ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

エコジン10・11月号

 日本各地で漂着ごみが問題視される中、各自治体もその対策を講じ始めています。四方を海に囲まれた長崎県対馬市では、国内や近隣諸国で発生したごみが海岸に大量に漂着し、海辺の景観や生態系を含む海岸環境の悪化、漁業への悪影響が危惧されていました。 環境省による過去5 年間の調査でも、対馬市の漂着ごみは累計約3.2万個と、全国7カ所の調査対象地区で2 番目に多い結果となっています。市では、漂着ごみの約30%を占める発泡スチロールを有効利用すべく、分解・加熱することで灯油と同様のスチレン油を生成できる「漂着ごみ油化装置」を2010年に市内のクリーンセンターに設置。生成された油は市内の足湯施設や油化装置を稼働するエネルギーとして使われています。その一方、海岸での漂着ごみの分類・収集が困難なことや、機器の維持管理・運営にかかるコストなど、費用対効果の面から課題もあるといいます。対馬市の漂着ごみ油化装置 いまだその実態が把握しきれていないマイクロプラスチックについて、さらなる調査・研究が始まっています。九州大学の磯辺篤彦教授を中心としたチームが「沿岸から大洋を漂流するマイクロプラスチックスの動態解明と環境リスク評価」に乗り出しました(実施期間は2015年7月~2018年3月)。これは、海岸から海洋の広い範囲でマイクロプラスチックの動態研究に取り組むもので、磯辺教授は、「東京海洋大学の練習船により日本周辺から南極海に至る航路でマイクロプラスチックを採取し、コンピューターによるシミュレーションでその複雑な動態解明に挑みます。さらに、海洋生物が取り込むマイクロプラスチックの量や、結果として生物に取り込まれる汚染物質の量を評価することで生態系へのリスク解明に繋がる研究を目指したい」としています。太平洋におけるマイクロプラスチックス(左)とメソプラスチックス(右、5mm 以上のプラスチックの微細片)を模した仮想粒子の輸送シミュレーション(画像提供/九州大学・磯辺篤彦教授)時間目時間目18 エコジン