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ecojin interview

環境問題で苦しむものがいる。
まずはそれを知り、学ぶことから。

武井壮 | SO TAKEI

陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン、武井壮さんが、
2020年11月、「環境省サステナビリティ広報大使」に就任。
スポーツという分野で活躍される中で、
日々どのように環境問題を捉えているのか、話を伺いました。

苦しむものの声に耳を傾け、何ができるか考える。

 人並み外れた身体能力で世間にその名をはせる武井壮さんは、“考える人”でもあります。スポーツにおいても一般的なトレーニング法をそのまま実践するのではなく、エビデンスを確認することから始めて独自の理論を打ち立てて高いパフォーマンスを発揮するのと同様に、環境問題への向き合い方も「まず自分の頭で考えることが先」だと言います。

「環境問題は自分たちの暮らしと密接につながっているので、これをしたらダメ、あれをするな、とだけを言いたくはないですね。自分なりに調べ、考え、咀嚼(そしゃく)して、世の中に問いかける活動をしたいと思っています」
例えばレジ袋をもらうかどうかについても、まずは“自分ごと化”して考えてみたのだそう。
「僕自身、実際月に何回コンビニに行くだろうって数えてみたら、50回。もらった袋をひと月分部屋に積んでみたら、かなりのかさになりました。これほどの量をこれまで深く考えずに捨てていたのかと思ったら、シンプルにゾッとしました」

 世界の主要地域や国の中で、日本はプラスチックの廃棄量がアメリカに次いで2番目に多い国。プラスチックの処理にはCO2が排出されるだけでなく、適切に処理されなければプラスチックごみとなって環境を汚染し、海でも多くの生態系に甚(じん)大な影響を与えています。
「海洋プラスチックごみが原因で命を落とす生き物がいることは間違いない事実。不利益を被るものが我々の生活の先にいる。ならばレジ袋の使用量を減らすことぐらいから始めてみようと、実感を持って行動をすることができました」

 地球温暖化については、アスリート目線で思うことがたくさん。
「これまでみんなに楽しまれてきたスポーツが、死の危険と隣合わせになってきているのではないかと思っています。酷暑によって東京オリンピックのマラソンが札幌開催になったこともその一つ。とはいえ、練習環境を整えられるトップアスリートにとっては暑さ対策も万全でしょう。しかし、子どもたちのスポーツ環境はどうでしょうか。学校の部活動などの指導者の多くが教員であり、体調管理のスペシャリストではありません。変化する環境の中で、どうしたら安全にスポーツをすることができるのか。オリンピックよりも、もっと身近な場所から考えなければならないと思っています」

 ただスポーツを「贅沢(ぜいたく)な遊び」だと語る武井さん。もしも人がスポーツにかける全エネルギーを発電に換えることが可能だったら、どれほどの電力を賄うことができるのかと夢想することもあるのだとか。スポーツと環境問題とはあまり関連がなさそうに思う方もいるかもしれませんが、スポーツ界ができることはたくさんあるとも。
「世界中の何万人と入るスポーツイベントのチケットやパンフレットなどは未だに紙なんです。これをデジタル化するだけでも、多くの資源を守ることができるかもしれない。スポーツジムなどは、全フロアで煌々と明かりを照らさずに、人が少ない時間は必要な場所だけを照らせればいいですし、カーディオマシンの映像モニターは、走ったりしたエネルギー分だけ映像が見られるようにすればいいなど、変えていく余地はスポーツ界にもたくさんあります。しかしその反面、こうしたビジネスに関わって暮らしている方たちもいる。すぐにセーブすることだけを考えず、産業を守りつつ、全ての人の生活が圧迫されることがないよう、徐々に変化していくことが必要だと思います」

 環境問題の解決には時間がかかります。ゴールが遠くて、途中でやる気をなくしたり、頑張っただけのご褒美が感じられず挫折することも多い。そんな時、どうしたらいいのか、やる気を保つ方法を尋ねてみました。
「環境問題は利益を追い求めるものじゃないから即時にご褒美を感じにくい。便利で安全な場所に暮らす私たち日本人は、環境問題と目の前で向き合うのは難しい。けれど地球のどこかで環境の変化によって苦しんでいる人がいるなら、その声を積極的に聞くべきだし、そこから学ぶべき。まずは、我々の便利な暮らしの向こう側で、どれだけ多くの環境が破壊されているのかを知ること。そして、私たちが目の前の何を変えたら苦しむ生きものたちを減らせるのかを考え、動き、長い時間をかけて美しく変化する地球を感じる。それが一番のご褒美になるんじゃないでしょうか」

 ポジティブに肉体の可能性を追求する人は、環境問題を追求する姿勢も真摯(しんし)で、優しい目線を持っていました。

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武井壮(たけい そう)

1973年生まれ、東京都出身。陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン。現在はタレントとして活躍中。ゴルフ・野球・格闘技などさまざまなスポーツにチャレンジし続け、世界マスターズ陸上にも出場。M40クラス(40〜44歳対象)、M45クラス(45〜49歳対象)の4☓100mリレーでともに金メダルを獲得している。YouTubeチャンネル「武井壮 百獣の王国」配信中。