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ecojin interview

小さなことでも動き出すことで、
いつか大きな力に、きっとなる。

滝沢秀一 | SHUICHI TAKIZAWA

本業がうまくいかず、足を踏み入れたごみ清掃員という仕事。
真剣に向き合うようになって、見えてきた世界があるという
お笑いコンビ、「マシンガンズ」の滝沢秀一さん。
ごみ清掃員である自分だからこそ、伝えたいこととは。

ごみを正しく出す。それが環境を守ることへの一歩に。

 芸人の仕事で食べていくことができず、ごみ清掃員を始めたという滝沢秀一さん。ごみ清掃車に乗り、午前中に4回、午後に2回、決められたエリアのごみを集めて清掃工場に運んでいます。
 仕事に就いた当初、「出されるごみのあまりの多さに驚いた」と言う滝沢さん。
「一日でこれほどのごみが出るのなら、中間処理をしたとしても、最終処理場はいつかいっぱいになってしまうのでは? と先輩に尋ねたところ、あっさり『もうすぐいっぱいになるよ』と言われたので、ますます驚きました」

 私たちはごみを出さずに生活することはできません。それなのにごみについてあまり考えずに生活しすぎているのではないか、そう問いかけます。
「ごみ清掃員になり真剣に仕事に向き合うようになって、ごみの出し方ひとつで環境に影響を与えるのだということを知りました。特に水気が多いごみは焼却炉で燃えづらく、燃やすのに時間がかかって、余計な二酸化炭素の発生につながります。それにきちんと水切りができていない生ごみからは、時に、強烈な臭いが発生し、その汁が体に付くとひどい臭いに悩まされます。こうしたこともあって自分は生ごみを出さないように、黒土を使ったコンポストにチャレンジしています」 

 コンポストというと高価だったりサイズが大きかったりして、なかなか一般家庭には設置しづらいイメージがありますが、この黒土を使ったコンポストはとても気軽に始められるそう。
「神奈川県葉山町のご夫婦が発明した『バクテリア de キエーロ』は、生ごみを削減する優れた取り組みとして、さまざまな自治体が推奨するほど広まっています。自分はプランターと黒土でその簡易版を作りました。黒土を入れたプランターに生ごみを入れて土とよく混ぜ埋める、ただそれだけ。そうすると黒土に含まれるバクテリアが生ごみを分解して、約1週間から10日ほどで生ごみはきれいになくなります。土が増えて困りそうに思えますが、土はまったく増えません。適量のごみを適した時間放置するだけで、生ごみが消えて家庭菜園に使える腐葉土ができるんですから、本当にすごいですよね」

 ごみを収集する日々では、手つかずの食品が捨てられることの多さも目の当たりに。封を開けてさえいない米袋、箱に入ったままのメロン……あまりのことに驚きよりも衝撃を受けたと言います。
「多分、お中元などの贈り物だったんでしょう。それにしても、送り主だけでなく、手間暇かけてそれを作った人や、もらった人も含めて、誰も幸せになっていないことに思い至り、愕然(がくぜん)としました」

 世界では食料生産量の約3分の1にあたる約13tもの食料が毎年廃棄され、日本では1年間に約600tもの食料が捨てられています。その一方で、世界では9人に1人が栄養不足に苦しむ現状があります。
「誰もが不幸せな食品ロスをなんとかしたい。そう思って、先輩芸人がやっているカレー屋さんに協力してもらい、問題なく食べられるのに廃棄されてしまう食材でサイドメニューを作れないかと考えました。当初は廃棄する食材を調達するためにいろいろな店やスーパーなどに伺ってもなかなか了解を得られなかったのですが、最近やっと賛同してくれるところが見つかったので、これから本格的に動き出す予定です」

 これだけで食品ロスが大きく減るわけではないけれど、黒土コンポストのように、小さな取り組みが派生してつながっていけばと思いを寄せる滝沢さん。
「環境問題っていろいろあるけれど、みんなが誰かを思いやれば解決できることが多いんじゃないかなって思うんです。特にごみに関しては、モノの作り手を想像し、無駄にしないように意識して行動するだけで、地球温暖化にも、リサイクルや省資源、食品ロスにも貢献します。私たち一人ひとりの意識がちょっと変わるだけで大きな変化がもたらされるはず。まずはその一歩を自ら踏み出したい、そう思っています」

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滝沢秀一(たきざわ しゅういち)

1976年生まれ、東京都出身。お笑いコンビ「マシンガンズ」として、20072008年に連続でM-1グランプリ準決勝進出を果たす。芸人として活動する傍ら、定収入を得るため、2012年にごみ収集会社に就職。2018年に『このゴミは収集できません』(白夜書房)を発刊し話題に。

写真/千倉志野