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[キーワード] 熱中症、救急搬送、日最高気温、温度・影響関数、将来予測

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−2健康面からみた温暖化の危険性水準情報の高度化に関する研究

3) 温暖化と熱中症・熱ストレスに関する研究[PDF](414KB)

 独立行政法人国立環境研究所

 

 環境健康研究領域 総合影響評価研究室

小野雅司 (平成17年〜20年度)

 環境健康研究領域 環境疫学研究室

上田佳代 (平成21年度)

  [平成17〜21年度合計予算額]42,318千円
(うち、平成21年度予算額 7,704千円)
※予算額には、間接経費を含む。

[要旨]

 本サブサブテーマでは、熱中症発生の閾値ならびにリスク要因の検討を行うとともに、温度・影響関数を策定し、熱中症患者の将来予測を行った。熱中症患者発生率は男女、年齢階級により大きく異なることから、性別、年齢階級(0〜19歳、20〜64歳、65歳以上)別に温度・影響関数を策定した。また、熱中症患者発生率には相当の地域差、さらには年次による相違が見られたが、将来推計にあたっては全地域・全年次一律の温度・影響関数の構築が適当と判断した。ただし、他地域と著しく異なる熱中症発生パタンを示した地域・年齢(沖縄県20-64歳男性、札幌市65歳以上)については、独自の温度・影響関数を定めることとした。得られた温度・影響関数を用いて、熱中症患者の将来予測(MIROC)を行った。2031-2050年、2081-2100年の熱中症患者発生率は、現状と変わらず九州、関西、愛知県、首都圏が高く、北海道、東北、中部・東海(愛知県を除く)が低い傾向が見られた。現状との比較(対1981-2000年比)では、増加率は北海道、東北、関東で大きく、四国、九州・沖縄で小さい結果となった。具体的な増加率について見ると、北海道、沖縄県を除いて、2031-2050年は1981-2000年に比べて2.2〜2.8倍、2081-2100年は5.1〜6.6倍で、地域差は比較的小さかった。北海道、沖縄県については独自の温度・影響関数を用いたこともあり、増加率が他地域と大きく異なった。熱中症患者の将来予測にあたって、今後考慮すべき要因を以下にまとめる。・本報告では温度指標として日最高気温を用いたが、湿度や輻射熱を考慮したWBGT温度の有効性が示された。今後WBGTに基づく熱中症患者予測が必要である。・温度・影響関数の地域による相違、特に冷房装置の普及度の影響についての検討が必要である。・熱中症患者発生だけでなく、熱中症による死亡についての検討が必要である。・高齢者の発生率が高いことから、人口の高齢化を考慮した熱中症の将来予測が必要である。