環境省
VOLUME.69
2019年2・3月号

課題解決ストーリー エコ・サクセス

エコに取り組み、目標を達成した
サクセスストーリーを紹介します

Vol.05 株式会社パン・アキモト

備蓄用パンの缶詰「PANCAN」を開発、製造しているパン・アキモト。
購入された缶詰が廃棄される前に回収し、飢餓に苦しむ人々を救っています。

【課題】おいしいパンを無駄にせず世界の人々を救いたい…

START!
購入された後の食品のリユース方法を考える

 「PANCAN」は、特殊な製法で柔らかいまま長期保存できるパンとして、多くの企業や自治体、学校などに購入されている。しかし賞味期限が迫ると、その多くが捨てられてしまっていた。製造者のパン・アキモトは、未だ世界には多くの飢餓に苦しむ人々がいる一方で、食品が捨てられていることを見過ごせず、廃棄される前に有効活用できないかと模索し始めた。

START!

1995年の阪神・淡路大震災への支援をきっかけに「PANCAN」を開発。防腐剤を使用せず37カ月の長期保存が可能

PROCESS
「無駄を出さない」に、多くが賛同

 考え出したのは、3 年ある賞味期限を1年前倒しにして、2年経過した段階で回収するという仕組み。購入者などからどれほどの賛同を得られるかが鍵となっていたが、「無駄を出さない」という趣旨と、買い替えの場合は、新しい缶詰を値引きする下取りを導入したことで理解が広がった。また買い替えをしなくても「みなさんのやさしさを世界の人に届けます」というパン・アキモトの思いが利用者に響き、賛同者が増えていった。

PROCESS

回収された缶詰はNGO団体などを通じて輸送。ラベルには義援先の人々へ向けたメッセージを書き込むことができる

GOAL!!!
各協力機関とともに、さらなるリユースへ

 2009年、義援用のパンの缶詰「救缶鳥」の販売を開始、賞味期限前に回収し世界へ届ける「救缶鳥プロジェクト」が始動した。だがここで課題となったのが、輸送コストだ。「パン・アキモトは栃木県で個人が創業したパン屋です。資本が限られる中で、輸送のコストをどう捻出するかが課題でした。しかし、“悩んだら動け”の精神で働きかけた結果、大手流通業者にも協力していただけることになったんです」と、営業部長の秋元信彦さんは語る。国内での回収システムを構築し、さらに製紙会社や海運会社の協力も得て、大きな運搬船に「救缶鳥」を積載させることが叶った。

 こうして「救缶鳥」は世界中の国々にこれまで約27万缶が届けられ、またさまざまな国内の被災地にも約15万缶が送られている。現在はさらに、大手靴メーカーと組み、費用をかけて処分していたB級品の子ども靴を「救缶鳥」と一緒にアフリカに届ける新たな計画がスタート。今後の活動からも目が離せない。

GOAL!!! これまでに約27万缶を世界へ届けました

「救缶鳥」を受け取るネパールの子どもたち。食べ終わった空き缶は食器類として再利用されている。災害に備えながら社会貢献できるこの取り組みは、2017年「第5回グッドライフアワード 環境大臣賞 最優秀賞」を受賞

SUCCESS HINT!

「できること」を無理せずに続ける

自分だけの力では実現できないようなことでも、思いを同じにする仲間ができれば力を結集させることができる。パン・アキモトも、自社で全てを完結させず、課題を解決するための賛同者を得られたことが、プロジェクトを成功させ、発展させることにつながった。

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