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[キーワード]環境制御実験、機能−構造生長モデル、砂漠化回復、生理生態、水ストレス

[G-071 北東アジアの草原地域における砂漠化防止と生態系サービスの回復に関する研究]

(2)荒廃した草原の回復にかかわるkey speciesの環境適応性の解明[PDF](428KB)

 独立行政法人国立環境研究所アジア自然共生研究グループ

清水英幸・戸部和夫・笹川裕史

<研究協力者>

 

独立行政法人国立環境研究所

伊藤祥子・鄒 春静・許 振柱
矢ヶ崎泰海

鳥取大学農学部

西原英治

中国科学院植物研究所

鄭 元潤

中国科学院瀋陽応用生態研究所

陳 利軍

中国環境科学研究院

于 云江

 モンゴル農業大学

Undarmaa Jamsran

  [平成19〜21年度合計予算額] 25,234千円(うち、平成21年度予算額 7,975千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  生態系サービス回復の評価に必要な基盤的情報として、key speciesの環境適応に係わる生理生態特性を環境制御実験により解明するとともに、形態的・機能的特性を併せ持つ植物生長モデルを構築した。灌木種5 種(Artemisia halodendron 、Artemisia frigida 、Caragana microphylla等)、イネ科草本6種(Cleistogenes squarrosa、Leymus chinensis,Stipa krylovii 等)、広葉草本5種(Peganum nigellastrum、Chenopodium album、Salsola collina等)の16種について、降水量変化による水ストレスに対する適応性を検討した。全種とも水ストレスの増加によって葉面積や個体乾重量は抑制されたが、その生理生態的反応には差異が認められた。水ストレスによって、相対生長率(RGR)や純同化率(NAR)が顕著に減少する種群、比葉面積(SLA)が減少し、葉を厚くする傾向を示す種群、根/茎葉(R/S)比を増加させ、同化産物を根へ投資する種群等のデータを纏めた結果、水ストレスへの生理生態的応答は、灌木やイネ科草本、広葉草本といった生活型で一様ではなく、種毎に異なることが判った。Lindenmayer system (L-system)を用いた植物立体構造シミュレーションプログラムとオブジェクト指向プログラミングの特徴を併せたモデル基礎骨格(C++クラス群と生長サブモデル群)を設計・統合し、植物立体構造の時系列的生長をシミュレーション可能な三次元植物生長モデルを開発した。Key species のA.halodendronとC. quarrosaを材料として環境制御実験を行い、葉数、葉長、葉面積、茎長、分枝状態、根の鉛直分布と走出角度分布等の形態構造パラメータの計測からモデルパラメータを決定し、標準的な気候におけるKey speciesの「機能−構造生長モデル」を開発した。さらに、水ストレスに対する地上部/地下部の形態構造の応答パターンや乾重生長・生理生態特性解析の結果を用いて、本モデルが水分条件に反応して、形態形成や乾重生長等を再現することが可能になった。これらのデータやモデルは砂漠化回復のツールとして、現地で検証する必要がある。