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概要

エコジン08・09月号

自然に逆らわず、省エネルギーで暮らす化石燃料をほとんど使っていなかったため、主な照明は、自然の日の光と月あかり。庶民は「日の出ともに起き、暗くなったら眠る」という、照明をほとんど使わない生活を送っていました。また夏の暑さ対策は、衣服を脱ぐことにはじまり、行水や打ち水で体感温度をわずかに下げたり、風鈴や金魚、花火、はたまた背筋が寒くなるような怪談を聞くなど、涼を感じる創造力まで駆使して、暑さをしのいでいました。冬は厚着をし、日中は体を動かすことで寒さをしりぞけ、こたつや火鉢、囲炉裏の火にあたるなどして部分的な暖をとっていました。ポイント自然のリズムに合わせムリのない暮らしをすべしモノを持たない、コンパクトライフポイントシェアと融通で「なし」も「あり」に庶民が暮らしていた長屋は、ひとつの共同体。食べ物や調味料などを融通し合い、トイレや井戸の水も共同で使用し、入浴は「湯屋」と呼ばれた銭湯を利用していました。かけそば一杯の半分の値段で気軽に行けた銭湯は、多くの人に利用されていましたが、燃料が多くないこともあって浴槽はひとつで、混浴が主流。また使う分だけの湯を桶で手渡しされる“節湯”が徹底していました。庶民の家族が暮らす長屋は6畳ひと間の極小空間を、時間帯により居間、食堂、寝室に変えていました。さらに昼間は畳をあげて板敷きにして、錺(かざり)職人や傘張りなどの仕事場としても利用していました。江戸時代の日本人は、狭い空間を上手に使いこなす達人だったようです。江戸時代は、現在と比較すると、モノが豊かではない時代。そのため、暮らしそのものが、いまの「エコライフ」につながっています。少資源・少エネルギーの生活は、モノの再利用と再資源化の仕組みがとてもうまく機能していました。江戸時代の生活に戻ることはもはや難しいことですが、江戸時代の人々の暮らしぶりから、現在のエコライフへのヒントとなる、多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。ちかまつ・こうじ江戸東京博物館の開設準備から携わり、平成23年まで同館勤務。現在も客員研究員として籍を置く。そのほか国士舘大学、学習院大学、松蔭大学で非常勤講師を務めるほか、学習院大学史料館、東京文化財研究所客員研究員。執筆に『日本史総覧』所収の「近世城下町一覧」などがある。33