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概要

エコジン08・09月号

応用編特別講義今回の講師水越美奈先生日本獣医生命科学大学獣医学部准教授いま私が審議会の委員を務める東京都では、「譲渡可能な動物」に関してはほぼ100%譲渡がなされています。ただし、攻撃性が強かったり病気や高齢などの理由がある場合、やむを得ず殺処分するケースもあります。「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」では、「不必要な殺処分をゼロに」を最終目標としていますが、まず求められるのは「飼い主・国民の意識の向上」ではないでしょうか。たとえば、数だけを目標に、自治体が引き取り数を削減しようと思えば、単純に持ち込まれる動物を拒否すればいいし、譲渡数を増やすのであれば本来譲渡できないような動物を次々に引き渡せばいいのですが、これでは不幸な動物を減らすことにはなりません。まず、飼い主に「適正飼養・終生飼養」を徹底してもらい、その結果として殺処分がゼロに近づくことが理想です。このプロジェクトは、国や自治体任せではなく、販売業者や飼い主、ボランティアやNPOなどが互いに協力して推進することが重要です。飼い主ができることは、まず返還を100%に近づけること。迷子になり動物愛護センターなどで保護された動物が、飼い主が見つからないまま処分される事例も多々あります。飼い主の連絡先を記したマイクロチップや首輪を付けるなど、所有者が特定できるようにしておくことが大切です。犬の場合は、注射済み票や鑑札を付けることが狂犬病予防法で義務化されています。また、動物がいなくなった時の問い合わせ先を知らない人も意外と多いです。自治体の動物愛護センターの他、交通事故に遭っている可能性もあるので、近くの動物病院にも連絡をしてみましょう。まず、動物を逃がさない。もし逃げても帰ってこられるよう対処すること。たったこれだけのことでも、犬や猫の命を救うことにつながるのです。今回のおさらい不幸な動物を増やさないためにも、まず飼い主にできることから始めましょう。水越美奈(みずこし・みな)日本獣医生命科学大学獣医学部准教授。(財)日本盲導犬協会付設盲導犬訓練士学校非常勤講師。1990年、日本獣医畜産大学卒業。動物病院に勤務の後、動物行動学を学ぶために渡米。専門分野は応用獣医学、臨床獣医学。犬のしつけについての監修書も多数。19