環境省
VOLUME.69
2019年2・3月号

FOCUS on EFFORT -CASE STUDY- /「タラノア対話」を通じて、世界に発信された国内の優良事例を2つご紹介します。

1 長野県/再生可能エネルギー100%地域を目指して前進

 日本屈指の山岳景勝地でも知られ、自然保護の方針を早くから掲げてきた長野県。「経済は成長しつつ持続可能で低炭素な環境エネルギー地域社会をつくる」べく、省エネの推進と再エネの普及拡大に積極的に取り組んでいる。温暖化対策係の松本順子課長補佐兼係長はこう話す。「新築建物の断熱性能を高めるための検討を義務化したことで、新規建築物の省エネ基準の適合率は80%超となりました。また、一定規模以上の温室効果ガスを排出する事業者に削減計画書や報告書の提出を義務付けたり、再生可能エネルギーの事業化を支援するなどの取り組みを展開しています。」2017年には、「地域再生可能エネルギー国際会議2017」をアジアで初めて開催した。「今後は温室効果ガスの排出量を1990年度比で2020年までに10%削減する計画ですが、既存住宅や中小企業への対応などが課題。地域主導での再生可能エネルギーの導入は拡大してきていますが、太陽光発電については森林を伐採した発電所が増え、景観や防災への懸念もあることから、環境への負荷が少ない建物の屋根への設置を進めていきます。」

 長年取り組んでいるからこそ見えてくる問題。それを丁寧に修正し、環境だけでなく複合的な課題を解決し、エネルギー自立地域を目指して、これからも前進していく。

長野県/再生可能エネルギー100%地域を目指して前進

INFORMATION

長野県 公式サイト
https://www.pref.nagano.lg.jp/index.html

2 長崎県五島市/島民理解を追い風に好循環を目指す

 美しい海や豊かな自然に恵まれた環境を活かし、さまざまな再生可能エネルギーの開発に協力している「エネルギーの島」、それが長崎県五島市だ。2016年4月には戸田建設が開発した国内初の浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」が実用化を開始。現在は島内電力の4割を再生可能エネルギーでまかなう。五島市再生可能エネルギー推進室の北川数幸室長は、「基幹産業である水産業は環境問題の影響を直に受けますし、人口も減少しています。このままではふるさとがダメになる。そこで海という財産を活かして再エネ事業で地域を活性化し、自然、人、社会に好循環を生む道を島ぐるみで模索しています」と話す。2018年10月には、城内環境副大臣らが訪問。地域の人々と少人数で対話する「車座ふるさとトーク」が開催された。対話のテーマが「再生可能エネルギーによる島づくり」となったのも、五島市だからこそだ。

 今後は、浮体式洋上風力発電設備をさらに10基程度設置する計画で、島内の再エネ電力は8割に到達する試算だ。「2016年から始まった潮流発電の実証実験にも漁業関係者の協力が得られ、実用化に期待が高まっています。『はえんかぜ』の浮体構造物は魚の棲家となっていることもわかり、自然にも受け入れられていると思うとより励みになります」

長崎県五島市/島民理解を追い風に好循環を目指す

「車座ふるさとトーク」の様子。参加者は高校生を含む男女14人。さまざまな立場から、環境意識の高い発言が相次いだ

「車座ふるさとトーク」の様子。参加者は高校生を含む男女14人。さまざまな立場から、環境意識の高い発言が相次いだ

長崎県五島市/島民理解を追い風に好循環を目指す

INFORMATION

長崎県五島市 公式サイト
http://www.city.goto.nagasaki.jp/

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