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概要

エコジン08・09月号

「約束草案」の意義とは?日本が提案した約束草案にはどのような意義があり、また目標達成のためにはどういった努力が必要なのでしょうか。長年にわたり、国連気候変動枠組条約の下での地球温暖化対策を巡る議論をリードしてきた、名古屋大学の髙村ゆかり先生に聞きました。今が“攻めの温暖化対策”のチャンスたかむらゆかり名古屋大学大学院環境学研究科教授。専門は国際法、環境法。研究分野は地球温暖化に関する国際的な法制度・政策、環境リスクと予防原則、環境条約の遵守手続・制度など国際法、環境法に関する諸問題。COP21パリ会議では、先進国だけでなく途上国も含めたすべての国が温暖化対策に参加する枠組みが初めて合意されようとしています。合意を成功させるためには、各国が早期に野心的な目標案を国連へ提出し、合意への積極的な姿勢を打ち出し、合意を後押しすることが必要です。その意味で、日本がこの時期に「約束草案」を提出したことには大きな意義があると思います。同時にこの約束草案には「日本のこれからの温暖化対策のビジョンを示す」という意義もあります。原発の問題など、将来のエネルギーのありようについては議論が分かれる点もありますが、この削減の約束の達成には、「再生可能エネルギーの最大限の導入と徹底した省エネルギーの最大限推進」をめざして、国民的な議論を行いつつ早期にかつ着実に取組を進めることが必要です。再エネ導入には、地方でのビジネス、雇用の創出など「地方創生」「地方活性化」の効果も期待できます。電力自由化によって再エネ電力を消費者が選べる仕組みづくりや、コミュニティ内で電力を融通し合うスマートグリッドのような「分散型エネルギーシステム」の構築に向け、いかにして再エネの大幅な導入が可能になるのかを検討することが重要です。省エネ推進では、住宅・オフィスをはじめとする「建物の省エネ化」やコージェネなど熱の利用にも大きなポテンシャルがあります。震災復興や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、大規模なインフラ更新の時期を迎えた今こそが“攻めの温暖化対策”のチャンスです。この約束草案が、「日本は今後、どんな社会を目指すのか」という国民的議論のきっかけとなることを期待しています。09