環境省
VOLUME.66
2018年8・9月号

エコジンインタビュー/自然と生き物のそばで楽しみながら子育てを/藤本美貴

藤本美貴

かつてアイドルグループ・モーニング娘。の一員として活躍し、現在も「ミキティ」の愛称で親しまれる藤本美貴さん。

北海道の自然の中で育った原体験から、結婚、出産を経て、ますます自然や生き物を身近に感じられる暮らしを送りたいと願うようになったといいます。

 豊かな自然が広がる北海道の空知(そらち)地方・滝川市で生まれ育った藤本美貴さん。子どもの頃の遊び場は、もっぱら自然の中だったという。
「外でしか遊ばない子どもでした。川に入って遊んだり、雪が多い地域なので、冬は除雪でできた雪山でソリ遊びをしたり。自然の中で遊ぶのが当たり前の環境だったんです」

 16歳の時に上京し、アイドルの世界へ。環境は激変した。
「東京の水が合わなかったのか、上京直後は肌が荒れたりしましたね。北海道に住んでいる時には意識していなかったのですが、それまで自分がいかにきれいな水と空気の中で暮らしていたのかを思い知らされた気がします。地元にいた頃は、ペットボトルの水を買うなんていう発想は全くなかったですから(笑)」

 モーニング娘。の一員として活躍しながら、2009年にはお笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんと結婚。主婦になってからも引き続き多才なタレント活動を行っている。2010年、名古屋で開催された「COP10(生物多様性第10回締約国会議)」の関連イベントでは生物多様性について専門家とトークをし、同年開催された公開シンポジウム「どう広げる?再生可能エネルギー」では主婦・若者世代の代表として発言するなど、自然や環境に関する仕事も少なくない。
「もともと、私が所属する会社は、自然や環境を守る活動にも力を入れているんです。『地球温暖化』をテーマにした文化祭を開催していましたし(『熱っちい地球を冷ますんだっ。文化祭』)、今は『里山・里海』をテーマにしたイベント(『SATOYAMA SATOUMIへ行こう』)を行っています。専門家の先生のお話をわかりやすく噛みくだきながら、小さなことでも日頃からできることを発信していく。それが私たちの役割かなと思っています」

いつもそこに自然があった。その“当たり前”を子どもたちにも体験してほしい。

 2012年に男の子、2015年には女の子を出産し、2児の母になってからは、自然や環境をより意識するようになった。
「東京という大都会で子育てをしていくうえで、自分が育ってきたのと同じ環境を子どもに与えるのは難しいですよね。それでも、なるべく自然と触れ合えるように、自分が体験してきたことと似たようなことはさせてあげたいなと思っています。自宅を建てる時も、近くに大きな公園がある場所を探したくらいです。
 子どもには、泥だらけになりながら裸足で外を走り回ってほしい。裸足でコンクリートの上を歩いたら熱いんだとか、逆に土の上は少しひんやりするんだとか、ケガもするんだなとか、自分で体験しなければわからないですから。危ないからといって木のぼりを止めることもありません。ここまでのぼったら怖いんだ、という感覚を自分でつかんでほしいんです。子どもって、自然の中で勝手に遊びを見つけるんですよね。自分で虫を一生懸命に探して、やっと見つけた時の感動を味わってほしいし、捕まえられなかった時のくやしさも知ってほしい」

 子どもといっしょに自然と触れ合ううちに、藤本さん自身もあらためて生き物と関わる楽しさを再認識しているという。
「子どもを置いて一人で虫捕りに行ったりもしますよ(笑)。今はカブトムシの幼虫を育てていますし、庭の柚子の木にアゲハチョウが卵を産みつけた時は、生まれた芋虫に葉っぱをあげながら蝶になるまで育てました。成長を見届けて、最後は『行けー』って言って送り出して」と、ここでもママらしさを発揮。

 取材の終わり間際、「そういえば最近、カタツムリって見なくなりましたよね」と藤本さん。「アジサイは咲き誇っているのにカタツムリがいない。絵本には出てくるけど実際に見たことのない子どもも多いんじゃないかな」と。確かに。ひょっとするとそれは環境の変化によるのかもしれない。日頃から生き物に目をこらしている人のまなざしは、小さな自然の変化も見落とさないようだ。

profile

藤本美貴

1985年北海道生まれ。2002年にソロ歌手としてデビュー。女性アイドルグループ、モーニング娘。のOGメンバー(6期)。愛称は「ミキティ」。(一社)グラヴィティヨガ協会認定のヨガインストラクター。出身地の「滝川市ふるさと大使」も務める。

写真/千倉志野 ヘアメイク/太田 年哉 (maroonbrand)

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