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概要

エコジン12・01月号

第2回生物の楽園雑木林の主のような存在、ヒキガエル(滋賀県高島市マキノ町)田んぼや雑木林には、じつにたくさんの生物が暮らしています。田植えのころ、水が入った田んぼには、トノサマガエルやアマガエルなどの両生類、タイコウチやミズカマキリなどの水生昆虫、アマサギやトビなどの大型の野鳥もやってきます。田んぼの中をのぞき込むと、ゴマ粒より小さなものが、いっぱい浮遊しています。それらは、ミジンコなどのプランクトンです。微生物を狙って、メダカやトンボのヤゴなどがやってきて、また、それを目当てに体の大きな生物がやってくる、そんな、食物連鎖ができあがります。田んぼを住み処にしているのは、狩りをする生物だけではありません。食う食われるの激しい競争が展開する春ですが、初夏になると、顔ぶれは一変します。田んぼの水が抜かれて、夏草が茂る草原のような環境になるからです。あぜ道や土手には、植物の葉を食べるチョウの仲間や、ゾウムシなどの甲虫も数多くみられます。こうなると、イナゴやバッタなど、やや乾燥した土地が好きな昆虫たちの天下となります。雑木林も季節による変化が、生物に住み処を与えます。ただ、こちらの場合は、十数年に一度、林全体が一斉に伐採され、環境が激変します。雑木林のクヌギやコナラは、根元から切られても、翌年の春に新芽が出て、数年かけて林がもどってくるので死んだわけではありません。ニホンジカなどの哺乳類や、オトシブミなどの昆虫のように、明るく柔らかい葉におおわれた空間を待っている生物もいるのです。季節の変化と、伐採による変化とが、らせん状に絡まり合って複雑な生態系が生みだされていることは間違いありません。田んぼや雑木林に生物の顔ぶれが豊かなのは、性格の違った空間が規則正しくやってくることでしょう。この楽園が、人の営みによってつくられていることが里山のすごいところです。を、写真とエッセイで伝えます。いまもりみつひこ/1954年滋賀県生まれ。写真家。大学卒業後独学で写真技術を学び、1980年よりフリーランスに。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人との関わりをテーマに撮影する。一方、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境地の訪問を重ね、取材をつづけている。http://www.imamori-world.jp35