ブックタイトルエコジン04・05月号
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エコジン04・05月号
第3回里山は未来の風景新潟県十日町市の棚田長年、里山を撮影していると、「昔と今とでは、どこが変わりましたか?」とよく聞かれます。ここ20~30年でいちばん変わったのは、やはり田んぼの風景でしょう。田んぼの整備事業によって、それまでの小さな田んぼが広い面積につくり変えられました。丸みをおびたあぜ道は直線になり、土手に植えられていたはさ木や柿の古木なども取りはらわれ、広々とした空間になりました。私としては、曲線で構成されていた柔らかい風景が、ちょっと堅くなった感じがして残念に思います。田んぼの改造にともなって、U字溝で水路がつくられました。イネに水が必要な季節が終わると、U字溝を伝って田んぼから完全に水が抜き取られます。こうなると、田んぼの周辺に水辺がまったく無くなり、イモリやカメやカエルなどは、棲むことができません。命の環が途切れてしまうかたちになります。このことも残念に思います。でも最近、明るい兆しもあります。一年中田んぼに水を切らさない「冬水田んぼ」という考え方がでてきましたし、アイガモを使って農薬をまかずにイネを育てるところもでてきました。積極的に休耕田をつくって、生物に住み処をつくる試みをされている人もいます。そんな田んぼでは、絶滅危惧種になっているタガメが再び、顔をみせるようになったところもあります。里山に棲む生物たちは、意外にしたたかで、絶滅するのではなく、種火がくすぶるように、勢力を盛り返すチャンスを狙っているように思えてなりません。昔のような環境をとりもどしてやれば、命を吹き返すものがたくさんいるに違いありません。将来、生物と人とが共存する環境を戻すことになれば、きっと昔ながらの農村風景がお手本になると思います。里山は、昔ながらの風景ではなく、未来の風景として、生き返ってほしいと願っています。を、写真とエッセイで伝えます。いまもりみつひこ/1954年滋賀県生まれ。写真家。大学卒業後独学で写真技術を学び、1980年よりフリーランスに。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人との関わりをテーマに撮影する。また、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境地の訪問を重ね、取材をつづけている。http://www.imamori-world.jp35