環境省
VOLUME.74
2019年12月・2020年1月号

特集 :「地域循環共生圏」のつくり方。OUR CHALLENGE02

岡山県真庭市/緑あふれるまちで再エネ自給率100%を目指す

国立公園・蒜山(ひるぜん)を有し旭川の源流部に位置する岡山県真庭市。
市の8割を森林が占める豊かな地域資源を活用した取り組みが始まっています。

旭川に隣接する「勝山町並み保存地区」には伝統的な建造物が並ぶ

真庭市は、東京23区の1.3倍を誇る市域の約8割を森林が占めるという環境を生かし、古くから林業や木工業を中心とした農林業が栄えてきた地域だ。豊富な森林資源を活用し、2015年から真庭バイオマス発電所を稼働。また、新しい木造建築材として注目されるCLTなどの新産業や、生ごみ由来の液肥を農業に利用するなどの取り組みが評価され、「SDGs未来都市」にも選定されている。

 豊かな地域資源を有する一方で、近年は人口減少にともなう人材不足の問題も顕在化。広域な市であることから、人やモノの連携や資源の相互活用がしづらいなどの課題も浮き彫りになっている。それらの課題解決の手法として、市は「地域循環共生圏」に着目した。「広範囲にわたる市域において多彩な地域性や多様な地域資源、住民の思いを束ねるビジョンとして、地域循環共生圏の考え方は我々が目指す地域の姿とも合致しています」と真庭市総合政策部の富永翼さんは語る。

 現在、森林組合や素材生産業者、電力会社などと連携しながら、災害時にも地域の電力を自給できる「地域マイクログリッド」の導入を検討。また、森林面積の約4割を占める広葉樹林をバイオマス燃料として活用していく方策を探っている。森林資源をフル活用して「再生可能エネルギー自給率100%」のまちを目指すという。

 また、一級河川・旭川の源流に位置する市の役目として、森里川海のつながりも大切にしている。瀬戸内海の漁業者と連携し、カキの殻を土壌改良剤として水田に利用した「真庭里海米」を生産。森のミネラルで育まれたカキが海から里へ還元されることで、そのつながりを意識してほしいとの思いが込められている。これに関連して、日本有数のホタルの里として知られる北房地区の環境保全にも取り組む。「こうした活動を環境教育とも結びつけて、次代を担う人材の育成にもつなげていきたい」と富永さん。すでにそこにある豊かな地域資源をどう活かし、つなげていくか。今後の取り組みに注目したい。

01.真庭市産のCLT材を使用した建築物。2020年秋まで東京都中央区の晴海で文化・情報の発信拠点として運用し、その後、真庭市の蒜山に移築予定。写真は蒜山移築後のイメージ 02.木質バイオマス発電燃料となる間伐材・製材端材の集積基地 03. 春の山焼きによって維持される国立公園・蒜山のススキ草原 04.カキ殻を土壌改良材として活用した真庭里海米

01.真庭市産のCLT材を使用した建築物。2020年秋まで東京都中央区の晴海で文化・情報の発信拠点として運用し、その後、真庭市の蒜山に移築予定。写真は蒜山移築後のイメージ/02.木質バイオマス発電燃料となる間伐材・製材端材の集積基地/03. 春の山焼きによって維持される国立公園・蒜山のススキ草原/04.カキ殻を土壌改良材として活用した真庭里海米

MESSAGE「これまで市域に「点」としてあった資源をつなげ、「面」にしていくことを目指します。」真庭市総合政策部 総合政策課 富永翼さん

写真/石原敦志

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