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概要

エコジン04・05月号

応用編特別講義今回の講師桃井貴子さんNPO法人気候ネットワーク東京事務所長そもそもフロンは自然界には存在しません。1 9 2 8年、冷蔵庫に使用していたアンモニアに代わる物質としてアメリカの科学者によって生み出された人工的な物質です。冷媒や断熱材、洗浄剤など、生活のいたるところに使用され、その利便性から「夢の物質」などといわれましたが、1 9 8 0年代に入り、大気中に大量に放出されたフロンが、オゾン層破壊の原因になっていることが明らかになり、有害な紫外線の増加による人体や環境への影響が懸念されるようになりました。モントリオール議定書に基づき、特定フロンCFCの生産は1 9 9 5年末に全廃され、その代替として使われてきたHCFCも、今後生産が禁止されることになっています。しかし、問題はこれで終わっておらず、実は今も身近なところにフロンは存在しているのです。現在生産されている家庭用のエアコンなどは、HCFCからHFCに切り替わっていますが、二酸化炭素の数千倍という高い温室効果がありますし、古い機器やスーパーやコンビニなどで使用されている業務用の冷蔵冷凍庫や空調などはいまだにHCFCが中心です。現在、温暖化を促す温室効果ガスHFCの使用が増え、今後排出量が急激に増えていくというデータもあります。オゾン層保護対策のためにHCFCからHFCに転換することは、地球温暖化問題を先延ばしすることでしかありません。そこで、日本を含めた世界の流れとしては、一切フロンを使わない自然冷媒機器の導入が注目されています。国内でも2 0年先、3 0年先を見据えた企業では、すでにこうした機器への切り替えが実施され始めています。地球環境への悪影響が疑われる物質を排出しない完全なノンフロン化を実施する先進的な企業を、消費者が応援し、環境に良い行動をする企業がさらに増えていく。こうした流れをこれからは主流にしていく必要があるのではないでしょうか。今回のおさらいフロン類の排出抑制対策の推進、究極的にはノンフロン化を達成することが理想的です。桃井貴子(ももい・たかこ)フロン問題に関する環境NGOのスタッフ在職中、“市民立法”として「フロン回収・破壊法」の制定に尽力する。その後、衆議院議員秘書、全国地球温暖化防止活動推進センター職員を経て、2008年より、地球温暖化防止のために市民の立場から「提案×発信×行動」するNGO/NPO気候ネットワークのスタッフとして普及啓発・政策提言などの活動を行う。19