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概要

エコジン10・11月号

本の回答だけは違った。「それは面白い。やってみよう」。この一言から、アミノ酸を融合した「環境活性コンクリート」の研究開発がスタートした。「他社との差別化を図る新素材の開発は、ぜひトライしてみたいテーマでした」と行本は振り返る。 強度を保ったままコンクリートを固められる素材を探すため、アミノ酸に含まれるさまざまな物質で試作を重ねた。「試行錯誤の末、藻類の成長に効果があるアミノ酸の一種、アルギニンを混ぜたところ、コンクリートの強度を妨げないことが判明したのです」と顧問・技術部長の中西敬は興奮気味に語る。「アルギニンとコンクリートがこれだけマッチするということは、両者は初めから出会うべき時を待っていたのではないか」。そんなロマンチックな想像が働くほど、二つの相性は揺るぎがなかった。 かくして、防災と環境配慮を両立させる画期的な新素材「環境活性コンクリート」が誕生した。東日本大震災で被害を受け、同社が防波堤の復旧に関わる青森・八戸港でも、現在この素材を用いた実証実験が行われており、地元漁業者らから大きな注目を集めている。■ アジアにも広がる日本の防災と環境の哲学 日建工学は将来を見据え、海外、特にアジア市場にも乗り出している。2012 年にベトナムに現地事務所を設立し、2015 年にタインホア省で建設中の、ベトナム最大規模を誇るニソン製油所の防波堤に用いる消波ブロック2万4000個を受注した。現地で製造する製品は通常のコンクリート製だが、「いずれ環境活性コンクリートに切り替わる可能性は高い」と行本は読む。日本が50 年をかけて試行錯誤し続けてきた「防災と環境配慮の両立」の哲学は、いま海を越え世界に広がろうとしている。(文中敬称略)ベトナムを足掛かりに、今後はアジア全域にビジネスを拡大していきたいと考えていますが、成長著しいアジアでは、同時に環境問題も深刻化するでしょう。今後「環境活性コンクリート」を使用したブロックなど、環境配慮を前面に出した製品が必要とされるはず。日本が50 年をかけて積み重ねてきた「防災と環境」のノウハウを最初からセットに(左) 取締役社長 行本 卓生さんして展開できればと考えています。(右) 顧問・技術部長 中西 敬さん明日への展望コンクリートからアミノ酸のアルギニンがゆっくりととけだすことで、藻類の成長を育み、魚介類の生息場所にもなることが分かった。(左)一般的なコンクリートと比べると、藻類の成長度合いの差は明らか。[ 左端:普通コンクリート、右3つ:異なる濃度のアルギニンを混和したコンクリート](下)ベトナム・ニソン製油所での展開が始まった日建工学の消波ブロック「ラクナ・IV」29