平成17-18年度における、障害調整生存年(disability-adjusted life years = DALYs)の基礎的検討および全死因についてのDALYsを用いた影響評価に続き,平成19年度には、死因別(循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、外傷、4疾患計)DALYsを用いた影響評価を行った。また、温暖化によって増加する可能性のあるスギ花粉症に関するhealth
care budget impactの評価を行い、2℃上昇で9億円のbudget impactという結果などを得た。平成20年度は、推定精度を上げるため、気温区分における平均的な相対リスクではなく、回帰直線を用いた相対リスク推定を用いてDALYsを計算した。具体的には以下のように作業した。東京都における1990-1995年の日別死亡率と日最高気温との関連を平滑化スプライン曲線の当てはめによって描き、そのグラフから至適気温(日別死亡率が最低となる日最高気温=OT)を求めた。次に、OT+3℃以上の区分に含まれる日のデータを用いて回帰直線を計算し、その直線に従ってOT+3℃以上での死亡が発生すると仮定した。ついでその回帰直線のOT+3℃における点と、上記の至適気温における点を結ぶ直線を計算し、その直線に従ってOTからOT+3℃までの死亡率が推定できるとした。これら2本の直線を用いて、1990年〜1995年の実際の気温分布と、それから毎日5℃ずつ高い、温暖化した状態での死亡数から温暖化によるDALYsを計算した。それによると、男女の総死亡については、100,332と107,456、循環器疾患では27,647、20,914、呼吸器疾患では男が7,774、女は計算不能であった。平成21年度からは、WHOの進める、気候変化によるGlobal
Burden of Disease Projectにおいて、本課題で進めてきたDALYsの計算を用いて将来予測を行うための作業を行っている。平成21年3月に予備的な会合をコペンハーゲンで開き、そこに本田が参加してS-4での取り組みを説明したことから、直接影響も含めることとなり、5月にはジュネーブで感染症、直接影響、労働への影響などの専門家、将来予測の専門家、DALYsの専門家が集合してワークショップを行った。