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[F-051 脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究]

(2)小笠原諸島における侵略的外来動物の影響メカニズムの解明と、その管理戦略に関する研究[PDF](470KB)

 独立行政法人森林総合研究所
理事

大河内勇

森林昆虫研究領域 森林昆虫研究領域長

牧野俊一

森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室長

岡部貴美子

森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室

杉浦真治

野生動物研究領域 鳥獣生態研究室

川上和人

九州支所 森林生態系研究グループ

安部哲人

 <研究協力機関>

 

独立行政法人森林総合研究所

槇原寛

 東北大学大学院生命科学研究科

青山夕貴子

  [平成17〜21年度合計予算額] 65,799千円(うち、平成21年度予算額 13,614千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  小笠原諸島は海洋島であり、その生態系は外来生物に対して脆弱である。特に、外来動物による摂食活動は、生物間相互作用を介して、小笠原の生態系に強い影響を与えうる。本サブテーマでは、以下の3項目についての研究を行った。(1)グリーンアノールの昆虫捕食による植物の繁殖への間接効果を明らかにするため、12の島で訪花昆虫の観察を行い、父島・母島における主要な植物の結果率を調べた。また、父島の海岸周辺で固有ハナバチ類を探索した。その結果、父島・母島では訪花昆虫相が多様性・訪花頻度ともに衰退していたが、海岸部ではわずかに固有ハナバチが残存していた。アノールの生息する島では在来植物の訪花頻度が低く、送粉系攪乱が生じていた。残存する訪花昆虫相の保全のためには、海岸部での保護が必要である。(2)陸鳥による外来植物種子散布について調査したところ、森林ではヒヨドリ、メジロ、メグロが、開放地ではイソヒヨドリが主要な周食型散布者となっていることが明らかになった。特にイソヒヨドリは移動能力が高く、有人島から無人島へ外来植物を拡散する要因と考えられる。一方、海鳥は付着型散布により外来植物の散布に貢献していた。これらのことから、海鳥が繁殖し、イソヒヨドリが島間移動しやすい父島南島周辺、母島南崎周辺での外来種管理の必要性が明らかになった。(3)外来のプラナリアの一種で、捕食性のニューギニアヤリガタリクウズムシが、小笠原に固有の陸産貝類相に与える影響を定量的に明らかにした。この種は、陸産貝類だけでなくミミズ類やダンゴムシ類も捕食するため、陸貝類の絶滅や減少後も個体群を維持させることができる。また、このプラナリアは主に地表上の陸貝類を捕食するが、這い痕や匂いを頼りに樹上の陸貝類をも攻撃することができる。ニューギニアヤリガタリクウズムシは高温高湿度下で活動性が高く、14℃以下だと低くなり、10℃以下では死亡する個体が増加する。またこの種は、43℃以上の熱水に5分以上耐えられないため、土壌、資材の検疫手法として熱水を用いた処理法が提案された。