2030年までに、温室効果ガス26％削減（2013年度比）という目標を掲げた日本。目標の実現には、企業やNPOなど、あらゆる主体の協力が欠かせません。
ここでは、さまざまな企業・NPO・学校等が描く未来と、それを実現するための取り組みを紹介します。
2007年8月、首都高速道路の交通安全プロジェクトとして誕生した「東京スマートドライバー」が、NPO法人として新たなスタートを切ることになった。新たな交通安全&交通価値を創造することで、「事故を減らす→渋滞を減らす→CO2の削減」の好循環を生み出し、地球温暖化の抑制にもつながるプロジェクトだ。
▲ 2017年の銀座柳まつり交通安全ゴールデンパレードに参加。銀座の道に新しい景色を創った
無意識の思いやりがあるドライバーは「見えざる資産」
「東京スマートドライバー」がスタートする直前の2006年当時、首都高では年間1万2,000件以上の交通事故が発生していた。その8割以上が渋滞時の強引な割り込みや脇見運転といった、ドライバーの小さな不注意が原因だった。
同プロジェクトの発起人で、NPO法人日本スマートドライバー機構の理事長も務める小山薫堂（くんどう）氏は、プロジェクトの狙いについて、こう語る。
「約半世紀の歴史の中で、首都高には、無意識のうちに全体の調和と安全な走行環境をつくり出し、他者に配慮する心を持つドライバーたちが“見えざる資産”として存在しているはず。私たちは彼らを『スマートドライバー』と呼んで顕在化し、その主体性を支援する活動を始めました。それが『東京スマートドライバー』プロジェクトです」
3代目「ホメパト」が走行中！
▲ プロジェクトの象徴的な存在が「ホメパト」と呼ばれるパトカー。取り締まりよりも、良い運転をほめることで交通事故を減らしたい、という思いから企画された。現在は3代目が活躍中
環境改善も含めた「都市力」向上に貢献したい
「東京スマートドライバー」の発足から10年。人工知能を活用した自動運転車が登場するなど、ドライバーや道路をとりまく状況は大きく変化した。そんな中、従来からの「交通安全」にとどまらず、「新たな交通価値の創造」をも視野に入れた活動を目指すのが「ジャパンスマートドライバー」だ。小山氏は、今後の活動についてこう語る。
「もちろん、地球環境も視野に入っています。『東京スマートドライバー』で行った私たちの試算では、事故が1件減るごとに2kmの渋滞が解消され、3tものCO2排出を減らすことができるんです（※）。今後は、企業・行政・個人といった垣根を越えて、多くの人たちに参加してもらうことによって、都市の『交通安全力』を高め、ひいては『都市力』の向上に貢献していきたいですね」
※CO2排出量削減数値は、1回の事故で起こる年間平均渋滞距離（2km）に対して、平均事故処理時間（1時間）の間に通行することのできる車の数（3,000台）に、渋滞時とスムーズなときのCO2排出量の差（約1kg）をかけあわせた数値。
NPO法人として新たなスタート
▲ 8月7日に開催されたNPO法人の設立説明会では、会の理念や今後の活動方針について説明を行うとともに、新しい交通社会を作っていく活動への参加を呼びかけた
ジャパンスマートドライバーでは、毎年5月5日を「たのしくドライブする日」に制定。今年の5月5日には、「銀座柳まつり」で行われた「交通安全銀座ゴールデンパレード」に参加。全国各地から集まった賛同市民や企業の皆様は交通安全を祈願しながら、ピンク&ホワイトのファッションで、銀座1～8丁目をパレードした。
