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概要

エコジン12・01月号

少し前までウナギは田んぼや湿地、川など様々な場所に生息する、日本人にとって身近な生き物でした。ところが、ほとんどの川にダムや河口堰が作られてシラスウナギの遡上が妨げられ、生息域が激減してしまいました。田んぼも排水を良くするために水路が深く掘られ、川と分断されてしまいました。川に護岸がほどこされたために、ウナギのエサのひとつとなる陸生の生き物が川に侵入しにくくなっていると考える研究者もいます。海と川、川と陸の連続性が失われてしまったことが、ウナギ減少の大きな要因と考えられます。これらが、ウナギを取り巻く“環境”の問題です。もうひとつの原因が、食用として、ウナギを獲り過ぎているという“資源”の問題です。モニタリングを含めた有効な保全対策を考える必要があります。ウナギは、イワナが棲むようなかなり上流まで川を遡ります。食物連鎖でも頂点に近い高次捕食者なので、海と川の健全性を知るためにも、ウナギはとても良い指標になると言えます。例えば、水が澄んでキレイだけれど、河口堰によって海とのつながりが断ち切られ、生き物が上ってくることができない川があったら、少し寂しくはないでしょうか。ウナギがいる水辺は、そこに多くの生き物がさまざまな関係性を保ちながら生息しているという証でもあります。「ウナギをこれからも食べたい」という目的でも良いので、多くの人にもっと川に目を向けてもらいたい。そうすれば問題となっているシラスウナギの密漁も防げるかも知れませんし、その声に後押しされて、豊かな川にするための政策が進みます。市民の関心が、多くの生物を守ることにつながっていくのです。地球上に3,000万種存在するともいわれる生物は、それぞれが個性を持ち、直接的、間接的に関わりながら生きています。この多様な生き物たちの豊かな個性とつながりを「生物多様性」と呼んでいます。1992年に締結された生物多様性条約では、「生態系」「種」「遺伝子」3つのレベルの多様性があり、それぞれに保全が必要であるとされています。「生態系の多様性」とは、森林や里地里山、河川など、いろいろなタイプの自然があること。「種の多様性」は、動植物から細菌などの微生物に至るまで、豊富な生きものが存在すること。「遺伝子の多様性」とは、同じ種の中でも異なる遺伝子をもつことによって、形や生態など多様な個性があることを指します。09