[キーワード]高緯度域、造礁サンゴ群集、緯度変化、保全、モニタリング
[RF-082 北限域に分布する造礁サンゴを用いた温暖化とその影響の実態解明に関する研究]
福岡大学理学部 地球圏科学科 地学分野
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杉原 薫
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<研究協力者>
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福岡大学理学部 地球圏科学科
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園田直樹・今福太郎
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福岡大学大学院 理学研究科
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永田俊輔・指宿敏幸
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京都大学 瀬戸フィールド科学教育研究センター
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深見裕伸
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[平成20〜21年度合計予算額] 3,250千円(うち、平成21年度予算額 1,300千円)
※予算額は、間接経費を含む。
[要旨]
高緯度域の造礁サンゴ群集は、地球温暖化による表層海水温の上昇や海洋酸性化といった地球規模での撹乱の影響指標として、現在注目されつつある。そこで本研究では、高緯度域の造礁サンゴに関する基礎データを収集することを目的として、鹿児島県甑島列島から島根県隠岐諸島にかけてみられる造礁サンゴの生息環境と群集構造の定量調査を2003年から2009年にかけて行った。その結果、生息種数と被覆率がともに高い造礁サンゴ群集は、どの海域でも波浪エネルギーが中程度で濁度が小さいと推定される地点(外洋に近い島陰あるいはやや遮蔽的な湾口)の水深10m以浅で多くみられた。また、これらの生息範囲は、緯度の増加に伴ってより波浪の影響の少ない内湾の浅海域あるいは外洋に近くても水深の深い環境へと局所化する傾向が認められた。甑島列島上甑島でみられた造礁サンゴ群集の優占種は、亜熱帯性の卓状・枝状Acropora
(A.hyacinthusやA. muricata)と板状のPavona decussataであった。長崎県五島列島の福江島と若松島では、外洋側で温帯性の卓状Acropora(A.
glauca、 A. japonicaやA. solitaryensis)が、内湾側で被覆状〜塊状種(Leptastrea pruinosa、Mycedium
elephantotusやHydnophora exesaなど)と温帯性の枝状Acropora(A. tumidaやA . pruinosa)がそれぞれ卓越していた。長崎県壱岐と対馬では、温帯性の卓状Acropora
種は全くみられず、塊状のFavia spp. と葉状〜 被覆状種(Echinophyllia spp.やLithophyllon undulatumなど)が大部分を占めていた。隠岐諸島では、塊状〜被覆状のOulastrea
crispata、Alveopora japonicaとPsammocora profundacellaの生息が確認されたのみで、これらの種は生息群体数も少なく散在的な分布を示す群集(個体群)を構成するに過ぎなかった。