学物質が大気中から検出されており、長期ばく露による健康影響が懸念されています。さらに、アスベストを含有する建材を使用した建築物の解体等の作業は、今後とも長期にわたり継続する見込みであり、大気環境中への飛散防止の徹底が必要とされています。また、花粉症も国民的な広がりをみせており、大きな課題となっています。

  2. イ 都市の熱環境(ヒートアイランド現象)
     地球全体の平均気温は20世紀中に約0.6℃上昇していますが、日本の大都市に限ると2~3℃も上昇していることから、ヒートアイランド現象の進行は顕著であると言えます。また近年の都市の熱環境の傾向としては、気温が30℃を超える時間の増加や熱帯夜の出現日数の増加がみられ、これによる健康への影響やエネルギー消費への影響などが懸念されています。

  3. ウ 地球温暖化
     我が国の温室効果ガス総排出量のうち、都市における活動との関わりが深い業務その他部門、家庭部門、運輸部門からの二酸化炭素排出量は約半分を占めており、また、京都議定書における基準年(1990年度)の排出量と比べても大幅に増加しています。

  4. エ 交通騒音
     交通に起因する周辺地域における騒音被害の状況は、総じて厳しい状況にあります。特に、幹線道路周辺の地域を中心として、自動車騒音に係る環境基準の達成状況は、厳しい状況が続いています。また、新幹線鉄道についても、沿線地域において依然として環境基準が達成されていない箇所が多くみられます。

2 中長期的な目標

 以上のような背景を踏まえ、また、都市の構造、交通の形態、街区や建築物の形状などが大気環境の質に影響を与えることを認識し、21世紀最初の四半世紀の社会を見通して、健康で快適な都市の生活環境が確保されることを目標とします。このために、良好な大気環境を確保するための各種の取組を進めていきます。
 特に、大気汚染及び交通騒音については、環境基準の達成を確実なものとし、その後においても維持します。また、地球温暖化の防止にも寄与することをあわせて目指していきます。
 この目標に向けて、環境的に持続可能な都市づくり、環境的に持続可能な交通システムの実現を図るとともに、都市における生活様式や経済活動についても環境的に持続可能なものへと転換を進めることを目指します。

3 施策の基本的方向

 中長期的な目標の達成に向け、以下に示す基本的な方向に沿って対策を進めていきます。

(1)都市大気環境対策全体の方向性

 都市活動に起因する大気環境問題には、大気汚染、騒音、熱環境(ヒートアイランド現象)、地球温暖化と現象としては様々ですが、こうした問題を改善するための方向性や対策はその多くが共通したものです。そのため、基本的な施策の方向性として、これら諸問題を改善するための施策は、都市における大気環境に係る問題が相互に関連するものであることに十分留意し、関係者間で連携して様々な施策を総合的、計画的に推進していきます。
 環境的に持続可能な都市・交通システムの実現を目指していく上で、環境負荷を小さくするための都市における空間の利用や水と緑との関わりの在り方の観点から積極的に取組を進めます。また、都市における良好な大気環境を確保するため必要な規制を実施するとともに、自主的な取組を推進します。さらに、環境負荷を小さくするための技術や機器・施設の積極的な開発・導入を図るとともに、エネルギー消費や過度な自動車依存を低減させるような生活様式や事業活動の変革もあわせて取り組んでいきます。
 なお取組の実施に当たっては、我が国のこれまでの都市環境に係る経験や知見を十分踏まえ、良好な大気環境の実現を確実なものとしていくために、予防的な取組方法に留意しつつ進めます。

(2)施策別の方向性

  1. ア 環境負荷の小さい事業活動、生活様式への変革
     事業活動や日常生活において、省エネルギーを意識した行動を呼びかけるとともに、環境負荷の小さい製品・サービスの利用を推進します。また、自動車への過度な依存の抑制やエネルギー使用の合理化を目指し、使いやすい公共的な交通システムを実現するための施策や、環境への負荷を減らすような自動車の使い方や自転車利用の普及を進めます。これらの取組に当たっては、社会的な理解の醸成や合意の形成を進めるとともに、幅広い関係者による連携を図っていきます。

  2. イ 環境的に持続可能な都市づくり
     都市におけるエネルギー消費を低減するため、エネルギーの面的な利用、新エネルギーの活用、燃料電池の利用を進めるとともに、省エネルギー等の推進により、空調システム、電気機器、燃焼機器、自動車など人間活動に起因して排出される人工排熱を低減します。また、緑地・水面の減少による蒸発散作用の減少や地表面の人工化による高温化を防ぐため、都市における緑化の推進、緑地の保全等の取組により地表面被覆を改善します。さらに、都市における空間の利用に当たっては、環境負荷の小さな都市の構築に向けた都市計画制度の活用の推進等を図ります。

  3. ウ 環境的に持続可能な交通システムの実現
     環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点改良等の道路構造の改善、公共交通機関の利用を促進するための都市の基盤整備、自動車交通需要の調整、高度道路交通システム(ITS)、信号機の高度化等交通安全施設等の整備などの交通流の円滑化対策や物流のグリーン化を推進します。また、開発・実用化が進んでいる低公害車・低燃費車やクリーンエネルギー自動車の一層の普及を促進します。さらに、燃料電池自動車等の環境負荷の小さい次世代低公害車の開発を促進するとともに、その普及を図ります。また、自動車単体規制を一層強化するとともに、船舶からの排出を削減する方策についても取り組みます。

  4. エ 大気汚染物質の排出削減
     大気汚染物質の排出削減については、大気汚染防止法等の着実な施行による排出削減を進めるとともに、揮発性有機化合物等について、事業者による自主的な排出削減の取組状況の検証・評価などを進めます。また、建築物の解体現場等アスベストの発生源における大気環境中への飛散防止対策の徹底を図ります。

  5. オ 経済的手法等の活用
     様々な政策実現手法の適切な組合せによる取組はこの分野でも必要です。このうちでも、税制のグリーン化などの経済的手法や、環境負荷の少ない都市づくりに寄与する民間のインフラ整備に対する誘導施策などの手法は、関係主体の適切な取組を誘導するものとして重要であり、これらの積極的な導入・拡大を検討し、持続可能な都市、交通への転換を促進します。

  6. カ 環境負荷低減のための調査・研究の推進
     より効果的に環境負荷の低減のための取組を進めるためには、都市における大気環境の現状をより的確に把握することが必要です。このために、大気環境に係る観測・監視体制の整備を推進します。
     また、都市における環境問題の中には一層の科学的知見の収集が必要な課題もあり、有害大気汚染物質や微小粒子状物質等による健康影響、熱環境の状況把握、有効な光化学オキシダント対策やヒートアイランド対策のあり方の検討など、引き続き良好な都市大気環境の確保のための調査・研究を推進します。

4 重点的取組事項

(1)各主体に期待される役割

  1. ア 国民、民間団体の取組
     日常生活におけるエネルギー消費の増大や自動車への依存度が高まるにつれ、国民の日常生活に起因する環境への負荷は大きくなっています。国民は日々の暮らしが環境に大きな負荷を与えていることを認識し、エコハウス、低公害車等の環境負荷の小さい製品・サービスの利用を図るとともに、環境への負荷の小さい交通手段の利用、エコドライブの実施、冷暖房温度の適正化、こまめな節電・節水、庭先やベランダの緑化、再生水等による打ち水など、自ら環境負荷を軽減する視点から積極的な取組を行うことが必要です。さらに、こうした取組は国民一人一人による努力に加えて、コミュニティとして環境負荷の低減を進めるための取組を進めることも重要なものとなっています。また、民間団体は、国民、事業者、地方公共団体、国の取組が進むよう提言、情報発信を行うとともに、地域のコミュニティ活動に向けた取組を積極的に支援することが期待されます。

  2. イ 事業者の取組
     事業者は、経済活動及び交通の中で大きな役割を担っており、その取組は環境的に持続可能な都市・交通システムを構築していく上で重要なものとなっています。それぞれの事業と都市環境との関わりに応じ、国や地方公共団体の施策に協力するとともに、法令の遵守に止まらず、社会的責務の観点からも、環境負荷の小さい建築物の選択・都市開発、環境への負荷の小さい交通手段の利用、共同輸配送の活用等による物流の効率化、環境負荷の小さい製品・サービスの利用、新エネルギーの活用、エコ改修の実施、建築物の屋上・壁面、敷地等の緑化のほか、環境負荷低減のための調査研究の推進など環境負荷を積極的に低減するための自主的な取組を行うことが必要です。また、事業者相互が連携して取り組むことも重要です。

  3. ウ 地方公共団体の取組
     都市大気環境の改善のためには、地域条件に応じた総合的な計画の策定・実施による、地域段階での一層の対策を進めることが効果的です。その際には、地域の大気環境を把握するなど、実施状況を点検するとともに、地域の各主体と連携を図りながら適切に対策の推進を図ることが必要です。
     また、地域における環境負荷低減の取組への支援、情報の積極的な提供、自らも環境負荷の小さい製品・サービスの利用等を積極的に進めるほか、コンパクトで環境負荷の小さい都市となるような空間利用の実現、新エネルギーの活用、緑地の保全や風の通り道の確保等に向けた水と緑のネットワークの形成と効果的な配置、公共空間の緑化、公共交通機関の整備、環境負荷の小さい交通機関の利用の促進、幹線道路ネットワークの整備や信号機の高度化等交通安全施設等の整備など交通流の円滑化対策、環境負荷低減のための調査・研究の推進などに積極的に取り組むことが期待されます。

(2)国の取組

 国は、各主体の参加により社会全体として環境への負荷の小さい都市が実現されるよう、全国的観点及び都府県域を超える大都市圏の観点から、必要な枠組みを構築するとともに、取り組むべき対策を実施します。
 都市の観点からは、コンパクトで環境負荷の小さい都市となるような空間利用の促進、省エネルギー機器の導入、新エネルギーの活用、緑地の保全や風の通り道の確保等に向けた水と緑のネットワークの形成と効果的な配置、都市の景観と環境の改善をかねた公共空間における緑化や水辺づくりを進めます。また、花粉症対策等を推進するとともに、アスベストを使用する建築物に係る対策についても取り組んでいきます。
 また、交通の観点からは、自動車排出ガス等に対する規制措置を強化するとともに、低公害車・低燃費車やクリーンエネルギー自動車の一層の開発・普及を図ります。また、環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点改良等の道路構造の改善、自動車交通需要の調整、高度道路交通システム(ITS)、信号機の高度化等交通安全施設等の整備などの交通流の円滑化対策、貨物・旅客輸送の効率化、モーダルシフト、公共交通機関の利用促進等の環境負荷の小さな交通を一層推進するための対策を実施するとともに、環境負荷の低減に資するような交通施設周辺での緑地整備等を実施します。
 さらに、大気環境の観測の実施、それぞれの主体の大気環境改善のための取組状況の把握、検証に努めるとともに、必要に応じ、環境基準や指針値の設定を行います。また、関連する情報の積極的な提供、良好な大気環境の確保のための調査・研究を行うとともに、様々な主体による取組が社会的に評価されるような仕組みについても検討します。なお、国自身が大きな事業者、消費者であることから、率先して環境負荷の小さい製品・サービスを積極的に利用します。

 なお、上記の取組の推進に当たっては、国民・民間団体、事業者、地方公共団体、国は相互により連携を強化し、施策の効果的な実施を図ることが必要です。

5 取組推進に向けた指標

 取組の推進に向けては、それぞれの大気環境について次のような指標を用いますが、都市における良好な大気環境の評価はこれ以外にも多岐にわたる視点があることや、指標ごとの特徴や意味合いが異なることに留意し、きめ細かく総合的な観点から評価を行うよう努めます。

  • ・大気汚染に係る環境基準達成率(全国、大都市)
  • ・有害大気汚染物質に係る環境基準、指針値達成率(一般環境、発生源)
  • ・幹線道路を中心とする沿道地域の自動車交通騒音に係る環境基準の達成状況
  • ・新幹線鉄道騒音及び航空機騒音に係る環境基準の達成状況
  • ・省エネルギー機器、住宅・建築物、低公害車等の普及率
  • ・都市域における水と緑の公的空間確保量
  • ・都市域における年間の30℃超高温時間数・熱帯夜日数

(重点分野政策プログラム)
     第4節 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組

1 現状と課題

(1)現状

 水は、地球上の限りある資源であり、生物の命を育み、我々の生活や産業に不可欠な基本要素です。
 水循環は、一般に、森林、農地等への降雨が土壌に保水されつつ、地表水及び地下水として相互にやり取りしながら徐々に流下し、河川、湖沼及び海域に流入し、また、それぞれの過程で大気中に蒸発して再び降水となる連続した水の流れです。しかも、洪水や渇水のような変動を伴います。我々は、古来より、水田耕作、水害防止、生活用水等のために、様々な工夫を加えながら、自然の水循環と人為的な水循環とを有機的に結びつけ、現在の水循環を長時間かけて造りあげてきました。
 しかし、特に、戦後の高度経済成長期を通じ、都市への急激な人口や産業の集中と都市域の拡大、産業構造の変化、過疎化の進行等の社会経済の変化を背景に、水循環が急激に変化し、人の生活に必要な水量の供給、水質の浄化、多様な生態系の維持、バランスのとれた地下水の流動による地盤の支持、物質循環等様々な機能が損なわれた結果、水質汚濁、生態系への悪影響、湧水の枯渇、河川流量の減少、地盤沈下、都市水害、渇水、親水性の低下、水により育まれてきた文化の喪失等の問題が生じています。

 水質、水量、水辺地、水生生物等を含む水環境や地盤環境について見ると、例えば、以下のような問題が顕在化しています。

 水質環境基準の人の健康の保護に係る項目については達成率が次第に高まっていますが、有機汚濁等の生活環境の保全に係る項目については、特に湖沼や内湾等の閉鎖性水域において改善が十分には進んでおらず、水域によっては貧酸素水塊等が発生し、水利用や水生生物等の生育・生息に障害を生じている状況にあります。また、有害物質による土壌や地下水の汚染等の問題は、人の健康の保護や生活環境の保全の上で望ましい水質を維持することを困難にします。

 人間の生活や社会経済活動による水利用、都市化等に伴う流域の地下浸透・涵養機能の低下等により、河川等の平常時の流量が減少し、その水質や水生生物等の生育・生息環境が改善されていない場合があります。

 地下水の過剰揚水による地盤沈下は、全国的には沈静化の傾向にありますが、都市化等に伴う流域の地下浸透・涵養機能の低下等により、地下水位が回復していない地域があるとともに、多くの湧水が枯渇しています。一方、一部の地域では、地下水位の上昇による地下構造物の浮上等の新たな問題が発生しています。

 水辺地については、都市化や護岸整備等によりその環境が損なわれ、水辺地が持つ浄化機能や水生生物等の生育・生息環境としての機能が劣化し、若しくは失われ、また、人と水とのふれあいの場としての活用が困難な地域が見られます。

 このような水質、水量、水辺地、水生生物等の問題は相互に深く関連し、互いに影響を与えています。

 さらには、今後、地球温暖化による気温の上昇、降水量の変化、降水の強度及び頻度の変化等の影響は、将来にわたり、水環境の保全にとって重大な支障となるおそれがあります。また、21世紀は水の世紀と言われ、水の問題は、国内のみならず、国際的課題ともなっています。

(2)これまでの取組

 このような状況の下、それぞれの地点で水環境や地盤環境の質を判断し、汚染・汚濁負荷の低減等を通じて環境の保全を図ろうとする、いわば「場の視点」からの取組は、今後も基本的な施策として進める必要があります。

 しかしながら、上に述べたとおり、水が、土壌で保水・浄化されつつ、地表水及び地下水として相互にやり取りしながら流れていくことにかんがみれば、今日の水環境の悪化の背景には、汚濁負荷の増加等と並んで水循環の変化があり、地盤環境の問題にも地下水を通じ水循環が深く関わっています。このように、水循環が上流域から下流域へという面的な広がり及び地表水と地下水を結ぶ立体的広がりを有することを考慮すると、単に問題の生じている地点のみに着目するだけでなく、流域全体を視野に入れていく必要があります。このため、水循環の全体を通じて、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスの下に共に確保され、水循環の恩恵を享受し、継承できるよう、洪水や渇水等異常時における問題にも留意しつつ、流域全体を捉えて、いわば「流れの視点」から環境保全上健全な水循環の構築に向けた取組を推進することが重要な課題との認識が醸成されてきました。

 水循環に関する問題の様相は個々の地域によって大きく異なることを踏まえ、流域単位で、環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画の策定・実行の重要性が第二次環境基本計画(平成12年12月閣議決定)において示されました。また、参考となる事例や知見として「健全な水循環系構築のための計画づくりに向けて」(平成15年10月、健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議)が取りまとめられました。これまでに、流域ごとの計画策定と関連施策の実施が進みつつあります。

 この計画は、治水や利水との整合を図りながら、環境保全の観点から、現状の水循環の診断、流域全体及び流域の特性に応じた望ましい水循環像とその実現に向けた施策体系、流域の地域区分に応じた環境保全上健全な水循環の構築やそのための施設整備等に関する具体的な目標の設定とその実現に向けた施策体系等から成ります。その策定に当たっては、関係行政機関のみならず、流域の住民、事業者、民間団体、学識経験者等の関係者の意見を取り入れ、また、施策の展開に当たっては、これら関係者の参加を重視したものとなっています。

(3)課題

 環境保全上健全な水循環の構築に向けた取組をさらに進める上で、流域の一人一人が身近な水環境の魅力やそれが抱えている問題に気づき、主体的に活動に参加することが重要となるため、流域の水循環の現状に対する認識を流域の住民、事業者、民間団体、地方公共団体、国等の関係者が広く共有することが重要です。そのため、流域の水循環の機構を解明・把握し、流域の自然、社会的条件を踏まえ、環境保全上の健全性の実態を把握し、問題点を抽出し、関連情報を共有することが必要です。その際には、健全性の評価やモニタリングの在り方等について検討が必要です。
 そして、目標となる望ましい水循環の姿を関係者の間で十分に議論し、広く共有できるよう、わかりやすい目標を設定し、各主体の取組が、効果的、効率的、継続的に進むような仕組みとする必要があります。さらに、対策の状況等を踏まえ、必要な場合は見直していくことも重要です。

2 中長期的な目標

 今後の四半世紀における望ましい社会・経済像を見据え、現在及び将来の社会・経済の状況、技術レベル、生活の質を考慮した上で、治水や利水との整合を図りながら、環境保全上健全な水循環がもたらす恩恵を最大限享受できる社会の構築を目指します。
 その際、流域ごとの特性に応じ、環境保全上健全な水循環の構築の観点から、水循環に関する課題や目指すべき将来像が設定されるとともに、流域の住民、事業者、民間団体、地方公共団体、国等の協働により、人と身近な水とのふれあいを通じた豊かな地域づくりが行われることを目標とします。
 環境保全上健全な水循環がもたらす恩恵とは、流域の特性に応じた水質、水量、水生生物等、水辺地を含む水環境や地盤環境が保全されており、それらの持続可能な利用が図られることを指します。具体的には、洪水や渇水等異常時における問題にも留意しつつ、主として平常時において、流域の特性に応じ、以下に掲げるような状態を維持することが重要です。
水質  -水環境・土壌環境において、人の健康の保護、生活環境の保全、さらには、水生生物等の保全の上で望ましい質が維持されること。
水量  -平常時において、水質、水生生物等、水辺地の保全等を勘案した適切な水量が維持されること。土壌の保水・浸透機能が保たれ、適切な地下水位、豊かな湧水が維持されること。
水生生物-人と豊かで多様な水生生物等との共生がなされること。
水辺地 -人と水とのふれあいの場となり、水質浄化の機能が発揮され、豊かで多様な水生生物等の生育・生息環境として保全されること。

3 施策の基本的方向

 以上のような目標の達成に向けて、第2章第1節「3.水環境、土壌環境、地盤環境の保全」に掲げるように、汚染・汚濁負荷の低減等を通じて水環境等の保全を図ることはもとより、次のような方向性をもって施策展開を図ります。

(1)流域に共通する施策

 環境保全上健全な水循環がもたらす恩恵と治水・利水に支えられた人間社会の営みが共に確保されるよう、流域全体を総合的に捉え、効率的かつ持続的な水利用等を今後とも推進していく必要があります。このため、農業用水の循環利用の促進等による効率的利用、工業用水の循環利用の促進等による水利用の合理化、節水器具の普及や下水処理水の再利用等による生活用水の効率的利用、雨水の生活用水としての利用等を進め、水源への負担を軽減するとともに、必要に応じて、未活用水の有効活用を図り、水質や水生生物の保全等の観点から流量確保のための様々な施策を行います。
 河川水を取水、利用した後の排水については、可能な限り、下流での水利用にいかせる水質及び水量で河川に戻すことを基本としつつ、その場において放流することの妥当性、水利用のエネルギー効率性や費用対効果等を勘案し、地域の特性に応じて見直しを含めた取排水系統の検討を行います。
 また、流域全体を通じて、貯留浸透・涵養能力の保全・向上を図り、湧水の保全・復活に取り組むほか、地域の特性を踏まえた適切な地下水管理方策の検討を行います。さらに、水辺地の保全・再生に取り組みます。また、流域の源頭部から海岸までの総合的な土砂管理の観点から、土砂移動の調査研究や下流への土砂還元対策を試行します。土壌環境については、水を介した汚染物質の移動による土壌と水の相互の汚染という悪循環を断ち切るため、土壌汚染の調査、対策技術の向上や具体性がある指針の提示等により、土壌汚染対策等の円滑な実施を促進します。

(2)山間部

 森林の公益的な機能の一つである水源涵養機能を今後とも維持、向上させるよう、森林の公益的な機能を評価して、その保全、育成や適切な管理を図る必要があります。このため、水源地対策を進めながら、水源かん養保安林等の計画的な指定及び保安林における転用規制や伐採規制の適正な運用を図るなど法制度の活用や治山施設の整備により森林を保全します。また、流域全体を通じて森林の適正な整備を推進するとともに、水源涵養機能等の発揮に対する要請が高く適正な整備が必要なものについては、治山事業など公的主体による森林の整備の推進を図ります。さらに、森林の公益的機能に着目した基金を地域の特性を踏まえて活用することやボランティア活動など流域の住民や事業者が参加した森林の保全・整備の取組を推進します。なお、森林整備に当たっては、地域の特性に応じ、伐採年齢の長期化、複層状態の森林の整備等の適正な森林整備を通じて保水能力の高い森林の育成に努めます。

(3)農村・都市郊外部

 農村・都市郊外部においては、川の流れの保全や回復と、流域の貯留浸透・涵養能力の保全・向上を今後とも図る必要があります。このため、居住地周辺の里山林の整備・保全、都市計画制度の活用や地方公共団体の条例等による緑地の保全を推進します。また、公共施設の緑化を積極的に推進するとともに、民有地の緑化の推進を図ります。水源涵養機能等の農業の多面的機能は、農業の持続的発展により発揮されることから、水田や畑地の保全を推進し、耕作放棄地の発生を防止します。発生した耕作放棄地については、都市住民のボランティアによる復旧活動、市民農園の開設等の活動による解消を促進します。さらに、良好な景観の形成や生態系の保全、親水空間の形成等の環境との調和に配慮しつつ農業水利施設を計画的に整備・管理することや、生活排水処理を進めるに当たって、農村部においては、地域の実情に応じて、小規模分散型の下水道、農業集落排水施設・浄化槽を活用することなどにより、水資源の循環利用を促進します。併せて、地盤沈下などが発生するおそれのある地域では、継続して監視を行うとともに、地下水利用の適正化や表流水への転換を含めた代替水対策を進めます。

(4)都市部

 都市部においては、水循環の変化による問題が現れやすく、河川流量の減少、親水性の低下、ヒートアイランド現象等が依然として問題となっており、貯留浸透・涵養機能の回復など、可能な限り自然の水循環の恩恵を増加させる方向で関連施策の展開を図る必要があります。このため、都市計画における整備、開発及び保全の方針等の都市計画制度の活用により、地下水涵養機能の増進や都市における貴重な貯留・涵養能力を持つ空間である公園緑地の保全と創出を推進するとともに、都市内の水路等の創出・保全を図ります。また、公共施設においては緑化を推進するとともに、民有地についても特別緑地保全地区や緑化地域の指定、緑地協定等の締結の促進等により、良好な自然的環境を形成している民有緑地の確実な保全や新たな緑地空間の創出、住民参加による緑化活動等を推進します。また、住民参加による都市内の水路の保全を支援します。さらに、地下水涵養を促進するため、雨水浸透施設の整備、流出抑制型下水道の整備、透水性舗装の促進等を進めます。また、雨水や下水処理水等の生活用水としての利用等を進めるとともに、貯水池の弾力的な運用や下水の高度処理水等の河川還元等による流量の確保等の取組を進めます。河川護岸の整備に際しては、表流水と地下水のつながりを確保するとともに、多自然型川づくり等自然に配慮した河川整備を進めること等により水辺の自然環境を改善し、生物の良好な生息・生育の場となる水の流れを確保します。さらに、親水性の向上、ヒートアイランド対策等への有効活用が必要な地域では、都市内河川や地下湧水、下水の高度処理水等の利用を環境影響に配慮しつつ進めます。また、地下水使用の抑制が必要な地域においては、表流水への転換を含めた代替水対策や地下水採取規制が行われていない地域での地下水使用の合理化、新規の井戸の設置規制、既存の井戸の利用者に対する節水指導等を進めます。

(5)閉鎖性水域における取組

 湖沼、内湾等の閉鎖性水域においては、流域からの負荷が流入・滞留しやすく、内部生産や底質からの溶出と相まって、水質の改善がなかなか見られず、水域によっては水生生物等の生育・生息に障害を生じていることから、流域全体を視野に入れて、山間部、農村・都市郊外部、都市部における上記施策の総合的、重点的な推進を図ります。また、浄化の機能及び生物多様性の保全及び回復の観点から、湖沼においては、湖辺の植生や水生生物の保全等湖辺環境の保全を図ります。閉鎖性海域においては、失われつつある自然海岸、干潟、藻場等浅海域について、適切な保全を図り、干潟・海浜、藻場等の再生、底質環境の改善に向けた取組を推進します。

4 重点的取組事項

(1)各主体に期待される取組

  1. ア 流域の住民、事業者、民間団体等に求められる取組
     流域の住民、事業者、民間団体等は、流域の水循環の現状について、その問題点を自ら認識して、それぞれの立場による意見の相違を克服し、目標となる望ましい水循環の姿を共有しようとする取組に主体的に関わることが期待されます。そして、環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画の策定等の取組に参加し、節水意識、汚濁負荷の排出の抑制、水の循環利用等に対する意識を向上させ、具体的な行動を実践することが重要です。

  2. イ 地方公共団体に求められる取組
     地方公共団体は、豊かな地域づくりの一環として、流域での環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画策定等において積極的な役割を果たすことが期待されます。
     計画の策定等取組の実施に当たっては、流域の住民等と共有できるよう、流域ごとの水循環の現状を把握し、目標を設定して、わかりやすく提示することが重要になります。その前提として、現状の水循環の診断のため、水質、水量、水生生物等の水環境の状態をきめ細かくモニタリングし、把握していく必要があります。
     そして、計画の作成に当たって設置された流域協議会等を通じて、国の地方組織等とも連携し、国のみならず、流域の住民、利水者、事業者、民間団体等関係者の意見を取り入れ、その取組への参加を促す必要があります。継続的な取組を促すという観点からは、これら関係者とのパートナーシップによる連携体制の構築に加え、対策の費用対効果の検討等による合意形成の仕組みづくりが必要となります。また、実効的な取組とするためには、水の利用や管理に関する個別計画の基本的方向等をその内容に含み、また、流域における土地利用、まちづくり、環境保全、森林、農地等関連分野の各種計画との整合性にも配慮することが重要です。さらに、対策の効率性、実施状況等を踏まえ、必要な場合は見直していくことも重要です。
     また、都道府県については、流域の関係市町村による共同の取組を促進させる役割や、国の地方組織との調整・連携の役割も果たすことが必要です。

(2)国の取組

 国は、流域の地方公共団体等による環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画の作成・実行を促進・支援します。
 国の地方組織は、流域協議会等を通じ、地方公共団体や関係者との調整・連携を進めるとともに、引き続き、直轄管理区間等における国の直轄事業において環境保全上健全な水循環の構築に向けた取組を積極的に推進します。
 また、国は、流域の住民が、流域ごとの特性に応じ、環境保全上健全な水循環の構築の観点から、水循環の課題点を共有し、目指すべき将来像を設定することを支援するため、住民等が参加しながら、水質のみならず、水量、水辺地、水生生物を含めた水環境を総合的に評価する手法や効率的・効果的なモニタリング体制等、環境保全上の観点から水循環の健全性を診断していく上で効果的な手法等の検討を行います。
 さらに、関係省庁の連携を一層強化するとともに、事例や関連施策等の情報の収集・整理・提供により、進捗状況の把握、課題の整理・抽出等を行い、必要な場合は、関連施策の調整及び地方公共団体等の関係者間の調整を行います。また、水循環の機構の解明等水循環の健全化に資する調査研究・技術開発を推進します。加えて、流域住民等の関係主体による連携・ネットワーク形成等の支援に取り組みます。また、各種施策の費用対効果等の研究を行い、その成果の関係主体間における共有化を推進します。さらに、我が国における環境保全上健全な水循環に関する取組を国際的に発信し、世界の水環境問題の解決に貢献します。また、節水意識、汚濁負荷の排出の抑制、水の循環利用等に対する国民の意識を向上させるための取組を推進します。

5 取組推進に向けた指標

 流域ごとの取組において、平常時の河川流量、地下水涵養量等水循環の健全性に関連するデータを、流域の特性に応じて指標として用い、取組の進行管理を図ることが重要です。
 水質のみならず、水量、水辺地、水生生物を含めた水環境を総合的に評価する指標や効率的・効果的なモニタリング体制等、環境保全上の観点から水循環の健全性を診断していく上で効果的な指標の確立を目指して検討を行う必要があります。
 水質は、水循環の健全性の重要な側面であり、その目標については、公共用水域及び地下水について水質汚濁に係る環境基準が設定されていることから、基本的に、その維持・達成を目標とするとともに、その維持・達成状況を指標の一つとして関連施策の進行管理を図ります。
 また、環境保全上健全な水循環の構築に関する計画の流域ごとにおける作成・改定数を把握し、これを一つの指標として取組状況の進行管理を図ります。
 加えて、我が国全体での把握が可能であり、環境保全上健全な水循環と深く関連するデータとして、例えば、次の事項を参考として、取組の状況を把握します。

  • ・水質等のモニタリング地点数
  • ・雑用水の利用量
  • ・湧水の把握件数
  • ・水環境の保全の観点から設定された水辺地の保全地区等の面積
  • ・主要な閉鎖性海域の干潟面積
  • ・全国水生生物調査の参加人数

(重点分野政策プログラム)
      第5節 化学物質の環境リスクの低減に向けた取組

1 現状と課題

(1)化学物質の問題の背景

 我々の暮らしは、多くの種類の化学物質を様々な用途に使うことによって成り立っています。化学物質には、合成により製造されるもの、天然に存在するもの、燃焼などにより非意図的に生成するものがあります。合成により人為的に作られる化学物質には、成型加工して工業製品や日用品として使用されるものと、製造された状態のまま、または複数の化学物質と混ぜ合わせて配合品として使用されるものがあります。化学物質の製造量・存在量には多寡があり、環境への排出や環境中の残留状況も異なります。また、有害性、環境残留性、生物蓄積性、長距離移動性等の性質も様々です。

 このような化学物質の適切な管理には、化学物質に固有の有害性の程度と人や生物へのばく露のレベルを考慮し、環境を通じて人や生態系に悪影響を及ぼす可能性(環境リスク)をできるだけ少なくすることが基本となります。しかし、その環境リスクは科学的に完全には解明されてはおらず、管理に際して不確実性の中での意思決定が必要となることがあります。

(2)これまでの対策の推移

 化学物質の「環境リスク」の概念を打ち出したのは、第一次環境基本計画(平成6年)でした。第二次環境基本計画(平成12年)において、有害性とばく露を考慮し、規制に加え自主的取組等の多様な対策手法を用いて環境リスクを低減するという方向が明示され、その後、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化学物質審査規制法」とします。)に基づく規制にばく露の観点や動植物の保護の観点が導入されたほか、大気汚染防止法に事業者の自主的取組が位置付けられるなど、取組が進められました。その結果、有害大気汚染物質やダイオキシン類の対策等は大きな成果を挙げました。

 しかし、化学物質の環境リスクの低減のためには、なお多種多様な課題が残されています。また、今後5年程度を見渡せば、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化学物質排出把握管理促進法」とします。)については平成19年以降、化学物質審査規制法については平成21年以降にそれぞれ法律の施行状況について検討を加え、結果に応じて必要な措置を講ずることとされています。

(3)有害性、ばく露、リスクに関する情報の不足

 市場に流通している化学物質について有害性やばく露、環境残留性に関する情報が不足していることが課題として挙げられます。我が国では、化学物質審査規制法に基づいて、新規に製造・輸入が行われる化学物質については事業者が事前に国に届け出る仕組みが整備されています。同法の公布時(昭和48年)に既に製造又は輸入が行われていた約2万種の既存化学物質については、これまで国が安全性の点検を実施してきました。平成16年度までの調査済み又は調査着手済みの既存化学物質の数は、分解性・蓄積性が1455物質、人毒性が275物質、生態毒性が438物質となっています。また、OECD高生産量化学物質プログラムにおいて、我が国の政府及び化学業界も積極的に参加して安全性点検を進めています。今後、産業界と国が連携して、安全性点検をさらに加速化することが必要になっています。また、化学物質の特性には、免疫系や神経系への影響、他の物質との複合影響、次世代への影響の懸念や、食物連鎖を通じた蓄積性、地球規模での長距離移動性等、科学的なメカニズムが十分に解明されておらず、多様なリスクを評価するための実用性の高い試験・評価方法を研究開発することが課題となっているものもあります。

 ばく露に関する情報も不足しています。製造・輸入量や用途、環境への排出量については、化学物質審査規制法や化学物質排出把握管理促進法に基づき、一部が把握されているのみです。環境中の残留量についても一部の物質がモニタリングされているにすぎず、環境中で検出されてもその発生源や排出経路、人や動植物へのばく露経路の特定が困難な場合があります。ばく露の把握に当たっては、排出源や排出経路の多様さ、天然由来の化学物質の存在に起因する地域特性についても、十分な考慮が必要です。さらに、製品中に含まれている化学物質の種類・量や、製品の廃棄に伴う排出量も必ずしも十分に把握されていません。

 化学物質の有害性やばく露に関する情報は、製造事業者や使用事業者が把握していることもありますが、その情報の関係者間での共有が必ずしも十分ではありません。最終製品に含まれる化学物質についてどのような情報を消費者に提供していくべきかについても課題となっています。

(4)化学物質の特性等に応じた様々な対策手法の必要性

 化学物質は、多様な用途に用いられ、製造・輸入から使用、リサイクル、廃棄に至るライフサイクルの各過程で環境に排出される可能性があり、その有害性や環境中での挙動も一様でないことから、化学物質の特性に応じてライフサイクルの各段階で様々な対策手法を組み合わせて用いる必要があります。

 事業者の自主的取組と行政によるチェック、情報公開、基盤整備を組み合わせた柔軟な手法から、製造、使用、排出等の規制に至る様々な手法を駆使し、消費者、事業者等の各主体がリスク低減に向けた行動を取るようにすることが課題となっています。

 生態系保全に関する化学物質対策は、第二次環境基本計画以降、化学物質審査規制法における規制の導入、農薬の評価手法の見直し、水質環境基準の設定等で進展を見ましたが、評価の対象となっている特定の生物への影響と生態系保全の関係についての考え方、水域以外の生態系の保全のための影響評価の手法、用途・使用形態に応じた管理の考え方等が必ずしも十分に確立しておらず、その発展が必要です。

 さらに、アスベスト問題等の経験を踏まえ、国際的な動向の把握や関連情報の共有を通じ、環境リスクを見逃さないような対策を講ずるとともに、情報公開の徹底により、国民の信頼を確保することが重要です。

(5)「安全」と「安心」のギャップ

 化学物質の環境リスクの低減を通じてより安全な社会を実現することに加え、化学物質の安全性についての国民の理解が進み、国民が安心できる社会を実現することも重要な課題です。例えばダイオキシン類や内分泌かく乱作用の問題では、最新の科学的知見に基づいて想定される環境リスクについての情報提供が十分でなく、国民が不安に感じるリスクとの間に、大きな乖離が見られたことがありました。化学物質による環境リスクを完全になくすことは不可能であり、環境リスクに関する情報・知識を関係者が共有し、情報に関する共通の理解と信頼の上に立って、社会的に許容されるリスクについての合意形成を図る必要があります。

(6)国際的な課題に対する我が国からの情報発信

 近年、化学物質対策は国際的な要素が強くなっています。東アジア地域等の中進国では化学物質の製造・使用量が急激に増加しており、適切な化学物質管理手法を確立することが急務となっています。また、国際貿易を通じて世界経済が一体化していく中で、他国における化学物質規制が、化学物質やそれを含む製品を輸出する我が国に及ぼす影響が大きくなってきています。例えば、欧州における製品中の有害物質規制や、事業者による化学物質の安全性評価の義務化等の検討が、我が国の企業の化学物質管理にも大きな影響を与えるようになっています。さらに、地球規模での、又は国境を越える問題の解決に向け、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等、国際的な対策の枠組みの整備が進んでいます。また、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の導入も国際的に合意されています。
 こうしたグローバル化の流れの中で、他国の動向に受動的に対応するだけでなく、我が国の化学物質管理制度、事業者や国民の取組等の情報発信を積極的に行うとともに、共通の課題への国際協調の下での対応を通じ、国際的な調和が図られた化学物質管理の確立に向けて、国際貢献を進める必要があります。

2 中長期的な目標

 以上のような背景を踏まえ、2025年頃の社会において以下の事項が達成されることを目標として、各種の取組を進めていきます。

  • ○化学物質の環境リスクの最小化が図られていることが確認できるよう、主要な物質の有害性・ばく露に関する必要な知見が、秘密情報に留意しつつ、化学物質のライフサイクルを通じてできる限り共有され、その情報に基づいて科学的な手法で環境リスクが評価されていること。

  • ○深刻な影響又は不可逆的な影響が懸念される問題については、完全な科学的確実性が欠如していることを環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由とせず、必要に応じて機動的に対応し、迅速にリスク評価を実施し、その結果が適切に対策に反映されていること。

  • ○消費者、事業者、民間団体、行政等の様々な主体が、化学物質の環境リスクについての理解と相互の信頼を深め、自らの役割を自覚しながら、リスク低減のための行動を取っていること。

  • ○化学物質管理に関する国際協調が進み、事業者の技術開発インセンティブがさらに高まっていること。また、我が国が化学物質の安全性の確保のための国際的な取組に多大な貢献を行っていること。

3 施策の基本的方向

 上記の中長期的な目標の達成に向け、以下に示す基本的な方向に沿って対策を進めていきます。

  1. (1)環境リスク低減対策の基礎として、科学的な環境リスク評価を進めます。このため、我が国独自のデータを取得することを含め、化学物質の有害性に関するデータの収集、化学物質の製造量、用途、排出量、排出経路、廃棄方法等の基礎情報の整備、環境残留状況の把握等に積極的に取り組みます。これらの情報を、製造事業者、ユーザー企業、消費者、廃棄物処理事業者等の関係者でできる限り共有します。その際、新しくより安全な代替製品及び工程の開発の革新を推進するため、商業的、産業的な秘密の情報や知識を国の法令等に基づき保護します。しかしながら人の健康と安全及び環境に関する情報は、秘密とはみなされないことに留意します。産学官の研究機関と連携し、研究者の育成を図りつつ、リスク評価、新たなリスク発見のための手法の開発を進めます。

  2. (2)科学的なリスク評価、化学物質が国民生活に与える利益及び予防的取組方法の考え方を考慮した上で、化学物質のライフサイクルにわたる環境リスクを最小化し、人の健康及び生態系への被害を未然防止するための取組を進めます。重大な環境リスクが見逃されることのないよう、国内外の新たな知見ないし情報に常に注意を払いながら、多様な問題に応じた様々な対策手法を組み合わせた取組を推進します。総合的な観点から、関係省庁の緊密な連携の下、地方公共団体や事業者、民間団体等と協力し、化学物質管理を推進します。過去の汚染の蓄積等の負の遺産の適正処理を進めます。

  3. (3)消費者、事業者、民間団体、行政等の様々な主体が、各々の活動を通じて環境リスクが低減した社会を協力しながら作り上げていくことが可能となるよう、環境リスクの現状やリスク管理の取組についての理解を関係者が共有し、信頼関係を高め、関係者が自ら環境リスクに関する判断をするための基盤を整備します。リスク評価・管理の各段階で情報公開を進め、環境教育、人材育成の取組を進めます。

  4. (4)平成18年に合意された国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って、国際的な観点に立った化学物質管理に取り組みます。先進国としての責任を踏まえながら、国際協調に基づく環境リスクの評価、化学物質の適正な管理や地球規模での環境リスクの低減対策に貢献します。化学物質管理のための国際的な枠組・国際標準の構築に向け、我が国の経験と技術を踏まえた積極的な情報発信、国際共同作業、開発途上国への技術支援を進めます。

4 重点的取組事項

(1)各主体に期待される役割

 主体毎に次のような役割が期待されます。

  1. ア 事業者
     化学物質の製造、輸入、販売、使用、廃棄等を行う際に、関係法令を遵守するだけでなく、自主的な化学物質の環境リスクの評価・管理、情報提供、地域住民との対話等に取り組むことが期待されます。特に、化学物質や製品を安全に使用するために必要な健康及び環境への影響などに関する情報が、関係者に入手可能となるよう、積極的に取り組むことが期待されます。

  2. イ 国民
     化学物質の環境リスクに関する的確な情報の入手と理解に努め、自らの生活で使用する化学物質に関する環境への負荷の低減に取り組むことが期待されます。

  3. ウ 国及び地方公共団体
     人材育成、社会資本整備や各種の支援策を通じて事業者・国民の取組の基盤を整備するとともに、環境リスク低減のための制度の構築・運用に取り組みます。

(2)科学的な環境リスク評価の推進

 平成20年(2008年)の目標年度に向けて、既存化学物質の安全性情報を収集・発信する官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(通称JAPANチャレンジプログラム)を推進します。平成20年4月以降に進捗状況及び成果を踏まえ、同プログラムの中間評価を行います。また持続可能な開発に関する世界首脳会議における目標を踏まえ、平成32年(2020年)までに有害化学物質によるリスクの最小化を図るべく、構造活性相関等の簡易・迅速な化学物質の安全性評価手法を開発し、人の健康及び生態系に与える影響について科学的知見に基づき評価を行い、適切な管理を促進します。

 規制や事業者による自主管理等の対策の有効性評価に資するため、大気、水質、底質、土壌及び生物のモニタリングを進めます。その際、代表的な地点での測定によるスクリーニングから、一般環境や発生源周辺等の濃度分布を経時的に把握するための環境監視等、多段階のモニタリングを必要に応じて計画的に進めます。また、個人情報の保護、試料提供に係る倫理面等に十分配慮しながら、生体試料中の化学物質残留状況を調査します。遡及的な環境分析ができるよう、試料の長期保存を進めます。

 ばく露の把握に必要な製造量、使用量、用途等に関する情報は、現状では一部の物質について収集されているのみですが、ばく露量が多いと見込まれる物質の環境リスク評価に必要な情報を把握することができる方策を検討します。化学物質の製造・使用から、リサイクル、廃棄後の環境への排出、土壌や底質への蓄積も含め、人や動植物へのばく露を引き起こす過程(ばく露シナリオ)に応じたばく露量の推計手法を整備し、上記の環境モニタリング結果と合わせて、ばく露評価を進めます。重要な環境への排出源、排出経路が見落とされないよう、2020年までに、主要な化学物質の製造・輸入から使用・消費・廃棄に至るまでのトータルな流れを把握します。

 有害性及びばく露に関する情報を、秘密情報の保護に留意しながら関係者間で幅広く共有し、環境リスクの評価に役立てます。環境リスク評価は、不確実な部分も念頭においたスクリーニング評価に始まり、必要に応じ、リスク管理を視野に入れつつ詳細なリスク評価を行います。

 リスク評価を進めるための手法の開発を行います。まず、化学物質による生態系への影響について、水域のみならず、陸域等も含めた生態系の望ましい保全の在り方について検討を進め、天然由来の化学物質も考慮して、評価方法を開発します。また、生態系への影響を早期に発見するため、野生生物の観察等の取組を進めます。

 化学物質による人の健康への影響について、評価手法が確立していない免疫系や神経系への影響、内分泌かく乱作用を通じた影響等の様々な有害性を評価するための手法の開発を進めます。また、複数の化学物質による低濃度ばく露の総合的な影響、同一化学物質の多媒体経由のばく露による影響、妊婦や胎児等の感受性の高い集団への影響、発生源周辺等のばく露量の高い集団への影響等、評価手法が確立していない分野について、評価手法の開発のための研究を進めます。中長期的には、評価手法が確立した分野についての評価をリスク評価・管理に統合します。

 現在の有害性評価手法・測定技術では十分把握できないリスクを特定し解明するための調査研究、トキシコゲノミクス(化学物質による遺伝子レベルでの毒性発現メカニズムの解明や毒性予測を行う方法)等の新たな手法を用いた効率的な有害性評価手法の開発を推進します。

(3)効果的・効率的なリスク管理の推進

 既存の排出規制や製造・使用規制等の法制度を確実に履行し、環境基準や指針値が設定されている物質については、発生源周辺の居住地域も含めてそれらが維持・達成されることを目指すとともに、最新の科学的知見の収集に努め、必要に応じ基準・指針値の見直しを行います。残留性有機汚染物質等、重大なリスクが懸念される物質については、環境負荷の低減のため、利用可能な最良の技術(BAT:Best Available Techniques)又は環境のための最良の慣行(BEP:Best Environmental Practices)を用いた対策を推進します。大気、水、土壌等の異なる環境媒体への排出を総合的に削減するための取組について検討します。また、排出規制、化学物質の種類毎に行われる製造・使用管理等の異なる制度間で、情報の共用等の連携を強化します。科学的根拠に基づき、必要に応じ、有害性が類似した物質について包括的な排出削減等の対策を講ずるアプローチの導入を目指します。

 国内外のリスク評価の結果等、入手可能な情報を最大限活用し、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれのある物質について、製造、使用、排出の制限や自主管理、公的主体による社会資本整備等、多様な手法を駆使したベストミックスによる対策を推進します。その際、化学物質のライフサイクルにわたる環境リスクの低減や予防的取組方法の観点に立つとともに、代替物質の環境リスクも考慮し、様々なばく露・影響の可能性に配慮した総合的な対策を講じます。例えば、閉鎖系で使用され通常は環境への排出がない物質、製造工程で使用され工場から排出される物質、開放系で使用される物質等ではばく露の状況は大きく異なるため、物質の使用方法等に応じた環境リスク管理を進めます。

 有害化学物質の使用・排出抑制、より安全な代替物質への転換等の事業者の自主的な取組を支援します。このため、取組の参考となる指針の策定、先進的な取組を促進するための環境整備、情報公開・提供による消費・投資行動の誘導等、社会的なインセンティブを付与するための方策を導入します。

 ダイオキシン類等の残留性有機汚染物質、水銀等の有害な重金属、各種の発がん物質等、特に懸念すべき物質については、国民の健康の保護だけでなく、地球規模での汚染の低減に資する観点も含め、できる限り環境への排出を抑制します。

 過去に製造された有害化学物質や、汚染された土壌等の負の遺産については、汚染者負担の原則を踏まえつつ、土壌汚染対策法等の関係法令による適正な処理等の対応を進めていきます。特に、ダイオキシン類による土壌汚染については、発生源対策が進展した現在も、なお汚染の判明する箇所があることから、早急かつ的確な対策の実施を推進していきます。また、負の遺産を処理するためには大きな費用が必要となることから、土壌汚染対策基金の活用等により、費用負担がネックとならないようにしつつ、対策を推進していきます。

(4)リスクコミュニケーションの推進

 環境リスクに関する情報に対する国民の理解と信頼を向上させる観点から、企業等は、自主的に環境についての活動の成果を公表し、社会との対話を実施しているレスポンシブル・ケア等の取組をさらに進める必要があります。これに加えて、化学物質の有害性や製造、使用、排出等の情報が、秘密情報の保護に配慮しながら最大限入手可能なものとなり、第三者による情報の評価や双方向のリスクコミュニケーションが行われるよう支援します。このために、情報提供のための指針の作成、データベースの構築、人材の育成、リスクコミュニケーションの場の提供、国民が知りたい疑問に適切に対応するための必要な研究者を含むネットワークの構築等の取組を進めます。

 個々の消費者が商品の選択、使用、廃棄等において、化学物質による環境リスクの低減に役立つ取組を行うことができるよう、商品における化学物質の使用、有害性、環境への配慮についての情報を、表示やデータベースを通じての提供等により、わかりやすい形で入手可能なものとなるよう、条件整備を進めます。

 国民が、消費者として、また地域住民として、化学物質の環境リスクに関する情報や対話の場をさらに活用できるようになることを目指し、環境教育を推進します。

(5)国際的な協調の下での国際的責務の履行と積極的対応

 東アジア地域をはじめとする諸外国において化学物質が適正に管理されるようになることは、長距離移動や不適正な輸入を通じた有害化学物質の流入を防ぐ観点から、我が国における環境保全にも資することを踏まえ、開発途上国を中心とした国際協力・国際協調の取組を進めます。具体的には、我が国における環境モニタリング等の経験と技術をいかし、東アジア地域の国々と共同して、広範囲の環境中での化学物質の状況を把握するためのモニタリング、コンピュータモデルによる予測等の国際的な協調を進めます。また、ダイオキシン類の大幅な削減等の経験と技術をいかし、東アジア地域の国々への技術支援等を通じて、国際的な環境リスクの削減を図ります。我が国における化学物質管理の経験と技術をいかし、開発途上国における化学物質管理システム構築への技術的支援を進めます。

 化学物質は様々な国で製造・使用されるため、一国の規制・対策が貿易を通じて他国にも影響を及ぼすことを踏まえ、化学物質の評価・管理手法の国際的な調和に向けて貢献します。その際、環境リスクの低減を基本とした我が国の規制・対策の経験がいかせるよう、我が国からの積極的な情報発信を進めます。また、我が国の規制・対策の見直しに当たっては、各国の規制・対策の体系・内容と比較するとともに、国際機関の動向を踏まえ、参考となる点は必要に応じて取り入れます。

 有害性情報の収集、リスク評価、試験法の開発等に関する国際的なプログラムに対し、重要なプロジェクトの主導や国際会議の開催等により積極的に貢献しつつ、国際分担による作業を進めます。残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等の国際条約を着実に履行するとともに、国際的なモニタリングの主導、対象物質の追加の提案等、条約に基づく活動に積極的に取り組みます。地球規模での有害金属対策等の分野で、我が国の経験をいかし、国際的な化学物質管理の枠組みづくりに寄与します。

 また、化学品の分類及び表示に関する世界調和システムの2008年の実施に向けた取組を進めます。

5 取組推進に向けた指標及び具体的な目標

 いくつかの有害化学物質については、環境基準や、環境保全の上で参考となる指針値が設定されています。これらの基準・指針値の達成は、化学物質による環境汚染を防止する上で基礎的な目標です。本計画でも、例えば大気環境と水環境の両方で環境基準・指針値が設定されている物質に着目し、これらすべてに係る達成状況を指標の一つとして各種取組の進行管理を図ります。

 また、化学物質の有害性情報の収集及びリスク評価の実施は、情報の収集・評価済み物質数等で取組の進捗状況を測ることができます。既存化学物質については、安全性点検実施状況を把握して、取組の進行管理を図ります。

 リスク評価については、製造・使用・廃棄の流れの把握を含め、リスク評価の取組が進行し、又は終了している物質数を取組の進捗を測る指標として活用します。

 さらに、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量登録)データ等を用いた化学物質の環境への排出状況は、環境リスク低減のための指標として有意義に活用することができます。現状では、PRTR制度によりすべての排出源からの排出量や排出経路が正確に把握できているとは言えない状況にあり、また多種類の物質の排出量を総合化する手法等、指標化の手法も確立されていません。PRTR対象物質のうち、環境基準・指針値が設定されている物質等の環境への排出量を指標とするとともに、今後、PRTRデータ等を用いた排出インベントリの構築及び総合的な政策指標の検討に取り組みます。

(重点分野政策プログラム)
     第6節 生物多様性の保全のための取組

1 現状と課題

  1. (1)地球上に生物が誕生してからおよそ40億年が経ちます。その間、生物は環境に適応しつつ進化し、種を分化させ、豊かな生物多様性が形づくられてきました。人間の生存基盤である環境は、このような生物の多様性と自然の物質循環を基礎とする生態系が健全に維持されることで成立しています。生物多様性はまた、食料、木材、医薬品あるいはレクリエーション等、人間にとって有用な価値を生み出す源泉であるとともに、快適な生活・豊かな文化を育む根源でもあります。

  2. (2)膨大な生物進化の時間の中で絶滅した種も限りなくありますが、近年における問題は、過大に発達した人間の活動が一方的に生物種や生態系に影響を与え、しばしば種の絶滅などを引き起こしていることにあります。
      国連の主唱によりとりまとめられたミレニアム生態系評価によれば、過去50年間に急速かつ大規模に生態系が改変された結果、地球上の生物多様性の大幅な喪失が引き起こされました。また、急激に進行しつつある生物の種の絶滅に着目すると、現代は人為的に引き起こされた「大絶滅期」であるともいえます。こうした生物多様性の劇的な変化により、生態系サービス(生態系が食料、水、木材、気候の安定などの便益を提供する機能)が損なわれています。資源の多くを海外に依存する我が国は、このような地球規模での生態系の変化と無縁ではいられません。
      また、ミレニアム生態系評価では、「生息・生育地の改変」「気候変動」「外来生物」「過剰捕獲・採取」及び「汚染(特に過剰な栄養塩類の付加)」の5つの人為的変化が急激な生物多様性の喪失を引き起こす原因となっており、中でも窒素等の栄養塩類の大量投入が生態系に深刻な影響を与えているとしています。このような傾向は、我が国でも顕著に現れていますが、生物多様性の保全のための取組は、人為的な負荷を抑制し、循環と共生を基調とする社会経済システムを確立するうえで、新しい視点と展望を与えるものといえます。

  3. (3)我が国においては、様々な人間活動、人為の影響によって、次のような生物多様性保全上の3つの危機が引き起こされています。

    •  ○ 第1の危機...人間活動による生息・生育環境の悪化や種の絶滅のおそれ
         人為的な改変による生息・生育環境の喪失、分断・孤立化、劣化に加え、過度の捕獲・採取もしくは偶発的捕獲、事故等による個体数の減少が、種の絶滅を招く大きな要因となっています。
    •  ○ 第2の危機...人為の働きかけの減少に伴う里地里山生態系への影響
         伝統的な第一次産業の在り方は、人為による適度な自然への関与によって、我が国の豊かな生物相を維持・形成する役割を担ってきました。しかしながら、社会経済の変化に伴い、自然に対する人為の働きかけが減少したことなどにより、里地里山の生態系の劣化等の影響が生じています。
    •  ○ 第3の危機...外来生物や化学物質による生態系の攪乱
         国外又は国内の他地域から様々な生物種が移入した結果、在来生物の捕食、採食、競合による駆逐、在来生物との交雑による遺伝的な攪乱が引き起こされています。また、未解明な点が多いものの、化学物質による生態系への影響のおそれも指摘されています。

     また、生物多様性の意義・価値に対する理解が進んでいないこと、生物多様性の状態を把握するための基礎的な知見が十分でないこと、さらには生物多様性の危機への対処に必要な分野横断的な取組がなお十分に進展していないことも、上記のような3つの危機を深刻なものとしています。

2 中長期的な目標

 自然環境のもたらす恵みを将来にわたって継承し、自然と調和した持続可能な社会を構築するための目標は、次の3点です。

  1. (1)地域に固有の動植物や生態系を、それぞれの地域の特性に応じて保全するとともに、それらを通じて国土レベルにおける生物多様性を維持・回復すること。

  2. (2)新たに種の絶滅が生じないようにするとともに、現に絶滅の危機に瀕している種の個体数の維持・回復を図ること。

  3. (3)国土や自然資源は、生物多様性の保全と両立する方法で持続的に利用すること。

3 施策の基本的方向

 生物多様性の危機の現状、社会経済状況や国民意識の変化を踏まえて、先に掲げた目標を達成するために展開すべき施策の基本的方向を、以下に示します。

(1)保全・再生の強化

  1.  ア 生態系の保全の強化を進めるとともに、過去に損なわれた自然を再生するための取組を一層推進します。また、保護地域を中核とした国土レベル、地域レベルでの生態系ネットワークの形成を推進します。なお、生態系の保全・再生に当たっては、流域等広域的な視点や分野横断的な取組が必要です。

  2.  イ 絶滅のおそれのある種の個体数の回復、生物の生息・生育上重要な地域の保全などを通じて、種の絶滅を回避します。
  3.  ウ 外来生物による在来生物や生態系への影響を防止・軽減するための実効ある対策を着実に推進します。

  4.  エ 自然環境データを飛躍的に充実させ、科学的かつ客観的なデータを踏まえた生物多様性保全・回復のための施策の立脚点とするとともに、生物多様性の状況について一般の理解を深めます。

(2)持続可能な利用

  1.  ア 現時点では、生物、生態系のすべては解明されておらず、将来において新たな理解が生ずる可能性があることを認識し、生物の多様性に関する条約(以下「生物多様性条約」とします。)で決議された「エコシステムアプローチの原則」も踏まえ、予防的、順応的な態度で自然資源の管理・利用を進めます。
  2.  イ 地球規模で生態系サービスの低下が懸念される中、食料、木材等の資源の多くを輸入する我が国としては、窒素循環等物質収支の観点も含め、国際的な視野に立って自然環境や資源の持続的な利用の実現に努力する必要があります。
  3.  ウ 農林漁業といった一次産業に伴う活動が生物多様性を保全している面もある一方で、その在り方によっては負の影響を与える可能性もあることを認識し、生物多様性保全に資する活動や人々の生活とのかかわりの中で、生物多様性の維持と自然資源の持続的な利用を図ります。

(3)広域的・横断的な取組

  1.  ア 例えば、上流域での人間活動に伴う富栄養化が、下流域や海洋において生物多様性を脅かすことなど、生態系における物質収支の不均衡によって引き起こされる問題は、限られた地域や、個別の行政分野ごとの対症療法的な対応だけではその解決は困難です。
  2.  イ 生物多様性の保全に当たっては、流域における環境負荷の低減等、広域的なスケールでの対応、さらには異なる行政分野にまたがる対応など、地域や分野を越えた広域的・横断的な視点での総合的な取組とそのための体制づくりが必要です。

(4)主体ごとに取り組むことが期待される事項

  1.  ア 国
      「4 重点的取組事項」に記述する事項をはじめ、我が国の生物多様性保全のための取組を積極的に推進します。また、国民をはじめとする各主体の参加を促すため、各主体による活動の基礎的条件の整備、国の取組等に関する普及広報に努めます。
  2.  イ 地方公共団体
      地域の特性を踏まえた生物多様性保全のための施策を積極的に推進するとともに、地域住民の理解、参加等を促す積極的な役割を果たすことが期待されます。また、自然環境に関する情報を収集するための各種調査への貢献することが期待されます。
  3.  ウ 国民や民間団体
      国等の取組への参加にとどまらず、それぞれの地域における自発的な取組を行うことが期待されます。
      我が国の国土全体における生物多様性の保全を効果的に図るためには、アからウに掲げた国、地方及び民間による取組を一体的に進めることが特に重要です。このため、各主体間で生物多様性保全に向けた問題意識を共有し、連携を保ちつつそれぞれの取組を進めます。

4 重点的取組事項

 基本的方向性を踏まえつつ、生物多様性の保全への取組に関し重点的に取り組むべき事項は次の項目です。

(1)重要地域の保全と生態系ネットワークの形成

  1.  ア 人間活動に伴って引き起こされる環境の改変や環境負荷等による生態系の破壊、分断、劣化等による生息・生育域の縮小、消失などが進行しています。特に、湿原や干潟等の湿地は、全国的に減少・劣化の傾向にあります。

  2.  イ このため、自然環境保全地域、国立公園をはじめとする自然公園、鳥獣保護区、生息地等保護区などの各種保護地域制度を活用し、十分な規模と適切な配置の保護地域を設けることなどにより、生物多様性の保全の強化を図るとともに、奥山から里地里山、都市、さらには海に至るまで、生息・生育空間の連続性や適切な配置が確保された、国土レベルの生態系ネットワークの形成を推進します。

(2)外来生物対策の充実

  1.  ア 侵略的な外来生物の導入に伴い、深刻な生態系の攪乱、人の生命・身体、農林水産業への影響が懸念されています。外来生物の利用にあたっては、野生化の防止、代替的手段の検討など生態系等に対する影響を防止するための対策を検討するとともに、防除事業や損なわれた生態系を再生する取組が必要です。

  2.  イ このため、平成17年6月に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき、特定外来生物の飼養、輸入等に対する規制及び防除事業を着実に実施します。また、ペット等外来生物の適切な取扱いに関する普及広報活動の強化に努めます。また、平成18年1月より、国立公園内の特別保護地区等において、新たに動植物の放出に関する規制を行っています。

(3)野生動植物の保護管理と個体数の回復を目指す対策の充実

  1.  ア 多くの野生動植物の生息・生育環境の劣化、個体数の減少が進行し、地域個体群の中には絶滅の危機に瀕しているものもあります。一方で、野生鳥獣による農林水産業等への被害の拡大など人と鳥獣のあつれきが各地で見られます。
  2.  イ このため、絶滅のおそれのある希少野生動植物の現状を的確に把握しながら、生息・生育地の保全・再生に取り組むとともに、様々な主体による取組を支援します。国内希少野生動植物種については、捕獲・採取、流通の規制のほか、生息・生育状況の監視、生息・生育環境の改善、飼育下での繁殖、個体の野生復帰等を内容とする保護増殖事業計画の策定とその着実な実施を推進します。なお、個体数の回復に当たっては、遺伝的な多様性の確保にも配慮することが必要です。また、鳥獣被害の防止や健全な地域個体群の維持を図るため、特定鳥獣保護管理計画の策定や、広域的な野生鳥獣の保護管理を推進するとともに、絶滅のおそれのある野生生物の細胞や遺伝子などの長期保存を推進します。さらに、国際的な枠組により、野生動植物の適正な取引の確保に引き続き取り組みます。

(4)自然の再生・修復の推進

  1.  ア 自然の回復力を人間が手助けする形で、自然の再生・修復を積極的に推進することが必要です。平成15年1月に自然再生推進法が施行され、平成18年3月現在、全国18か所で自然再生協議会が発足しています。
  2.  イ 引き続き、自然再生推進法の枠組み等を活用し、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、さらには都市及びその周辺の緑地など、生物多様性の保全上重要な役割を果たす自然環境について、関係行政機関の連携と専門家や地域住民、NPO等多様な主体の参画を得て、より一層積極的にその再生・修復を推進します。

(5)里地里山の保全と持続可能な利用

  1.  ア 人間と自然のかかわりあいが作り出してきた里地里山は、日本の国土の約4割を占めています。里山の中核をなす二次林とともに、人工林、水田等の農地、ため池、草地等がモザイク状に組み合わされ、固有種を含む多くの野生生物が生息・生育するとともに、地域固有の景観を形成しています。しかし、近年の産業構造、社会構造の変化に伴う耕作放棄地の増加、里山林の利用形態の変化等により、地域特有の生物の生息・生育環境の質が低下したり、独特な景観が失われつつあります。
  2.  イ 里地里山は、規制的な措置よりもむしろ積極的に活用することを通じて保全されてきました。このため、農林業の振興を図る中で多様な生物の生息・生育地等を保全するとともに、都市住民の求める自然とのふれあいや環境学習の場としての活用を図ることや、行政・専門家・地域住民・NPO等の連携による体制づくり、中山間地域等直接支払制度などの支援措置、山村地域活性化への支援、文化的景観への支援、NPOや土地所有者等の活動への支援、土地所有者等との協定の締結といった種々の仕組みを幅広く活用しつつ、地域における人々の生活や生産活動とのかかわりの中で総合的に保全します。

(6)海洋における生物多様性の保全

  1.  ア 海岸、浅海域、外洋を含め、海洋は島国である我が国の生物多様性を支える重要な環境のひとつといえます。海棲哺乳類、海鳥類、ウミガメ類、魚類等は、その生活史において長距離を移動・回遊し、また陸域を利用するものも多いため、科学的根拠に基づいた、広域的・国際的な視点での保全が重要です。あわせて、魚類等は日本の食生活を支える生物資源として、その保全と持続的な利用という視点も重要です。
  2.  イ 生物多様性保全上重要な役割を果たしている藻場・干潟等浅海域の保全・再生に取り組むほか、回遊性の高い種については、国際的な情報交換も含め、生態の解明等基礎的なデータの蓄積を推進します。また、引き続き漁獲可能量制度や資源回復計画などにより水産資源の持続的かつ最適な利用に努めるとともに、国際的な海洋生物資源に関する資源調査等科学的研究を推進します。

(7)国際的取組

  1.  ア 渡り鳥や海棲動物が行き来し、地理的・地史的にもつながりが深い近隣諸国との間で、国境を越えた生物多様性保全のために連携する必要があります。また、多くの資源を輸入に頼る我が国は、地球規模で悪化が進む生態系の保全に対し積極的に貢献する責務を負っているといえます。
  2.  イ 生物多様性条約、ラムサール条約をはじめとする国際的な枠組み、二国間の渡り鳥等保護条約・協定等に基づく取組を推進します。また、国土レベルの生態系ネットワークの形成や、サンゴ礁、湿地、渡り鳥、海棲哺乳類等の国際的モニタリング調査への参画にあたっては、特に東アジア等関係の深い地域との関連性も視野に入れる必要があります。さらに、国際的な視野の下での生物多様性保全に貢献するため、熱帯地域をはじめとする森林の違法伐採問題に取り組むとともに、海外の自然資源への負荷を軽減するためにも、国内では農地や森林等の自然資源の一層の有効活用を図ります。

(8)広域的な観点での自然環境データの整備

  1.  ア 生物多様性の保全を図るため、全国的、さらには特に関係の深い東アジア等も視野に入れた、より広域的な観点に立ち、自然環境の現状と時系列的な変化を的確に捉える科学的かつ客観的な自然環境データの一層の集積を図り、それらを通じて生物多様性保全に向けた様々な主体による取組のための基礎的条件の整備が必要です。そのためには、各省庁間の連携、国と地方・民間との連携等を通じたデータの収集・提供等の体制の整備が不可欠です。
  2.  イ 環境省、農林水産省、国土交通省をはじめとする関係各省庁等の実施する調査から得られる各種の自然環境データについて、国、地方、NPO等の各主体におけるデータ整備の進展を踏まえ、情報の相互利用を進める体制を構築します。また、定点における継続的なモニタリング調査の充実にも取り組んでいきます。さらに、フィールド調査、分類、生態学等の研究などに携わる人材の養成、海外を含めた大学や地方・民間の調査研究機関、博物館等相互のネットワークの強化等を通じた、情報の共有と公開に取り組みます。こうした体制整備等を通じて、自然環境データの充実を目指します。

5 取組推進に向けた指標

 生物多様性は、多くの種が相互に、そして大気や水などの環境要素とも深く関係し合う中で形成されており、その状態を単純に評価できるものではありません。また、生物多様性を変化させる人間活動などの要因とその結果としての生物多様性の状態との関係も極めて複雑であり、その因果関係を解明することは容易ではありません。このような特性から、生物多様性の分野は、元来、定量的な指標になじみにくいことを認識すべきです。
 また、生態系・種・遺伝子等の各レベルごとに、要因・状態・対策に関するものを示すなど、一連の指標群としての構造化を図ることが望まれますが、全国的な調査データの整備状況や更新期間等様々な面で問題や限界があり、現時点で構造化された指標群を示すことは困難です。
 しかしながら、それらを前提としたうえで、あえて指標を用いることで生物多様性に対する認識を深め、その保全のための取組を進展させることもまた重要な視点です。このため、指標となり得るかどうか、また具体的な数値をどのように評価するかという課題はあるものの、厳密な意味での因果関係や指標の構造化の可否にとらわれることなく、生物多様性保全との間にある程度の関係性がある取組等の中で、データの把握に特別の困難を伴わないものをいくつか取り出して指標として用います。
 生態系レベルでは「自然環境保全基礎調査の植生自然度」、農業分野における「田園自然環境の創造に着手した地域の数」、河川及び港湾における「失われた自然の水辺のうち、回復可能な自然の水辺の中で再生した水辺の割合」及び「失われた湿地や干潟のうち、回復可能な湿地や干潟の中で再生したものの割合」、都市域における「水と緑の公的空間確保量」を用います。また、国有林野における保護林について、その箇所数を試行的な指標として用います。種レベルでは、「脊椎動物、昆虫、維管束植物の各分類群における評価対象種数に対する絶滅のおそれのある種数の割合」と「保護増殖事業計画など種の回復のための計画数」を用います。さらに、社会参加という観点も含めた全体的なものとして「自然再生推進法に基づく協議会の数」を用います。
 これらについて、引き続き議論を進めていくことはもちろんですが、これらのほかにも、たとえば生態系ネットワーク形成など新たな取組の進展にあわせて、検討をさらに深めることも必要です。その際、生物多様性条約の「2010年目標」の進捗状況を評価するための指標案の検討や、ミレニアム生態系評価において生物多様性に関する指標の一般的な考え方が示されるなどの国際的な動向も踏まえることも重要です。
 なお、基礎となる客観的で網羅的な調査データの収集が何より重要であり、そのための十分な体制等を飛躍的に充実させるべきことは言うまでもありません。

(重点分野政策プログラム)
  第7節 市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり

1 現状と課題

(1)意識・枠組みの進展と、実際の行動との格差

 1992年の国連環境開発会議(地球サミット)において、持続可能な開発に向けて世界各国が取り組むことが合意されました。その後、持続可能な開発を目指し、環境的側面と経済的側面を統合的に向上させることは、政府部内、民間において、21世紀に取り組むべき重要な課題と認識されるようになりました。
 地球温暖化問題など環境問題の深刻さについての危機意識が広く共有されてきました。また、質的に向上し、良好に維持された環境に生きることに、生活の価値を見出す動きも出てきています。さらには、欧米市場を発信地として、環境問題への取組を含め企業の社会的責任を意識する動きが国際的な広がりを見せ、国際標準化機構(ISO)による規格化が始まっています。このように消費者、企業など経済の各主体の環境保全意識は向上してきていると指摘できます。
 民間における取組の枠組みづくりも進展しています。環境ラベリング制度では、エコマークなど環境負荷の小さい商品を認定するものに加え、物流分野で積極的に環境負荷の低減に取り組む企業や商品を認定するエコレールマークのような環境負荷の小さいサービスを対象とした新しい制度も始まっています。グリーン購入の取組は市場に広がってきました。また、持続可能な森林経営の行われている森林やそこから産出される木材・木材製品を取り扱う事業者を評価・認証する森林認証の取得も進んでいます。ISO14001やエコアクション21といった環境マネジメントシステムの制度づくりや、企業によるこれら認証の取得も進んできています。我が国は、環境マネジメントシステムの取得企業数は他国と比較しても多く、また環境ラベリングやグリーン購入の国際的ネットワークの事務局を務めるなど、世界を先導する活動が行われています。
 一方、個別の商品選択(エコ商品の販売・購入)、環境に配慮した企業に対する投資活動(エコファンド・SRI(社会的責任投資))などを見ると、こうした環境保全意識や取組は、消費者や企業による環境負荷の少ない行動に必ずしも十分には結びついていません。
 その原因としては、第一に、生産以外の消費、流通、小売、投資等の経済主体において、自らも環境への負荷の少ない経済行動をとらなければならない、との意識が十分ではない点があげられます。これらの主体の活動そのものに伴う直接的な環境負荷は必ずしも大きくはありませんが、その行動が、間接的に生産や廃棄に影響を与え、経済活動全体としての環境負荷を大きく左右することへの理解を深める必要があります。
 第二に、実際の持続可能な消費行動に必要な環境に関する情報が、消費者等に的確に届いていないことが指摘できます。消費者に分かりやすい情報提示や、流通・小売りなどでの情報伝達、企業と、消費者などステークホルダーとの双方向での環境コミュニケーション等が必ずしも十分でないと考えられます。
 第三に、環境への取組への具体的なインセンティブが十分ではない点が指摘されます。環境の価値はそのままでは市場では経済的に十分に反映されていないため、取組を評価する機能が社会的に整備されていません。企業自体にはこうしたインセンティブや機能を作り出すことは困難です。公的な価値実現を担う政府、NPOなどの働きにより、情報流通の促進やインセンティブの形成などが進み、市場が環境への取組を評価するものに進化することが不可欠となっています。

(2)環境負荷の少ない技術、ビジネスモデルへの「革新」

 経済活動において環境問題を解決するためには、市場自体が環境への価値を評価するようになるとともに、こうした価値の変化に対応して、技術や経済活動の仕様・ビジネスモデルの「革新」が起きてくることが必要です。
 環境負荷を低減させる科学技術の開発は問題解決の鍵の一つであり、環境分野での技術開発への投資を重点的に行っていく必要があります。新しい技術が普及するためには、その技術を活用した経済活動のモデルを作り出していくことが不可欠です。
 また、必ずしも技術の革新がなくても、個々の経済活動の「ビジネスモデル」を環境負荷の少ないものへと革新し、大きな効果を生むことができます。既存の生産体制を環境負荷の少ないものに組み替えることや、生産、流通、消費、投資の組合せを工夫し、環境への負荷の少ない商品・サービスを市場に幅広く提供することにより、環境負荷を低減できます。
 環境分野での革新に有利な状況も生まれています。我が国においても、経済的規制緩和、経済慣行の変化などにより、新規起業や新しい事業への挑戦が容易となるような市場環境が形成されつつあります。環境分野は、社会的・経済的な需要が大きく、新しい挑戦を可能にする重要な分野です。ベンチャー企業や、コミュニティビジネスに携わり、環境に取り組むことを職としようとする人々が若年者の中にも多く見られます。企業による新しい取組、ベンチャー企業や、コミュニティビジネスでの環境保全への事業展開が盛んになることにより、環境への負荷の少ない社会づくりに市場が貢献し、同時に新しいビジネスが生まれ、経済が活性化していくことが期待されます。

2 中長期的な目標

(1)目指すべき経済の姿と、環境の価値の市場への反映

 今世紀の第1四半期を見通した中長期的な視点からは、環境保全の観点からより望ましい経済が実現された社会においては、以下のような経済活動を実現することが求められます。

  • ○より少ない物質投入・廃棄から、より多くの「価値」が生み出されること
      製造業など物資を扱う経済活動において、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の徹底をはじめとして、天然資源の消費を抑制し、原材料、製品等が廃棄物等となることをできるだけ抑制する努力により、徹底的に物質的無駄を省き、環境負荷を生む可能性のある物資の利用の少ない経済活動が行われなければなりません。また、物資自体ではなく、その物資が果たす機能を取引する産業活動や、人間の知的活動や技そのものを売るサービス化も有効です。

  • ○自然のシステム、生態系を尊重しながら、経済的価値を生み出すこと
      農林水産業の営みや自然を資源とする観光活動、様々な開発行為は、その活動が行われる地域の自然の恵みをいかして価値を生み出す経済活動ということができます。自然への介入を全く排除することは不可能ですが、介入を行う際には、生態系にできる限り逆らうことなく、むしろその自然の力を活用して、その恵みを最大化するような活動を目指すことが求められます。
      現在、大量生産・大量消費・大量廃棄や、自然に大きな負荷をかけるような経済活動が依然として多く見受けられます。現在の経済を、環境への負荷の少ないものへと変えていくためには、環境利用のコストが価格を通じて十分市場に反映されること等により、環境への正と負の影響がともに市場での評価の対象となり、その結果、環境によい商品・サービスが優先的に顧客や消費者から受け入れられるものとなることが必要です。
      また、環境をストックとしてとらえてみると、良好に保たれた大気、土壌、生態系等は農林水産業や観光において経済的価値をもたらす一方、汚染された大気、土壌等は、健康被害や処理費用といった形でコストを社会にもたらします。また、人工物である社会資本を環境の視点からとらえると、省エネルギー性能や耐久性が高い建造物は、ライフサイクルのCO2排出抑制や廃棄物の発生抑制の観点から、環境負荷が低いものです。またそれは、廃棄物処理コストや燃料コストの面でも有利です。このように環境や社会資本といったストックを環境負荷の少ない状態に保っていくことは、経済的にも重要であり、その点から、ストックの市場での評価においても環境の価値が反映される必要があります。
      これら環境の価値は、そのままでは経済的に市場で反映されないため、環境への負荷、改善効果を市場に組み込むとの観点から、政府の施策は重要となります。政府が、自主的取組手法、規制的手法、経済的手法、情報的手法など多様な政策手段を動員して、対策を推進し、市場を支える基本ルールを形成していくことが必要です。その際、経済主体の自主性による創意工夫、費用効果的な取組を最大限引き出すとの観点から施策を展開することが重要です。

(2)市場が変わるために必要な取組

 各主体の経済活動を環境に配慮したものとしていくためには、市場において次のような取組を進められることが必要です。政府はこうした活動が市場で展開できるよう、取組を進めます。

  • ○環境が市場で高く評価される価値観が形作られ、各経済主体の取組能力が向上すること
      環境負荷が少ないことが、企業にとっての利潤、消費者にとっての価格・性能と同様に評価されるような価値観が市場において形成されることが必要です。市場において、地球環境の保全、循環型社会の形成、生物多様性の保全などへの取組を評価する価値観が形成され、消費者、企業、投資家などの経済主体が、その経済行為の中に環境への配慮を組み込み、また、積極的に環境に取り組む能力を向上させていくことが重要です。

  • ○製品や企業の環境面から見た情報が、分かりやすく提供され、市場に参加する関係者の間に普及すること
      企業や消費者が市場において環境面を配慮して適切に行動するためには、製品の環境負荷に関する情報や企業の環境に関する情報が、経済活動の際の判断材料として適切に提供されることが不可欠です。環境保全へのプラスの効果、環境負荷増大によるマイナスの効果のいずれもが同様に提供される必要があります。

  • ○環境への負荷の少ない技術、ビジネスモデルの革新(イノベーション)が促進される環境が整備されること
      環境負荷の低い技術や製品の開発、普及が進む環境を作るととともに、製品を市場に提供し、消費者に届ける「ビジネスモデル」についても、調達、生産、流通、廃棄全体からみた環境低負荷型のものに革新し、新たな需要や市場を作り出していくことが重要です。

3 施策の基本的方向

(1)基本的な考え方

 2に掲げた中長期的な目標を達成するため、以下の方向性で取組を進めます。

  1. ア 環境に関する情報共有、コミュニケーションの促進
     商品、企業などの環境に関する情報を、受け手に正確かつ分かりやすく伝えるため、環境ラベリング、環境報告書などが、情報の受け手にとってさらに役立つよう取組を進めます。
     伝えるべき情報においては、環境負荷の大きさに関する情報などフローに関する情報に加え、環境の質に関するストックについての情報も組み込んでいきます。
     また、こうした情報共有を実際に役立つものとするため、ステークホルダーミーティングなど双方向のコミュニケーションを重視していきます。
     情報技術(IT)は、こうした情報共有、双方向のコミュニケーションの実現に大きく寄与するものであり、その徹底的な活用を図ります。

  2. イ 企業の環境マネジメントの促進
     環境マネジメントシステムを、様々な業種、中小企業にも広げます。こうしたマネジメントシステムによる取組が契約などの局面で評価されるとともに、逆にマネジメントシステムを通じて取引先に環境保全への取組を求める動きを広げることが必要です。このような、経済活動のつながりによって環境マネジメントシステム導入を含む環境保全への取組が普及する仕組み、環境づくりを進めます。
     また、こうしたマネジメントシステムを環境改善効果につなげていくため、社員教育において組織的に環境に取り組む意識づくりを進めていきます。

  3. ウ 環境分野でのイノベーション促進
     技術、ビジネスモデルの革新を進め、環境ビジネスを促進していくため、環境投資の促進、グリーン購入の拡大、環境ビジネスを担う人材の育成などの取組を促進します。

  4. エ 環境を重視する経済主体としての意識改革
     環境教育を学校教育、消費者教育などにおいて展開し、消費者等が、経済主体として環境を重視した行動につなげる意識の向上を図ります。また、地方公共団体、地域コミュニティ、非政府組織、非営利組織などが、この分野で活躍することを支援します。

  5. オ 環境と共存する経済活動の新しい姿の検討
     2050年頃の環境を見通した超長期の展望の研究において、環境への危機を招かない経済のあり方を、幅広い知見を踏まえて、構想する作業を進めます。

(2)各主体の役割

 国、地方公共団体、企業、消費者、投資家、NPOなどの各主体は、それぞれ同時に投資、生産、消費などの経済活動を市場で行っています。それぞれの経済活動ごとに上記の取組が求められ、その意味で各主体の役割は多くの部分で重なるものです。
 その中で各主体には概ねの以下のような役割分担の下で取り組むことが期待されます。

  1. ア 国及び地方公共団体
     国は、環境の価値が市場において反映されるよう、行政として、市場では供給されない公共的な財やサービスを、安定的に供給します。具体的には、ルールの設定、科学的知見や基礎的な技術の基盤の整備、政府調達などにおけるモデル的取組の実施、国・地方公共団体・企業・NPOなど各主体間の調整・連携促進といった役割を果たし、各主体の市場での取組を促します。
     地方公共団体は、国と同様、行政主体としての役割を地域において果たします。特に、それ自体各地で重要な経済主体であることから、調達での環境配慮や地域における各主体間の調整・連携促進などを進めることが求められます。

  2. イ 企業、消費者、投資家
     企業や消費者、投資家はそれぞれが市場での経済活動を行う主体として役割を果たします。具体的には、
     企業は、調達、製造、運搬、販売、廃棄物処理などの事業活動において、地球環境、物質循環、生物多様性などの視点から環境負荷の低減に取り組みます。
     消費者は、消費行動が企業の環境に対する取組を大きく左右することを認識し、得られる情報を元に環境に配慮された商品を選好することが求められます。
     投資家は、その投資活動を通じて、環境保全という社会的価値の実現に貢献することが求められます。

  3. ウ NPO、研究者等
     NPO、研究者等は、各主体の経済活動を環境負荷の少ないものとするため、企業、消費者、行政に対して、情報の提示、取組の提言などを行うことが期待されます。

     また、各主体はステークホルダーとして、それぞれの間で情報を交換し、コミュニケーションを取り合うことを通じて、それぞれの取組のレベルを高めていくとともに、各主体の協働による環境保全の取組を推進していくことが重要です。
     これらの取組に当たっては、持続可能な社会づくりの観点から、環境についての取組に限定することなく、他の社会的分野も踏まえた横断的な取組を視野に入れることとします。

4 重点的取組事項

 3の基本的方向の実現に向けて、今後5年程度、国は以下について重点的に取り組みます。

(1)市場における環境に関する情報の共有

 これまで整備してきた枠組みを踏まえつつ、市場において、環境に関する情報が一層的確に提供されるシステムづくりを目指します。

  1. ア 消費者への商品・サービスについての環境に関する情報の提供
    1. (ア)エコマークなどの環境ラベリングや、グリーン購入対象商品リストなどについて、購入者等に役立つ情報に関する調査研究を行います。また消費者などが自ら環境に配慮した商品を選択できるような情報の提供方法を構築します。グリーン購入ネットワークなど民間団体、組織、ネットワークとも協力して、情報提供の推進を図ります。
    2. (イ)消費者に身近な化学製品について、その物理化学的危険性、健康に対する有害性及び環境に対する有害性を表示で分かりやすく情報提供する「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」の導入について検討を進めます。
    3. (ウ)商品の環境への影響について、ライフサイクルアセスメント(LCA)の整備を進め、ラベリング制度などへの反映を図ります。
    4. (エ)流通・サービスは、生産者と消費者をつなぐ接点として重要な役割を占めるため、流通、サービスにおける情報提供の在り方について検討し、商品・サービスにおける環境に関する情報のよりよい提供を推進します。
    5. (オ)流通・サービス分野における環境配慮の評価については、その環境面での影響、効果が多岐かつ広範にわたることから、単純な数値化やLCA的手法を用いた評価だけではカバーできないと予想されます。このため、総合的な環境配慮の評価方法の検討などを進めます。

  2. イ 企業の環境配慮の取組状況についての情報開示
    1. (ア)環境配慮促進法に基づき、環境報告書の作成・公表の普及を図ります。特に、中小企業など幅広い事業者による環境報告書の作成・公表を推進します。その際、持続可能な社会づくりを目指し、環境とそれ以外の社会的課題に一体として取り組む視点を持つことが重要です。
        また、環境パフォーマンス指標の調査研究を踏まえた環境報告書ガイドラインの見直しを行います。
    2. (イ)環境報告書の作成及び公表等を通じた企業とステークホルダーとの双方向コミュニケーションを推進します。これにより、より使いやすい情報のやりとりを可能とし、また企業の環境面から見た経営の在り方がより一層向上していくことが期待されます。
    3. (ウ)消費者等のより多くの利用者に読まれるために、環境報告書の有用な情報を整理し、比較検討が可能となる仕組みを構築します。
    4. (エ)環境報告書の信頼性の確保について、事業者自らが行う自己評価の手法を確立するとともに第三者審査機関による審査の状況について調査を行います。

(2)環境の視点からの経済的インセンティブの付与

 商品の価格に環境コストを適切に反映させる環境に関する税、排出量取引、補助金などの経済的手法は、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して商品の選択等の行動に際して環境によい行動の選択を促すことを狙いとするものです。
 経済的手法については、各方面において検討が行われ、国や地方公共団体でその導入や実証的な試みも進んでいます。経済的手法については、当該手法の効果、国民経済への影響を踏まえつつ、国民、事業者など関係主体の理解と協力を得るよう努めながら、こうした検討や導入の成果も踏まえ、その適切な活用について総合的に検討します。

(3)企業、消費者などの環境に取り組む能力の向上

 企業や消費者、投資家などが市場において、経済主体として環境に取り組むための仕組みの整備、普及を図ります。

  1. ア 企業の取組能力の向上のための仕組みの整備、普及
    1. (ア)事業者の環境配慮体制の整備
      1.  a 環境マネジメントシステムの幅広い事業者への普及を図ります。特に取組の遅れている中小事業者における環境配慮型経営を推進するため、ISO14001の他、中小事業者向けの環境マネジメントシステムであるエコアクション21の普及促進を図ります。
      2.  b 環境マネジメントシステムを確立した事業者においては、同システムを活用した環境配慮の取組が推進するよう、環境管理の担当者に対し、情報提供等による支援を行います。
      3.  c 環境JISの整備を行うとともに、幅広い事業者への普及・利活用を図ります。

    2. (イ)環境パフォーマンス評価
        企業の環境パフォーマンスを適正に評価するための指標(環境パフォーマンス指標)について2002年に改訂した指標の活用手法の充実を図ります。また、近年の環境や経済の状況を踏まえ、環境パフォーマンス指標のガイドラインの見直しを行います。その中で、企業の保有する自然・人工資産の環境面での価値や、事業活動が環境の質に与える影響など、ストックを評価する指標の研究、活用を進めます。

    3. (ウ)環境会計
      1.  a 現在各企業において独自に進められている環境会計手法の調査研究を行い、環境会計に関するガイドラインを実態に即して充実発展させます。その際、環境パフォーマンス評価での検討を反映させるとともに、ストックの環境面からの評価指標を組み込む手法の検討を進めます。また、環境会計が実際の企業活動において活用されるよう普及啓発などの取組を進めます。
      2.  b 引き続き国際的な環境会計に関する議論に参画し、自国の状況を国際的な議論に反映させ、環境先進国として世界をリードしていきます。

    4. (エ)企業の環境教育の推進
        上記の仕組みを実際の企業活動の中でいかしていくためには、従業員への教育は不可欠です。環境マネジメントシステムの活用などを通じ、企業の従業員に対する教育の支援を図ります。

  2. イ 環境に配慮した選択を行う消費行動の推進
     環境教育を進めていく中で、環境への負荷の少ない製品・サービスの消費選択についても取り組みます。環境にやさしい買い物の実践を消費者に促すために、事業者と連携したキャンペーン活動等を実施します。また、学校における環境教育や、「我が家の環境大臣」等の事業の中で、環境によい製品が選好されるような消費行動の促進に役立つ教育を推進していきます。
     このほか、自然とふれあい、環境への配慮を意識づけるエコツーリズムについて、情報提供を図り、消費者・利用者による選択を促進していきます。

  3. ウ 環境への負荷の少ない事業や、それを実施する企業への投資行動の促進
     経済活動においては、資金調達は事業展開を左右する要因です。投資行動に環境の価値が反映されるようになる必要があります。
     企業の環境に関する情報は、リスク情報や社会的責任(CSR)の遂行状況に関する情報などとして企業の業績に関する情報の一部としてとらえられる動きもあり、環境報告書やCSR報告書等に加え、企業の業績評価とリンクした情報提供の在り方を検討します。
     また、環境問題への関心の高い個人投資家など、環境に取り組む企業に投資する意欲の高い層に焦点を当てつつ、幅広い層へのエコファンドやSRI等の環境投資の拡大を図っていきます。

(4)環境の視点からの「革新(イノベーション)」の促進

 環境分野での「革新」が絶え間なく起こり、環境と経済の好循環が実現するような市場における活動を増やしていくために、以下の取組を進めていきます。

  1. ア 技術革新などへの民間投資の促進
    1. (ア)環境に配慮した設備投資や、環境への負荷の少ない製品の開発生産への投資を促進するための取組を進めます。
    2. (イ)取組が始まりつつある企業、製品、サービスなどの環境に関わる情報を活用した低利融資制度の普及など、環境投資のための資金調達が円滑化に行われるための枠組みの検討を行います。
    3. (ウ)企業、製品、サービスなどの環境に関わる情報をもとに安心して投資できる仕組み(スクリーニング手法)づくりを推進し、環境投資の促進を図ります。

  2. イ 政府による環境負荷低減の取組
     政府による様々な活動ができる限り環境負荷の低減に役立ち、また、環境への負荷が少ないものとなるよう、取組を進めます。
    1. (ア)環境対策の推進、環境分野での科学的知見の集積、長期的視点からの技術の研究開発などを積極的に進めていきます。
    2. (イ)政府が行う建築物の建設・管理ができるだけ環境への負荷の少ないものとなるよう、環境への配慮を重視した企画の提案や、環境に配慮した工事施工の提案の採用を進めます。
    3. (ウ)また、政府調達の中で、グリーン購入の促進について、より積極的な調達方針の設定を進めグリーン調達のさらなる拡大を図るとともに、再生可能エネルギー導入推進への配慮など総合的な省CO化の要素を考慮した電力購入方式の一層の活用の促進を図ります。
    4. (エ)政府が主体となる取引に関して、環境への取組を実施している企業が契約や事業者選定等において評価されるような仕組みづくりを進めます。

  3. ウ 「ビジネスモデル」の革新
     技術を普及させ、経済活動を組み立てるビジネスモデルについて、環境への負荷を低減させ、新しいビジネスニーズを生み出す視点から革新を進めるため、各主体による以下の取組を促進します。
    1. (ア)環境保全を実現する事業が経済的に成り立つビジネスモデルを作る能力
      の開発に資するプログラム作成など、環境負荷低減とビジネスを両立させることができるビジネススキルの習得を図ります。
    2. (イ)環境技術・製品について、発案者と企業を結び、必要な資源を動員する場の設定や人材の育成を行います。

(5)国際市場を視野に入れた取組

 市場は国際化しており、貿易による物品調達や投資なども国境を越えて展開されています。東アジアをはじめ、国際市場で企業の環境面での取組を支援し、環境保全上の効果を上げるため、以下の取組を進めます。

  1. ア 環境ラベリングについて、相互認証の拡大、基準の調和など、各国の環境ラベリングが共に活用される枠組みの作成を進めます。
  2. イ グリーン購入を各国で進めるため、国際的ネットワークづくりを進めます。
  3. ウ ISO・IECなど、国際的な規格づくりの場に積極的に参加するとともに、様々な環境管理システム、環境によい企業登録システムについて、各国間の情報の交流を図ります。
  4. エ 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の推進にあたっては、環境影響評価や環境分野の二国間協力等を通じて、貿易と環境の相互支持性を強化します。

(6)新しい環境と経済のあり方についてのビジョンづくりの開始

 地球温暖化問題をはじめとして、環境問題の深刻化が見られ、またその解決には長い年月がかかることが予想されます。そのため、今後の環境問題のあり方を考え、新しい環境と経済の将来像を模索する必要があります。
 そこで、2050年といった超長期にわたる環境、経済、社会のあり方を勘案し、今後目指すべき取組の方向性を探る超長期の展望の研究において、持続可能な環境と経済の具体的な姿について、幅広い知見を踏まえ、検討を始めます。

5 取組推進に向けた指標

 重点的な取組の進捗状況を把握することにより、効果的な施策の実施を図るため、以下の数値や割合を指標として設けます。

(1)市場において環境の価値が評価される仕組みがどの程度整備されたかを総合的に示す指標
  •  ・環境誘発型ビジネスの市場規模、雇用人数

(2)環境に配慮した製品・サービスが十分提供され、実際に消費、購入等の行動に結びついているかを示す指標
  •  ・主要な環境ラベリングの対象品目数
  •  ・地方公共団体、企業、国民におけるグリーン購入実施率

(3)企業において環境への投資が推進されるとともに、環境に積極的に取り組む企業に対し資金が十分提供されているかを示す指標
  •  ・主要企業の環境目的投資の割合
  •  ・エコ/SRIファンドの設定数、純資産残高及びその割合

(4)企業において環境配慮の体制が整うとともに、環境に関する情報が企業から市場に対し十分提供されているかを示す指標
  •  ・ISO14001、エコアクション21等の登録事業者数
  •  ・環境報告書を作成・公表している企業の割合
  •  ・環境会計を実施している企業の割合

(重点分野政策プログラム)
     第8節 環境保全の人づくり・地域づくりの推進

1 現状と課題

 近年、国民の環境問題に対する知識や関心は高まっています。しかし、それが、広く国民の間で積極的な行動に結びつき、日々の暮らしぶりを変えていくまでには至っていない面があります。日々の暮らしは基本的に地域コミュニティの中で営まれており、地域コミュニティの在り方が一人一人の暮らしぶりや考え方にも大きな影響を与えています。このことを踏まえると、環境保全の人づくりと地域づくりを一体的に捉えて取り組む必要があります。
 都市域においては、人の活動の集中による環境負荷が問題となる一方で、農山漁村の中には、高齢化や人口減少により、環境を維持・管理することにつながる活動を十分行うことが難しくなっているところもあります。また、自然とふれあう機会が減少するとともに、生活や経済活動が健全で恵み豊かな環境があって成り立っていることを実感しにくくなっています。
 他方、ここ数年の間に、社会貢献活動に参加する人や自然とふれあう生活を指向する人が増えている等、価値観の多様化が見られます。また、地域において環境保全に取り組み、成果を上げている事例が現れてきています。
 地球温暖化対策や3Rの推進等日常生活に関わる課題が重要になっていることを踏まえると、国民が、日常的な活動を、積極的に環境負荷の少ない持続可能なものにしていくようにすることとともに、地域において環境保全に取り組む多様な主体の働きを強め、持続可能な地域づくりを進めるようにすることが必要になっています。

2 中長期的な目標

 持続可能で、豊かな、かつ多様性を持った地域の集積として、環境的側面、経済的側面、社会的側面が統合的に向上する持続可能な日本社会を生み出すことを目指します。

 そのための基盤として、国民一人一人が環境や持続可能な社会づくりに関して学び、体験することにより、自らの問題として環境問題に関心を持ち、それぞれの立場で具体的に行動するようになることを目指します。その際、広く地球全体や将来の世代にまで思いをめぐらしつつ、自ら考え、様々な取組に参画し、日々の暮らしを具体的に見直していくことが重要になります。
 このような国民を増やしていくために、まずは、すべての国民が体験を通じて環境について学ぶ機会を持つことや、折に触れて自然とふれあうことにより、環境と自らの関わりについて考えるようになることを目指します。

 その基盤の上で、環境問題について自らの問題と考えて行動する国民と多様な主体が様々な形で連携し、地域の風土や文化的遺産を踏まえながら、地域の環境について知り、生活する場として活用しつつ保全することに取り組むことが必要です。そして、そのような取組を通じ、地域の環境を持続可能なものにするとともに、それを保全する住民の力を高めることが重要です。そのように、地域の環境とその保全に取り組む住民の力が統合的に高まっていくような関係をつくりあげること、すなわち「地域環境力」を持つことにより、地域の特色をいかした、独自性を持った豊かな地域を創っていくことを目指します。
 このため、まずは、このような地域の形成に向けた具体的な取組が、各地域において着手されることを目指します。

3 施策の基本的方向

(1)環境保全のために行動する人づくり

 環境保全のためには、一部の環境保全意識の高い人による活動以上に、できるだけ多くの人が、環境が自分たちの暮らしを支えていることに気付き、日々の暮らしの中で、少しずつでも、豊かな社会を保ちつつ将来世代へと継承させるライフスタイルを求めながら行動することや持続可能な地域づくりに参画することが重要です。
 そのためには、幼児教育から高等教育までの教育機関や、公民館、博物館等の社会教育施設、そして地域組織や、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、商店会等の事業を基盤とした組織、さらにはNPO(この節においては、以下も含め、公益法人等、広く非営利でかつ公益を目的とする組織を含む広義のNPOを意味します。)や個人、事業者等の多様な主体が縦横のネットワークをつくり、家庭、学校、職場、社会活動の場などあらゆる場面において、すべての国民に対して、身近なところで、より質の高い環境教育・環境学習の機会を提供することが重要です。実感を持って環境について学び、自らが考え、具体的な行動に結び付けるために、自然や暮らしの中で体験活動や実践活動に参加することを通じた環境保全の人づくりを進めることが効果的です。そのような環境教育・環境学習を効果的かつ継続的に推進するためには、地域コミュニティの中で様々な主体が関わって進めることが重要です。

〔具体的取組の方向〕
  1. ア 教育機関における環境教育・環境学習の推進
     年齢や教育目的に応じた環境教育の推進が重要です。教育機関における教育活動全体を通じた環境教育を更に充実することが重要です。
  2. イ 職場における環境教育の推進
     職場において幅広い観点からの環境教育・環境学習を進める必要があります。従業員が事業活動と環境との関わりについて理解することにより、事業活動における環境配慮や環境マネジメントが促進され、ひいては新たな環境ビジネスを創出することが期待されます。
  3. ウ 家庭、社会活動の場等の幅広い場における環境教育の推進
     日常生活における環境配慮を身につけるためには、学校や職場とも連携しつつ、また、社会教育施設や公園緑地、自然公園等の地元の学習資源も活用しながら、家庭生活や社会活動の中で具体的な取組を交えて環境教育・環境学習を進めることが重要です。
  4. エ 指導者の育成
     環境教育を中心になって行う指導者を育成する必要があります。環境に関する理論や理念を十分に理解し、実際の生活や社会に結び付けながら教える能力を持つ指導者が必要です。
  5. オ 各主体の連携、役割分担
     地域コミュニティに関わる様々な主体や環境に関わる分野の専門家・専門機関が、学校や職場における環境教育・環境学習に協力するなど、様々な主体が適切な役割分担の下で、連携しつつ進める必要があります。この際、指導者と各主体をつなぐ役割を担う人やNPO等の組織、仕組みをつくる必要があります。
  6. カ 情報提供
     環境教育・環境学習を行う際に、環境に関する情報に加え、プログラムや指導者に関する情報にも容易にアクセスできるようにする必要があります。また、環境教育・環境学習を行う者が、情報や意見を交換できる場や仕組みをつくっていく必要があります。
  7. キ 「国連持続可能な開発のための教育の10年」の推進
     人口や貧困、生産や消費活動、歴史や文化等の経済面、社会面の要素を含め、世界の状況や将来の世代と現在の社会や自分との関係を見つめ、持続可能な社会づくりに参画する力をはぐくむ「持続可能な開発のための教育」という視点が必要です。また、国際機関との協力や発展途上国に対する環境教育協力も必要です。

(2)環境保全の組織、ネットワークづくり

 国民が持つ環境保全に対する知識や意識を、積極的な行動に結び付け、地域環境力を高めるためには、多様な主体がそれぞれの特色や状況に応じて環境保全の取組に参加できることが望まれます。また、地域の特色や状況に応じた効果的な取組が行われることが必要です。そのためには、行政だけでなく、既存の地域組織やNPO等の広い意味で公的な組織、事業者、事業を基盤とした組織等、多様な主体による取組が重要です。
 歴史的に見れば、里地里山等の生活と密着した自然環境の管理や、水路の維持管理等を通じた良好な水循環の確保、一般家庭を巻き込んだリサイクル活動等は、伝統行事と同様に、地域を豊かにするための活動として、地域コミュニティによって担われてきました。地域の状況を踏まえ、きめ細かな活動を効果的に行うためには、地域組織や事業を基盤とした組織等、地域コミュニティを支える組織による環境保全の取組を促進する必要があります。そのためには、まず、それらの組織に環境保全の担い手としての意識と知識を持ってもらう必要があります。また、環境保全活動という具体的活動への取組自体によって、地域コミュニティを活性化させ、その潜在能力を引き出し、社会問題一般を解決する能力を高めるという観点が重要です。
 一方で、住民全員の参加は期待できないような取組や、地域コミュニティを支える組織の区域をまたぐような広域の問題、専門性が求められる活動等では、NPOのような目的を共有する者によって構成された組織の方が効果的な場合もあります。NPOには、取組が行われる地域の外の主体も含む多様な主体が、それぞれの状況や特色に応じた形で関われるような取組を推進する役割も期待されます。
 また、地域の中核的な施設として、学校や社会教育施設を舞台とした環境保全活動も重要です。事業者にも、地域コミュニティの一員として地域の持続性を高める取組に参加することや、社会的責任として取組に協力することが期待されます。
 このように、それぞれの特長をいかした活動をより効果的に進めるためにも、場面に応じ、多様な主体がパートナーシップやネットワークを構築して活動する必要があります。その際には、それぞれの役割と責任を明確にしながら信頼関係を構築しつつ活動することが重要です。

〔具体的取組の方向〕
  1. ア 様々な主体の協働
     多様な主体が、お互いにその特色をいかしつつ協働することが必要です。特に、行政機関が、場面に応じ、事業内容と責務を明確に定めた上で、地域の組織に一部事業を任せることも含め、多様な主体と協働しながら事業を進めることも重要です。

  2. イ 活動の中心となる主体づくりと多くの主体の参加
     国民の環境保全に対する意識の高まりを積極的な活動に結び付けていくためには、地域において環境保全に関わる取組を中心になって積極的に進める人材や専門知識を持つ人材が必要です。女性や若者、様々な経験に基づく知見や技能を持った退職者も含め、多様な人材の活躍が期待されます。そのためには、多様な人材が組織づくりや事業運営、コミュニケーション等に関する技能を身につけるとともに、必要な資源を活用できることが望まれます。また、人材に関する情報がわかりやすい形で提供されることも必要です。
     また、それらの活動に、地域の外側に本拠地を置く者も含めた、関与の仕方も様々な幅広い主体を巻き込んでいく必要があります。そのため、異なる主体間をつなぐコーディネート能力や、多様な主体のそれぞれの特徴と地域の資源や状況を踏まえて活動や組織を構築するプロデュース能力を持つ人材や組織が必要です。

  3. ウ 活動基盤の確保とビジネス的手法など様々な手段の活用
     環境保全の活動を持続的に進めるためには経済的な基盤が充実する必要があります。地域の活性化にも結び付けながら活動を進めるためには、地域コミュニティにとって必要な事業を、その力を使いながら収益事業として行う、いわゆる「コミュニティ・ビジネス」として事業を展開する等、活動内容に応じた様々な運営手法を取り入れる必要があります。商店街における地域通貨を用いたマイバッグの利用等による3R推進や環境配慮型商品の販売等、各主体の積極的な参加を得て行う取組も有効です。そのため、コーディネート能力やプロデュース能力に加え、経営能力等活動を持続的に運営する様々な能力を持った人材の参加が必要になります。また、公益に資する事業を行う多様な主体に対して、様々な主体から適切に関与・支援・協働が行われることが望まれます。これらが促進されるような制度的な支援も重要です。

(3)それぞれの持つ資源や特長をいかした地域づくり

 地域の資源や資産を活用しつつ、環境負荷の少ない、同時に豊かな社会生活を送ることのできる地域づくり行う必要があります。そのためには、環境資源の保全と有効活用を統合的に進めることが重要です。
 例えば、環境と相互に強い関係のある農林水産業について、環境面からも事業面からも、さらには担い手確保の面からも、持続可能性を高めていく必要があります。また、過去から現在まで、歴史的資産や伝統行事や風習等の文化は、各地の環境と共生する中で創り出されています。自然の恵みに感謝しながら有効活用する「もったいない」といった昔ながらの考え方や、「スローライフ」、「LOHAS」のような新しい考え方を、日々の暮らしや事業活動にいかしていくことが必要です。多様な主体と行政が協働しつつ、そのような生活を可能にする基盤を計画的に創り出していくという視点も重要です。街中に連続的に樹木を植えることによって緑の回廊をつくり、生物にとっての生態系ネットワークを形成しながら、緑による涼しさと潤いを享受できるようにするといったような、各主体が協力して行う取組も重要です。
 また、地域ぐるみで進める事業活動に着目すると、環境的側面の向上に加え、経済的側面からは地域が経済的に自立し、さらには様々な主体間の連帯の強化等により、社会的側面をも統合的に向上するような取組を推進することが重要です。例えば、スローライフ等の考え方を持つ都市住民が増えていることは、「田舎生活」・「田園生活」の見直しにもつながっています。これは都市と農山漁村の間で、「人・もの・情報」の行き来を活発にし、都市住民が生活を見直す機会とするとともに、農山漁村の活性化と環境保全を統合的に進める上で大きなチャンスとも言えます。都市住民と農山漁村の間をつなぐコーディネーターや組織の活動等により、そのような動きを促進することが必要です。

〔具体的取組の方向〕
  1. ア 環境に係る情報の共有
     多様な主体が、良い点、悪い点の両面から、環境に係る状況の正確な情報を共有する必要があります。その際、各主体が自らの生活や環境保全の取組と環境の関係を把握できるような形で情報を共有することが有効です。例えば、住民を含む多様な主体の参加を得て、様々な視点から情報を集め、地元の資源や文化等の見直しを行う地元学の手法を活用する等により、多様な主体が参加して、環境に係る状況の調査を行うことも有効です。

  2. イ 様々な主体が参画した環境保全の地域づくりのための計画策定
     多様な主体によるコミュニケーションが取られ、地域コミュニティによる環境保全活動が行われやすいまちづくりや場づくりといった観点を含め、持続可能な地域の姿を様々な主体が参画して考えていく必要があります。その際には、災害が起こった場合の環境面からの対処について検討する観点も重要です。また、環境保全と関係の深い各種計画の策定に当たっては、環境に関する情報提供を行い、住民と議論しつつ、環境面から持続可能な計画を作成するよう努めることが望まれます。

  3. ウ 地域に存在する資源の保全と活用
     地域の木材やバイオマス資源を持続可能な形で有効活用することや、自然保護とも結びついた文化的行事等も活用しつつ、自然への負荷に配慮した観光の在り方であるエコツーリズムを地域ぐるみで展開すること等が考えられます。古くから街に残る緑等にも環境と共生する知恵が隠されていることがあり、そのような知恵を現代にいかすような取組も重要です。過去の環境問題を踏まえ、環境保全を通じて地域を再生する環境再生という視点を持つことも有益です。さらに、取組が行われる地域の外に住む人等、新しい視点を持つ主体の力を活用することや、他の地域の主体と連携することが重要です。例えば、流域の環境保全に資する農林水産業を流域内の他の地域の住民の協力を得ながら進めることも考えられます。

4 重点的取組事項

(1)各主体に期待される役割

 主体毎に、次に掲げるような取組を行うことや役割を担うことが期待されます。

  1.  ア 国民
    •  ・様々な環境保全に関わる取組(以下も含め、環境教育・環境学習を含みます。)への積極的な参加・参画、地域づくりに関する計画策定への参加・参画
    •  ・講習会等で得た知見や技術の、地域における環境保全に関わる取組への活用
    •  ・日常生活への環境配慮の織り込み

  2.  イ 専門的知見を有する者
    •  ・地域で行われる環境に関わる取組への参加や協力
    •  ・事業者や行政機関と住民等の間におけるコミュニケーションの支援

  3.  ウ 各種団体
     (地域コミュニティを支えてきた既存組織)
    •  ・住民の日常活動に関わる環境関連情報の周知、地域内の住民や特定の職業に従事する者全体の参加が求められるような取組の推進
    •  ・学校や行政機関が行う環境保全に関わる取組に住民が参加する際の窓口となること
       (NPO等、目的を共有する者によってつくられた組織)
    •  ・地域の外からの参加も含め、多様な主体が参加した環境保全に関わる取組の推進
    •  ・事業性が高くて行政が取り組むことは難しいが、営利企業が取り組むことは難しい事業であって、地域の持続性向上に必要なものを推進
    •  ・人材育成や情報提供、様々な資源活用に関わるコーディネート等、地域の多様な主体による取組に対する支援
    •  (注)それぞれの役割は固定されるべきものではなく、地域の実情に応じて柔軟に役割分担する必要があります。

  4.  エ 教育機関
    •  ・各学校において、環境教育に関する全体的な計画等の作成、各教科において環境教育の実施、総合的な学習の時間等を活用して教科横断的・総合的な取組の実施
    •  ・児童会・生徒会や環境クラブ、緑の少年団のような課外活動における環境保全に関わる取組の推進
    •  ・環境的側面、社会的側面、経済的側面を統合的に向上させる観点からの「持続可能な開発のための教育」の推進
    •  ・社会教育施設において、環境に関する参加型の体験学習や講座、ワークショップ等の開催
    •  ・環境を考慮した学校施設の整備・改修、それらを活用して地域コミュニティと連携した環境教育を実施
    •  ・外部人材や地域の学習資源の積極的な活用による効果的な体験学習の推進やより具体的なデータや資料の活用
    •  ・多様な主体による環境教育・環境学習や環境保全活動に協力。特に高等教育機関による専門的知見の提供
    •  ・教員研修や教職課程における、教職員の環境教育に係る資質向上のための取組
    •  ・高等教育機関における環境問題に関する教育研究の実施

  5.  オ 事業者
     (事業者全般)
    •  ・従業者等に対する継続的な環境教育の実施や環境学習の機会の提供
    •  ・国民に対する環境教育・環境学習の機会の提供
    •  ・事業に関わる環境情報の公開・提供や、地域の環境保全に配慮した事業活動の展開
    •  ・地域の環境保全に資する事業の展開や地域の各主体とも協力しつつ行う、環境保全に関わる取組への参画及び協力
       (農林水産業)
    •  ・環境保全型農業の推進や、農村の二次的自然の保全や地下水のかん養等農業の多面的機能の発揮の基盤となる農地や農業用水の保全や質的な向上、藻場・干潟の維持・管理、海岸清掃等、自らの事業の基盤でもある環境の保全を意識した事業活動の実施
    •  ・生態系の保全等森林の有する多面的機能の持続的な発揮に資する森林の整備・保全の実施

  6.  カ 地方公共団体
    •  ・各地方公共団体の域内における環境に関わる各種情報の収集整理と提供
    •  ・多様な主体の参画による、持続可能な地域づくりに向けた考え方や進み方に関する計画や方針の策定、環境教育に関する基本的な計画や方針の策定
    •  ・環境保全に関わる取組について、多様な主体と多様な協働関係の構築
    •  ・環境保全に関わる取組に関する情報提供や拠点づくり
    •  ・職員に対する環境教育の実施や環境学習の機会の提供。
    •  ・多様な主体と協働しながら持続可能な地域づくりを進める能力を持つ人材の育成と活用
       (特に市町村)
    •  ・多様な主体の参加・参画による、地域の環境に関わる状況について調査
       (特に都道府県)
    •  ・流域単位の市町村の協力など、広域にわたる環境保全の取組について調整や情報提供

(2)国の取組

 国としても、多様な主体と協力しつつ行う以下のような取組を通じて、ここまで述べてきたような人づくり、地域づくりが各地域それぞれの主体性の下、独自性を持って進められるように支援していきます。

  1. ア 環境保全のために行動する人づくり
     NPOや事業者等、様々な主体と連携しつつ、様々な場において、すべての主体に対して、学校・家庭・地域コミュニティが連携した質の高い効果的な環境教育・環境学習が行われるように積極的に推進します。
     そのため、こどもエコクラブ事業等によって、各地域で行われている取組を支援します。また、学校、家庭、地域コミュニティで環境教育を行う際に役立つプログラムや教材の提供に努めます。さらに、森林、田園、公園緑地、河川、湖沼、海岸、藻場・干潟等の身近な自然の中のそれぞれの場において環境教育を行う際に役立つプログラムの提供に努めます。
     また、環境保全の人づくりに関して、経験に基づく意見を交換する場や知見を共有する仕組みづくりに努めます。
     また、住民や技術者の参加を得つつ、環境を考慮した学校施設の整備・改修を行うことや、その施設を活用することによる、地域ぐるみの環境教育の取組を促進します。人材認定等事業及び登録された事業の教育現場への周知等を通じて環境教育・環境学習の指導者育成を進めます。身近な自然環境を保全・再生・整備して自然とのふれあいを通じた環境教育・環境学習の場とするとともに、森林保全等の現場における体験機会の提供に努めます。
     「持続可能な開発のための教育」の普及を進めます。学校において、各教科及び総合的な学習の時間等を活用して、持続可能な開発について積極的に取り扱うことができる環境整備に努めます。また、職場において、持続可能な開発のための事業活動の在り方を学習するプログラム開発等に努めます。国際機関と協力しつつ、開発途上国に対する環境教育協力を進めます。
     これらの取組を進めるに当たっては、普段環境保全に対して関心の低い人が環境保全に関心を抱くきっかけをつくるために、クールビズ・ウォームビズのように、環境保全を日々の生活に直結させる視点も持ちつつ施策を展開します。

  2. イ 環境保全の組織、ネットワークづくり
     環境保全に関する活動に取り組む組織の持続的な運営やそれらのネットワークづくりを進める人材の育成を促進します。コミュニティ・ビジネスのように収益事業として事業を行うことも含め、自立的に活動を進めるために、財務管理やマーケティング等の経営的側面や組織運営の側面を含む事業運営の方法や、多様な主体の連携促進のために必要な手法について、情報の提供や、方法・手法の習得機会の拡大に努めます。また、人材登録等の制度について、それぞれの特徴や位置づけの整理を含めて適切に情報提供を行う等、人材を活用する側と意欲と能力を持っている人材の両者による有効活用を促進します。さらに、様々な人材が多様な活動を行うことができるように、男女共同参画の視点に立った女性の活用促進の取組やボランティア休暇制度の普及等に向けた取組を進めます。
     地方環境パートナーシッププラザの運営等を通じ、多様な主体によるネットワーク形成のための場づくりを進めます。また、地方支分部局を活用しながら、行政に関連する事業を多様な主体と協働して推進するための条件整備に努めます。
     環境保全に関する活動に対する資金面を含めた支援を進めます。また、地域再生に資する事業を行う一定の株式会社への個人投資家による投資について講じられている課税の特例措置の活用により、資金調達の円滑化を図ります。さらに、これらの活動を促進するため、地域の事業を支援する中間支援団体やファンド等の組織や事業等に関して、情報を収集・整理して提供していきます。さらに、構造改革特別区域において、営利を目的としない法人による地域通貨の発行条件を容易にすること等、多様な主体が協働しながら持続可能な地域づくりを行うために効果的な手法を導入するための条件整備に努めます。

  3. ウ それぞれの持つ資源や特長をいかした地域づくり
     国内外における持続可能な地域づくりに関し、成功事例や多様な主体が一体となって持続可能な地域づくりを進めるために効果的な手法について収集・整理・分析して情報提供を行います。そのため、先駆的な省資源・省エネルギー実践活動等に対するモデル的な支援等も行います。また、地域の環境に関わる情報について調べる際のバックグラウンドデータとなるような広域にわたる情報の提供や、国の機関が独自に持っている地域の環境に関わる情報の提供を進めます。
     補助対象財産の転用手続きの迅速化等を通じ、既存の施設等の活用を促進します。
     歴史・文化も含めた様々な環境資源を適切に保全するとともに、それらの持続的な活用を行う取組の促進に努めます。例えば、エコツーリズムの普及・定着の推進や、山村の起業者等による地域の森林資源等を活用した新たな産業の創出への支援、漁村における取り決めに従って行われる沿岸域の環境・生態系の保全活動等の取組の促進、エコタウン事業の推進やバイオマスタウン構想への支援を進めるとともにこれらに関する情報提供等を行います。

5 取組推進に向けた指標

 取組推進に向けて、次の内容の指標を用いることとします。

(主に人づくりに関する指標)
  • ・過去、一定期間において、体験型の環境教育・環境学習に参加した国民の割合
     (関連する補助指標:地方公共団体等が関わった体験型の環境教育・環境学習に対する世代別の参加人数)

(主に地域づくりに関する指標)
  • ・持続可能な地域づくりに向けた考え方や進め方に関する計画や方針が策定されている地方公共団体の割合
     (関連する補助指標:計画、方針の策定や見直しに際して、多様な主体が対話型で参画できている地方公共団体の割合。)
  • ・地域における環境保全のための取組に参加した国民の割合
     (関連する補助指標:行政機関が関わった環境保全に関わる事業への参加人日)
     その他の補助指標として、次のような指標を用いることとします。
  • ・活動分野として、環境教育、まちづくりを掲げるNGO/NPO団体の数
  • ・エコツアーの数(政府関係ホームページに登録されたもの)

(重点分野政策プログラム)
第9節 長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備

 持続可能な社会の実現を図る上では、環境保全上の支障を未然に防止することが不可欠であり、環境問題が複雑化、多様化する今日においては、科学的不確実性の高い段階であっても可能な限り予防的に環境保全に取り組むことがますます重要となっています。
 このような取組を支えるためには、各種の技術開発や研究の推進、環境とそれに関連する様々な情報の整備、意思決定の各段階に環境配慮を織り込む手法の開発といった、持続可能な社会づくりを支える基盤の整備を図ることが必要不可欠であり、また、これらの基盤は相互に密接に関連していることから、その一体的な整備に取り組んでいくことが求められます。
 また、科学的不確実性の下で長期的対策を講じるという観点からは、科学技術、環境情報などの基盤をいかしつつ、超長期の展望を提示し、それを踏まえた対策を講じるという新たな手法の整備が求められています。その際、長期的な視野を持ってそれらの基盤の整備を図る必要もあることから、超長期の展望と各種基盤は相互一体的に整備していくことが重要です。

第1項 科学技術の推進

1 現状と課題

(1)科学技術基本計画の下での取組

 環境分野の科学技術は、第2期科学技術基本計画のもと重点4分野の一つに位置付けられ、各省連携のもと推進されてきました。平成18年度以降、第3期の計画期間では、「環境」等重点分野は継続されるものの、より効果的・効率的な推進のため、各分野内でもさらなる重点領域の絞り込み、政策目標の実現に重要な課題への選択と集中が求められています。

(2)総合的・統合的な研究・技術開発

 これまでの主流だった、個々の環境問題に対応するための研究・技術開発は、環境の状況を改善するため依然重要であるものの、今日の環境問題は、地球温暖化と生物多様性の相互影響などのように、複数の環境問題の間で相互に複雑な関連を持つのみならず、社会・経済全体とも深く関わっており、自然科学と人文・社会科学を合わせた総合的な取組を進めていく必要があります。また、環境問題と密接な関係を持つエネルギー問題については、エネルギー政策の方向性を踏まえつつ、両問題を繋ぐ研究・技術開発を推進することが引き続き重要であり、特に、個々の技術の普及に必要な社会システムの対応等が求められています。

(3)予防的・予見的な環境対策の重要性の増大

 地球温暖化など、科学的不確実性を有する問題に対する予防的・予見的な環境対策の重要性が増大しつつあります。そうした予防的・予見的段階での最適な対策の選択に資するべく、国民的合意形成のための手法も含め、新たな政策手法に関する研究等が、今後ますます必要となります。

(4)環境と経済の好循環をつくり出す科学技術

 ハイブリッド自動車や再生可能エネルギーなど環境配慮型技術の急激な普及や、厳しい排出ガス規制による自動車産業の国際競争力獲得などに見られるように、環境と経済の好循環をつくり出す科学技術が今後ますます求められます。また、アジア等開発途上地域において今後環境技術に対する需要の急激な拡大が予想されることから、我が国の強みをいかした、優れた環境技術による国際貢献の機会がますます増大していくと考えられます。環境と経済の好循環をつくり出す研究・技術開発は民間を中心として行われてきましたが、その取組は限定的であり、一方で税制優遇措置が低排出ガス車の開発を促したように、民間における自主的な研究・技術開発を促す仕組みづくりがさらに重要となります。

(5)研究・技術開発成果の社会還元

 優れた環境技術を直接普及促進する取組や、高度に専門的な研究・技術開発の成果の専門家以外への分かりやすい普及啓発(国民理解の増進)の取組は、一部を除き十分に行われて来ませんでした。しかしながら、こうした取組は投資効果の最大化の上で重要であり、また、限られた資源の中で環境分野の科学技術を今後も重点的に推進していく上では国民理解が不可欠です。
 また、我が国の知的財産に関する取組は近年急速に強化されつつある一方、環境分野は他と比べ論文・特許とも少ない状況です。しかしながら、環境技術は今後アジアを中心として国際的にも急激な市場拡大が予想されており、特に今後グローバルスタンダードになることが期待される技術等についての取組強化が求められます。
 さらに、国の研究開発評価については、平成17年3月に内閣総理大臣決定された「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づき、波及効果の把握を含む追跡的な評価等を着実に実施していく必要があります。

(6)国際的取組

 環境問題が国際化し、先進国を中心に環境研究の国際化、環境技術の国際流通などがますます進んでいる一方、特に我が国の環境及び経済と密接な関係にあるアジア太平洋地域等の開発途上国ではこうした取組が十分ではないことから、これら地域を中心とした国際的連携の重要性が増しています。また、地球環境問題をはじめ地域レベルでも地球レベルでも対策を講じるべきものについては、開発途上国も含めた国際的な連携を強化し、各国との共同研究のもと、国際的取組を充実していく必要があります。

(7)先端科学技術との関わり

 科学技術によるパラダイム・シフト創出のため、シーズとなるナノテクノロジー等の先端科学技術を推進し、積極的に取り入れ、環境行政を含む様々な活動の環境効率性を高めていく必要があります。ただしその際、PCBやフロンの悪影響が後ほど判明したように、新たな科学技術には負の側面が含まれうることを十分に考慮し、早い段階から適切に対処する必要があります。

(8)伝統的技術の再評価

 近年、地域の風土や気候に育まれ、その恩恵を活用した農林水産業、建築・土木、工芸等に活用されている伝統的な技術の中には、環境保全上優れた効果を持つ技術として見直されているものもあり、こうした技術を科学的にも検証した上で適切に活用していく必要があります。

2 中長期的な目標

(1)直面する環境問題の解決に貢献(短期的目標)

 都市大気汚染問題等、現在顕在化している環境問題に対し、新たな解決策を提供し、その解決に資する科学技術を推進します。

(2)環境と経済の好循環に貢献(中長期的目標)

 科学技術の推進により、環境と経済の好循環に貢献します。

(3)問題解決型から未然防止型へ、環境対策の転換を促進(中長期的目標)

 予防的・予見的対策に資する研究を進めること等により、科学的不確実性のある段階での適切な対応策を促進し、未然防止型の環境対策への転換を促進します。

3 施策の基本的方向

(1)基本的方向性

 環境分野の研究・技術開発及びその成果の普及は、環境対策の基盤として極めて重要であり、科学技術基本計画に基づき策定される環境分野の推進戦略の方向性に沿って、引き続き重点的に推進します。また、その効率的・効果的な推進のため、政策目標の実現に重要な研究領域や課題への戦略的な絞り込みを行います。特に、環境と経済の好循環を実現し持続可能な社会を形成していく上で必要となるものを推進します。その際、先進的な科学技術のみならず、伝統的な技術についても効果を検証し活用していきます。

(2)各主体に期待される役割

  1. ア 国等の公的機関
     産学官連携を図りつつ、環境政策に必要な課題や、民間や大学のみでは進まない課題に注力するとともに、民間における自主的取組を促進します。ただし、環境分野においては、民間のみでの研究開発が進まない原因として、研究開発そのもののリスクに加え、環境対策が必ずしも経済的価値に直結しないリスクがあることにも十分配慮します。
     特に、地方公共団体については、地域のニーズや特性を踏まえ、地域に密着した研究・技術開発や専門的知見に関する地域住民の理解増進等の取組を行うことが期待されます。

  2. イ 事業者・大学
     事業者には、環境と経済の好循環をつくり出す科学技術を積極的に推進する役割を、大学には新たな知の源泉となる役割をそれぞれ担うことが期待されます。

  3. ウ 国民・民間団体
     国等の取組の効率性やその成果を評価することが期待されます。

4 重点的取組事項

(1)環境分野の研究・技術開発の戦略的重点化

 環境分野の研究・技術開発は、科学技術基本計画に基づく環境分野の推進戦略に沿って、環境分野内での戦略的重点化を図りつつ、個々の環境問題に対応する基盤的な研究・技術開発も含め、一体的・効率的に推進します。その実施に当たっては、上記中長期的な目標の達成に向けて、以下の点を重視します。

  1. ア 総合的・統合的研究・技術開発の推進
     i) 分野間の相互影響に関する研究、ii) 政策研究も含む人文・社会科学、iii) エネルギー等環境と関連性の強い分野との統合的研究・技術開発等を推進します。また、それらの成果を環境政策に積極的に反映します。

  2. イ 予防的・予見的な対策に資する研究・技術開発の推進
     i) 科学的不確実性の低減のための研究・技術開発を推進するとともに、ii) 科学的不確実性の高い段階での対策手法選択肢の同定、及び国民合意形成も含めた最適な対策手法の選択に資する研究、並びに iii) 科学的不確実性の残る段階での予防的対策に資する科学技術等を推進します。さらに、こうした研究・技術開発の成果を環境政策に積極的に反映していきます。

  3. ウ 環境と経済の好循環に資する科学技術の重視
     我が国の国際競争力の源泉となる、環境と経済の好循環に資する研究・技術開発を促進するため、望ましい方向性とロードマップを示しつつ、環境配慮型技術等が市場で正当に評価されるための仕組み(技術の客観的評価等)等を推進します。

(2)戦略的重点化に当たり強化すべき方策

  1. ア 国際的な取組の推進
     国際連携による科学的知見の充実及び開発途上国の能力開発への貢献、及びアジア地域における環境保全のための社会システムの研究や環境配慮型技術による貢献等を、国際機関とも協力・連携しつつ推進します。特に気候変動分野においては、開発途上国での観測・監視能力の開発や緩和対策、適応戦略への貢献に取り組みます。

  2. イ 研究開発成果の一層の社会還元
     i) 環境分野の科学技術に関する普及啓発等、国民理解の増進及び各主体への研究・技術開発の成果の普及と実用化の促進、 ii) 日本発の重要技術の標準化も視野に入れた知的財産に関する取組の強化、及び、 iii) 研究開発評価の一層の促進と評価結果の施策への反映の徹底等を推進します。

  3. ウ 先端科学技術の積極的活用
     ナノテクノロジー等先端科学技術について、その環境への影響や実用化に当たっての制度面での障害の検討を含め、倫理的・法的・社会的問題(ELSI:Ethical, Legal and Social Issues (or Implications))に関する研究等を適切に行いつつ、環境分野におけるこれらの積極的活用を推進します。

  4. エ 人材・組織の整備等の推進
     i) 環境分野と他分野との人材交流の促進(分野融合人材の育成)及び女性研究者等の多様な人材の活躍促進、ii) 環境研究・技術開発のための資金のマネジメントシステムの向上、iii) 学際的な環境関連の学会の活用の強化等による「環境研究コミュニティ」の形成等を推進します。

5 取組推進に向けた指標

以下に示すものを中心として、その他補足的な指標を引き続き検討します。なお、これら指標については、可能な限り、国際比較にも活用します。

  • ・環境分野における政府研究開発投資総額(円/年)
  • ・政府研究開発投資総額に占める環境分野の投資割合(%)
  • ・我が国における環境分野の特許出願件数
  • ・環境関連技術(環境産業)の市場規模(円/年)

第2項 環境情報の基盤の整備

1 現状と課題

 環境情報の基盤の整備については、これまでも環境白書や環境統計集をはじめとする環境行政資料や各種ガイドライン等による情報提供を行ってきたほか、インターネットを活用し様々な環境情報を公表してきました。
 しかし、環境・経済・社会の各側面を統合的に向上させるための環境政策の企画立案に当たっては、経済・社会データなども含め必要な環境情報のさらなる収集を図り、適切に利用していくことが重要です。また、施策への反映を想定した情報整備の在り方や、情報の適切かつ有効な利用方法、環境の観点も含めた経済パフォーマンスを表す指標など環境と経済の関わりの分析に資するような適切で分かりやすい情報提供の在り方等について、さらなる研究開発を行う必要があります。
 一方、環境情報の提供に当たっては、専門的な環境情報の分かりやすい説明、ITを活用した積極的かつタイムリーな提供や関連情報のリンクなど、国民の環境保全の取組や行政参加を促すさらなる工夫が必要です。
 さらに、環境問題の国際化に伴う世界への情報発信とともに、地域に根ざしたきめ細やかな情報提供をさらに推進する必要があります。

2 中長期的な目標

 あらゆる行政場面において、持続可能な社会を構築するための環境政策の立案・評価を適切に行う情報立脚型の環境行政を確立するため、経済・社会までも含んだ幅広い環境情報の中から特に必要となる情報を、行政施策において幅広く利用できるようにします。
 また、環境問題の現状、課題、取組等に係る情報を誰でも容易に入手できることにより国民の持続可能なライフスタイルや環境問題への取組、環境政策への参加をより一層促進する、「環境情報ユビキタス社会」を構築します。

3 施策の基本的方向

(1)基本的方向

  1. ア 利用者本位の環境情報の整備
     以上の中長期的な目標を達成するためには、行政、研究者、民間団体、市民等様々な利用者のニーズに合った、利用者本位の環境情報を整備していく必要があります。このため、必要とされる環境情報を明らかにした上で、あらかじめ利用を想定とした整備をさらに推進することにより、環境情報のクオリティーの向上を図ります。

  2. イ 環境情報の流通の促進
     また、情報の整備(収集、整理及び保存)、行政における利用、国民への提供、さらにこれらの実施結果や国民からの意見を新たな行政施策へのフィードバックへ繋げるまでの連続した流れを確保することが重要です。このため、どの局面でも情報の流れが停滞しないよう、関係機関の相互連携による体系的な情報の整理など環境情報の流通を促進するための取組を一体的に進めます。

  3. ウ 国内外での連携協力体制の構築
     さらに、環境情報は国だけでなく、地方公共団体、民間団体等の国内又は国際機関や諸外国の政府機関をはじめとする海外における様々な主体が整備しており、ローカルからグローバルまでの幅広い環境情報の整備を各主体が効率的に行うことが重要となります。このため、環境情報の流通を促進するに当たっては、それぞれの特性をいかした適切な役割分担を行いつつ、相互に連携協力する体制を構築します。

(2)各主体に期待される役割

  1.  ア 国
      持続可能な社会を構築するため必要な環境情報の収集、整理、保存、利用及び提供について、利用者のニーズを踏まえ、的確に実施します。また、地方公共団体や諸外国の政府機関等との適切な役割分担のもと連携協力して、効率的な整備を実施します。

  2.  イ 地方公共団体
      国が行う環境情報の整備との緊密な連携を図りつつ、地域に密着した環境情報の整備や提供を行うことが期待されます。

  3.  ウ 研究機関・研究者
      第1項で求められる研究・技術開発について、環境情報の利用を図りながら適切に行うとともに、その成果を積極的に提供することが期待されます。

  4.  エ 国民・事業者・民間団体
      自らの有する環境情報を積極的に発信するとともに、環境情報を活用した持続可能なライフスタイルの実践や環境保全の取組、環境政策への参加等を積極的に行うことが期待されます。
      特に、民間団体には、専門的な環境情報を国民に分かりやすく伝えることなど、各主体の情報の橋渡しをする役割が期待されます。
      以上を踏まえ、国は、情報立脚型の環境行政の確立及び環境情報ユビキタス社会の構築のため、特に早急に取り組む必要性が高い施策に重点を置きつつ、総合的かつ計画的に施策の推進を図ります。

4 重点的取組事項

(1)計画的な基盤整備の推進

 環境情報の長期的かつ総合的な基盤整備の基本的方針となる「環境情報戦略」を策定します。
 この戦略では、①持続可能な社会の構築のために必要な環境情報の範囲や優先して収集すべき情報、②環境情報の収集、整理、保存、行政における利用及び国民への提供のあり方、③地方公共団体とその研究機関、また民間団体等との役割分担や相互連携のあり方、及び④諸外国、特に、我が国と地理的、経済的に密接な関連を有し、また、環境への負荷の増大が見込まれるアジア太平洋地域との連携協力のあり方について定めます。
 また、環境情報の一体的かつ体系的な整備を進めていくために、環境情報の整備・提供に関する国民からの意見を集約し、情報の整備の調整又は総括を行う機能の充実・強化を図ります。
 さらに、環境情報の整備を行う上での制度的課題を抽出し、必要な検討を開始します。

(2)利用者本位の環境情報の整備

 必要な環境情報については、環境計測データをGISにより他の情報と重ね合わせることなど、あらかじめ行政における利用や国民に対する提供又は国際的な比較可能性の向上を念頭に置いた収集・整理を行います。その際、環境と経済の相関性を適切に分析・把握するため、環境情報の収集・整理に当たっては、産業分類など経済統計・データとの整合性を確保します。
 特に、事業者が行う環境投資の実態把握については、率先的にデータの収集を行います。
 また、適切な利用を推進するため、収集目的や背景について説明する解説情報を添付し、その中で必要な情報については網羅的に情報源情報を整備します。
 さらに、環境情報の信頼性を確保するため、情報セキュリティの向上にも努めます。

(3)環境情報の流通の促進

  1.  ア 体系的な整理と長期的な保存体制の確保
      環境情報に関するデータベースなどの体系的な整理を行うとともに、ポータルサイトを構築することなどにより窓口機能を充実させます。
      また、永続的な利用を可能とするため、20年以上にわたる長期保存を見据えた電子化された情報の長期保存を行うアーカイブシステムの検討を行い、その実用化を図ります。

  2.  イ 多様かつ高度な行政利用の推進
      行政施策における幅広い利用のため、環境GISを用いた地域環境の評価手法の研究を行い、その導入を推進します。
      また、環境面の情報と環境への負荷に関連がある社会、経済、制度等に関する統計データなどの幅広い情報を統合的に整理・分析し、その成果を政策に活用します。

  3.  ウ 分かりやすく使いやすい多様な提供と十分なアクセスの確保
      わかりやすさ、即時性、きめ細かな地域性などを向上させるため、多様なメディアとの連携を十分に行いつつ、動画の発信、デジタル放送の活用、次世代携帯電話の活用をはじめとする新たなツールを活用した環境情報の提供を行います。
      また、インターネットを活用した情報の提供に当たっては、高齢者・障害者に配慮したホームページの作成、運用等を行います。
      さらに、世界に向け、英語化された環境情報の積極的な配信を行います。

  4.  エ 環境情報に関するフィードバック制度の構築
      国民が求める環境情報を積極的に公開することが可能となるよう、国民からの環境情報に対する適切なフィードバックを確保するためのマネジメントシステムを構築します。

(4)国際的な情報連携基盤の整備

 アジア太平洋地域をはじめとする諸外国との連携強化を図るため、資源循環の確保、黄砂・酸性雨等の越境汚染又は気候変動による影響やその対策、渡り鳥等の野生生物、鳥インフルエンザ等の感染症に関する情報をはじめとした環境情報の収集、整理、保存及び相互発信を行うための国際的なネットワーク構築を行います。

5 取組推進に向けた指標及び具体的な目標

(1)目標となる指標

 環境情報の整備に当たっては、環境情報の質、最新情報の更新状況、情報の信頼度、情報に対する利用者の意見・感想の聴取とその反映状況、情報の使いやすさや有用性、イベントへの参加情報等、環境情報に関する国民の満足度について、環境基本計画の見直しのために実施するアンケート調査によりその実態を把握し、当該満足度が90%を超えることを目標とします。

(2)参考となる指標

 その他、目標となる指標に加え、環境情報の整備についての取組状況を測る指標としては、以下の指標が考えられます。

  • ・環境情報を提供する政府関係のホームページ等における情報の英語化率
  • ・環境情報を提供する政府関係のホームページ等へのアクセス数
  • ・環境情報を提供する調査報告書の公表までの期間

第3項 行政施策における環境配慮のための手法の確立・推進

1 現状と課題

 社会経済システムを環境に配慮したものへと転換する政策手法については、第7節において述べたように、民間主体に関しては、経済的手法、情報的手法等の活用が考えられます。
 行政主体の活動は、社会経済活動に広汎かつ多岐にわたる影響を与えるものであることから、環境へ影響を及ぼすと認められる施策の策定や実施に環境配慮を組み込むため、施策の環境への影響を検証しながら影響の低減のための検討を行うことが必要です。これに関しては、これまで以下のような様々な取組が図られています。

(1)戦略的環境アセスメント

 戦略的環境アセスメントについては、廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの適用の考え方が整理され、試行的なガイドラインが提示されたほか、海外事例等に係る報告書も公表されるなど、着実に検討が進展しています。
 諸外国においては、特に欧州において、国際連合欧州経済委員会の議定書や欧州連合の指令に基づき、計画等の策定プロセスから独立した手続とする戦略的環境アセスメントに関する制度化が進展しています。開発途上国援助の分野においても、独立行政法人国際協力機構の環境社会配慮ガイドラインにおいて戦略的環境アセスメントの考え方が導入されるなど、その実施が進んでいます。
 また、2002年、OECDによる日本の環境保全成果レビューに関する報告書において、我が国は戦略的環境アセスメントの体系的な実行について必要な措置を講ずるよう勧告されたところです。
 埼玉県、京都市等においても、要綱等の策定による戦略的環境アセスメントに関する制度化や、複数の事例への適用等、その実施例が積み重ねられつつあります。また、戦略的環境アセスメント等の事業に先立つ上位計画等における環境配慮の導入に関し、多数の地方公共団体で検討が行われています。
 道路、河川、空港、港湾等の公共事業についても、その計画プロセスにおける情報公開や市民参加のガイドライン等の提示等、関連する取組が進展しています。
 戦略的環境アセスメントについては、国際的に制度化に向けた気運が盛り上がっており、国内でも地方公共団体における実施例が増えつつあるなど、国内外における状況が進展しています。今後は、導入に向けた一層の取組を進めることが必要です。

(2)環境影響評価

 環境影響評価については、関連する科学的知見の蓄積や実施状況を踏まえ、環境影響評価の項目の選定等に関する基本的事項の改正や、これを踏まえた、事業の種類ごとに具体的な指針を定める主務省令の改正が行われました。また、環境影響評価の技術手法について、最新の科学的知見に基づく整理・検討が実施されるとともに、適切な事後調査の実施方法についての情報提供等が実施されています。
 今後は、引き続き、技術手法のレビューや、方法書手続の機能を十分に発揮するための検討、関係者間のコミュニケーションを進めるための手法開発等を進め、環境影響評価の一層の充実を図ることが必要です。

(3)環境管理システム

 環境管理システムとは、環境に関する方針を自ら設定し、その達成に向けて取り組むための体制及び手続をいい、企業等ではISO14001等に基づきその導入が進んでいます。国においても、行政主体としての活動に環境配慮を積極的に織り込むため、すべての府省において環境配慮の方針が策定されるなど、その取組が着実に進んでいます。これらにより、特定の事業だけではなく、活動全体について環境の保全に配慮するという仕組みを定着させていくことが必要です。
 また、多数の地方公共団体においても、自らの活動について環境管理システムを導入し、その活動に環境への配慮を織り込む動きが見られます。
 今後は、環境配慮の方針に基づく国の取組の実績を踏まえ、その内容をより充実させていくとともに、新たに取り組もうとする地方公共団体を支援していくことが必要です。

2 中長期的な目標

 国をはじめとする行政主体の様々な活動において、環境への配慮を確実に組み込むことが必要となっています。
 このため、あらかじめ行政主体により、科学的な予測・評価が確実に行われ、様々な施策の推進による環境影響や環境負荷をより一層低減させるための検討が透明性・客観性を確保しつつ確実に実施される、いわば「行政における意思決定のグリーン化」に資する諸活動を推進します。

3 施策の基本的方向

(1)基本的方向性

 個別の事業の計画、実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策の策定や実施に環境配慮を組み込むための戦略的環境アセスメントの考え方をさらに具体化するとともに、その仕組みの確立に向けての検討を推進します。現行の環境影響評価については、事業の特性に応じて、より分かりやすいものとして実施されるよう、また、事業が環境の保全についてより適正に配慮したものとなるよう、取組を進めます。国際的には、戦略的環境アセスメントに係る制度面での先進各国との整合性を図るとともに、開発途上国に対する、戦略的環境アセスメントや環境影響評価に係る制度面や実施面での情報提供等の協力・支援を推進します。また、国や地方公共団体が、行政主体としての活動に環境配慮を組み込むため、環境管理システムの導入やより効果的な実施を図ります。

(2)各主体の役割

  1. ア 国
     各主体の取組を推進するため、また、自らの活動に環境への配慮を組み込むため、(1)に掲げた基本的方向性に沿って各種取組を実施します。

  2. イ 地方公共団体
     戦略的環境アセスメントに関する取組を推進するとともに、環境影響評価に関し、適切な意見の提出、地域の環境状況に関する情報の収集・整備・提供を行うこと等が期待されます。また、環境管理システムに関しては、その導入やより効果的な実施が期待されます。

  3. ウ 国民
     行政の施策の策定及び実施に環境配慮をより確実に反映させるため、適切に環境の保全の見地からの意見を述べること等が期待されます。

4 重点的取組事項

(1)戦略的環境アセスメント

 上位計画や政策の決定における環境配慮のための仕組みである戦略的環境アセスメントについては、近年、欧州各国や開発途上国においてその推進が図られており、我が国でも、環境影響評価法において港湾計画に係る環境影響評価が定められています。欧州連合等の加盟国や一部の地方公共団体においては、上位計画が及ぼすおそれのある環境影響への配慮に関する、評価書等の作成や環境部局と関係機関との協議等が制度化されていること等から、それらの進展状況や実施例を参考にし、国や地方公共団体における取組の有効性、実効性の十分な検証を行いつつ、我が国における計画の特性や計画決定プロセス等の実態に即した戦略的環境アセスメントに関する共通的なガイドラインの作成を図ります。
 これらの取組を踏まえ、欧州等諸外国における戦略的環境アセスメントに関する法令上の措置等も参考にしながら、上位計画の決定に当たっての戦略的環境アセスメントの制度化に向けての取組を進めます。さらに、政策の決定に当たっての戦略的環境アセスメントに関する検討を進めます。
 また、諸外国や地方公共団体の取組状況や実施例に関する情報の収集・提供、地方公共団体の取組に対する技術的支援等を推進します。

(2)環境影響評価

 環境影響評価法に基づく方法書手続や環境保全対策についての複数案の比較検討等を通じて、開発行為への環境配慮の統合をより一層進めるとともに、改正後の基本的事項や主務省令に基づき、事業の特性に応じた、より分かりやすい環境影響評価の実施に努めます。併せて、住民等の理解の促進のため、方法書等の閲覧や意見提出におけるITの活用や、より分かりやすい方法書等の作成の推進に努めます。また、調査・予測等に係る技術手法の開発を引き続き推進するとともに、調査等の手法、環境保全措置等様々な情報の整備・提供・普及、専門家の技術の向上を促すための措置を講じます。特に、アジア地域における環境影響評価の実施能力向上(キャパシティ・ディベロップメント)や整合性確保のため、技術協力や情報交換を推進します。
 環境影響評価法については、施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて、法の見直しを含め必要な措置を講じます。

(3)環境管理システム

 国においては、各府省における環境配慮の方針に基づき、それぞれの活動における環境配慮の実施を推進します。また、その実施状況を点検し、その結果をそれぞれの活動に反映していくための仕組みの強化等、環境管理システムの導入に関する取組を充実していきます。
 地方公共団体においても、環境管理システムの導入が更に推進されるよう、国や地方公共団体における取組に関する情報の提供等、必要な支援を行います。

第4項 超長期の展望の提示

1 現状と課題

 21世紀において、我が国を含め、世界は歴史の大きな転換点に立っています。我が国においては、先進国の中でも特に急激な少子高齢化とそれに伴う人口減少が少なくとも今後50年を超える期間にわたって、起こるものと予測されています。同時に、世界人口は、国連の中位推計によれば2050年に90億人に達した後、ほぼその状態で安定すると推計されています。地球環境は既に深刻な問題を抱えていますが、今後、人類は現在より1.4倍となる人口を安定的に支えていく持続可能な世界を実現することが求められることになります。その中でもアジアは、中国やインドの台頭をはじめとして今後世界の経済成長の中心となり、それに伴い同地域において地球環境への負荷の増大と地域環境の悪化がかなりの期間にわたって続くことが予測されています。
 現在の趨勢のまま進んだのでは、地球温暖化の進行、生物多様性の喪失、水資源や化石燃料のひっ迫をはじめとした地球規模の環境・資源制約が厳しさを増すとともに、国内における人口減少に伴う社会資本や二次的自然の荒廃など多くの問題に突き当たることが指摘されています。資源、食料等を海外に大きく依存している我が国は、その環境負荷の大きさにもかんがみ、地球規模での持続可能性を確保していくため、積極的な貢献を図っていくことが重要です。特に、東アジア地域の動向は、環境汚染や物質循環を通じて、深く日本と関係します。このため、世界、アジア及び我が国における2050年といった超長期の展望を見通した上で、今から何をなすべきか、検討することが必要です。

2 中長期的な目標

 2050年といった超長期の将来を見据え、環境保全に関する取組の方向付け、またライフスタイルや社会システムの見直しがなされる社会を目指します。
 このため、2050年といった超長期の将来展望、それを踏まえた現在から超長期にわたる対応策や見直しの在り方を明らかにすることを目指します。

3 施策の基本的方向

 2050年頃の世界、アジア及び我が国の環境を見通した超長期の展望について、以下の点に留意して専門的な見地から調査、研究を行います。その際、政府の各種見通し・計画を踏まえて検討を行います。
 また、社会で幅広く議論が行われるよう、研究成果である将来展望について、国内と世界に向けて広く公表します。さらに、将来展望の継続した見直しを行い、その結果を社会に継続して伝えていきます。

(1)複数シナリオ

 50年といった長い期間については、多くの不確実性があり確実な予測は困難です。このため、長期の展望に当たっては、起こりうる複数のシナリオを描いて、多様な場面に備えることが有効です。

(2)望ましい将来像とバックキャスティングという考え方

 社会は、状況に流されるだけでなく、社会の構成員がどのような社会を目指すかによっても、その将来は変わりうるものです。また、現在の趨勢を将来に延長しても、持続可能な社会を実現することは困難です。
 このため、まず望ましい将来像を描いて、それを将来のある時期までに実現するため段階的な経路を検討するバックキャスティングと呼ばれる考え方(現在までの趨勢から予測-フォアキャスティング-と対照的な考え方)に基づいた手法を開発し、活用します。この際、人々の価値観は多様であり、望ましい社会像も複数あり得ることに留意する必要があります。

(3)超長期の展望を踏まえた対応策・政策手法の検討

 望ましい社会像の実現可能性を検証するため、超長期の展望を踏まえた対応策・政策手法の在り方を検討します。その際、技術の大きな転換とその成果の普及、環境費用を価格に反映することなどの制度的対応、ライフスタイルなど需要面の変化、人々の社会参加・政策過程の変化などの要素が重要であることに留意します。

(4)国際的発信

 超長期の展望に関する我が国の取組を世界に示し、相互依存を深める世界と日本の位置するアジアにおいて、この分野でリーダーシップを発揮します。

4 重点的取組事項

 展望に関する主要な論点として、①温室効果ガスの大幅削減に対応した世界と日本の脱温暖化社会とは何か、②顕在化する温暖化の影響にどのように対応するか、③深刻化が予測されるアジア地域の環境問題について、東アジアの共同体形成を視野に入れながら、廃棄物・資源循環も含めて、どのように環境協力を行い、域内の持続可能な開発を進めていくか、④貧困・環境破壊が深刻な中で大きな人口増加が予想されるアフリカなどにおける地域的危機にどのように関わっていくか、⑤本格化する環境・資源・エネルギー制約に対応して、どのように、技術革新を駆動し、制度を整備して循環型社会を形成していくのか、⑥自然環境の保全・再生、生物の生息・生育空間のつながりを確保する生態系ネットワークの形成により、国内からアジア太平洋地域をはじめ、グローバルな生物多様性をいかに確保するか、⑦国内の少子高齢化と人口減少に対応した、環境関連社会資本と生物多様性の観点を含む二次的自然の維持形成の在り方、⑧自然資源の国際的需給が将来ひっ迫するであろうことに備えて、どのように国内において環境保全型の第一次産業を活性化させていくか、⑨環境汚染蓄積などの将来への「負の遺産」問題への対応、⑩環境リスクの早期発見・早期対応のための仕組み、⑪高齢者の社会参加を含むライフスタイル及び地域社会づくりの在り方、⑫先進的な技術・研究・経験を踏まえた環境立国としての世界への貢献などについて検討を深め、超長期の展望を提示します。

(重点分野政策プログラム)
    第10節 国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進

1 現状と課題

 急速に進む経済のグローバル化の中で、先進国を中心とする経済活動水準が一層高まる一方で、多くの開発途上国では貧困が進み、人口の急増・都市集中が進んでいます。これらを背景として、地球温暖化、熱帯林の減少、廃棄物の増加、生活環境の悪化などの環境問題が激化し、特に開発途上国では、工業化や貧困に起因する環境破壊により、自然の資源に生計を依存する人々が更なる貧困に陥る悪循環が生じています。
 このような状況に対して、国際社会は、環境保全を目的とする条約や宣言、計画などを策定し対応を図ってきました。例えば、国連においては2000年のミレニアム宣言等を基に、平和と安全保障、貧困削減と開発、環境等を重視し、主として2015年までに達成すべき数値目標(MDGs;ミレニアム開発目標)を定めました。また、2002年の国連持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)では「ヨハネスブルグ実施計画」が採択されました。このような国際社会の対応を背景に、持続可能な開発の具体化に向けた行動が必要となっています。持続可能な開発の具体化は先進国及び開発途上国の双方の課題であり、先進国から開発途上国への支援という観点だけではなく、それぞれの地域や国の状況に応じたきめの細かい対応が重要になっています。
 このような中において、環境保全に関する国際的な取組に係る各分野での我が国をめぐる現状と課題は、次のとおりです。

(1)国際的な連携の確保や枠組みづくりにおける課題

  1.  ア 世界的な枠組みづくり
      地球規模や地域レベルの環境問題に対応する国際的な枠組みは、環境問題が広がり、深まりを見せていることから、今後ますます重要となっていくものと考えられます。このような取組の中で、我が国は、我が国の経験や国際的な責任も踏まえて積極的な役割を果たすことが課題となっています。
     世界的な枠組みに関しては、地球温暖化対策において、京都議定書の発効によって先進国がより実効的な対策を進めることが求められており、2013年以降の将来の枠組みにおいては開発途上国を含むすべての国が地球温暖化対策への取組を更に促進することが期待されています。さらに、G8サミットで我が国が提案し、合意された「3Rイニシアティブ」を受け、資源及び物資のより効率的な使用を奨励するための3Rの取組を国際的に広めていくこと、地球環境の状況等の把握のため、国際的な「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を着実に実施していくことなども必要です。
     また、既存の多数国間環境条約は地域的なものも含めると500以上にも上るとされ、こうした条約間の連携強化や、特に途上国における実施のための能力構築等が今後の大きな課題となっています。
     さらに、2001年11月から始められたWTO新ラウンドでは、貿易と環境が交渉課題となり、多国間環境条約における貿易制限措置とWTO協定との整合性などが議論されています。経済の国際化の進展等に伴い、ある国で環境保全上問題となった物が他の国に流入したり、国内の環境政策であっても貿易や他国の経済活動に影響を及ぼしうることからWTO協定との整合性が問題となったり、国際的な基準・規格や国際環境政策が国内の環境対策や経済活動に影響を及ぼすという状況が顕在化してきました。このような状況を受けて、世界の環境保全を強力に推進するための、より適切な国際ルール形成がますます重要となっています。我が国の貿易や経済活動、環境政策が他の国々の環境に影響を及ぼす側面があることも踏まえ、我が国の経験と知見をいかした積極的な貢献と行動が必要となっています。

  2. イ 東アジアを拠点とした地域的な枠組みづくり
     我が国を含む東アジア地域では、世界経済に占める役割が増大するとともに、環境への負荷が増大していく傾向にあります。各国の国内の環境問題はもとより、酸性雨や黄砂、大気汚染、海洋汚染等の現象が国境を越えて広がっています。こうしたことから、当該地域での適切な環境保全対策を進めることが世界全体の持続可能な社会の実現のためにも不可欠となっています。我が国は、これまで日中韓三ヶ国環境大臣会合(TEMM)、ASEAN+3環境大臣会合などにおいて、東アジアの国々との環境政策対話を実施してきていますが、これらを土台として、東アジア地域での環境管理の仕組みの改善に取り組んでいくことが課題となっています。また、地域的な経済連携の枠組みとして経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)等を推進する動きが活発になっていますが、これらの動きの中では、環境に関する規定を協定中に盛り込むなど、環境分野への配慮がなされてきています。

(2)開発途上地域の環境保全のための支援における課題

 ODAにおいて、環境問題を含む地球的規模の問題への取組は重要課題の一つです。これまで、中国、タイ、チリ、エジプトなど6カ国における環境行政の核となる「環境センター」の設置及び同センターへの技術協力等を通じ、途上国の環境問題への対処能力の向上を支援してきました。また、「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ」(EcoISD)(注1参照)に基づき積極的に協力を進めています。さらに、ODAにおける環境社会配慮について、新たなガイドラインを国際協力銀行、国際協力機構及び外務省が策定しており、今後は、その適用を徹底することが求められています。
 支援に当たっては、今後一層の経済成長が見込まれるアジア等の国では、その国の自然的・社会経済的状況に応じた基準策定等環境管理の強化が重要となっています。他方、アフリカ等の後発開発途上国においては、持続可能な開発の実現と地球環境保全のニーズを的確に見極め、MDGsの達成や貧困対策を念頭においた支援を行う必要があります。

(3)国際環境観測・研究における課題

 環境変化の兆しを早い段階で感知検出し、適切な未然防止策や適応策を講じることがますます重要となっています。このため、G8サミットでの我が国の提案により開催された3回の地球観測サミットで取りまとめられ、かつ、G8各国間で指導的に進めていくことが確認された「GEOSS10年実施計画」の実施など、国際的な調査研究、観測・監視が多数実施されています。また、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)等は、まず統一的なモニタリング手法等技術的な取組のルールについての合意形成を踏まえて、国際的対策の枠組みづくりを積み重ねているところであり、これらの枠組みを強化・充実し、さらに他の共通的課題についても取組を進めていくことが極めて重要となっています。

(4)国際的取組のための基盤の強化における課題

 国際環境協力を担う主体として、様々な特徴を有する民間の役割が増大しており、それを支える施策を国が講じていく必要があります。国、政府系機関、地方公共団体、事業者、NGO/NPO、学術研究機関など多様な主体が連携・協働し、それぞれの力を相乗的に発揮するための仕組みや場の構築が課題となっています。さらに、国際機関や国際的な共同研究での我が国のイニシアティブの発動などに携わる人材が圧倒的に不足しており、その養成は緊急の課題として挙げられます。

2 中長期的な目標

 地球環境の保全は、持続可能な開発を達成するためには不可欠の要素です。また、地球のすべての人の共通課題である平和の維持・構築、貧困の削減、健康の維持増進などを実現するためにも不可欠な要素となっています。このことを踏まえ、長期的には、地球環境の保全のために、各国の様々な主体が自立的に状況を把握した上で必要な計画を立て、環境の管理に取り組むことが重要であり、そのための仕組みを構築し、強化することを目指します。
 その中で、中期的な目標として、「地球環境の保全と持続可能な開発を考えた環境管理の有効な仕組みを東アジア地域を中心に普及すること」を目指して施策を講じていきます。

3 施策の基本的方向

 地球環境の保全と持続可能な開発の実現に向けて各国が協調して具体的な行動を推進するためには、世界的な枠組みづくりを進展させ、強化することが重要です。我が国としては、今後ともこうした枠組みづくりに積極的に関与する必要があります。その際、多数国間での枠組み交渉のみならず、欧州・北米等の先進国及び環境への多大な影響が懸念される開発途上国との間での、二国間や地域レベルでの政策対話にも積極的に取り組みます。
 また、環境問題の国際化、経済のグローバル化や貿易ルールの発展等を踏まえ、我が国の優れた技術やノウハウが、世界の環境保全の推進のために効果的かつ適切に活用されるよう、関連する各種のルール形成や国際環境研究推進などに主導的な役割を果たしていきます。
 重点的に取り組む地域としては、我が国と東アジア地域との社会的、経済的、地理的な関係やこれまでの同地域における環境協力の実績、また、欧州及び北米の先進国による国際環境協力との相互補完の観点も踏まえ、日本のイニシアティブとして、「東アジア地域」における環境管理の仕組みの改善を進めます。
 当該地域では、今後更なる経済成長が予想されることから、我が国が過去の環境汚染へ取り組む中で得た教訓が共有されるよう努めつつ、経済実態に即して、汚染者負担原則、予防的な取組方法の考え方等を十分に考慮した適切な対応がなされるよう、各国に働きかけていきます。その際には、東アジアの国々の環境や経済社会の状況に応じて、政府のみならず事業者、市民、国際機関等多様な主体とのパートナーシップの下で取り組んでいきます。
 また、東アジアの国々が地球温暖化など世界的な取組が求められている課題に積極的に取り組むこととなるよう、我が国がリーダーシップを発揮していきます。さらに、東アジア地域での取組を突破口としてアジア太平洋や全世界での取組を進めていくことにつなげていきます。東アジア発の環境保全に関する取組が広がることは、相互依存の世界の中で活動している我が国にとっても大きな恵沢をもたらすものです。

4 重点的取組事項

(1)国際的な枠組みの構築・強化

 環境保全の取組に関する国際的な枠組みへの関与において、国際約束が相当程度形成されている分野については、その実施に今後ともなお一層の努力を傾注することはもとより、既に構築されている枠組みのさらなる活用や強化、枠組み間の連携の強化にも主導的役割を発揮していきます。
 特に、地球温暖化対策の将来枠組みの構築・強化については、積極的に関与していきます。また、その他の分野については、必要に応じ、まず、政策対話や共同の調査研究のルールづくりなどの基礎を築く段階から役割を果たすことを含め、我が国の経験や技術をいかして枠組みづくりに積極的に関与し、国内施策との連携も図りながら積極的に取り組みます。
 貿易と環境に関する世界的枠組みについては、我が国の方針を一層明確にしつつ、世界的な貿易協定の中での貿易と環境の相互支持性の強化に関する議論に参加します。また、我が国は、EPA/FTAを含む貿易自由化に伴い生じ得る環境面でのプラスの影響(環境上健全な物品の国際的普及等)を最大化し、マイナスの影響(過剰利用による資源の枯渇等)を防止するよう努めます。
 さらに、環境保全に関する我が国の進んだ技術やノウハウを国際的にいかしていくとともに、環境規制や環境対策の効果的な推進に大きな影響を与える国際標準を形成することにおいて、例えば、既に議長国となっている国際電気標準会議(IEC)の電気電子機器の環境配慮に関する技術専門委員会(TC111)等において積極的に役割を果たすとともに、国際標準化機構(ISO)やIECなどにおける環境に関連する内容を持つ各種の委員会においてもより多く幹事国や議長国等の役割を務め、また積極的に提案を行っていくなどの主要な役割を担うよう努めます。
 東アジアの国や地域単位の共通の目標や計画の策定、共同で実施するプログラムの作成・実施などのために、政策対話及び個別分野でのネットワークを通じて、当該国・地域の環境の状況、環境管理能力、環境保全上の課題やニーズを把握するよう努めます。例えば、「G8・3Rイニシアティブ」の提案国として、3Rを通じた循環型社会の構築を国際的に推進していく上での中心的な役割を果たしていくよう、「ゴミゼロ国際化行動計画」を着実に実施し、「東アジア循環型社会ビジョン」の策定等、東アジア地域を中心に、適正な資源循環を確保していくための国際的な取組を進めます。また、関係諸国との意見交換を通じて、地域における包括的な国際環境協力の枠組みを構築することを目指します。

(2)開発途上地域の環境保全のための支援

 東アジアのみならず、アフリカ等他の開発途上地域についても、貧困などの課題の解決に寄与するよう十分に配慮しながら、環境保全のための支援を進めます。その際、環境にかかる組織、関係者の能力を高めるため、環境に関する技術の修得等を含めた人づくりを進めるとともに、制度構築及び機材整備などに対して協力します。また、開発途上国による自然資源の保全を含む自らの能力向上を目指して、長期的な視点から協力を行う対象を選定するとともに、優先分野や対象方針などの決定及び事業実施への関係者の参加、行動能力を高めるための共同作業、広く国民等の環境意識の向上を図る持続可能な開発に関する教育など、過程も重視した協力を推進します。

(3)国際環境観測・研究の推進

 環境問題の解決に向けた人文、社会、自然科学的な研究を含め環境に関わる科学的知見を充実し、その成果を基盤として国際的な共通認識を形成することで、国際的な政策形成やその実施に関する合意の円滑な形成を進めます。そのために、我が国の国内で行う国際環境研究の成果の充実・強化を図ります。また、「GEOSS10年実施計画」に基づき、同計画実施のための国際的組織として設立された地球観測に関する政府間会合(GEO)において、執行委員国や構造・データ委員会の共同議長国を務める等、GEOSS構築に向けた取組を積極的に進めます。
 さらに、関係諸国と共同で、環境情報・データのネットワークづくりの継続・拡充に取り組むとともに、「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)」など既存のネットワークの相互の連携強化も図ります。また、国内外の関係者間の連携を強化し、アジアの環境政策研究機関の間の連携を強化するとともに、3Rに関する国際的な研究ネットワークを構築することなどを通じ、地球環境保全に関する国際的な調査研究への積極的な参画や、具体的な環境保全プロジェクトの形成や効率的な環境政策の立案にも貢献し得る、国際共同研究及び研究ネットワークの整備を進めます。

(4)多様な主体による取組の促進と各主体に期待される役割

 国際環境協力を推進するに当たって、多様な主体がその知見とネットワークを活用して、積極的に取り組むことが期待されます。

  1.  ア 地方公共団体
      各国の地方公共団体との協力関係を構築し、自身の環境管理に関する経験やノウハウをいかした人材育成や協力プロジェクトを進めていくことなどが期待されます。

  2.  イ NGO/NPO
      社会の環境意識の向上やコミュニティにおける環境管理能力の強化などのための環境活動を行うほか、アジア太平洋地域のNGO/NPOのネットワークに積極的に関わっていくことなどが期待されます。

  3.  ウ 事業者
      自身の事業活動の環境管理に関する情報の公開や相手国の産業団体との交流を行うことなどが期待されます。

  4.  エ 国
      多様な主体が互いを尊重しつつ意見や情報交換を進め、連携の機会を拡大するために必要な方策等を検討します。また、事業者やコミュニティの環境管理能力の向上を図るため、環境技術等に係る情報提供及び環境教育プログラムの開発を促進します。さらに、各主体が、環境保全のための国際的取組を進めるよう、関連する政策・制度の整備や相手国の能力構築等を支援していきます。

(5)体制の整備や基盤の強化

 世界的な枠組みづくりや開発途上地域の環境保全への我が国の貢献を可能とする、情報や人材の基盤の整備を進めます。情報基盤の強化に当たって、国際的取組を進める上でのノウハウなど、そのような取組を行う主体にとって有用な情報をタイムリーに整備し提供していきます。例えば、効果的な支援の立案に資するよう、開発途上国の環境の状況、問題点などを定期的に取りまとめ、広く関係各方面に提供していきます。また、多様な媒体を活用して、国際的取組に対する国民の支持と参加を促す情報の発信に努めます。
 人的基盤については、特に若い世代が国際機関や国際協力の現場を体験し経験を積んで、長期的に従事できるような仕組みを整えます。また、我が国の人材の活用に当たっては、アジア太平洋地域と関係の深い国際機関への優先的な人材の派遣を図り、また、そのような国際機関には環境関連の専門家の雇用を働きかけます。

5 取組推進に向けた指標

 国際的な取組の推進に向けて、以下を指標として用います。

  • ・我が国の環境関係条約・議定書の締結数とその履行状況
  • ・地球環境保全研究政策を支援するための我が国の競争的資金のうち、個別評価が期待通り、もしくは期待以上の研究成果をあげた課題の数とその研究資金の累積予算額
  • ・代表的な国際環境機関で勤務する日本人職員の数
  • ・人材育成支援のための研修受け入れ人数(累積)
  • ・国際的取組を行っているNGO/NPOの数
  • ・我が国のISO14001における審査登録件数

  1. (注1)
     このイニシアティブは、効率的かつ効果的に環境分野の協力を進めるため、2002年に策定された。環境対処能力向上や、我が国の経験と科学技術の活用等の基本方針のもとで、(1)地球温暖化対策、(2)環境汚染対策、(3)「水」問題への取組、(4)自然環境保全を重点分野とする行動計画が掲げられている。

第2章 環境保全施策の体系

 環境保全に関する施策は、各主体間で共通認識を持って、総合的かつ計画的に推進する必要があります。そのためには、前章で示した重点分野を含む、環境保全施策の全体像を明らかにする必要があります。第2章では、環境問題の各分野、各種施策の基盤、国際的取組の各項目について、前章で述べていない事項を中心にしつつ、体系的に整理し、環境保全施策の全体像を示します。

第1節 環境問題の各分野に係る施策

 この節においては、環境問題の各分野において講ずべき施策を示します。この節に示す施策の多くは、大気、水、土壌という環境媒体あるいは環境負荷の原因となる物質に着目して講じられており、このような取組は環境問題の解決に大きな役割を果たしてきました。
 しかしながら、環境は、大気、水、土壌及び生物の間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立つものであり、これらの要素は相互に密接な関係を持ち影響を与え合っています。また、人間活動は、これらの環境の要素に多面的に影響を与えています。こうしたことを踏まえれば、この節に示す施策の推進に当たっては、常に、大気、水、土壌という媒体を横断して問題を捉える観点や環境負荷の原因となっている人間活動の観点を十分念頭に置くことが必要です。

 また、必要に応じ、環境の状態や環境への負荷量などについて、環境基本法に基づく環境基準をはじめとする目標や指針を設定し、施策相互の有機的連携を図りながら、計画的に実施します。特に、環境基準については、環境基本法に従い、設定後においても常に適切な科学的判断を加え、必要な改定を行うとともに、設定された環境基準については、その達成のための方策を総合的に検討し、早期達成を目指します。

1 地球環境の保全

(1)地球温暖化対策

 京都議定書に定められた温室効果ガスの6%削減目標の達成に向け、前章第1節の地球温暖化対策の推進に関する重点分野に示した方向に沿って次のような施策を講じます。

  1. ア 温室効果ガスの排出削減・吸収等に関する対策・施策
    1. (ア)温室効果ガスの排出削減対策・施策
      1. a エネルギー起源二酸化炭素
         省CO2型の地域・都市構造や社会経済システムの形成に向け、以下のような取組を推進します。
        • ○エネルギーの面的な利用の促進、エネルギーの供給・利用に係る各主体の連携による省CO2化の取組などの「省CO2型の都市デザイン」
        • ○公共交通機関の利用や環境に配慮した自動車使用の促進、円滑な道路交通を実現する体系の構築、環境的に持続可能な交通(EST)の実現などの「省CO2型交通システムのデザイン」
        • ○荷主と物流事業者の協働による省CO2化の推進などの「省CO2型物流体系の形成」
        • ○バイオマスや未利用エネルギーの有効利用などの新エネルギーの面的導入や複数主体間のエネルギー融通の促進

           また、各主体が自らの活動に関連する排出の総体的な抑制を目指す取組として、以下のような取組を推進します。
        • ○産業部門において、自主行動計画の着実な実施、工場等におけるエネルギー管理の徹底など
        • ○オフィス・店舗等の業務施設において、エネルギーの使用の合理化に関する法律によるエネルギー管理の徹底、建築物の省エネルギー性能の向上、ITの活用によるエネルギー需要の管理システム(BEMS)の普及など
        • ○家庭において、住宅の省エネルギー性能の向上、ITの活用によるエネルギー需要の管理システム(HEMS)の普及など
        • ○エネルギー供給部門において、発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電について、地球温暖化対策の推進の上で極めて重要な位置を占めるものとして、その的確な運用や放射性廃棄物処分の適切な実施、情報公開に努めつつ安全確保を大前提とした着実な推進。また、地球温暖化対策に大きく貢献するとともにエネルギー自給率の向上に資する新エネルギー導入の促進、天然ガスシフトの推進、電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減のための措置(例えば、個々の原単位の情報開示)、石油やLPガスの高効率利用の促進、燃料電池等の普及など

           さらに、個別の省エネルギー性能の高い機器等を導入する、以下のような取組を推進します。
        • ○産業部門において、省エネルギー性能の高い機器・設備の導入促進
        • ○自動車について、燃費性能や環境性能の優れた自動車やアイドリングストップ自動車等の普及など
        • ○オフィスや家庭の部門において、家電等のエネルギー効率向上、省エネルギー機器に係る情報提供、高効率給湯器等の省エネルギー機器の普及支援・技術開発、待機時間消費電力の削減など

      2. b 非エネルギー起源二酸化炭素
         混合セメントの利用拡大、廃棄物の発生抑制・再使用・再生利用などを推進します。

      3. c メタン・一酸化二窒素
         廃棄物の最終処分量の削減、廃棄物や下水汚泥の焼却施設における燃焼の高度化などを推進します。

      4. d 代替フロン等3ガス
         産業界の自主的・計画的な取組を支援し、代替物質の開発・代替製品の利用の促進、冷媒として機器に充填されたハイドロフルオロカーボン(HFC)の回収などを推進します。

    2. (イ)温室効果ガス吸収源対策・施策
      1. a 森林吸収源対策
         森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備、木材の有効利用等以下のような取組を政府一体となって着実かつ総合的に推進します。
        • ○健全な森林の整備
        • ○保安林等の適切な管理・保全等の推進
        • ○国民参加の森林づくり等の推進
        • ○木材及び木質バイオマス利用の推進

      2. b 都市緑化等の推進
         国民に身近な吸収源対策として、都市公園の整備、公共公益施設の緑化、既存の民有緑地の保全、新たな緑化空間の創出等を推進します。

    3. (ウ)京都メカニズムに関する対策・施策
       京都メカニズムのクレジットの円滑な取得のための仕組みの構築・実施、プロジェクトの形成支援などを推進します。

  2. イ 横断的施策
     温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度の導入、事業活動における環境への配慮の促進、国民運動の展開、公的機関の率先的取組、サマータイムの導入の検討を進めるとともに、ポリシーミックスの考え方を活用します。また、経済的な手法の活用に際しては、費用対効果に配慮し予算の効率的な活用等に努めます。環境税、国内排出量取引制度については、その効果や影響などを踏まえ、総合的に検討していくべき課題です。

  3. ウ 基盤的施策
     気候変動枠組条約及び京都議定書に基づく温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内体制の整備、地球温暖化対策技術開発の推進、気候変動に係る研究の推進、観測・監視体制の強化、地球温暖化対策の国際的連携の確保、国際協力の推進に取り組みます。

(2)オゾン層保護対策

 オゾン層破壊は、長期的な環境問題であり、地球規模の深刻な影響が懸念されることから、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って着実に対策を進めます。
 オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づく「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(以下「モントリオール議定書」とします。)に定められたスケジュールに沿った措置の的確かつ円滑な実施を確保するため、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律により、オゾン層破壊物質の製造規制並びに排出の抑制及び使用の合理化などの対策を実施します。
 排出の抑制及び使用の合理化を一層進めるため、ハロンの破壊処理技術などの基準の整備、適切な役割分担に基づく回収などに係る社会システムの形成及び普及啓発を通じ、オゾン層破壊物質の回収・破壊を促進します。
 温暖化への影響や安全性等に配慮しつつ代替物質及び技術の開発・普及を進めるとともに、オゾン層破壊メカニズムに係る調査研究、オゾン層の状況の監視・観測等を実施します。
 また、開発途上国におけるオゾン層保護対策を推進するため、モントリオール議定書に基づく多数国間基金への拠出、同基金を活用した二国間協力事業、開発途上国のオゾン層保護対策担当者に対する研修・専門家の派遣等を実施します。さらに、監視・観測による科学的知見の充実などにより、国際的な対策の推進に貢献します。

(3)酸性雨等にかかる対策

 酸性雨は、大気環境への負荷が生態系などに影響を及ぼすおそれのある問題であり、その長期的影響には未解明な点も多いことから、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って対策を進める必要があります。
 このため、酸性雨原因物質の広域的な移流と拡散による影響に着目しながら、地方公共団体とも連携し、監視・観測を充実するとともに、生態系への影響などについて調査研究を進めます。
 国際的には、東アジア13ヶ国により「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」が構築され、共通の手法を用いたモニタリング、その結果の評価などが行われています。このため、EANETの推進に積極的に協力します。
 また、黄砂については近年、中国、モンゴルからの飛来が大規模化していることから、モニタリング等での関係国、関係国際機関との連携などにより対策を推進します。

(4)海洋環境の保全

 海洋汚染の防止措置として、陸域からの負荷の削減などの適切な対策を進めるとともに、船舶等からの油、有害液体物質等、廃棄物の排出等の規制などを適切に実施します。このため、今後、廃棄物の排出に係る新たな国際的規制に対応した国内制度の適切な実施並びに有害液体物質等に係る新たな国際的規制の国内実施体制の確立を進めます。
 タンカーなどの油汚染事故等を防止するため、国際条約非適合船の排除に向けたポートステートコントロール(PSC)実施体制の強化を推進するなどの措置を講ずるとともに、事故に対する準備及び油濁損害賠償保障制度の充実などの対策を推進します。また、有害液体物質汚染事故に備えた対策についても推進します。
 船舶からの排出ガス削減手法を検討します。
 海底における活動からの汚染の防止方策について検討します。
 海洋環境保全上、重要となっている次の分野の調査研究や技術開発を推進します。

  • ・陸域からの負荷とその影響
  • ・海洋における漂流・漂着ゴミ
  • ・大規模な油及び有害物質の汚染対策
  • ・海洋環境へ与える影響が小さい船底塗料
  • ・船舶バラスト水を経由した有害生物の移動防止

(5)森林の保全と持続可能な経営の推進

 森林生態系の保全は、地球温暖化防止、生物多様性保全等、多様な機能の持続的な発揮の観点からも重要な地球環境問題であることから、違法伐採対策も含め、世界の森林の保全と持続可能な経営の推進に取り組みます。
 国連森林フォーラム(UNFF)における世界の森林に関する今後の国際的な枠組みの強化についての議論、生物多様性条約(CBD)の森林生物多様性保全に関する議論に積極的に参加するとともに、必要な調査・検討等を推進します。また、UNFF等国際的な議論の場においても重要性が確認された地域レベルでの対話・協力の強化、とりわけアジア森林パートナーシップ(AFP)、東アジア、欧州・北アジア等における森林法の施行及びガバナンス(FLEG)等の地域的枠組みに積極的に参加し、取組を促進します。この他、モントリオール・プロセス等の森林の保全と持続可能な森林経営を把握・評価するための基準・指標に関する取組を進めます。
 違法伐採問題については、G8サミット等の議論を踏まえ、政府調達を通じた取組を進めるほか、自主的な行動規範の策定に向けた各国への働きかけ、木材生産国支援、G8森林行動プログラムのフォローアップ等を通じて違法伐採対策に取り組みます。
 さらに、国連食糧農業機関(FAO)、国際熱帯木材機関(ITTO)などを通じて森林保全に関する国際協力などを推進するほか、ITTO、世界貿易機関(WTO)などの検討状況を踏まえ、より適切な木材貿易の推進に努めます。

(6)砂漠化対策の推進

 地球規模の環境問題である砂漠化に対処するため、砂漠化対処条約(UNCCD)に基づく国際的取組に積極的に取り組みます。

 砂漠化のメカニズム、人間活動と砂漠化の相互影響、幅広い主体の参加による社会経済的視点を含めた総合的な砂漠化対策について調査、検討を実施します。特に、同条約締約国会議の科学技術委員会(CST)における砂漠化の基準・指標、伝統的知識の活用、早期警戒体制等の課題について重点的に調査、検討を行い、条約の実施に科学的・技術的な貢献を行います。また、同条約では地域的取組を重視しており、アジア地域における取組も実施します。さらに、砂漠化の影響を受けている国における対策を支援します。

(7)南極地域の環境の保護

 南極地域は、人類の活動による破壊や汚染の影響をわずかにしか受けていない、国際的に高い価値が認められている環境であり、人類共通の財産です。このため、南極地域の環境及びその生態系を包括的に保護することを目的とした「環境保護に関する南極条約議定書」等の国際約束を実施するため、環境影響評価、動植物相の保護、廃棄物の適正な処理及び管理、海洋汚染の防止、保護区域の管理などを進めます。また、南極条約協議国会議において採択された環境保護のための勧告、措置等の履行を通じて、南極地域の環境保護に積極的に協力します。
 さらに、南極条約協議国会議における、近年規模が拡大している南極地域の観光と環境のあり方に関する議論等に積極的に参加します。

2 大気環境の保全(地球規模の大気環境を除く。)

 大気環境の保全のため、次のような基本的な方向に沿って、各般の施策を実施します。

  • ○環境基準等の目標の達成・維持等
     科学的知見の充実を図りながら、問題の性質に応じて環境基準等の環境上の条件になる目標や環境への負荷の低減の目標を設定し、その達成・維持に向けて、適切な施策を推進します。
  • ○多様な社会経済活動に伴う環境への負荷の低減
     生産活動、交通、日常生活などの多様な社会経済活動から生ずる環境への負荷の低減などの対策を総合的に推進します。
  • ○水環境、土壌環境、生態系との関連等への着目
     大気が生態系に与える影響や水環境、土壌環境との関連、緑地が持っている大気浄化、気象緩和などの機能にも着目して、適切な施策を推進します。

(1)光化学オキシダント対策

 光化学オキシダントによる汚染については、行政区域を越えて広域化する傾向が認められているため、地方公共団体とも連携しながら、広域的な観点から、監視や原因物質である揮発性有機化合物(VOC)等の排出抑制対策などの総合的な対策を推進します。

(2)大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

 大都市圏等への負荷の集積による大気環境に係る問題に関しては、前章第3節で示した取組も含めた全体像として、次のような対策を行います。

  1. ア 窒素酸化物対策
     自動車などの移動発生源、工場や事業場などの固定発生源に対する排出抑制対策等として次のような施策を総合的に実施します。

    1. (ア)自動車排出ガス対策
      1. a 環境負荷の少ない自動車の一層の普及
         中央環境審議会で示された自動車1台当たりの排出量の低減目標及び軽油中の硫黄分の低減目標に沿って、自動車排出ガス規制の強化をできる限り早期に実現します。また、低公害車や低排出ガス車の導入及び低公害車燃料供給施設の設置への支援、国、地方公共団体による率先導入、技術開発による低公害車等の普及、合成燃料の開発を推進します。
         また、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律等に基づき、特殊自動車の排出ガス対策を推進します。

      2. b 交通需要マネジメント手法の活用をはじめとする物流、人流、交通流対策、局所汚染対策の推進
         交通需要マネジメント手法の活用をはじめとして次のような施策を推進します。
         共同輸配送、カーシェアリングの促進、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道、海運の整備、物流拠点への連携を強化するためのアクセス道路等の整備などによる適切な輸送機関の選択の促進を図ります。また、環境負荷の低減に配慮した公共交通機関の整備や利便性の向上、徒歩や自転車利用のための施設整備を進めるとともに、沿道環境保全に配慮した交通の分散と円滑化のためのバイパス及び環状道路等の整備、交差点改良を推進します。さらに、交通規制、駐車対策の効果的な実施、高度道路交通システム(ITS)の整備、信号機や交通管制システムの高度化等の交通安全施設等の整備などの交通流対策を進めます。また、窒素酸化物等の濃度が局所的に高濃度になっている場所については、将来濃度予測等の調査研究を進めるとともに、対策効果を発現していく枠組みの構築を図ります。

      3. c 大都市地域における対策の強化
         自動車NOx・PM法に基づく対策地域において環境基準の非達成局が依然として残っていることから、同法に基づく施策の中間点検を行い、自動車排出ガス総合対策を推進します。

    2. (イ)固定発生源対策
       引き続き適切な排出抑制対策を進めます。

    3. (ウ)その他の対策
       規制の対象となっていない小規模発生源についても、低NOx型燃焼機器の普及促進を図ります。また、海洋汚染等及び海上災害等の防止に関する法律等に基づき船舶からの排出ガス対策を推進します。さらに、緩衝緑地等の整備を進めます。

  2. イ 浮遊粒子状物質対策及びディーゼル排気粒子対策
     浮遊粒子状物質及び浮遊粒子状物質の構成要素でもあるディーゼル排気粒子の排出の抑制のため、窒素酸化物対策に掲げる施策に加えて、汚染が広域化していることを踏まえ、これらの排出ガスから二次的に発生する粒子の生成過程も含めた汚染の仕組みなどに関する調査を実施し、特に高濃度汚染が認められる大都市地域を中心に、各発生源に対する対策を総合的に推進します。さらに、微小粒子状物質(PM2.5)及び粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)の健康影響などに関する調査研究を推進します。

  3. ウ スパイクタイヤ粉じん対策
     積雪寒冷地域におけるスパイクタイヤ粉じんの発生を防止するため、スパイクタイヤの使用規制を適切に実施するとともに、普及啓発、凍結路面対策など冬期における道路環境整備などの施策を総合的に進めます。

  4. エ 硫黄酸化物対策等
     硫黄酸化物などの大気汚染物質について、引き続き適切な排出抑制対策を進めます。

(3)多様な有害物質による健康影響の防止

 有害大気汚染物質については、低濃度ではあっても長期間にわたる曝露による健康影響の懸念があることにかんがみ、健康影響を与えるおそれのある各種の有害大気汚染物質から健康リスクの程度に応じて優先的に取り組むべき物質を抽出し、これらについて健康影響や発生源に係る知見の充実、モニタリングの拡充を一層進めるなど、体系的な取組を進めます。
 アスベストについては、建築物の解体現場等の発生源における大気環境中への飛散防止対策の徹底を図ります。

(4)地域の生活環境に係る問題への対策

 生活環境の保全に関しては、騒音、振動及び悪臭は、各種公害苦情件数の中で大きな比重を占めており、その発生源も多様化しています。また、各種交通機関に係る騒音の環境基準達成状況は低い水準にあります。加えて、都市におけるヒートアイランド現象も生活環境に影響を及ぼす深刻な問題となっており、その他光害などの問題も生じています。これらの問題については、次のような施策を推進します。

  1. ア 騒音・振動対策
    1. (ア)自動車交通騒音・振動対策
       自動車交通騒音を防止するため、自動車単体規制等の発生源対策を進めるほか、沿道環境保全に配慮した交通の分散や円滑化のためのバイパス及び環状道路の整備等の交通流対策、遮音壁、低騒音舗装、植樹帯整備等の道路構造対策、土地利用の適正化等の沿道対策の充実について検討し、それらの対策を総合的に進めます。
       また、自動車交通振動対策を適切に実施します。

    2. (イ)新幹線鉄道騒音・振動、航空機騒音対策
       発生源対策、土地利用対策、周辺の防音対策などを進めます。

    3. (ウ)在来鉄道騒音・振動対策
       騒音防止対策に係る指針の策定の検討を含め、適切な対策を進めます。

    4. (エ)工場・事業場及び建設作業騒音・振動対策
       発生源に対する規制を進めるとともに、評価手法等についての調査検討、移転に対する支援等の土地利用対策などを進めます。

    5. (オ)近隣騒音対策
       普及啓発などの対策を進めます。

    6. (カ)低周波音対策
       実測調査及び解析を行い、低周波音に関する新たな知見の集積を図り、有効な低周波音対策を進めます。

  2. イ 悪臭対策
     臭気指数規制導入の促進を図るとともに、より実態に即した規制基準や規制方法に向けた調査を進めます。

  3. ウ 都市におけるヒートアイランド対策
     前章第3節に示した考え方に沿って、人口排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、生活様式の改善などの取組を総合的に推進します。また観測・監視体制の強化に努めるとともに、ヒートアイランド現象に関する調査研究も推進します。

  4. エ 光害対策
     普及啓発などの対策を進めます。

(5)環境負荷の小さい地域・社会への変革

 事業活動や日常生活において、省エネルギーの推進や環境負荷の小さい製品・サービスの利用を呼びかけるとともに、過度な自動車依存を改め環境負荷の小さな交通が実現されるようエコドライブの推進や公共交通や自転車利用の促進を図ります。あわせて国内外で環境的に持続可能な交通(EST)を目指す取組を積極的に推進するなど、環境負荷の小さい地域・社会への転換を目指します。

(6)大気環境の監視・観測体制の整備

 地域から地球規模まで、問題の性質に応じて地方公共団体等と連携し、大気、騒音といった大気環境の状況及び対策の効果等を把握し、人の健康を保護するとともに生活環境を保全する基礎となる監視・観測体制を、必要に応じて人工衛星、航空機、船舶等を活用しながら、体系的かつ計画的に整備し、基礎調査を進め、科学的知見の充実に努めます。

3 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

 水環境、土壌環境、地盤環境は相互に密接な関係を有していることから、これらの保全を図る上で、施策間の十分な連携を図るとともに、大気環境との関係にも留意しつつ、以下に掲げる施策を推進します。

(1)水環境の保全

 水環境の保全については、人の健康の保護及び生活環境の保全に関する水質環境基準の達成、維持を図り、環境への負荷が水循環の過程における自然浄化能力を超えることのないようにするため、水環境を構成する水質、水量、水辺地及び水生生物等を総合的に捉え、水利用の各段階における負荷を低減するとともに、前章第4節で示したことをはじめとした環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組等を推進します。

  1. ア 水質環境基準の設定等
     水生生物の保全の観点からの水質に係る知見を含め、科学的知見を充実させ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい環境基準について、水生生物の保全に係る基準を含め、検討を行い、必要な場合は改訂を行います。生活環境の保全に関する環境基準については、水域類型の指定を進めるとともに、水域類型の指定後に利用目的などの状況の変化が認められる場合にはその達成状況や水域の利用状況などを踏まえ必要な見直しを行います。また、環境基準が設定されていない物質のうち必要なものについては、監視と知見の集積を行います。
     さらに、地域の住民、事業者などの参加や協力を得ながら、地域の実情に即し、水質、水量、水辺地及び水生生物等を含めた水環境を総合的に評価する手法について調査検討します。

  2. イ 水利用の各段階における負荷の低減
     水利用の各段階において発生する水環境への負荷の低減と汚染の未然防止を図るため、以下のとおり発生形態に応じた負荷の低減、負荷低減及び浄化手法の開発及び普及等、水質改善が十分に進んでいない閉鎖性水域対策などを推進します。

    1. (ア)汚濁負荷の発生形態に応じた負荷の低減
      • ○工場・事業場
         水質汚濁防止法等に基づく排水規制及び地下浸透規制を適切に行います。また、排水規制の対象となっていない業種の排水実態を調査し、規制の必要性を検討するとともに、未規制物質の調査及び規制の必要性を検討します。さらに、事業者の自主的取組の促進を図りながら、有害物質を使用しない代替工程の検討や小規模事業場対策として規格化された処理施設の開発など、新たな負荷低減対策を進めていきます。また、生産工程への水の循環利用の組み込みを促進するとともに、建築物などにおける水の循環利用や雨水の利用を促進します。
      • ○生活排水
         流域別下水道整備総合計画などの水質保全に係る計画を策定し、地域の実情に応じ、下水道、コミュニティ・プラント、農業集落排水施設及び浄化槽などの生活排水処理施設の整備を進めます。
         また、生活排水対策重点地域においては、市町村ごとに生活排水対策推進計画を策定し、汚濁負荷の低減を図ります。
         台所などからの汚濁負荷を低減するための方法などについて、必要な情報の提供を行い、全国的な普及啓発を進めます。
      • ○市街地、農地等の非特定汚染源
         汚濁負荷量の把握などの調査研究を行うとともに、都市排水における対策技術の開発、農薬規制の適正な実施、化学肥料や化学合成農薬の使用低減などによる環境保全型農業の普及などに取り組みます。
         また、硝酸性窒素などによる地下水汚染については、汚染の原因及び地域の特性に対応した適切な窒素負荷低減化対策を推進します。

    2. (イ)負荷低減及び浄化手法の開発及び普及等
      • ○負荷低減手法の開発及び普及等
         下水道、農業集落排水施設及び浄化槽の高度処理技術の一層の開発、普及を推進します。また、排水規制の対象となっていない小規模事業場や一般家庭などからの負荷を低減するため、小規模事業場に適用が可能な、安価で汎用性のある排水処理施設の開発や小型浄化槽の普及に向けた維持管理面からの技術的な検討を行います。
         下水道の高度処理等による汚濁負荷の低減を流域全体で効率的に推進するための経済的手法の活用などについて検討します。
      • ○浄化手法の開発及び浄化の推進
         有害物質による地下水の汚染の仕組みの解明に努めるとともに、浄化技術の開発を推進し、適切な対策を推進します。有害物質に汚染された海域などの底質については、しゅんせつによる汚染土砂の除去などの対策を適切に推進します。また、植生の水質浄化機能を活用した安価な水質浄化技術の開発を進めるとともに、水質浄化機能を有する干潟や植生の保全・再生等を推進します。

    3. (ウ)閉鎖性水域などにおける水環境の保全
       湖沼、内湾などの閉鎖性水域、都市内河川のように水質改善が十分には進んでいない水域については、集水域における汚濁負荷の発生状況、水域への蓄積状況などを総合的に把握するとともに、水質汚濁メカニズムに関した調査研究を推進し、これらを踏まえた効果的な対策を推進します。
      • ○湖沼
         琵琶湖などの指定湖沼については、改正湖沼水質保全特別措置法の湖沼水質保全計画などに基づき、各種規制措置のほか、下水道、農業集落排水施設及び浄化槽などの生活排水処理施設の整備や処理施設の高度化、流出水対策、湖辺の植生保護その他の施策を総合的、計画的に推進します。
      • ○閉鎖性海域
         東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海のように特に総合的な対策が必要な閉鎖性海域については、水質汚濁防止法による第6次水質総量規制に係る総量削減計画などに基づき、各種規制措置のほか、下水道、農業集落排水施設及び浄化槽などの生活排水処理施設の整備や処理施設の高度化、干潟の保全・再生、貧酸素水塊などの問題への取組その他の施策を引き続き総合的、計画的に推進します。
         有明海、八代海においては、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律等に基づき、水環境に関する調査、両海域の再生に向けた施策を推進します。
      • ○都市内河川など
         水質汚濁の著しい都市内河川、水道水源として利用されている水域などの水質改善を図るため、排水規制、下水道、農業集落排水施設及び浄化槽などの生活排水処理施設の整備や処理施設の高度化、合流式下水道の改善、河川等におけるヨシなどの生態系を活用した水質浄化施設の整備などによる水質浄化対策や流量の確保対策などの各種施策を総合的に実施します。また、身近な水辺の整備により、住民が水とふれあう機会を増やして住民一人ひとりの意識啓発を図ります。

         さらに、湖沼や海域における窒素、燐に係る水質環境基準の類型指定がなされていない水域で、植物プランクトンの著しい増殖を生ずるおそれがある水域においては、類型指定を進めるとともに、対象流域において下水道、農業集落排水施設及び浄化槽などの生活排水処理施設の整備や排水規制などを推進します。
         また、有機性汚泥が蓄積している河川、湖沼、港湾などの水域については、しゅんせつなどの浄化対策を適切に実施します。

  3. ウ 環境保全上健全な水循環の確保
     前章第4節で示したように、水循環の全体を通じて、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスの下に共に確保され、流域の特性に応じた水質、水量、水辺地、水生生物等を含む水環境等が保全され、持続可能な利用が図られるよう、流域全体を捉えて、環境保全上健全な水循環の構築に向けた取組を推進します。

  4. エ 水環境の効率的・効果的な監視等の推進
     地方公共団体との連携の下に、水質測定計画に基づき、環境基準設定項目等の監視などを効率的・効果的に推進します。また、水環境中の化学物質等の存在状況に関して必要な調査を進めます。

  5. オ 内外の水環境保全活動の推進
     住民や事業者など一般の方々が参加できる、身近な水との触れ合いを通じた水環境の保全のための各種活動を推進、支援します。
     また、我が国における水環境に関する取組を国際的に発信するなど世界の水環境問題の解決に貢献します。

(2)土壌環境の保全

 人の健康や生態系への影響に関する科学的知見を充実しながら、水環境などへの影響に配慮し、環境基準の設定などを行い、土壌汚染の未然防止と回復及び健全な土壌環境の維持を図ります。このため、大気環境や水環境との間の汚染物質の移動に留意しながら、次のような施策を推進します。

  1. ア 土壌汚染の未然防止の推進
     有害物質の排水規制・地下浸透規制、ばい煙の排出規制などを引き続き適正に実施します。また、鉱害防止対策を進めます。

  2. イ 市街地の土壌汚染対策の推進
     土壌汚染対策法の円滑な施行を図ります。人の健康の被害を防止するため、土壌汚染の適切な調査や対策を推進します。
     土壌に含まれる油に起因する油臭や油膜によって生活環境保全上の支障が生じている場合の調査・対策の具体的指針を示し、普及促進を図ります。
     土壌汚染の調査や対策等に際して優良な業者の選定に役立つ客観的な評価の目安を検討し、その普及促進を図ります。土壌汚染が懸念されるため利用が進まない土地の現状の問題点や課題を把握し、対応方策を検討します。
     汚染が判明した指定区域内の土地について汚染原因者が不存在等の場合に対策が円滑に進むように努めます。有害物質による土壌汚染の影響や調査・対策について知識を普及し国民の理解の増進に努めます。

  3. ウ 土壌環境に係る科学的知見の整備等
     土壌汚染の調査や対策については、使いやすく効果的、効率的な調査・対策技術の開発を促進し、適切な土壌環境保全事業の普及を図ります。有害物質や曝露経路に関する科学的知見を集積して検討を行い、必要に応じ、基準の改定を行います。土壌汚染の生活環境や生態系に及ぼす影響の把握や知見の集積を進め、土壌環境の保全の在り方を検討します。
     土壌汚染の原因が人為的なものか自然的なものかの判断の目安とするため、自然的原因により土壌中に存在する有害物質の量の把握調査を推進します。

  4. エ ダイオキシン類による土壌汚染対策
     ダイオキシン類による土壌汚染が判明した地域については、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、早急かつ的確な対策が実施されるよう必要な支援に努めます。

  5. オ 農用地の土壌汚染対策
     農用地の土壌汚染対策については、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づき、カドミウム、銅、砒素その他の有害物質に関する知見の充実に努めるとともに、汚染状況の監視、基準値以上の汚染が検出された地域についての対策地域の指定、対策計画の策定等の必要な措置を促進します。また、対策計画に基づく事業を推進するほか、農作物が有害物質を吸収することを抑制する営農技術の確立を図るなど、農用地の土壌汚染対策を着実に推進していきます。
     また、農薬による土壌汚染に伴う被害を防止するため、農薬の規制を適切に実施します。

(3)地盤環境の保全

 地盤沈下などの地下水位の低下による障害を防ぐため、地下水採取規制や代替水対策などの地下水採取の抑制のための施策を推進するとともに、流域全体を通じて、貯留浸透・涵養能力の保全・向上を図り、湧水の保全・復活に取り組むなど、環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組を推進します。
 地下水の流動や地盤沈下の発生の仕組みなど地盤環境保全対策を検討するため必要な調査研究を行うとともに、地域の特性を踏まえた適切な地下水管理方策の検討を行います。
 地盤沈下とこれに伴う被害の著しい濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の各地域について、地盤沈下防止等対策要綱に定められた目標を達成するため、適切な対策を実施します。
 全国の地盤沈下の状況を的確に把握するため、地方公共団体と連携して、効率的・効果的な監視測定を推進します。また、渇水時や降雪時の急激な地下水揚水による地盤沈下の防止を図るため、地下水位などのリアルタイムデータの活用を推進します。

4 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策

 廃棄物・リサイクル対策については、循環型社会形成推進基本計画に示されている考え方を踏まえ、次のような施策などを総合的、計画的に推進します。

(1)廃棄物等のリデュース(発生抑制)

 使い捨て製品の製造販売や過剰包装の自粛、製品の長寿命化、軽量化、小型化、薄型化、廃棄物の発生量を減らす流通・販売方法の導入など、事業者が、製品の開発、製造、流通の各段階で、廃棄物等の発生を抑制する観点からの適切な配慮を行うことを促進するとともに、国民の生活様式の見直し、買物袋の持参、使い捨て製品の使用の自粛などの製品の消費側からの取組を促進します。また、一般廃棄物処理の有料化などの経済的手法の取組を推進します。さらに、ごみ減量に関する国民運動を推進するとともに、廃棄物の発生状況に係る情報の整備、提供を推進します。
 なお、有害廃棄物の発生を抑制するため、製品の設計、製造段階で配慮が行われることなどを推進します。

(2)循環資源の適正な循環的な利用の推進

  1. ア 循環資源のリユース(再使用)の推進
     容器などのリユースが行いやすいよう、規格の統一化、使用済製品の交換、販売などのための機会の提供などを推進します。また、部品などのリユースが容易となるよう、事業者による設計の工夫や部品の統一化を促進します。

  2. イ 循環資源の回収、リサイクル(再生利用)の推進
     リサイクルが容易な製品づくりを推進するため、事業者による設計の工夫や材質表示などの情報提供を促進します。また、事業者が、個々の物品の性状に応じ、関係者の適切な役割分担の下での使用済製品等の引取り、引渡しルートの整備及びリサイクルを行うことを促進します。また、これらの流通を促進するため、市町村における分別収集の推進の徹底や商品の流通経路などを利用した回収システムの充実、古紙の回収システムの健全な維持を図ります。
     デポジット制などの経済的手法の効果などについて検討を行うとともに、事業者が、再生資源の利用率目標を達成し、再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進します。
     再生資源やリサイクル製品については、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえながら、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することを促進し、リサイクル製品の普及や市場の育成などを推進します。また、これらの流通を促進するため、リサイクル製品の規格化の検討を進めます。これらの取組の基盤として、異業種間の交流や協力などを進めながらリサイクル技術の開発と普及を促進するとともに、リサイクル推進のための啓発活動や国民運動、リサイクルの実施状況や効果などに係る情報の整備、提供などを推進します。
     建設事業に伴って生ずる土砂、汚泥、廃材などのリサイクルなどについては、情報交換の促進などによってその広域的な利用を進めることを含め、取組を推進します。
     リユースやリサイクルに係る物流については、環境負荷の低減などの観点から、中長距離において鉄道や海運という大量輸送機関を活用するなど効率的な静脈物流システムの構築を推進します。
     食品廃棄物等の廃棄物系バイオマスのリサイクルなどについては、農業・畜産業などとの連携による肥料、飼料としての利用やメタン発酵などのエネルギー利用などを推進します。

  3. ウ 循環型社会の形成を図るための施設整備の推進
     循環型社会を目指し、リサイクル法制の適切な運用を図りながら、廃棄物を単に燃やして埋める処理から、極力リユースやリサイクルを推進し、焼却処理の際には熱エネルギーを活用する方法へ転換することを推進します。
     このような観点から、循環型社会の形成を図るための施設については、必要な技術開発を行いながら、焼却灰の溶融固化、廃棄物焼却余熱利用、廃棄物発電、廃棄物系バイオマスの肥飼料化や燃料化などの施設整備を推進します。

  4. エ 循環的な利用における環境配慮
     循環資源の循環的な利用を推進するに当たっては、その環境に与える影響を十分把握するとともに、循環的な利用により得られた原材料を使用した製品などに含まれる可能性のある有害物質などに関する情報の把握を行い、必要な対策を講じます。

(3)廃棄物の適正な処理の推進

 廃棄物処理法に基づく国の基本方針に示される考え方を踏まえて、以下の施策を推進します。

  1. ア 処理施設の確保
     循環型社会を構築する基盤として、必要不可欠な廃棄物の適正な処理体制をつくるため、環境への配慮を十分に行いながら、最終処分場や中間処理施設を確保します。最終処分場などの処理施設について、地方公共団体の共同処理を推進するとともに、大都市圏における広域的な対応を推進します。
     また、大規模な地震や水害等の災害に備えた廃棄物処理の広域的な連携体制を築くとともに広域的な最終処分場等の確保が重要であること考慮し、こうした処理体制の整備を促進します。
     排出事業者が処理責任を負う産業廃棄物の処理施設について、公共の関与も含め、整備を促進します。

  2. イ 市町村と事業者の協力
     拡大生産者責任を踏まえ、事業者において、製品が廃棄物となることをあらかじめ見通し、適正な処理を容易にするように製品の設計や開発を行い、市町村などに対して処理のために必要な情報を適切に提供するよう促します。
     また、家庭などから排出される一般廃棄物のうち、市町村が適正に処理することが困難となっているものとして定められている廃タイヤなどの指定一般廃棄物の処理については、消費者が新規製品を購入する際に販売店が不要となったものを引き取り、可能な範囲で市町村以外の処理システムにより処理するなど、製品の製造事業者などが市町村の処理を補完する形で行う協力を促進します。

  3. ウ 廃棄物処理における環境配慮等
     最終処分場の環境保全対策について、環境モニタリング、廃棄物の受入管理及び埋立終了後の管理の徹底を図ります。また、最終処分場の信頼性の確保を図るため、施設の構造の高度技術の導入などを推進します。
     有害廃棄物の適正処理を推進するため、必要に応じ、特別管理産業廃棄物の指定の追加、廃棄物の最終処分に関する基準の強化、適正処理技術の開発や普及などを実施します。廃棄物の有害性の評価をはじめ、廃棄物の処理が環境に与える影響に関する知見を充実します。また、廃棄物が適正に運搬され、処理されたことを確認するための管理票システムであるマニフェスト制度の電子化を進め、処理の透明化を図ることなどにより不法な処分を防止します。
     また、産業廃棄物処理業者の優良性に係る評価制度の普及・活用促進を図るほか、将来ビジョンの提示などを行うことにより、優良業者の育成と産廃処理ビジネスの活性化を進めます。
     不法な処分がなされた場合に適切かつ迅速に原状回復を行うための方策を確立します。各地域におけるごみの散乱防止のための対策の枠組みの整備を促進するとともに、必要な啓発などを行います。

  4. エ PCB廃棄物の処理の促進
     PCB廃棄物については、過去30年にわたり事業者による保管が続き、その紛失などによる環境汚染の懸念が高まってきたことから、平成13年にポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法が制定されました。それとともに、日本環境安全事業株式会社を活用した拠点的広域処理施設を設置することにより、平成28年度までに処理が完了するよう処理体制を整備します。
     一方、PCBを使用していないトランス等の中に、低濃度のPCBに汚染されたものの存在が明らかになっていることから、その適正な処理が確保されるよう、処理体制等処理の基本的方向について検討を行います。

  5. オ アスベスト廃棄物の処理の推進
     アスベストによる健康被害防止や国民の不安を解消するため、今後大量に発生することが予想されるアスベスト廃棄物について、安全かつ円滑に処理するための無害化処理等の技術開発及び導入を推進します。

5 化学物質の環境リスクの評価・管理に係る施策

 予防的な取組方法の考え方を踏まえながら、最新の科学的知見に基づき化学物質の環境リスクを適切に評価して管理することを基本として、前章第5節に示した諸施策を中心に、次のような施策を推進します。

(1)化学物質の環境中の残留実態の把握等

 化学物質による環境リスクを評価し管理するためには、対象物質の毒性評価とともにばく露評価が不可欠であることから、ばく露評価のためのデータの根幹となる化学物質の環境中の残留実態の把握を行う化学物質環境実態調査等を引き続き実施します。
 その際、新規化学物質や極微量の残留実態を把握するための、分析法の開発及び改良を進めます。
 また、環境実態調査の検体の一部を変質することなく保存し、将来の利用に備えます。
 さらに、収集された基礎データを基に予測モデルを作成し、きめの細かな濃度レベルの推計を進めます。

(2)化学物質のリスク評価

 既存化学物質の安全性点検については、官民連携による安全性情報の収集・発信を計画的に推進します。
 また、化学物質による人や生態系への悪影響を未然に防止するため、個別の化学物質ごとに、体系的に健康影響評価、生態影響評価及びばく露評価を行い、環境リスク評価を推進します。
 さらに、生態系に対する影響に関する知見を充実させるため、藻類、甲殻類(ミジンコ)、魚類等を用いた生態影響評価試験を引き続き実施します。
 内分泌かく乱作用に関して、生態系への影響に重点を置いた施策を実施するとともに、国際的連携の下で知見の収集や試験法の開発、試験方法の国際標準化を推進します。
 シミュレーションモデルによるばく露評価手法の開発などの調査研究を引き続き推進するとともに、農薬の陸域生態影響評価手法について検討を進めます。また、大気、水及び土壌などの複数の環境媒体を通じた環境リスクや、複数の物質による環境リスク等、評価手法が確立していない分野における評価手法の開発のための研究を進めます。
 有害性評価手法・測定技術の更なる高度化・効率化を図ります。
 化学物質に関する調査研究を行うための施設を充実させるとともに、化学物質の分析、環境リスクの評価、管理などを行う科学者、技術者の養成などを実施します。
 また、化学物質対策や調査研究の実施に当たって地方公共団体との連携を図るとともに、国立環境研究所と地方の環境研究機関との交流を進めます。

(3)化学物質のリスク管理

 環境基本法に基づく大気汚染及び水質汚濁に係る環境基準については、化学物質の使用実態と併せ、環境への負荷を調査し実態を把握の上、科学的知見を基本として、必要に応じ、拡充整備を図るとともに、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法及び廃棄物処理法などに基づく有害化学物質対策を引き続き実施します。
 化学物質審査規制法の一部改正法により導入した新たな審査規制制度を含め、同法に基づく業務を着実に実施します。
 また、化学物質の総合的な対策に資するため、化学物質の安全性情報の整理・体系化、安全性に関する試験・評価方法の確立等の基盤整備を実施します。
 化学物質排出把握管理促進法に基づく化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)を引き続き円滑に運用するため、PRTR対象化学物質・事業者等の実態把握、届出事業者に対する普及・啓発を実施するとともに、届出対象外の排出量推計の精緻化を推進します。また、化学物質排出把握管理促進法附則第3条に基づく施行後7年経過時の検討条項を踏まえて必要な見直しを進めます。
 さらに、ダイオキシン類対策特別措置法、ダイオキシン対策推進基本指針及び新たな「我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシン類の量を削減するための計画」に基づき、小型廃棄物焼却炉をはじめとする排出源からのダイオキシン類の排出削減などのための総合的な対策を進めます。
 農薬については農薬取締法に基づき、水産動植物被害及び水質汚濁による人健康被害の防止の観点から改正した農薬登録保留基準の設定を行うとともに農薬の環境中での残留実態の把握等を行います。
 レスポンシブルケアなどの事業者による自主的な取組を推進します。特に中小企業の取組を支援します。
 また、情報公開や技術開発などにより、より安全な化学物質への代替や、安全性の高い製造プロセスへの転換を促進します。
 ダイオキシン類などの有害化学物質により汚染された土壌の調査・対策技術、底質の浄化技術やトリクロロエチレンなどにより汚染された地下水の浄化技術、PCBなどの有害化学物質の無害化処理技術などの開発、普及を進めるとともに、その実施を推進します。

(4)化学物質に関するリスクコミュニケーション

 国民が必要とする情報の整備とデータベース化を推進し、広く活用を図ります。また、政府公表資料などの関係府省のホームページへの掲載や、PRTR制度などについて国民に啓発と情報提供を行います。
 化学物質に関するリスクコミュニケーションを推進するため、環境リスクなどの化学物質に関する正確で分かりやすい情報の作成・提供、身近な化学物質に関する疑問に対応する人材の育成やリスクコミュニケーションの手法の開発、市民・産業・行政等による情報の共有及び相互理解の促進のための場の提供を行います。

(5)国際的な協調の下での国際的責務の履行と積極的対応

 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の考え方に照らし、2020年までに著しい環境リスクを最小化することを目標として、国際機関との連携を図りつつ、適切な国内措置を講じます。
 我が国が締結している残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)及び国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)については、その義務を適切に履行しつつ、条約の国際的な有効性を担保するよう積極的に取り組みます。
 UNEPにおいて新たに検討が開始される有害金属対策に対しては、我が国の知見をいかし、積極的に枠組みづくりに貢献していきます。経済開発協力機構(OECD)の環境保健安全プログラムに対しては、テストガイドラインの開発や高生産量化学物質の情報収集など、我が国に期待される役割を積極的に果たします。
 化学物質の分類・表示については、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」を目標年次までに導入します。
 地球規模化学物質情報ネットワーク(GINC)の構築に貢献します。

(6)国内における毒ガス弾等における対策

 国内における毒ガス弾等に対する対策については、平成15年6月6日の閣議了解及び平成15年12月16日の閣議決定を踏まえ、旧軍毒ガス弾等による被害の未然防止を図るための環境調査等を、関係省庁と連携して、地方公共団体の協力の下、着実に実施します。また、環境省に設置した毒ガス情報センターにおいて、継続的に情報収集し、集約した情報や一般的な留意事項の周知を図ります。

6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

 自然との共生のためには、国土空間の特性に応じて多様な自然環境を体系的に保全するとともに、適切な農林業を通じて形成・維持されている自然環境があることを踏まえつつ、自然の恵みを感じ、体験し、その中で学べるような、日常生活や余暇活動など様々な場面での自然との豊かなふれあいが必要です。
 このため、前章第6節に示した取組をはじめ、次のような施策を推進します。
 取組に当たっては、平成14年3月に決定された「新・生物多様性国家戦略」を踏まえつつ、施策の総合的かつ計画的な推進を図ります。

(1)重要地域の保全と生態系ネットワークの形成

 我が国の地域ごとの生物学的特性を示す代表的、典型的な生態系や、多様な生物の生息・生育の場として重要な地域について、各種保護地域制度等を活用した保全の強化を図ります。
 また、地域固有の生物相の安定した存続、あるいは減少した生物相の回復を図るとともに、国土レベルで生物多様性を確保するため、生態系ネットワークの形成を進めます。
 このため、次のような施策を推進します。

  1. ア 我が国を代表する典型的な生態系をなしている自然や傑出した自然景観を持つ自然などであって、まとまりのある原生的な自然については、原生自然環境保全地域、森林生態系保護地域、国立公園などの各種制度を活用し、厳しい行為規制や公有地化などにより厳正に保全します。

  2. イ 野生生物の重要な生息・生育地、良好な自然の風景地や海中景観、自然海浜、脆弱性・希少性・固有性などの高い自然、都市近郊に残された良好な樹林地などの優れた自然については、自然公園、自然環境保全地域、鳥獣保護区、生息地等保護区、天然記念物、特別緑地保全地区、風致地区、都市公園、保安林、保護林などの各種制度を活用し、行為規制や公有地化などにより適正に保全します。特に、保全すべき自然状態が人為的改変などにより劣化している場合には、その再生や景観の維持などのための事業を進めます。

  3. ウ 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)に基づき世界自然遺産に登録された地域の保護管理の充実を図るとともに、新たな地域の登録に向け、保護地域の拡大など条件整備に努めます。

  4. エ 水鳥、水生生物など多様な野生生物の生息・生育地として重要な役割を持っている湿地については、その機能を適切に評価し、普及広報を進めるとともに、鳥獣保護区の指定など積極的な保全のための取組を推進します。特に、ラムサール条約湿地をはじめ渡り鳥渡来地などとして重要な湿地については、国際的な視点に立って、保全を推進します。

  5. オ 二次的自然環境を形成する森林、農地などについては、多様な生物の生息・生育地等として、適切な農林水産業を通じて環境保全機能の維持を図ります。
     特に森林においては、生物多様性の保全や国土保全等森林の有する多面的機能が総合的かつ持続的に発揮されることが重要であることを踏まえ、原生的な森林の保護と併せて、人工林等の育成林の適正な整備及び保全を推進することにより、貴重な森林生態系や動植物の生息・生育地を保全します。このため、森林整備保全事業を推進するなど森林の状態に応じた適正な整備及び保全を奥山から里山まで総合的かつ計画的に実施するとともに、森林の整備及び保全の担い手である山村地域の活性化を図ります。

  6. カ 十分な規模の保護地域を核としながら、生物の生息・生育空間の連続性や適切な配置が確保された国土レベル・地域レベルでの生態系ネットワークの形成を推進します。今後、生態系ネットワークの計画づくりに向けた検討を具体的に進めるとともに、森林における「緑の回廊」の整備等の事業に加え、各省庁の施策や事業間の一層の連携強化や多様な主体の参画による総合的な推進を図ります。

(2)外来生物等への対策

 国外から導入された外来生物等については、生態系等に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあることから、科学的な知見の下に防止を図ることが必要です。
 このため、次の施策を推進します。

  1. ア 国外から導入され、生態系等に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある外来生物に関する情報の収集整理を行い、特定外来生物の飼養、輸入などに係る規制を適正に進めるとともに、防除事業を着実に実施します。
     特に、全国的な観点から希少な生物の生息地や地域特有の生物相を有する地域など被害の防止を重点的に行う必要のある地域における防除を推進します。
     また、外来生物に関わる幅広い関係機関やペットを飼育する個人を含めた関係者に外来生物の適切な取扱いに関する普及広報を行い、外来生物対策を推進するための連携体制の確保を図ります。

  2. イ 国内の他地域から導入されて生態系等に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある在来生物についても、国立公園内の特別保護地区などにおいて動植物の放出に係る規制を適正に進めるほか、関係機関と連携して防除や普及広報を進めます。

  3. ウ 遺伝子組換え生物については、環境中で使用する場合の生物多様性への影響の的確な評価や生物多様性への影響の監視などを進めていきます。

(3)野生生物の保護管理

 生態系の基礎的構成要素である野生生物の種、個体群及びその生息・生育環境について、適正な保護管理を進めるため、次のような施策を推進します。
 なお、野生生物の生息・生育地として重要な役割を担っている鳥獣保護区、自然公園などの保護地域における野生生物の保護管理対策の一層の強化について検討を進めます。

  1. ア 絶滅のおそれのある野生生物については、生息・生育状況などの把握、モニタリングを通じ、レッドリストの見直し、レッドデータブックの作成などを進めます。また、希少野生動植物種の捕獲、譲渡しなどの規制を適正に進めるとともに、関係機関や専門家などとの連携により監視体制を強化します。
     さらに、特に個体数が減少した種や地域を代表する種について、野生生物保護センターなどを拠点として、生息・生育状況を調査し、その種をとりまく生息・生育環境の維持、改善、整備などを進めるとともに、必要に応じ、人工繁殖による個体数の回復と生息・生育域への再導入を推進します。

  2. イ 野生鳥獣の生息数が著しく増加して農林水産業や生態系への被害などの問題が生じている一方、生息数が著しく減少し健全な地域個体群の維持に支障が生じている事例もあるため、特定鳥獣保護管理計画に基づいて、科学的、計画的な保護管理を推進します。また、都道府県域を越えて広域的に保護管理を行う必要のある野生鳥獣については、関係地方公共団体などと協力して保護管理のための指針を策定し、科学的、計画的な保護管理を推進します。このため、野生鳥獣の生息状況のモニタリング、保護管理手法の普及、保護管理の担い手の確保や育成、個体数調整、防護柵などの被害防止施設の設置などの取組を進めるとともに、植生の管理、採餌・繁殖条件の確保などの生息環境の保全及び管理を推進します。さらに、野生鳥獣の生息環境を整備するため、鳥獣保護区において保全事業をモデル的に実施します。
     また、水鳥類の鉛中毒を防止するための対策を推進するとともに、地方公共団体と連携しながら、民間の協力も得て、傷病鳥獣救護の体制整備を推進し、救護によって得られた情報を化学物質などによる野生鳥獣への影響の把握などに活用します。

  3. ウ 各種開発事業などの実施に当たっては、計画段階から事業の実施が野生生物に及ぼす影響について調査予測を行うなど、環境保全上の検討を行い、希少種をはじめとする地域の野生生物の保全のための適切な措置が講じられるよう配慮を求めます。特に、希少猛禽類などについては、その生態や生息状況などを踏まえながら開発事業などに際して適切な措置が講じられるよう配慮します。このため、希少猛禽類などの生態や生息状況についての情報の蓄積を進めます。

  4. エ 野生生物の保護管理は、多くの場合、地域住民の生活や農林業と密接な関係にあることから、これらの取組に当たっては、野生生物の生態などに関する科学的なデータなどを踏まえ、地域住民、地方公共団体、民間団体、専門家などが、地元協議会などを通じて合意形成を図りながら、協力して保護管理に取り組むよう、特に配慮します。

(4)自然の再生

 長い歴史の中で育まれた地域の動植物や生態系その他の自然環境について、その特性に応じた保全に努めることはもちろんですが、自然環境の価値を再認識し、過去に損なわれた自然環境を積極的に再生することが必要です。
 このため、次の施策を推進します。

  1. ア 河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、さらには都市及びその周辺の緑地など、生物多様性の保全上重要な役割を果たす自然環境について、自然再生推進法の枠組みを活用し、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、NPO、専門家など、多様な主体が参加・連携するとともに、科学的知見に基づいて、長期的な視点で順応的に取り組むことなどを通じて、積極的に自然再生を推進します。また、各種事業制度を活用し、自然再生のための調査や事業を積極的に推進します。

  2. イ 自然再生が行われている区域について、自然環境の回復過程など自然環境に関する知識を実地に学ぶ場として活用することにより、自然環境学習を推進します。

(5)里地里山の保全と持続可能な利用

 里地里山等に広がる二次的自然環境の保全と持続的利用を将来にわたって進めていくためには、水田等の農耕地、ため池、草地、二次林等が適切な保全・整備を通じて形成・維持されてきたことなどを踏まえ、人の生活・生産活動と地域の生物多様性を一体的かつ総合的にとらえ、保全・整備に必要な活動の確保とともにこれらが円滑に調整するようなシステムがそれぞれの地域において必要です。
 このため、次の施策を推進します。

  1. ア 農耕地などにおいては、各地域の社会経済的な状況や自然環境の特徴を考慮して、農家を含む地域住民の参画も得ながら、二次的自然の基盤となる農地や水路、ため池の保全や生態系に配慮した水路の整備を行うほか、水辺や樹林地の創出など、多様な生物が生息・生育できる環境と農業生産活動の調和に努めます。
     さらに、化学肥料や化学合成農薬の使用低減などによる環境保全型農業を促進するとともに、市街地内の生産緑地を緑地空間として活用することや、農業生産活動などの維持を通じ、生物多様性保全を含む多面的機能の確保を目的とした中山間地域等直接支払制度等の支援措置を推進します。

  2. イ 二次林等の育成林においては、更新、保育、間伐等の森林の適正な整備及び保全を推進するとともに、森林所有者等による森林整備を支援するなど森林整備保全事業を推進します。また、身近な里山林などが持続的に活用されるよう、市民の参画を得た森林整備などに対する助成を行うほか、森林の維持管理の担い手である山村地域の活性化を図るため、雇用の確保や山村地域での定住の促進のほか、都市住民などからも担い手を募集するなど、森林所有者と連携・協力して保全・活用できる体制づくりを推進します。
     さらに、国立・国定公園や緑地保全地域、特別緑地保全地区等内の里地里山においては、国、地方公共団体、NPO法人などが土地所有者と管理協定などを締結し、税制措置などの経済的な奨励措置やその他の公的関与の活用などを通じて、民間保全活動とも連携しつつ、持続的な管理を行う取組を推進します。

  3. ウ 里地里山における、特に重要な文化的景観については、重要文化的景観として選定するとともに、地方公共団体が行う保存・活用事業の支援を推進します。
     また、全国の里地里山の代表的なタイプごとに、里地里山の保全及び再生に取り組むための実践的手法や体制、里地里山の普及広報・環境学習活動などのあり方について盛り込んだ里地里山保全再生の地域戦略をモデル的に策定するなどにより具体的な検討を進めます。

(6)海洋・浅海域における自然環境の保全

 我が国を取り巻く広大な海洋は、海棲哺乳類、ウミガメ類、魚類などの海棲動物や海鳥類などの生息環境であるとともに、浅海域の干潟、藻場、サンゴ礁は、多くの生物が生息・生育し、特に繁殖期や幼生期を過ごす場としても重要であり、我が国の健全な生物多様性の保全には欠かすことのできない環境です。
 このため、次のような施策を推進します。

  1. ア 長距離を移動、回遊する海棲動物は、生息状況などが十分把握されていないものが多く、国際的な情報交換も含め、生態、生息域、海洋生態系の中での位置付けに関する基礎的な情報の収集・調査研究を推進します。

  2. イ 水産資源である魚類などは、漁獲可能量制度により、持続的かつ最適な利用に努めるとともに、資源調査など、科学的研究を推進します。

  3. ウ 砂浜、干潟、藻場、サンゴ礁については、適正な保全を図り、当該地域に生息する多様な生物の生息・生育地の保全及び当該地域が持っている環境浄化能力の確保を進めます。また、規模にかかわらず残された砂浜、干潟、藻場、サンゴ礁の保全に留意するとともに、失われた機能を補うための再生の取組を進めます。さらに、陸域での人間活動による環境負荷が浅海域の生物多様性にも影響を及ぼすことを踏まえ、例えば流域における環境負荷の低減等、広域的なスケールでの対応を進めます。

  4. エ バラスト水に含まれる外来生物による生態系などへの影響について、効果的な対策の検討を進めます。

(7)国際的取組

 生物多様性の保全は、地球規模の課題であり、一国のみでは解決できない人類共通の課題です。また、多くの資源を輸入に頼る我が国は、地球規模で悪化が進む生態系の保全に対し積極的に貢献する責務があります。
 このため、次のような取組を推進します。

  1. ア 生物多様性条約を中心として、国際的な連携の下に生物の多様性の保全及び持続可能な利用を促進します。また、2000年に世界銀行や国際NGO等が共同で設立した「重要生態系保全基金」への資金拠出を通じて、民間団体が行う開発途上国の重要な生態系の保全活動を支援します。

  2. イ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)を通じた野生生物種の保護を一層推進するとともに、ラムサール条約を通じ、国際的に重要な湿地の保全及び適正な利用に関する国際協力を進めます。

  3. ウ 二国間の渡り鳥等保護条約や協定などを通じた渡り鳥等の保全に向けた施策、共同調査などの取組を進めるほか、「アジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」の実施を通じた国際協力など、多国間による渡り鳥保護のための枠組みの強化を図ります。

  4. エ サンゴ礁の保全については、「国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)」の事務局を務めるなど、国際的な協力の推進のため、中心的な役割を果たします。また、アジア・太平洋地域での、サンゴ礁モニタリングの推進や、サンゴ礁の海洋保護区(MPA)の代表的ネットワーク構築について、重点的に協力を進めます。

(8)自然環境データの整備

 生物多様性の状況について一般の理解を深め、生物多様性の保全・回復のた
めの施策を進める上で基礎となる自然環境の現状と時系列的変化に関する科学的かつ客観的な調査データが重要です。しかしながら、網羅的全国調査の継続的実施、あるいは調査データの精度などの点で未だ不十分な状況にあります。
 このため、調査データを収集するための体制の充実などを図り、自然環境データを飛躍的に充実させるために、次のような施策を推進します。

  1. ア 自然環境の現状と時系列的変化を把握するため、定点における継続的なモニタリング調査の推進など、自然環境や生物多様性に係る基礎的な調査の充実を図ります。
     このため、調査研究に必要な人材の育成確保、既存の博物館、調査研究機関や専門家などのネットワーク化、民間活動の活用などを進め、調査体制の確立を図るとともに、これら調査研究を担う各主体間の交流を深め、調査研究の精度や信頼性の向上を図ります。
     また、各主体間の情報交換等を進める連絡組織等の構築など、各省庁間の連携、国・地方・民間との連携等を通じたデータの収集・提供、相互利用等を進める体制の整備を図ります。

  2. イ 我が国の生物種の現状を示すとともに、野生動植物の分布など各種調査研究の基盤情報となる野生生物目録(インベントリ)の作成とその提供を進めます。
     また、我が国の生物多様性の歴史と現状を示す貴重な資料であり、遺伝子資源でもある野生生物の標本資料を体系的に保存する施設の充実と、標本の作製、分類及び管理に従事する専門的技術者の育成を図ります。
     一方、生物多様性に関する情報の高度利用と流通の促進を図るため、生物多様性条約クリアリングハウス(情報交換)メカニズムの要請も踏まえ、様々な主体から生物多様性関係情報を収集し、また、各種資料の電子情報化を推進することなどにより、生物多様性センターの「生物多様性情報システム」の機能強化を図り、同センターの国際的な情報流通拠点としての充実を図ります。

     さらに、集積された種々の自然環境や生物多様性に係る情報を流域などを単位として解析し、広く提供することにより、各種計画、事業の策定、実施に際して環境配慮を行うための基礎資料とするとともに、関係者の合意形成に資することとします。

(9)自然とのふれあいの推進

 人が生態系の構成要素の一つであることを認識し、自然との共生への理解を
深めるためには、自然とふれあい、心のやすらぎや感動を得るなど、人と自然とのふれあいを確保することが重要です。
 このため、日常生活や余暇活動などの中で、人々が自然との豊かなふれあいを重ねることができるよう、次のような施策を推進します。
 その際、人と自然のふれあいは、多様な自然の特性を損なうことのないよう一定のルールの下で行うこととし、環境教育・環境学習の推進にも寄与するよう、自然環境や自然と深い関係を持つ地域の文化などについて理解が深められ、自然に対する感性や環境を大切に思う心を育てることを重視します。
 さらに、施策の推進に当たっては、地方公共団体、民間団体、民間事業者、ボランティアなど様々な主体の参加の確保と相互の連携を図ります。

  1. ア 地域の特性に応じて、自然の探勝、野生生物との出会いや観察、風景の鑑賞、保健休養、生きものとの出会いなど、様々な形での自然とのふれあいを確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めます。特に国立公園などの重要な地域については、自然環境や景観を損なうことのないよう十分に配慮しつつ総合的かつ計画的に用地取得、施設整備を進めるとともに、それらの施設の管理運営体制を地域の理解と協力を得て適切に整備します。また、利用拠点でのバリアフリー対策を進めるほか、登山利用が近年増加している中高年層の利用に配慮します。
     さらに、里山林など身近な自然とのふれあいの場として、自然歩道などの整備を進めます。

  2. イ 自然とふれあうみどりの日の集い、自然に親しむ運動、全国・自然歩道を歩こう月間などを通じて全国各地で自然観察会などの自然とふれあうための各種活動を実施するほか、自然とふれあう行事の実施について都道府県に対し呼びかけを行うなど、自然とふれあう機会の提供を促進します。

  3. ウ 自然公園のビジターセンターなどの施設やボランティアなどの活動及びインターネットを通じ、様々な自然とのふれあいの場やその利用方法などについての情報提供を進めます。また、自然の中で守るべきマナー、自然の中で自らの安全を自らの責任で守ることなどについての知識の普及を図ります。

  4. エ 自然に対する感性の育成や理解の深化など、目的に応じて内容、方法、手順などを示す活動プログラムの充実を図るとともに、自然とのふれあいの場において、その企画、調整、実践などに必要な様々な役割を担う人材を確保するため、自然解説業務を行う指導者等の育成や、自然公園指導員及びパークボランティア活動の充実化を進めます。

  5. オ 地域の資源を適切に保全しながら持続的な利用を図るエコツーリズムの普及・定着を推進します。このための推進方策として、エコツーリズムの理念や推進手法の普及、エコツアー情報のインターネットによる提供、地域におけるプログラム開発やルールづくり、ガイドの育成の促進などの取組を進めます。

  6. カ 都市住民が自然とふれあう機会を確保する観点から、都市と農山漁村の交流の一環として、都市住民が農山漁村地域において滞在型の余暇活動を行うグリーン・ツーリズムなどを進めるとともに、分収林制度や協定などを活用し、公的機関や国民の参加による森林整備を促進します。

  7. キ 都市域においては、良好な自然環境を回復・確保し、日常生活における自然とのふれあいを確保する観点から、緑地の保全、都市公園などの整備、緑化を計画的に進めます。また、公園や緑地などにおける環境教育・自然体験活動、自然の中での遊びなどを積極的に推進します。さらに、自然の減少が顕著な市街地等においては、民有地の緑化を推進することにより、良好な自然的環境の回復・確保を図ります。

  8. ク 我が国の貴重な自然資源である温泉の保護管理及びその適正な利用を確保しつつ、自然とのふれあいの推進を図ります。

(10)共通的事項等

 以上に掲げた施策のほか、次のような施策を推進します。

  1. ア 社会資本整備などの事業の実施に当たって、環境影響評価の実施を通じ、事業や地域の特性に応じて、生物の多様性の保全や人と自然との豊かなふれあいの確保の視点から、必要に応じて、適切な環境配慮を行います。また、生態系は構造が複雑で、変化するものであることから、当該事業により影響を受けることが予測される場合は、自然環境への影響を継続的に見ながら柔軟に保全対策などを講じます。

  2. イ ナショナルトラスト活動や緑化活動、美化清掃をはじめとしたNPO活動などの民間環境保全活動を促進するため、税制措置、緑地協定などを活用します。

  3. ウ 平成17年に行われた動物の愛護及び管理に関する法律の改正を踏まえ、動物の虐待防止や適正な飼養などの動物愛護に関する事項及び動物による人への危害や迷惑の防止などの動物の適正な管理に関する事項の実施についてより一層の推進を図ります。このため、動物愛護管理施策を総合的に推進するための基本指針の策定を行うとともに、動物取扱業の適正化、マイクロチップなどの個体識別措置の推進及び特定動物の飼養の適正化などの取組を行います。また、行政や動物愛護推進員、関係団体などが連携を図りつつ、動物の飼い主が動物愛護管理責任を果たせるよう支援する体制を充実・拡充します。

第2節 各種施策の基盤となる施策

1 環境影響評価等

 総合的な観点から環境保全を図っていくためには、国などの施策や事業の策定・実施に当たって、あらかじめ環境保全上の配慮を行うことが極めて重要であることを踏まえ、次のような施策を推進します。

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境に影響を及ぼすと認められる国の施策を立案し、実施するに当たっては、環境保全の観点から検討を行い、適切な配慮を行います。

 国の実施する社会資本などの整備のための公共事業については、戦略的環境アセスメントの検討など前章第9節に示した考え方を踏まえ、計画段階からその実施が環境に及ぼす影響について調査予測を行うなど環境保全上の検討を行い、適切な配慮を実施します。

 規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれがある事業の実施にあたり、国においては、環境影響評価法などに基づく環境影響評価の適正な運用に努めます。また、地方公共団体において条例などに基づいて実施されている環境影響評価については、的確な実施が確保されるよう、環境影響評価の実施に必要な情報の提供や技術的支援などに努めます。

 国などの施策や事業の策定と実施に当たっての環境保全上の配慮の徹底を図るため、環境配慮の在り方、手法などに関する調査研究を引き続き進めます。

2 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等

 持続可能な社会の構築の基盤となる調査研究及び監視・観測等の充実、技術の振興について、国は、自らこれを推進するとともに、地方公共団体、民間団体などにおける取組の支援などを行います。

(1)調査研究及び監視・観測等の充実

  1. ア 調査研究の総合的推進
     調査研究については、人文、社会、自然科学の幅広い分野にわたり、国際的な視野に立ち、産学官の連携のもと、総合的・統合的な研究、予防的・予見的な対策に資する研究等を含め、重点化を図りながら総合的に推進します。なお、複数の関係府省にまたがる政策課題については、必要に応じ一体的な取組を行います。
     大規模な基礎研究に対する総合的取組に関し、産学官の連携の下、次世代の環境保全技術の基礎となる「知的資産」を蓄積するための基盤的研究を重点的に実施します。

  2. イ 監視・観測等の体制整備
    監視・観測等については、個別法などに基づき着実に実施します。監視・観測等に係る計画の作成と実施から、結果の整理、解析、評価及び公表に至る過程が適切に行われるとともに、環境問題の態様の変化に的確に対応できるよう、実施体制の整備に努めます。

  3. ウ 広域的、全地球的課題への的確な対応
    酸性雨や海洋汚染などの広域的に影響が及ぶ分野の調査研究、監視・観測等においては、地域における国際的な連携を図りながら、広域的な物質の移動、拡散の状況や、生態系への影響の的確な把握と解析に努めます。また、地球温暖化をはじめとする地球全体に影響が及ぶ分野においては、我が国の技術や知識と経験を活用して人類共通の環境保全のための「知的資産」の形成に積極的な国際的寄与を行うという観点を踏まえて、地球規模で国際的な連携を図りながら、大気圏、水圏、地圏、生物圏の間の物質の循環に関する科学的知見の充実や広範な生態系影響の的確な把握に努めます。

  4. エ 実施状況の体系的把握と整理
     国が実施または関与している調査研究、監視・観測等については、その結果を体系的に把握、整理し、情報の社会的共有化を図ります。また、地方公共団体、民間団体などが実施しているものについても可能な範囲で把握、整理し、情報の社会的共有化を推進します。なお、必要に応じ連絡会議などを設置して活用することなどにより、関連する調査研究、監視・観測等の相互の連携を進めます。

  5. オ 総合的な実施体制
     地球環境保全に関する調査研究、監視・観測等及びその他の調査研究、監視・観測等のうち総合的かつ計画的取組が必要な分野については、総合推進計画などを策定し、総合的な実施体制を確保します。また、国の試験研究機関などについては、環境保全に関する試験研究費などの配分計画を策定し、調査研究の総合的な推進を図ります。

(2)技術の振興

  1. ア 環境保全の取組を支える技術体系の確立
     環境保全に関する技術については、幅広い分野を対象とし、技術の開発の進度と実現可能性の程度、技術の開発、普及に対する障害、技術を適用した場合の環境保全上の効果、他の項目に係る環境への影響などを総合的に分析、評価し、それらを踏まえ、技術の開発、普及の障害の除去のための社会経済システムの転換や社会基盤の充実なども視野に置いた戦略的な取組を行うことにより、適正な技術を振興し、環境保全の取組を支える技術体系の確立を図ります。

  2. イ 開発の推進
     前章第9節において重点的に取り組むこととされた技術の開発を推進するほか、これらを担うエコビジネスの振興に努めます。また、人工衛星などによるリモートセンシング技術などの監視・観測等に係る技術の開発に努めます。さらに、地方公共団体の研究機関や地場企業などとの連携を図りながら、国内の地域段階において有効性を発揮すると考えられる比較的小規模な技術の振興に努めるとともに、開発途上地域の実状に適した技術の開発にも努めます。その際、機器、装置などのハ-ドの技術のみならず、その効果的な使用方法などのソフトの技術の開発にも留意します。

  3. ウ 先端科学技術の積極的な活用
     ナノテクノロジー、情報通信技術(IT)、バイオテクノロジー等の先端科学技術については、その負の側面に十分配慮しつつ、環境分野における活用を推進します。特にナノテクノロジーについては、環境モニタリングや環境汚染防止技術等への適用が期待され、産学官の連携を図りながら進めます。

  4. エ 情報収集及び評価体制の整備
     環境保全に貢献する技術の普及を図るため、環境研究・環境保全技術に係る情報収集を行い、その社会的な共有化を進めるとともに、環境保全に関する技術を適用した場合の環境保全上の効果や寄与などについて適切な評価を行い、施策に活用します。また、環境保全型の製品、技術などの開発、普及に資するため、製品、技術などの評価へライフサイクル・アセスメント(LCA)の導入を進めるための仕組みを提示します。

(3)国における基盤整備等

  1. ア 施設、体制の整備等
     調査研究、監視・観測等の充実及び適正な技術の振興のために必要な機材、施設などを適切に整備します。また、環境行政に科学的、技術的基盤を提供するという極めて重要な役割を果たしている独立行政法人国立環境研究所に対し、引き続き国際的な動向や社会的使命を踏まえ、環境研究の中核的機関としての取組の一層の強化を促します。さらに、環境調査研修所における研修の充実などを通じた人材育成を推進します。

  2. イ 測定技術の高度化等
     調査・測定等に係る信頼性の向上及び精度管理を進めます。また、調査研究、監視・観測等に係るリモ-トセンシング技術、テレメトリ-技術、微量計測技術などの科学技術の高度化に努めるとともに、航空機、船舶、衛星の整備と活用を図ります。特に衛星からの観測技術については、温室効果ガスの全球的な濃度分布の観測等を通じて一層の開発を進めます。

  3. ウ 学術研究の推進、人材養成、関係機関の相互の交流等
     人文、社会、自然科学の幅広い分野にわたる学術研究の推進を図るとともに、学術研究における地球環境問題への取組を強化するため、幅広い分野を総合化し、取組の学術的基盤の形成を担う研究体制を整備します。また、大学などにおける環境保全に関する専門的教育の推進を図ることにより、調査研究、監視・観測等の充実及び技術の振興に従事する人材を養成し、その質的、量的充実に努めるほか、環境に関する公的資格の活用を図ります。さらに、調査研究、監視・観測等に関わる機関、従事する者の相互の交流、協力、連携を促進するとともに、調査研究、監視・観測等に関する情報の整備とデータベース化を推進し、広く活用を図ります。

  4. エ 民間の技術開発能力の活用
     技術の振興に当たっては、その内容に応じ、民間の開発能力を積極的に活用します。

(4)地方公共団体、民間団体等における取組の促進

  1. ア 交流、参加の推進
     地方公共団体、公益法人、大学、民間における調査研究、監視・観測等の充実及び技術の振興を支援するため、情報交換、人材交流を推進するとともに、必要に応じ、機材、施設などの共同利用、共同研究などを行います。
     なお、地方公共団体の環境研究機関については、地域におけるニーズを踏まえ、地域においてこのような取組の中核的機能を果たすことが期待されます。
     また、民間団体や一般国民による科学的調査に基づくきめ細かな情報も重要です。このため、課題に応じ、参加を容易にする調査、測定方法などの開発と普及に努めながら、調査研究、監視・観測等への民間団体や一般国民の参加を推進します。

  2. イ 測定などの技術支援
     事業者自ら行う環境負荷の測定などの適正実施に係る技術支援などを進めます。
     また、民間の機関が行う調査、測定などの信頼性の向上を図るため、精度管理の支援をするための情報提供を適切に行うとともに、技術士(環境部門等)などの資格制度の活用などを進めます。

(5)成果の普及等

 調査研究、監視・観測等の成果については、適時適切に公表し、その普及と活用に努めます。
 また、環境保全技術については、優れた技術の普及を図るため、環境保全技術の実証や技術に関する情報の整備と提供を推進するとともに、普及を阻害する要因などについて検討し、普及のためのプログラムなどの作成、国における率先利用、必要かつ適正な経済的助成措置その他の措置の活用、普及の障害となっている社会経済システムの変更や社会基盤の充実などを推進します。

3 環境情報の整備と提供

 環境保全施策を科学的、総合的に推進するため、環境の状況、環境への負荷、環境の変化の予測、環境保全の取組などに係る環境情報を体系的に整備し利用を図っていきます。また、環境保全に関する様々なニ-ズに対応した情報を整備し、各主体への正確かつ適切な提供に努めます。
 環境情報の整備や提供に当たっては、重点分野政策プログラムに掲げた考え方に基づき、各重点的取組を進めるほか、個人や法人の権利、利益に配慮しながら、適正な情報が効率的に提供され、できるだけ広い範囲で容易な利用が可能となるよう努めます。
 また、環境情報の収集の迅速化及び情報の分析能力の向上に努めます。

(1)環境情報の体系的な整備

 環境情報に対するニーズやその整備状況を調査し、新たに収集、整理、加工すべき情報については、その所在を踏まえた整備の方向を明らかにし、データベース化を体系的に推進します。整備状況の調査結果については、情報源情報として活用します。
 国が保有する環境情報のネットワ-ク化を推進するとともに、地方公共団体及び民間が保有する情報も含め、環境情報を一括して収集、整理する効率的な枠組みについて検討し、また、総合的な環境情報データベースの構築に努めます。
 公害・環境問題に係る資料を適正に保存し、散逸を防ぐよう努めます。

(2)環境情報の国民等への提供

  1. ア 資料の提供
     環境白書、環境統計集等の資料の発表を通じて、国民、民間団体、事業者、地方公共団体等の各主体に対する環境情報の提供を的確に実施します。その際、インターネットや磁気媒体などの多様な媒体を活用します。

  2. イ 国内の環境情報拠点
     化学物質の有害性や規制等に関する情報については独立行政法人国立環境研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター等を国内情報整備の重要な拠点と認識し、その普及については当該関係機関と一体的な連携を図ります。
     生物多様性に関する情報については、生物多様性センターを国内情報の整備の拠点とするとともに、国際的な情報の流通の拠点とし、「生物多様性情報システム」の機能の充実を図ります。
     また、各々の分野に応じた多様な環境情報を提供するため、地方環境事務所、国立公園内のビジターセンターなどを環境情報拠点として活用するとともに、独立行政法人国立環境研究所環境情報センターその他の関係機関との一体的な連携を図っていきます。
     特に、地方環境事務所においては、地域の環境データバンクとして、地域の環境保全活動の推進はもちろんのこと、環境保全施策の企画立案に活用するため、地域における環境情報の収集、整理を行い、適切に発信していきます。

4 地域における環境保全の推進

(1)快適な環境(アメニティ)の確保

 快適な環境(アメニティ)を確保するため、公平な役割分担の下に、各主体の自主的積極的な参加を図りながら、「循環」と「共生」の考え方を基調とする環境保全のための取組を進めます。その一環として、豊かな自然環境を積極的に確保するため、次のような取組を推進します。

  1. ア 良好な大気の確保
     静寂で澄んださわやかな大気を確保するため、地域住民などの参加も得ながら、光や視程(見通しの利く距離)及び熱環境をも含め、良好な大気に係る環境の状態の在り方を検討するとともに、身近な大気環境の状況について調査を行います。また、緑化をはじめとする地域の自主的積極的な取組を促進します。

  2. イ 良好な水域の生態系の確保
     清浄で豊かな水、多様な生物相などからなる水域の生態系を確保するため、水域の水質と水量、水生生物、周辺植生等を一体的にとらえて、地域住民の参加も得ながら、河川、湖沼、海岸、干潟などの水辺地を維持管理するための施策を検討します。また、都市域において貴重な雨水・地下水の貯留・涵養機能を持つとともに水辺空間を確保する公園緑地の保全と創出、公共施設や民有地における緑化の推進を図ります。

  3. ウ 景観保全
     各地域の特性に応じて、各種の施設整備などに際して地域の自然環境との調和に配慮した景観保全を図るための取組を進めます。

  4. エ 歴史的環境への配慮
     古都保存、史跡名勝天然記念物、重要文化的景観などの各種制度を活用し、自然環境と一体をなしている歴史的環境についても、その保全を図ります。

(2)公害防止計画

 公害が著しい地域などにおいて、公害防止計画を策定し、施策相互の有機的な連携を図りながら、関係主体が緊密な連携の下に公害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進します。
 公害防止計画の策定は、環境基本計画を基本とし、策定の指示に際しては、以下の点に配慮します。

  • ○地域において改善を図るべき課題について、環境負荷の状況などの分析を行い、それを踏まえた上で、計画上、改善の目標とその達成のために講ずべき公害防止対策事業を明確に位置付け、その効果的実施を図ること。
  • ○今日の公害問題の多くが国民の日常生活や通常の事業活動などの社会経済活動に起因していることにかんがみ、地域における環境基準等の達成と維持を図るため、公害防止対策事業と排出規制などの施策を適切に組み合わせた政策パッケージを形成すること。
  • ○すべての主体が公平な役割分担の下に緊密に協力、連携しながら、自主的積極的に環境保全に取り組むための基盤を整備すること。
  • ○自然環境の保全、地球環境の保全についても十分配慮すること。
  • ○環境上の「負の遺産」の解消と環境の再生に配慮すること。
  • ○首都圏などの大都市圏などにおいては、広域的な環境問題が生じており、その解決のため広域的な観点から環境負荷の低減を図っていく必要性が高まっている状況を踏まえ、隣接する地域の計画間の連携を確保すること。
  • ○環境保全に係る他の法定計画などとの整合を図ること。
  • ○公害防止計画の達成に必要な地方公共団体の施策について国は可能な限り支援に努めること。

5 環境保健対策、公害紛争処理、環境犯罪対策

 公害による健康被害の発生を未然に防止するとともに、被害者に対しては、汚染者負担の原則を踏まえて迅速かつ公正な保護及び健康の確保を推進します。
 また、公害紛争処理について、紛争の態様に即した迅速かつ適正な解決を推進するとともに、公害苦情の態様に即した適切な処理を推進します。
 さらに、環境犯罪については、その根絶を目指して監視等を強化します。

(1)健康被害の救済及び予防

  1. ア 被害者の救済
     公害健康被害の補償等に関する法律に基づき、認定患者に対する補償等を行い、その迅速かつ公正な救済を図ります。
     水俣病対策については、平成7年の政治解決を継承しつつ、平成16年10月の最高裁判決で問われた行政責任と判決後の多数の認定申請や水俣病被害者の医療、生活支援などの課題を踏まえ、さらに平成18年には水俣病公式確認から50年という節目の年を迎えたことも勘案し、すべての水俣病被害者の方が地域社会の中で安心して暮らしていけるよう、関係地方公共団体と協力して以下の施策を進めます。①給付内容を拡充した保健手帳の申請受付再開を柱とする医療対策の一層の充実を図ります。②水俣病被害者やその家族の高齢化を踏まえた胎児性患者への支援や地域が一体となってもやい直しを進める取組を通じて水俣病発生地域の再生・融和を促進します。また、我が国の経験や技術をいかして、国立水俣病総合研究センターを拠点に国際共同研究や国内外に対する情報発信など積極的に国際的な貢献を図ります。
     石綿による健康被害者の救済については、その健康被害の特殊性にかんがみ制定された石綿による健康被害の救済に関する法律に基づき、被害者及びその遺族の迅速な救済を図ります。

  2. イ 被害の予防
     大気汚染による健康被害を予防するため、独立行政法人環境再生保全機構に置かれた基金により、健康被害予防事業を実施します。また、健康被害の未然防止を図るため、環境保健サーベイランスシステムにより、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的かつ継続的に観察するとともに、局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査を進めます。

  3. ウ 環境保健に関する調査研究
     花粉症、重金属、電磁界等による健康影響、熱中症、本態性多種化学物質過敏状態など、環境要因による健康影響に関する調査研究を推進します。

(2)公害紛争処理等

  1. ア 公害紛争処理
     近年の廃棄物関係などの多様な公害紛争の増加にかんがみ、公害に係る紛争の一層の迅速かつ適正な解決に努める必要があります。このため、公害紛争処理法に基づき、あっせん、調停、仲裁及び裁定を適切に実施します。

  2. イ 公害苦情処理
     住民の生活環境を保全し、将来の公害紛争を未然に防止するため、公害紛争処理法に基づく地方公共団体の公害苦情処理が適切に運営されるよう、適切な処理のための指導や情報提供を行います。また、国の行政機関における公害苦情の受理及び処理を適切に実施します。

(3)環境犯罪対策

 産業廃棄物の不法投棄をはじめとする環境犯罪に対する刑罰法令適用の実効性をさらに向上させるよう、取締体制を整備するとともに、社会情勢の変化に応じて法令の見直しを図るほか、環境犯罪を事前に抑止するため、次のような施策を推進します。

  1. ア 監視、取締体制の整備
     環境を汚染、破壊する行為を未然に防止し、環境破壊の拡大を防止するため監視体制と取締体制を整備強化するとともに、実効性のある取締りが確保されるよう実態に基づいた制度の見直しを図ります。

  2. イ 環境犯罪を許さない意識の醸成
     環境行政所管庁、取締機関、環境保護団体、事業者団体などが相互の連携を強め、各種広報啓発活動を積極的に行い、廃棄物を排出する事業者などの遵法意識を高めるとともに、広く国民の間に、環境犯罪を許さない意識を醸成します。

  3. ウ 排出事業者責任の追及
     不当に低価格で違法な廃棄物の処理を行う業者への委託を抑止するため、排出事業者が適正な処理料金を負担せず、処理業者が不法投棄などを行った場合で、生活環境の保全上の支障が生じまたは生じるおそれがあり、かつ当該不法投棄を行った業者の資力などから判断してその支障の除去が困難な場合、処理業者に委託した排出事業者に対する原状回復責任の追及を徹底します。

6 技術開発などに際しての環境配慮及び新たな課題への対応

 新しい技術の開発や利用に伴う環境への影響のおそれが予見される場合には、環境に及ぼす影響について、技術開発の段階から十分検討し、未然防止の観点から必要な配慮がなされるよう、適切な施策を実施するよう努めます。また、ITなどの先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に進めます。

 これらのほか、前節までに記述された課題以外のもので、今後、人の活動による環境への負荷により環境が悪化するおそれが生じる場合には、科学的知見の充実の下に、予防的な取組方法の考え方を用いて、環境への影響を未然に防止するための施策を実施するよう努めます。

7 各主体の自主的積極的取組に対する支援施策

 各主体には、前章に示されたそれぞれに期待される役割への取組や、国等の取組への積極的参加や協力に加え、以下のような取組が期待されます。また、国は、そのような各主体の自主的積極的な取組を支援します。そのような取組を通して、あらゆる主体が持続可能な社会の構築に参加する社会を実現します。

(1)各主体の取組

  1. ア 国民の取組
     人間と環境との関わりについて理解し、自らの責任ある行動や国、地方公共団体の政策決定過程に参画すること等によって、持続可能な社会づくりに主体的に参画することが期待されます。

  2. イ 民間団体の取組
     前章で示したような地域における取組に加え、開発途上地域における植林やフェアトレード商品の普及などの国際的活動を行うことや、自然環境の状況に関する調査研究、環境汚染の影響に関する調査研究、環境政策に関する研究などの環境保全に関する調査研究等専門的な知見をいかした取組を行うこと等が期待されます。また、国民の取組を支援するような働きも期待されます。

  3. ウ 事業者の取組
     前章で示したような国内における自らの生産活動や生産した商品の消費、廃棄に関わる環境負荷を減らす取組に加え、それとは直接関係のない第三者の環境負荷を削減することに資する取組や、地域の一主体としての取組等を進めることが期待されます。
     具体的には、共同輸配送など合理化された物流サービスのような環境への負荷の低減に資する役務の利用に努めること等役務の大口利用者としての取組が期待されます。また、緑の保全・創出活動による社会や環境への貢献度を評価・認定する社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)を活用し、緑に関する積極的な取組を推進すること等の取組が期待されます。さらに、海外における事業活動や貿易に際しても環境配慮を行うことが期待されます。

  4. エ 地方公共団体の取組
     地域づくりにおいて、地域の自然的社会的条件に応じて、環境への負荷の低減や、自然とのふれあいの確保、アメニティの確保の一環としての自然環境の保全などにより、恵み豊かな環境を保全することが期待されます。
     また、地域の取組の調整者及び主たる推進者としての役割を踏まえ、多様な主体の参画を得つつ、地域の環境保全に関する基本的な計画の策定などにより自らの施策を総合的かつ計画的に進めることが期待されます。さらに、事業者、住民、民間団体や国の関係機関との緊密な連携を図りながら地域における環境保全のための取組の総合性を確保することが期待されます。

  5. オ 国の取組
     環境基本計画を策定し、国全体の環境保全に関する取組の総合化を図るとともに、問題の性質や必要性に応じて、環境基準等の環境保全の具体的な目標を設定するとともに、法律に基づく基本方針・指針やガイドラインなどの形で、環境保全に関する施策の方向や全体像、各主体の役割分担の在り方などを提示します。

(2)各主体の自主的積極的行動の促進に係る施策

  1.  ア 環境保全のための具体的行動の促進
    1.  (ア)自主的な環境管理の促進
        環境マネジメントシステムの幅広い事業者への普及を図るため、ISO14001の認証取得を推進するとともに、特に取組の遅れている中小事業者に対し、自主的な環境配慮の取組を支援するエコアクション21の普及などを進めます。
        また、こうした環境マネジメントシステムを活用し、環境保全に資する取組を行う事業者が、契約などの局面で評価されるとともに、円滑に資金を調達できるような環境づくりを進めます。

    2.  (イ)企業の環境保全に関する取組の評価及び情報の開示や提供の促進
        環境に配慮した事業活動の成果について適切に評価するため、環境パフォーマンス評価、環境会計、ライフサイクル・アセスメント(LCA)、社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)などの手法について、事業者における実施状況を踏まえ、引き続き調査研究を進め、幅広い事業者への普及・活用を図ります。
        また、消費者などステークホルダーへの情報の開示や提供、双方向コミュニケーションを推進するため、事業者による環境報告書の作成、公表を促進するとともに、環境ラベリング事業の適切な指導などにより、環境への負荷の少ない製品の推奨などを進めます。

    3.  (ウ)環境パートナーシップの推進
        「地球環境パ-トナーシッププラザ」において、市民・NPO等といった各主体間のパートナーシップの形成促進を図るための場づくり、人づくり、情報提供を行います。パートナーシップによる取組が更に進むよう、実際に取り組んでいる各主体と一緒に解決策を見出していきます。また、地方でのパートナーシップ形成促進拠点として、地方環境パートナーシップオフィスの全国への設置を推進します。
        市民・NPO等の環境に関する政策提言機能の強化を図ることを目的として「NGO/NPO・企業環境政策提言フォーラム」を開催し、優れた提案についてモデル事業化し、パートナーシップによる政策立案を促進します。

    4.  (エ)民間団体の活動の支援
        税制措置の活用や地球環境基金、都市緑化基金などの関係制度の活用、活動のノウハウ等の情報提供などにより、国際環境協力、環境教育・環境学習、ナショナルトラスト活動、民間団体間の国際的パートナーシップの形成など、民間団体の環境保全に関する多様な活動を支援します。

    5.  (オ)地方公共団体の自主的活動の支援
        地方公共団体が自主的積極的に実施する環境保全施策について、必要な財政上の措置を行うとともに、技術的支援に努めます。

  2.  イ 情報の提供等
      環境カウンセラー制度等により、自主的積極的行動を行う各主体に対して、環境保全に関する知見を活用できるように支援していきます。また、環境の状況や個別の社会経済活動による環境への負荷、環境保全の取組の状況、環境教育・環境学習のプログラムなど、各主体の自主的積極的行動の促進のため必要な情報をデータベース化し、民間団体、事業者、地方公共団体あるいは環境保全の活動拠点などとネットワーク化して情報提供を行うシステムを整備します。

(3)行政活動への環境配慮の織り込み

 国は、率先して、通常の経済活動の主体として行う活動を含め、政府活動に環境配慮を適切に織り込んでいくことにより自らの活動を律し、環境への負荷をさらに低減する必要があります。
 このため、関係府省は、各府省における環境配慮の方針に基づき、それぞれの活動における環境配慮の実施を推進するとともに、実施状況の点検及び点検結果の反映の仕組みの強化等、環境管理システムに関する取組を充実していきます。また、環境配慮促進法に基づき、環境配慮等の状況の公表を行います。
 なお、通常の経済活動の主体としての活動については、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく政府の実行計画及び関係府省ごとの実行計画に基づく取組を推進します。環境に影響を与えうる政策分野についても、関係府省の定める環境配慮の方針に基づく環境配慮の取組を推進します。
 公共投資全般に環境配慮を織り込んでいくための枠組みの整備に努めます。公共事業に際し、環境影響評価などを適切に実施するとともに、生態系の重視など、環境保全に配慮した事業を進めます。さらに、事業の実施に当たっては、廃棄物のリサイクルや環境への負荷の少ない原材料の使用を進めるとともに、環境への負荷の少ない新技術の開発を推進します。
 また、予算面から、環境保全を重点的、効率的に進めるために、関係行政機関の公害の防止並びに自然環境の保護及び整備に関する経費の見積もり方針の調整(環境保全経費の見積もり方針の調整)を活用することとします。

8 環境教育・環境学習等の推進

 環境教育・環境学習などについては、前章第8節で示した取組をはじめ、次のような施策を推進します。

(1)学校教育における環境教育・環境学習

 児童生徒が環境問題を正しく理解し、環境を大切にする心や態度を身に付け、環境の保全やより良い環境づくりに主体的に取り組むことができるよう、幼稚園から大学までの教育活動全体を通じて、各発達段階に応じた環境教育を行います。社会科、理科、家庭科等の各教科における取組に加え、総合的な学習の時間においては、教科横断的・総合的な学習の実践を推進します。この際、各学校において環境教育・環境学習に関する全体的な計画等を作成するよう努め、総合的な取組を進めるよう努めるほか、体験的・問題解決的な学習を重視して、正しい理解を深め、責任をもって環境を守るための行動がとれるように努めます。また、児童生徒の発達段階に応じた教育を効果的に行うため、研修などにより教員の環境教育に関する資質の向上を図るとともに、指導方法の開発、改善、普及を進めます。さらに、ライフサイクルCO2を増加させずに校舎の環境性能を向上させる改修、新エネルギー・省エネルギー機器の導入、地域材等の導入などを行う環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進するとともに、こうして整備された学校施設を教材として活用した環境教育を進めていきます。
 また、大学・大学院においては、環境問題に関する教育研究体制の整備充実を図り、必要な人材の育成に努めます。

(2)家庭、地域、職場等多様な場における環境教育・環境学習

 家庭の日々の暮らしの中における環境教育の推進のため、インターネット等を活用して情報提供や助言等を行います。
 地域における環境教育・環境学習の推進のため、自然体験活動その他の体験の機会や場の充実に努めていきます。そのため、社会教育施設、環境学習施設、全国・都道府県地球温暖化防止活動推進センター、消費者センター、企業の工場、リサイクル施設等を地域の環境教育・環境学習の中で積極的な活用を促進します。
 事業者による従業員に対する環境教育・環境学習を促進するため、プログラムの提供や情報提供を行います。

(3)その他環境教育・環境学習推進施策

 環境教育・環境学習に係る人材育成を行います。環境教育・環境学習の現場で指導を行う人材に加え、異なる主体間をつなぐコーディネート能力や地域の資源を活用して活動をプロデュースする能力のある者の育成を行います。また、人材認定等事業の登録制度の運用を推進し、指導者情報について教育現場等に積極的に提供します。
 教育・学習プログラムの整備、拠点機能整備、情報の提供等を行い、様々な主体が環境教育に取り組みやすい環境整備を図ります。
 また、我が国の提唱により2005年(平成17年)から始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」を踏まえ、環境面のみならず経済面、社会面も統合的に扱った環境教育を推進します。さらに、国際社会との連携や開発途上国の環境教育・環境学習の支援に努めます。

(4)広報の充実

 環境の日(6月5日)を中心として地方公共団体、民間団体などと協力して様々な行事を展開するとともに、様々な情報媒体を活用し、環境保全に関する広報を充実します。

第3節 国際的取組に係る施策

 国際的取組に関しては、前章第10節の考え方を踏まえ、そこに掲げた重点的取組事項や前節に掲げた施策のほか、次のような取組を推進します。

1 地球環境保全等に関する国際協力の推進

(1)東アジア地域を拠点とした環境管理の枠組みに向けたイニシアティブ

 東アジア地域において、多国間での政策対話と合意に基づくプロジェクト、関係国の連携による環境管理の改善を推進するため、「アジア太平洋環境会議」(エコアジア)を地方公共団体の協力を得て開催し、地域各国の環境大臣等との意見交換を進めるとともに、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)において各国政府や国際機関と協調して2004年に取りまとめた提言の実現に取り組みます。また、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)で設置されたワーキンググループにおいて、北東アジア地域の環境管理の状況について議論し、地域の共通の目標、必要な行動や関係者の役割など環境管理のための枠組みを可能な範囲から段階的に実施します。
 その他、国境を越える大気汚染、森林火災、海洋への油流出などの緊急事態に対する連絡体制の構築及び対応能力の強化を行います。

(2)持続可能な開発に向けた取組み

 開発途上地域の持続可能な開発に向けた自助努力を支援するとともに、各種の環境保全に関する国際協力を積極的に推進します。特に、ミレニアム開発目標の一つである環境の持続可能性の確保に関する具体的なターゲット(安全な飲料水及び基本的な衛生施設へのアクセスの改善、環境資源の損失の減少など)の達成に向けて重点的に取り組みます。
 その取組に当たっては、環境分野の法制度、国家計画や行動計画等の政策の立案、実施、モニタリング、評価が重要であり、そのような能力の強化のため、環境管理に係る人的・組織的能力の向上をいっそう重視します。また、成果の重視、効率性の確保、公正性の確保、国・地域の文化の多様性への対応、国民各層の広範な参加などに十分配慮し、利害関係者との対話に基づく合意の形成を図ります。

(3)国際機関などを通じた貢献

 国連環境計画(UNEP)については、地球環境の状況の分析評価、国際環境法の形成などのUNEPが他の国際機関に比較優位にある分野への取組の重点化を図るよう促していきます。また、UNEP国際環境技術センター、バーゼル条約地域研修技術移転センターなどの多国間の仕組みを通じた技術移転を引き続き支援します。
 国連持続可能な開発委員会(UNCSD)については、持続可能な開発に関わるあらゆる分野、主体からの関心を高めていくため、創造的、大局的視点からの議論が一層促進されるよう作業の改善を促していきます。
 引き続き、地球環境保全に資するプロジェクトに対して可能な限り資金が確保されるとともに、各種の開発プロジェクトにおける環境配慮が計画段階から徹底されるように、資金提供を行う国際機関が活動することを重視します。特に、世界銀行、国連開発計画(UNDP)、UNEPなどの組織や機構を通じた協力(世銀、UNDP及びUNEPを実施機関とする地球環境問題に関する主要な資金メカニズムの一つとして地球環境ファシリティ(GEF)があります。)、さらにはOECD開発援助委員会、各開発途上国に関するドナー会合などでの政策調整、技術協力、資金援助等を通じて連携を進めます。

(4)貿易と環境

 WTO、OECD等において、貿易と環境の相互支持性強化のための議論を進めるとともに、EPA/FTA等の推進に当たっては、環境分野における配慮がこれらの協定にさらに反映されるよう一層努めていきます。

(5)開発協力における環境配慮の徹底

 あらゆる開発計画及び案件プログラムにおいて環境保全の要素を取り込むとともに、環境社会ガイドラインを踏まえ、適切な環境配慮がされた取組を支援することによって、環境問題が改善に向かうよう努めます。

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

(1)戦略的な地球環境の調査研究、監視・観測等の推進

 地球環境の調査研究や地球観測については、研究成果や観測結果の政策への活用を視野に入れながら、衛星情報やモデリングなど、近年の技術の活用、推進を図り、得られた情報や研究成果を世界に向けて発信します。
 また、地球環境に関わるデータを戦略的に把握、評価することが重要であるため、調査研究や地球観測を担う人材を世界的に育成していくことが求められています。開発途上国に対しては、国際的な共同研究等を活用しながら、関係諸国や国際機関と連携の上、人材の育成や機器の整備等を総合的に支援します。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実、強化

 全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画、地球地図、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)、砂漠化対処条約におけるアジア地域の取組であるテーマ別プログラムネットワーク(TPN)、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)、東アジアPOPsモニタリングプロジェクトなど、国際的な観測・監視、研究推進プログラムとの連携、協働を通して、共同研究・観測や研究者交流を一層推進します。

3 多様な主体による活動の推進

 地方公共団体が培ってきた環境の保全に関する知見をいかした国際協力や草の根レベルのものを含む民間団体による各般の国際協力を推進し、地球環境保全などに関する国際協力の実効性を向上させます。
 開発途上国において、公的機関だけではなく産業の環境管理能力の向上は不可欠です。このため、優れた技術や知見を有する我が国の事業者が、その活動を通じて途上国における環境管理の改善に貢献できるよう、社会的責任に基づく取組事例の収集や提供などの支援を強化します。
 また、事業者の開発途上国における環境配慮に関しては、自主的な取組が進んでいますが、引き続き、国内で取り組まれている環境監査、環境報告書をはじめとした取組が海外事業も含め実施されることが期待されます。事業者の環境配慮が促進されるよう、情報提供や環境整備を進めます。
 コミュニティ・レベルの環境教育など、市民の環境意識の向上に資する活動が期待されるNGO/NPOについて、助成制度、環境保全活動の事例、当該国の環境情報、その他有益な情報の提供や技術面をサポートする専門家の派遣などを行います。また、政策提言などシンクタンク的な役割が期待されるNGO/NPOについては、政府機関との意見交換や同じ分野でのNGO/NPOとのネットワークの構築の働きかけなどを行います。
 独立行政法人環境再生保全機構の「地球環境基金」をはじめとした日本及び途上国の民間団体への支援内容の充実に努めます。

第三部 計画の効果的実施

第1節 政府をはじめとする各主体による環境配慮と連携の強化

 環境基本計画の効果的実施のためには、これをよりどころとしながら、社会の構成員であるすべての主体が協力し、環境の保全に向け実際に行動していくことが非常に重要です。政府は、閣議のほか関連する閣僚会議や関係府省連絡会議などの場を通じて関係機関の緊密な連携を図り、環境基本計画に掲げられた環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に実施します。地方公共団体には、環境基本計画に示された方向に沿いながら、地域の自然的社会的条件に応じて、国に準じた施策やその他の独自の環境の保全に関する施策について、環境の保全に関する総合的な計画の策定などにより、これを総合的かつ計画的に進めることが期待されます。さらに、国と地方公共団体が、相互の協力の下に、環境保全に係る政策の企画立案等の能力を向上させていくことも重要です。
 また、各主体それぞれが、環境基本計画に基づいて、公平な役割分担の下に、様々な施策、取組を自主的かつ積極的に推進するために、連携、協力を密にすることが必要です。第二部第1章に掲げた各重点分野では、国民、事業者、民間団体、地方公共団体、国といった主体ごとに、それぞれが取り組むべきことを具体的に示しています。それぞれに期待される役割を効果的に果たすため、各主体が相互に協調と連携の強化を図るものとし、国はそのために必要な支援を行います。
 各主体は、環境基本計画に沿い、自らの行動への環境配慮の織り込みに最大限努めるものとし、その推進にあたり、環境管理システムなどの手続的手法の活用を図るものとします。特に、関係府省は、環境基本計画を踏まえながら、オフィス、会議、イベント等における物品・エネルギーの使用といった通常の経済主体としての活動分野と、各般の制度の立案等を含む環境に影響を与えうる政策分野の両面において、それぞれの定める環境配慮の方針に基づき、環境配慮を推進します。また、環境配慮の取組を一層充実させるため、環境配慮の実施状況を点検し、その結果をそれぞれの活動に反映していくための仕組みの強化等、環境管理システムに関する取組を積極的に推進します。

第2節 財政措置等

 国は、環境基本計画に掲げられた各種施策を実施するため、施策の有効性を検証しつつ、必要な財政上の措置その他の措置を講じます。その際、本計画の進捗状況、環境の状況などを踏まえるとともに、環境保全経費の見積り方針などの運用面の在り方について検討を行った上で、必要に応じて改善を行い、これを踏まえ、関係する機関の適切な連携の下で、各種事業が総合的に推進されるよう適切に対処します。
 国は、地方公共団体が地域の実情に応じて自主的積極的に実施する環境の保全に関する施策のための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めます。

第3節 各種計画との連携

 国は、環境に影響を及ぼすと認められる計画を策定するにあたっては、環境の保全に配慮しなければなりません。環境保全のための配慮に当たっては、次のような方針で臨みます。
 環境の保全に関する国の基本的な計画である環境基本計画と国の他の計画との間では、環境の保全に関しては、環境基本計画との調和が保たれたものであることが重要です。
 国の他の計画のうち、専ら環境の保全を目的とするものは、環境基本計画の基本的な方向に沿って策定、推進します。
 また、国のその他の計画であって環境の保全に関する事項を定めるものについては、環境の保全に関しては、環境基本計画の基本的な方向に沿ったものとなるものであり、このため、これらの計画と環境基本計画との相互の連携を図ります。特に、法令に環境基本計画との調和に関する規定がある計画については、当該規定を踏まえ、本計画の基本的な方向に沿ったものとなるよう留意することとします。

第4節 指標等による計画の進捗状況の点検及び計画の見直し

 環境基本計画の着実な実行を確保するため、毎年、中央環境審議会は、国民各界各層の意見も聴きながら、環境基本計画に基づく施策の進捗状況などを点検し、必要に応じ、その後の政策の方向につき政府に報告します。中央環境審議会の点検は、関係府省の自主的な点検結果を踏まえて実施します。関係府省の点検が、施策の環境改善効果に関する分析、評価を可能な限り含めて実施できるよう、政府は、適切な点検手法の開発を図ります。
 点検等に当たっては、第二部第1章の重点分野毎に、各分野に掲げたそれぞれの指標を活用します。また、第三次環境基本計画では、環境基本計画の進捗状況についての全体的な傾向を明らかにし、環境基本計画の実効性の確保に資するため、環境の状況、取組の状況等を総体的に表す指標(総合的環境指標)を活用することとします。この場合に、 i)各重点分野に掲げた個々の指標を全体として指標群として用いるとともに、ii)環境の各分野を代表的に表す指標の組み合わせによる指標群を活用します。さらに、iii)環境の状況等を端的に表した指標として、①環境効率性を示す指標、②資源生産性を示す指標及び③環境容量の占有量を示すエコロジカル・フットプリントの考え方による指標といった指標を参考として補助的に用いることとします。また、これらの指標に必要な検討とデータの整備を進めます。
 なお、これらの指標の使用に当たっては、それぞれの指標が持つ特性や限界等に十分留意するとともに、指標が本計画の目指す方向を的確に反映し、かつ環境や社会経済等の状況に即した適切なものであるよう常に見直しを行い、指標の継続性にも配慮しつつ、その発展のため、必要に応じ機動的に変更を行っていきます。また、これらの指標の運用を通じて、目標の具体化及び指標の充実化を図るとともに、その基礎となる科学的知見及び統計の充実、データベースの整備、総合的な評価手法の開発などに努めます。
 国は、環境基本計画に基づく施策や取組の実施状況を把握し、評価し、自ら政策の企画立案等に活用するほか、環境への取組を進める他の主体に対し環境白書をはじめ様々な手段を通じて情報を適切に提供するため、そのための体制の整備を含め、環境情報の体系的な収集、蓄積、利用を進めます。
 各分野の個別の施策については、各種の具体的な目標が設定されるものがありますが、環境基本計画の基本的な方向に沿い、総合的な見地からの所要の検討を行いながら、必要に応じ具体的目標の見直しを行い、施策の効果的な実施を図ります。
 中央環境審議会の点検結果については、毎年国会に対して行うものとされている年次報告などに反映するとともに、環境保全経費の見積もり方針の調整に反映します。
 内外の社会経済の変化や施策の進捗状況に柔軟かつ適切に対応して、環境基本計画の見直しを行うこととし、5年程度が経過した時点を目途に計画内容の見直しを行い、必要に応じて計画の変更を行います。

(参考資料)

参考資料 総合的環境指標

 環境基本計画の第三部第4節では、環境基本計画の進捗状況についての全体的な傾向を明らかにし、環境基本計画の実効性の確保に資するために、環境の状況、取組の状況等を総体的に表す指標(総合的環境指標)を活用することとしています。
 この資料は、総合的環境指標の具体的内容について補足するため、環境基本計画を決定する閣議における参考資料としたものです。

ⅰ)各重点分野に掲げた個々の指標を全体として用いた指標群
(各重点分野に掲げた指標の一覧)
重点分野
取組推進に向けた指標等
①「地球温暖化問題に対する取組」
  • ・エネルギー起源二酸化炭素の排出量及び各部門の排出量
  • ・非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出量
  • ・代替フロン等3ガスの排出量
  • ・温室効果ガス吸収源に関する吸収量
    (個々の主体からの二酸化炭素排出量等に関する目安)
  • ・1世帯当たりの二酸化炭素排出量、エネルギー消費量
  • ・業務その他部門の床面積当たりの二酸化炭素排出量
②「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」
  • ・資源生産性
  • ・循環利用率
  • ・最終処分量
  • ・循環基本計画に掲げられている「循環型社会形成に向けた意識・行動の変化」、「廃棄物等の減量化」、「循環型社会ビジネスの推進」に関する各指標
③「都市における良好な大気環境の確保に関する取組」
  • ・大気汚染に係る環境基準達成率(全国、大都市)
  • ・有害大気汚染物質に係る環境基準、指針値達成率(一般環境、発生源)
  • ・幹線道路を中心とする沿道地域の自動車交通騒音に係る環境基準の達成状況
  • ・新幹線鉄道騒音及び航空機騒音に係る環境基準の達成状況
  • ・省エネルギー機器、住宅・建築物、低公害車等の普及率
  • ・都市域における水と緑の公的空間確保量
  • ・都市域における年間の30℃超高温時間数・熱帯夜日数
④「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」
  • ・公共用水域及び地下水について水質汚濁に係る環境基準の維持・達成状況
  • ・環境保全上健全な水循環の構築に関する計画の流域ごとにおける作成・改定数
(参考となるデータ)
  • ・水質等のモニタリング地点数
  • ・雑用水の利用量
  • ・湧水の把握件数
  • ・水環境の保全の観点から設定された水辺地の保全地区等の面積
  • ・主要な閉鎖性海域の干潟面積
  • ・全国水生生物調査の参加人数
⑤「化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」
  • ・大気環境と水環境の両方で環境基準・指針値が設定されている物質に係る達成状況
  • ・製造・使用・廃棄の流れの把握を含め、リスク評価の取組が進行し、又は終了している物質数
  • ・PRTR対象物質のうち、環境基準・指針値が設定されている物質等の環境への排出量


重点分野
取組推進に向けた指標等
⑥「生物多様性の保全のための取組」
  • ・自然環境保全基礎調査の植生自然度
  • ・農業分野における田園自然環境の創造に着手した地域の数
  • ・河川及び港湾における、失われた自然の水辺のうち、回復可能な自然の水辺の中で再生した水辺の割合
  • ・河川及び港湾における、失われた湿地や干潟のうち、回復可能な湿地や干潟の中で再生したものの割合
  • ・都市域における水と緑の公的空間確保量
  • ・脊椎動物、昆虫、維管束植物の各分類群における評価対象種数に対する絶滅のおそれのある種数の割合
  • ・保護増殖事業計画など種の回復のための計画数
  • ・自然再生推進法に基づく協議会の数
(試行的な指標)
  • ・国有林野における保護林の箇所数
⑦「市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり」
  • ・環境誘発型ビジネスの市場規模、雇用人数
  • ・主要な環境ラベリングの対象品目数
  • ・地方公共団体、企業、国民におけるグリーン購入実施率
  • ・主要企業の環境目的投資の割合
  • ・エコ/SRIファンドの設定数、純資産残高及びその割合
  • ・ISO14001、エコアクション21等の登録事業者数
  • ・環境報告書を作成・公表している企業の割合
  • ・環境会計を実施している企業の割合
⑧「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」
  • ・過去、一定期間において、体験型の環境教育・環境学習に参加した国民の割合
  • ・持続可能な地域づくりに向けた考え方や進め方に関する計画や方針が策定されている地方公共団体の割合
  • ・地域における環境保全のための取組に参加した国民の割合
(補助的な指標)
  • ・地方公共団体等が関わった体験型の環境教育・環境学習に対する世代別の参加人数
  • ・計画、方針の策定や見直しに際して、地域の多様な主体が対話型で参画できている地方公共団体の割合
  • ・行政機関が関わった環境保全に関わる事業への参加人日
  • ・エコツアーの数(政府関係ホームページに登録されたもの)
  • ・活動分野として、環境教育、まちづくりを掲げるNGO/NPO団体の数
⑨「長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備」
  • ・環境分野における政府研究開発投資総額(円/年)
  • ・政府研究開発投資総額に占める環境分野の投資割合(%)
  • ・我が国における環境分野の特許出願件数
  • ・環境関連技術(環境産業)の市場規模(円/年)
  • ・環境情報に関する国民の満足度
(参考となる指標)
  • ・環境情報を提供する政府関係のホームページ等における情報の英語化率
  • ・環境情報を提供する政府関係のホームページ等へのアクセス数
  • ・環境情報を提供する調査報告書の公表までの期間
⑩「国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進」
  • ・我が国の環境関係条約・議定書の締結数とその履行状況
  • ・地球環境保全研究政策を支援するための我が国の競争的資金のうち、個別評価が期待通り、もしくは期待以上の研究成果をあげた課題の数とその研究資金の累積予算額
  • ・代表的な国際環境機関で勤務する日本人職員の数
  • ・人材育成支援のための研修受け入れ人数(累積)
  • ・国際的取組を行っているNGO/NPOの数
  • ・我が国のISO14001における審査登録件数
ⅱ)環境の各分野を代表的に表す指標の組み合わせによる指標群
分野
代表的に表す指標案
 ①地球温暖化
  • ・温室効果ガスの年間総排出量
 ②物質循環
  • ・資源生産性
  • ・循環利用率
  • ・最終処分量
 ③大気環境
  • ・大気汚染に係る環境基準達成率
  • ・都市域における年間30℃超高温時間数・熱帯夜日数
 ④水環境
  • ・公共用水域の環境基準達成率
  • ・地下水の環境基準達成率
 ⑤化学物質
  • ・PRTR対象物質のうち環境基準・指針値が設定されている物質等の環境への排出量
 ⑥生物多様性
  • ・脊椎動物、昆虫、維管束植物の各分類群における評価対象種数に対する絶滅のおそれのある種数の割合
ⅲ)環境の状況等を端的に表した指標
指標
内容
①環境効率性を示す指標
  • ・当面、「二酸化炭素排出量÷GDP」を使用します。
  • ・環境負荷と経済成長の分離の度合いを測るためのデカップリング指標の一つです。
  • ・二酸化炭素の排出量は、他の多くの分野の状況も、そこに何らかの形で反映されているとみることができ、総合性の高い指標と言えます。
  • ・関連するデータは幅広く入手可能であり、国際比較も可能です。
  • ・必ずしも総量削減を意味しないこと、各国の条件に差があることなどから、国際的には、このような指標として、生産量ベースでの比較など様々な手法が提案されていること等の留意点があります。
②資源生産性を示す指標
  • ・当面、「GDP÷天然資源等投入量」を使用します。
  • ・天然資源等投入量は、資源の有限性の観点に対応しているだけでなく、採取に伴い環境負荷が生じること、また、それらが最終的には廃棄物等となることから、複数の分野に対応しうる総合性の高い指標です。
  • ・物質フローを表す指標であると同時に、環境効率性を表す指標でもあります。
  • ・循環基本計画において、既に数値目標が設定されており、毎年度算定されています。
  • ・イギリス、ドイツなどEU諸国においても数値を算出しており、また、OECDでは加盟国が共通で利用できる資源生産性を含む物質フロー指標の開発が進められているなど、国際比較可能性を有しています。
  • ・少量だが有害な物質が埋没する等の留意点があります。
  • ③環境容量の占有量を示すエコロジカル・フットプリントの考え方による指標
  • ・代表的なエコロジカル・フットプリントの定義
    「消費されるすべてのエネルギー及び物質を供給するため、並びに、排出されるすべての廃棄物を吸収するため、通常の技術を持った主体が、継続的に必要とする生態学的生産力のある空間(土地と水域の面積)」※
  • ・地球上の有限な土地の面積に着目して持続可能な水準の超過を訴える概念が直感的分かりやすさに優れ、「環境容量の占有量」として数値を解釈できます。
  • ・WWF(世界自然保護基金)の定期的なレポートなどによって国際比較を行った結果が発表されており、今後の国際的比較可能性も期待できます。
  • ・環境基本計画の点検等において活用するためには、早期に算定の細目・体制を確立していく必要があります。
※:
  • Wackernagel & Rees, "Our Ecological Footprint", 1996.
  • Wackernagel 他, "National Footprint and Biocapacity Accounts 2005: The underlying calculation method", May 25, 2005, Global Footprint Network

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