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[キーワード] オランウータン、生息適地選定、生物多様性保護区、熱帯生産林、GIS

[F-071 炭素貯留と生物多様性保護の経済効果を取り込んだ熱帯生産林の持続的管理に関する研究]

(2)熱帯林の森林認証における生態系評価手続きと監査手法の制度的検討[PDF](461KB)

 東京農業大学
地域環境科学部 森林総合科学科

武生雅明

 <研究協力者>

 

地域環境科学部 森林総合科学科

松林尚志

地域環境科学部 森林総合科学科

若松伸彦

地域環境科学部 森林総合科学科

中園悦子

  [平成19〜21年度合計予算額] 24,666千円(うち、平成21年度予算額 9,337千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  熱帯生産林を対象として、絶滅危惧動物種の生息適地推定とその検証結果から、絶滅危惧動物種の生息地としての生態系の重要性を定量的に評価し、保護区最適地の選定手法を確立することを目的とした。
  対象地域の生物多様性を指標する生物として、アンブレラ種であり絶滅危惧種でもあるオランウータンを選定した。上空からGPSによりオランウータンのネスト位置を記録する方法、および対象地域の地理情報(自然地理、土地利用)を衛星画像より収集する方法を導入し、対象生物の広域での分布制限要因を定量的に解析することを可能にした。また、生息適地の解析手法としてDecision treeモデルを導入することで、分布制限要因の抽出と同時に、それらの要因の閾値を算出し、生息適地をGISにより図化することを可能とした。
  その結果、オランウータンのネストの在不在およびネスト数密度には、塩場からの距離、プランテーションからの距離、通行量の多い幹線道路からの距離が一貫して高い重要度を示し、これら3つの要因がオランウータンの分布に大きく影響していることが明らかになった。デラマコット森林管理区には現状ではオランウータンの生息適地は東部を中心に広く分布していたが、オランウータンは伐採のために道路が敷設され通行量が増加するとその地域を避けるため、保護区は分散して配置することが必要であると考えられた。自動撮影カメラを用いた地上観測により、オランウータンは雌雄にかかわらず塩場を高頻度で利用していることが確認され、塩場が単独性といわれるオランウータンのコミュニケーションサイトの一つとして機能していることが明らかになった。したがって、塩場周辺は保護区の重要な候補地の一つであると考えられた。
  現地調査手法についてマニュアル化し、森林局スタッフを対象とした講習会を開催し普及に努めた。今後はさらに解析・図化までの手順を早急にマニュアル化し普及に努めていきたい。