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今月のキーワード Eco-DRR
(エコ ディーアールアール)

Eco-DRR

ポイント!

Eco-DRRとは、自然を効果的に利用して、近年激甚化・頻発化する自然災害の防災や減災の役に立てようという考え方のこと。地域特有の生態系を生かしながら人々の生活も守れるように、多様な取り組みが国内外で実施されています。防災・減災や生物多様性の保全に貢献するのはもちろんのこと、教育や観光などの点でも地域に利益をもたらします。

 Eco-DRRとはEcosystem-based Disaster Risk Reductionという言葉の頭文字を取った言葉で、土地の生き物や環境を保護して、自然の持つ力によって災害による被害を防止又は軽減させる取り組み・考え方のことです。近年、気候変動によって自然災害の更なる激甚化・頻発化が懸念され、注目が高まりつつあります。

 Eco-DRRの取り組みは全て、「災害を未然に防ぐ」、「災害の被害を受けやすい場所を避ける」、「災害の影響を軽減する」という3つの考え方のどれかに当てはまります。

 「災害を未然に防ぐ」とは、自然の持つ効果によって災害の原因となる状況を解決すること。例えば、田んぼが雨水を貯め込むことで、川へ流れる水量が減って氾濫が起きづらくなります。棚田や森林部には貯水効果があり、地すべりを防いでくれます。

「災害を未然に防ぐ」

 「災害の被害を受けやすい場所を避ける」とは、災害リスクが高い住宅地を森林や草地、湿地などの自然的な土地利用へと戻していくことで災害から人を遠ざける取り組みなどを指します。リスクがあると分かっている場所には、電気や道路などのインフラをあえて整備しないことで、人が集まらないようにするという考え方もこれに含まれます。

「災害の被害を受けやすい場所を避ける」

 「災害の影響を軽減する」とは、自然を活用して災害から生活に必要なものを守ること。例として、洪水に対する水害防備林や、津波に対する海岸防災林などを整備して家や町を守るといった取り組みが挙げられます。

「災害の被害を受けやすい場所を避ける」

 Eco-DRRは日本国内のいろいろな地域で取り組まれています。徳島県の鳴門市大麻町では、コウノトリやツルの生息域を守るために耕作放棄地をビオトープなどの生物が集まる場所に作り変える活動が以前から行われてきました。水が溜まりやすく水害リスクが高い土地であったため、自然利用することで暴露の回避を満たすとともに、生物多様性の保全にもつながる点が高く評価されています。

コウノトリ

 Eco-DRRは途上国に適した防災・減災手段の一つとして捉えることができます。ギリシャの北に位置し、国土の8割が山である北マケドニア共和国では、土壌侵食、地すべり、洪水が毎年深刻な被害を出していました。これを受けて、日本が北マケドニア政府と協力して育苗などの技術を提供しながら、洪水を緩和し土砂の崩壊を防ぐ森林を形成するプロジェクトを進めています。イランのカルーン河流域やインドのウッタラカンド州でも同様の理由で大きな被害が出ており、Eco-DRRの考え方を踏まえた森林環境の整備が進められています。
※出典元「持続的な森林管理を通じた、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)能力向上プロジェクト」 https://www.jica.go.jp/oda/project/1602223/index.html

 社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取り組みはグリーンインフラと呼ばれ、Eco-DRRは「グリーンインフラを活用した防災・減災の取り組み」と言い換えることもできます。また、環境省、国土交通省、農林水産省の3省が協力して作成した「グリーンインフラ支援制度集」が令和5年の4月に公開されました。掲載されている支援制度は実際にさまざまな地域で活用され、グリーンインフラの取り組み拡大に貢献しています。

 Eco-DRRによって生態系が維持された土地は、防災に貢献するというだけではありません。地域における自然学習の場となったり、魅力的な都市空間の形成や地域の自然環境を楽しむエコツーリズムが活発になるなどさまざまな面で地域の活性化に貢献してくれます。CO₂の吸収量が増えるため、気候変動対策の一助となることも期待できます。

グリーンインフラの取り組み

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