自然共生サイトってなんだろう?

今月のテーマ

いよいよ
認定スタート!
自然共生サイト

自然共生

いま、生物多様性の保全や回復に向けて世界が動きだしています。昨年12月の生物多様性条約第15回締約会議(COP15)で、世界共通の目標となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。なかでも注目されている内容が、2030年までに「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させる」という、いわゆる「ネイチャーポジティブ」です。そして、ネイチャーポジティブ達成の手段のひとつとして、陸と海をそれぞれ30%以上保全するという「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」目標が掲げられました。ネイチャーポジティブ達成に向け、今年3月、環境省では世界に先駆けて「生物多様性国家戦略2022-2030」を新たに策定しました。

30by30 ロードマップ

ネイチャーポジティブや30by30目標達成のためには、行政機関による取り組みだけでなく、民間企業や地域の団体などによる生物多様性保全の取り組みを進めていくことも大切です。
そこで環境省では、今年4月から民間などの取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」として認定する仕組みをスタートしました。今後、全国各地で民間の活動を促進し、日本の生物多様性を保全することが期待されます。

自然共生

自然共生サイト認定委員会の審査委員長、
森本幸裕先生(京都大学名誉教授)の想い
現在、自然共生サイト認定委員会の審査委員長を務めているのが、京都大学名誉教授の森本幸裕先生です。環境デザイン学、景観生態学を専門とする森本先生は長年、京都市で市民や企業とともに森を守り、育て、活かすという実践的な運動に関わってきました。その経験から、生物多様性についての国際的な動きや、生物多様性を豊かにすることの大切さを、森本先生はこう語ります。

「2010年に愛知県で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の頃から、身近な生物多様性を守ろうという国際的な動きが出てきました。この動きがここ2、3年で急加速して、具体的な国際的な取り組みにつながっており、大転換期となっています。
陸地や海洋の面積で基準を示した『30by30』のような生物多様性保全の取り組みだけでなく、私たちの生活や企業の経済活動の中にも生物多様性に配慮した取り組みを考える動きが世界的に始まっています。企業は活動の内容が及ぼす自然へのリスクや機会を適切に評価し、開示する時代になったのです。この情報開示の枠組みを示したものを『TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)』といい、世界の経済活動が自然にとってポジティブな結果をもたらすように誘導する目的で設置されました。
生物多様性が守られている土地は、そこで自然に親しむ子どもたちの教育や発達にも、また老若男女問わず、すべての人の心身の健康にもよいといわれています。『ウェルビーイング』の要素もあるのです。けれど、ただ手つかずであればいいわけではありません。ほったらかすのが一番ダメ。きちんと管理し、適度に人の手を入れることで、私たちの普段の生活の中に自然共生の仕組みが入ってくることが大事です。『共生=連携』がキーワードなのです」

自然共生サイトの認定にあたり、森本先生が重視した点についても伺いました。「評価基準は多岐にわたりますが、着目しているのは、その土地や地域にとってなにが大事かを、保全に関わる人たちや周囲がどれだけきちんと認識しているかということ。規模は問いませんし、保全活動には一般的に誰でも参加できるものなので、みなさんも身近な公園などの自然共生サイトの登録に向けた活動に、ぜひ参加してほしいです」

生物多様性は自然の資本

私たちの身の回りにも、多様な生き物が息づくエリアがきっとあるはず。次回からはいよいよ、認定の進む「自然共生サイト」をひとつずつ紹介していきます。

CATEGORY