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概要

エコジン06・07月号

(左)飲み水にお金をかけられなかった貧しい人たちも、AMAMIZUタンクを設置することで、安全な水を労せず手に入れられるようになった。(右)両国国技館では容量1000トン分の雨水タンクを地下に設置し、館内のトイレ洗浄水などに利用するようになっている。だ。そして、日本の雨水利用は世界でもトップクラス。このしくみを世界でも広めていくべきではないか」。村瀬は、実行委員を中心にNPO法人「雨水市民の会」を屋根に降る雨水をプラスチック製の鎖づたいにタンクの入水口へ集める集水方式「AMAMIZUシステム」。現地で供給のある材料が用いられ、清掃のしやすさや素材の耐久性なども考慮されている。と考えた」と村瀬は当時を振り返る。折しもその頃、台東区の蔵前国技館が古巣である墨田区・両国に帰って来ることになった。村瀬は思った。「国技館の巨大な屋根に降る雨水を溜めて両国地区の洪水を防止し、集めた雨水を利用できないか」。前例のない試みに、当初なかなか関係者の理解が得られなかったが、村瀬の直談判によって墨田区長が動き、85年、日本における雨水利用の先駆けとなる両国国技館が完成した。「雨は流せば洪水、溜めれば資源」と多くの人々が気づくきっかけとなり、東京都庁や東京スカイツリーなど、多くの施設でこの雨水利用の技術が活用されることになった。発足。「地球環境基金」などの支援を受けながら、世界各地で日本の雨水利用が役立ちそうな場所を探し歩き、たどりついたのが南アジアのバングラデシュだった。農村の多くは、水道がなく不衛生な池の水やヒ素に汚染された井戸水を日常的に利用しており、住民の健康被害が深刻化していた。村瀬は2010年に株式会社天水研究所を設立し、水源の塩害が深刻な沿岸部のバゲルハット県で雨水を溜めて飲み水に利用できるタンクの製造・販売に乗り出した。「AMAMIZU」と命名された丈夫なモルタル製の容量1,000リットルの雨水タンクは順調に売り上げを伸ばし、人々の乾きを潤している。「世界各地で雨水利用をソーシャルビジネスとして地域に根付かせ、一過性ではない持続可能な取り組みにしたい」。日本発の雨水利用技術が、今、世界へはばたきつつある。(文中敬称略)明日への展望■日本の雨水利用のしくみを世界へ村瀬にとって転機となったのは、94年に墨田区で開催した「雨水利用東京国際会議」だった。実行委員会の事務局長を務めた村瀬は、会議で世界の雨水利用の実情を目の当たりにした。「世界の洪水、渇水、環境汚染などの問題解決策として雨水利用はきわめて有効㈱天水研究所代表薬学博士村瀬誠さん日本では昨年、地下にタンクを設置できる国の建物は今後雨水利用を原則とするという画期的な「雨水の利用の推進に関する法律」が施行されました。雨水利用の技術や機器の標準化はまだ進んでいませんが、利用先進国として、日本が率先して進めていくことが望ましいのでは。世界的に見ても、そこには大きなビジネスの芽があると考えられます。33