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概要

エコジン12・01月号

2006年ごろから、北米などを中心に、ミツバチの大量失踪や大量死といった問題が発生しています。ハチミツの生産だけでなく、実は私たちの生活にとって大事な役目を果たしているミツバチ。その重要性について、東京大学の鷲谷いづみ教授に語っていただきました。鷺谷いづみ先生東京大学大学院農学生命科学研究科教授。生態学・保全生態学が専門。日本の保全生態学確立など、生物多様性の保全に多大な貢献をしている。ミツバチと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはハチミツでしょうか。日本にはニホンミツバチが生息しており、平安時代にはすでに、ハチミツを採取して食べていたと言われています。しかし明治時代になると、セイヨウミツバチを使った量産型の養蜂が日本に伝わり、ニホンミツバチを使った日本古来の養蜂は廃れてしまいました。そしてもうひとつ、ミツバチによって私たちが受けている恩恵には「作物の受粉」があります。例えばソバは、ミツバチのような受粉昆虫(ポリネーター)がいないと実をつけることはできません。もちろんリンゴなどの果実のように、人の手で受粉することは可能ですが、多大なコストと時間がかかってしまうので、経済的に見ても現実的ではありません。私たちが気軽にソバを食べることができるのも、ミツバチを代表とするポリネーターのおかげなのです。日本の生物多様性は、現在「4つの危機」にさらされています。第1の危機は「開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少」です。ウナギやミツバチはこれにあてはまります。第2の危機は「里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下」です。シカやイノシシなどの増加による食害なども生態系に大きな影響を与えています。第3の危機は「外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱」。外来種が在来種を捕食したり生息場所を奪ったりするケースです。第4の危機は「地球環境の変化による危機」です。地球温暖化によって平均気温が1.5~2.5℃上がると、動植物の20~30%は絶滅のリスクが高まるといわれています。10