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概要

エコジン08・09月号

第1回身近な自然滋賀県大津市仰木の棚田最近、里山という言葉を、あちこちで耳にするようになりました。里山は、もともと、植物学や生態学の先生たちが造語で使われていた言葉です。そのときの意味は、薪炭林のことを指しました。薪炭林というのは、読んで字のごとく薪や炭をつくるための雑木林のことです。しかし、ここ十数年、マスコミなどに取り上げられるようになってからは、もっと広い意味をもつようになっています。現在は、日本古来の農業環境を中心とする生物と人とが共存するすべての空間として里山がとられられています。里山を詳しく見ると、雑木林、田んぼ、人家の周辺、ため池、山岳、川、湖や海など、色々と特徴のある環境にわけられます。それらが、独立しているのではなく、お互いに関係し合って、網の目のようにつながっています。そんなつながりに命を吹き込んでいるのが水の流れです。山頂近くの森で、一滴の雫となって誕生した水は、沢を伝って集まり、川になります。川の水は、途中、水路を伝って田んぼに入り、迷路のような道を移動して再び川にもどります。一部は、人のくらす家々の中を通り抜けるものもあります。そして、大きな川となって湖や海に流れ込みます。水の流れの中で、人も暮らし、生物も育ちます。水の旅は、そのまま、里山という大きな生態系の循環でもあります。里山は、私たちにとってもっとも身近な自然環境です。木々の新緑で初夏を感じたり、田んぼの稲穂の色づきで秋の訪れを知ります。日々の暮らしの中で、感性のほとんどは、里山の季節の移ろいからもらっていると言っても過言ではありません。大切なことは、こうした豊かな里山は、人が、自然に敬意を払いながらつくってきた土地だということです。里山には、はるか昔に日本に住み着いた人たちの知恵がぎっしり詰まっているように感じます。を、写真とエッセイで伝えます。いまもりみつひこ/1954年滋賀県生まれ。写真家。大学卒業後独学で写真技術を学び、1980年よりフリーランスに。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人との関わりをテーマに撮影する。一方、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境地の訪問を重ね、取材をつづけている。http://www.imamori-world.jp35