環境省
VOLUME.61
2017年10・11月号

INTRODUCTION 小型家電を集めて、メダルへ

オリンピックはアスリートたちの祭典いくら東京で開催されると言っても、
どこか縁遠いものだと思っていませんか?そんなあなたも身近な小型家電一つから
オリンピックに参加できるプロジェクトが始まっているのです。

ボクがプロジェクトの仕組みを紹介します/スイハンタケオ

「都市鉱山からつくる!
みんなのメダルプロジェクト」って?

「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会という。)で使用されるメダルを、リサイクルによって小型家電から集めた金属で製作するプロジェクト。使用済み小型家電のリサイクル推進とともに、国民がオリンピックへ参加することのできる取り組みで、オリンピック史上初めての試みだ。対象となるのは、携帯電話やパソコン、デジカメなど、「小型家電リサイクル法」で扱われている全28品目(P6-7で紹介)。東京2020大会をきっかけに、資源の有効利用をより重視する“持続可能な社会”の実現を目指す。もちろんこの取り組みは東京だけでなく、今年9月時点で全国1,200以上の自治体が参加を表明。都市鉱山リサイクルをレガシー(遺産)として、国民一丸となって大会の成功に向けてプロジェクトを進めていく。

どれくらいの金・銀・銅が必要なの?

計5,000個のメダルに

東京2020大会で必要なメダルの数は、金・銀・銅それぞれ約1,666個で、計5,000個ほどにおよぶ。メダルのデザインや大きさはまだ決まっていないものの、国際オリンピック委員会(IOC)の規定により、少なくとも直径60mm、厚さ3mmでなければならない。メダルによって必要な含有量が異なり、製作中にロスが生まれることも考慮し、金は約40kg、銀は約4,900kg、銅は約3,000kgの原材料が必要になる。プロジェクトは2019年春ごろまで、メダルに必要な原材料が確保できた時点で終了する予定だが、小型家電リサイクルはこれまで通り運用していく。

計5,000個のメダルに

What is the URBAN MINE?/都市鉱山って何だろう?

みんなの家 に眠る都市鉱山

 使用済み小型家電は、金・銀・銅などの貴金属やレアメタル(希少金属)が含まれていることから、都市にある鉱山という意味で「都市鉱山」と呼ばれる。日本では1年間に約65万tの小型家電が廃棄されているが、その中には844億円分もの貴重な金属が含まれていると言われている。
 都市鉱山はリサイクルによって回収されるため、森林の伐採や地下水脈の汚染を引き起こす可能性のある鉱山の採掘と違って、環境へ与える影響が少ない。また金属の含有率が非常に高いことが特長で、自然の金山から採られる金鉱石には1tあたり約5gの金が含まれているが、回収された携帯電話1t(約1万台)から回収できる金は約280gにもおよぶ。

小型家電に含まれる金・銀・銅(1台あたり)

出典:中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会小型電気電子機器リサイクル制度及び使用済製品中の有用金属の再生利用に関する小委員会(第5回)資料に基づき作成

日本は都市鉱山の宝庫なのです

 日本は資源のない国として知られるが、都市鉱山に関しては有数の資源国と言える。例えば金は6,800tが都市鉱山として国内に埋蔵されており、これは世界の埋蔵量4万2,000tのうち16%に匹敵する。銀も6万tで、世界の埋蔵量の23%を占める。
 他にもインジウム16%、スズ11%、タンタル10%と、世界埋蔵量の一割を超える金属が多数あることが分かっている。天然資源国の資源埋蔵量と日本の都市鉱山を比較すれば、金、銀、鉛、インジウムは、日本がなんと世界最大の資源国となり、銅は世界2位、白金、タンタルは3位という資源国に位置付けられる。

資源国の金埋蔵量との比較

出典:(独)物質・材料研究機構

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