環境省
VOLUME.69
2019年2・3月号

エコジンインタビュー/真面目なことも、笑いを添えればぐっと伝わりやすくなる。/テリー伊藤

テリー伊藤

築地に生まれ、近所の川や海が遊び場だったというテリー伊藤さん。
しかし次第にその環境は姿を変えてしまい、いつしか川の水がすっかり濁ってしまったことをよく覚えている、といいます。
そんなテリーさんが80年代から第一線で活躍するのが、テレビ界。
数々の人気番組を作ってきたテリーさんに聞いてみました。
「環境に対してテレビができることってなんでしょうか?」

「僕の実家は築地の卵焼き屋なんですが、当時はそれこそ豊洲のあたりでも、まだ海水浴がちょっとはできた時代で。でもある時から川も海もどんどん水が濁ってきて、“この先はもう入れないなぁ”と思ったんです。あと親父の実家が九十九里で、たまに遊びに行くと、親父が“前はあの辺まで海岸だったんだけど、どんどん侵食されてるんだよ”って言うんですよ。水の近くに住んでいたせいか、小さい頃から環境の変化は結構身近に感じていた気がします」

 とはいえ、テリーさんが働くテレビ業界に関しては、「正直エコ的な考え方は、あんまりない世界なんじゃないかな」とのこと。
「もちろん全員がそうではないと思いますよ。考えている人もいるでしょう。でもやっぱり、トータルで考えるととても無駄が多い。例えばグルメ番組のロケでラーメン屋さん4軒を巡ってロケをする場合、三口くらい食べて次の店に行くわけで、残ったラーメンは捨てられてしまう。中には完食する人もいるけどね(笑)。あと台本も、こんなに必要?ってくらい刷るし、ちょっとした資料も紙で用意されていることが多い。それもみんな、ゴミになるわけで。ただ、日々忙しく働いていると、そういう<無駄>にとても鈍感になってしまうんですよ。立ち止まって気がつく余裕がない。でも、意識を変えていかなきゃいけないんですよね」

たとえ罪滅ぼしでも、おもしろくて伝わる番組であれば、意味がある。

 とはいえ、経済活動とエコの両立はなかなか難しい問題だ、とテリーさん。
「日本を始め先進国は、“そろそろ環境に配慮を”って言うけれど、これから発展したい国からしたら、“先進国は今まで散々好き勝手していい思いをしたくせに、なに言ってんだ!”ってこと。国ごとに経済事情が違うわけだから、みんなで同じように取り組むのは本当に難しい」

 そんな世界の中で、環境問題に対して、テレビはいったい何ができるのでしょうか?
「そういう番組がたまに放送されるけれども、あれは結局、言葉は悪いけど、罪滅ぼしみたいなところも大きいと思うんです。だってそもそも経済活動は環境に良くないことと表裏一体なわけで、それは仕方がないし、だからそこを責めても仕方がない。逆に、せっかくそういう番組を作れるなら、しっかり伝わるものを制作することが大事だと思います。少し前に爆笑問題がやっていた、テレビ朝日の『お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』なんかは、真面目なことをバラエティというシステムを使って、すごくうまく人に伝えていましたよね。あるいは今人気の、NHKの『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃんみたいなキャラクターが、環境問題を伝えていくとかすると、いいんじゃないかな」

 何かを伝えるときに、そこに笑いが一緒にあることで、伝わりやすさは倍増する。
「大学の授業とかでも、ただただ事実を羅列する人より、面白おかしく、でも本音をちゃんと入れながら…っていう先生のほうが、みんな聞く耳を持つでしょう?番組もそれと同じ。あと今は、世間の意識も変わってきているから、お尻を出しての視聴率15%よりも、ちゃんとした番組で9%取るほうが、スポンサーにとってもイメージはいいと思う。まあそれもある意味、最終的には金儲けにつながるわけだけど、いい番組ができて、みんなが面白く見て、ちょっとでもなにかに気がついて世の中が変わるきっかけになれば、全然いいと思うんだよね」

profile

テリー伊藤

1949年生まれ、東京都、築地出身。大学卒業後、テレビ制作会社に入社し、『天才たけしの元気が出るテレビ』『ねるとん紅鯨団』などを手がけ、一躍ヒットメーカーに。現在は『サンデー・ジャポン』、『ビビット』の毎週木曜日(いずれもTBS系)などに出演中。著書も多数。

写真/千倉志野

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