ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

エコジン06・07月号

 気候変動によるさまざまなリスクが想定されますが、気候変動が進行する速度と規模を制限することでリスクは軽減できると考えられます。限定的ではあるものの、例としてアジア地域における早期警戒システムや統合的水資源管理、マングローブの植林など、すでに実施されている気候変動への適応策も取り上げられています。ただし、将来のリスク管理や適応方法は地域によって異なるため、すべての状況において適切なリスク低減のアプローチが存在するわけではありません。世界全体の適応に必要な費用を算定するためには、まだまだデータや手法、適用範囲が不十分ともいわれ、今後さらなる研究の向上が求められます。第2 作業部会報告書では、気候変動のリスクのレベルを判断する根拠として、5つの包括的な懸念の理由が示されました。これが、上記のリスクをまとめる上での基本的な枠組みとなります。たとえば、1つ目の「脅威に曝されている独特の生態系や文化などのシステム」では、1度の温度上昇によって深刻な影響のリスクに直面するシステムの数は増加し、2 度の温度上昇によって北極海氷システムやサンゴ礁など適応能力が限られた独特の種やシステムが高いリスクにさらされ、3 度の温度上昇によって大規模かつ不可逆的な氷床の消失により海面が上昇するリスクが高くなることが示されています。(気温変化については、1986~2005 年平均からの相対的な値)4時間目海面上昇、沿岸での高潮被害などによるリスク海面上昇、高潮、沿岸洪水によって沿岸の低地や小島嶼国で死亡や負傷、健康被害が生じる。極端な気象現象によるインフラ等の機能停止のリスク極端な気象現象が、電気、水供給、医療・緊急サービスなどの機能停止を引き起こすなど、社会システム全体に影響を及ぼす。熱波による、特に都市部の脆弱な層における死亡や疾病のリスク熱波などによって都市部の人々、特に屋外業務従事者に死亡や健康被害のリスクがある。気温上昇、干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスク気温上昇、干ばつ、洪水、降水量の変動により、特に貧しい人々の食料安全保障が脅かされる。水資源不足と農業生産減少による農村部の生計及び所得損失のリスク飲料水やかんがい用水へのアクセスが不十分になることで農業の生産性低下を招き、半乾燥地域の農民や牧畜民の生計や収入損失を招く。沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失リスク海洋酸性化や海水温上昇の影響により、熱帯では沿岸の海洋生物が減るなど、生態系および商品やサービスが損なわれる可能性がある。陸上及び内水生態系がもたらすサービスの損失リスク人々の生計を支える陸域および内水の生態系と生物多様性、生態系サービスなどが失われる。大都市部への洪水による被害のリスク洪水によって大都市部の人々に深刻な健康被害をもたらす。1998 年の異常高水温以降、白化したモルディブのサンゴ礁(写真:NPO法人 環境市民 すぎ本育生)複数の分野地域に及ぶ主要な8つのリスク16