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概要

エコジン12・01月号

もしポリネーターがいなくなったら、食卓から約1/ 3もの食べ物が消えてしまうかもしれません。それほど農作物の実りに、ポリネーターは重要な役割を担っているのです。いま世界中で、一種類の農作物だけを作る「モノカルチャー農業」が広がっていますが、単一の植物しかない土地には、当然ポリネーターの棲む場所がないので、受粉されません。そこで農家はわざわざ養蜂家にハチを運んでもらい受粉をするという非経済的な農業を行っています。農地のそばに野草帯などの生息環境を残し、ハチによる花粉媒介を可能にすれば、その価値は年間1haあたり361米ドルになるという試算も発表されています(出典:TEEB評価)。日本でも、周囲に森林が豊富なソバ畑では、ニホンミツバチが多く畑を訪れるため、ソバの結実率が高くなるという調査結果が報告されています。1960年代に、いち早く環境問題に目を向けたレイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』では、ハチがいなくなり受粉が途絶えた「実りなき秋」について言及されています。ここで書かれたことが2000年くらいから、現実となって世界各地で起こりました。ハチが謎の失踪を遂げたり、大量に死んでしまう「蜂群崩壊症候群」が発生したのです。その原因は解明されておらず、さまざまな原因が推測されていますが、ネオニコチノイド系の農薬が原因ではないかと考えられています。モノカルチャー農業では農薬が多用されますが、害虫以外の多くの昆虫を犠牲にして生態系のバランスが崩れると、人間の生活にも影響を及ぼすことになるのです。ハチだけでなく、多種多様な生物による持続可能な生態系サービスを受けるためには、自然との共生の大切さを認識することが重要です。11