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[キーワード] 落葉広葉樹林、とまり木、林相改良、林冠ギャップ、中型食肉目

[F-072 トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続き]

(4)営巣環境としての森林生態系の評価[PDF](475KB)

 新潟大学大学院自然科学研究科

紙谷智彦

 新潟大学 農学部

箕口秀夫

  [平成19〜21年度合計予算額] 6,906千円(うち、平成21年度予算額 2,190千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  佐渡島における営巣、ねぐらおよび休息環境としての森林の評価と再生システムの構築のため樹林区分図を作成した。放鳥が行われた新穂地区のおよそ半分の面積が落葉広葉樹二次林(56.6%)であり、次いでスギ林(21.0%)およびアカマツ林(6.4%)の順であった。各林相がモザイク状に分布しており、山際から山間地まで広く分布している落葉広葉樹高木林をトキ営巣環境の整備に有効に利用すべきであると考えられた。放鳥後トキの定着が確認されている羽茂地区も、新穂地区同様、およそ半分の面積が落葉広葉樹林(50.8%)であったが、耕作地・休耕地・果樹園が24.5%を占めているのが特徴的であった。小佐渡地域の森林はトキの休息・ねぐら林としての利用が可能であること、密度管理によりさらに好適な森林を創出できることが検証・確認された。トキの休息・ねぐら環境創出の対象として重要であると考えた水田・湿地に面した山際に生育する林分において施業モデル林としての林相改良を実施した。
  林冠ギャップでは、サイズが大きいほど林床は明るくなり、種組成は大きく変化した。年経過とともに林冠が閉鎖し、低木も成長して、ギャップ内の光環境が悪化すると、林床の種組成はギャップ創出前の林床環境に戻り、種組成も創出前に近づいた。かつての薪炭林には、ナラ林等の比較的単純な構造の広葉樹林として維持されてきた林が多い。近年のナラ枯れは、そのような林の構造と組成を劇的に変えつつある。設定後15年を経た人工ギャップの更新状況からは、ナラ枯れパッチの大きさによってその後の更新状況と林床植生の組成が異なることが示唆された。
  ナラ枯れ発生からの経過年数と中型食肉目哺乳類の出現頻度との関係は種類ごとに異なっており、一定の傾向はみられなかった。すなわち、タヌキとテンで逆の傾向があり、ナラ枯れ発生からの年数がたっているほど出現頻度が、タヌキでは高くなったのに対し、テンでは低くなった。なお、イタチではもともと出現頻度も低く、変化はみられなかった。