環境省
VOLUME.75
2020年2月・3月号

エコジンインタビュー/「今までなかったから大丈夫」ではなく「災害に遭うかもしれない」との意識変換を。/天達武史

天達 武史

朝の情報番組で、お天気情報を伝えて約15年。
空の変化を見続けてきた、気象予報士の天達武史さんは
ここ数年の気候の極端な変化を感じていると話します。
お天気の専門家が教える、いざという時に備える方法とは。

 最近の日本の天候について、これまで慣れ親しんできた四季がはっきり分かれる気候とは異なってきた。と、多くの人が感じているのではないかと思います。一体、何が起きているのか、気象予報士の天達武史さんに尋ねました。
「日本の気候区分は温帯気候とされています。ところが夏に限っては、沖縄から北海道に至るまで亜熱帯気候になったと考えていいと思います」

 亜熱帯気候というと、一年を通して気温の差があまりなく、高温や多雨というイメージがありますが、確かに近年の日本の夏は暑さが厳しく、短時間に激しい雨が降ることが多発しているようです。気候が変わってしまうくらいの変化がすでに起きているというのは衝撃的です。
「猛暑や台風の取材に出て、現地の方の『今までこんなことはなかったのに』という言葉をたくさん耳にしました。しかし気候の変化がすでに起きているので、こうした災害のリスクはこの先も大きいと言わざるを得ません。『これまで被害に遭わなかったから大丈夫』というのではなく『災害が自分の身に降りかかるかもしれない』ということを意識して、これからは備える必要があると思います」

「知る」「適応する」「行動する」で災害から命を守ることを最優先に考えて。

 災害に備えるために私たちがすべきこととして、天達さんが挙げたのが「知る」「適応する」「行動する」という3つのキーワード。
「『知る』は、住んでいる場所がどんな土地なのかを知るということです。自治体でハザードマップなどを作っていますから、調べればすぐにわかると思います。土地の特徴を知って、それに合った備えをするということが、次の『適応する』ということです。すでに日本の気候は変化してしまっているので、環境の変化を受け入れ、考え方を新しい天候に適応させることが大切です。そのためにも自分の住む土地がどんな場所なのかを知って頭を切り替えて、先例ではなく、いざという時には避難するという決断と『行動する』ことが命を守ることにつながるのだと思います」

 しかしいざ災害が起きそうな時でも、移動しやすいタイミングでの早期避難となると判断が鈍ってしまい、行動に至るまでのハードルは高そうです。そんな場合はどう対応すればいいのでしょうか。
「『マイ・タイムライン』をご存じでしょうか。いざという時に備えて、一人ひとりが避難するまでにいつ、どんな行動をとるといいのかを時系列に沿って事前に目安を書いておく行動計画のことです。台風情報であれば、日本に影響を及ぼす5日くらい前から予報が出ますから、持病のある方であれば、薬の予備を病院でもらってくるといった細かな行動計画を立てていきます。こうしてすべきことを事前に考えておけば、いざという時にこの計画表を見るだけで、どの段階で何をすればいいかが一目でわかって臨機応変に行動しやすくなると思います。国交省や自治体などでマイ・タイムラインの作り方などを発表しているので、ホームページなどをチェックしてみるといいと思います」

 地球温暖化は待ったなしの状況ですが、私たち一人ひとりがすべきことは何でしょうか。
「科学者や研究者の中には、もう温暖化対策をとっても遅いと発言している人もいますが、本当にそうなのかはまだ誰にもわかりません。少なくとも、今、対策をとらなければ、数代先の世代から『あの時代の人たちはなぜ何もしなかったんだ』と非難されることは間違いないでしょう。気候を昔と同じに戻すことはできないとしても、悪化させないために一人ひとりができることをコツコツ実践して、その輪を広げることが大切なのではないでしょうか。そのためにも私たち気象予報士が果たす役割は大きいのだろうと思っています」

profile

天達武史

神奈川県出身。2002年に気象予報士資格に合格。2005年10月からフジテレビ系列の朝の情報番組「情報プレゼンターとくダネ!」に気象キャスターとして登場。以来、現在に至るまでお天気情報を伝えている。観ている人にとってわかりやすく、また隣の人に教えたくなるような役立つ情報を盛り込むよう日々心がけている。

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