本サブテーマでは、マクロなエネルギーシステムモデルである日本MARKALモデルとアジアGOALモデルとを用いて、2020年ころのエネルギー起源二酸化炭素(CO2)排出量の中期目標と分析結果との差分としての我が国のCDMクレジット必要量と、アジア地域でエネルギー供給技術によるDMを実施するものとして、地域別・技術別のCDMクレジット供給可能量とを評価する手法を開発することを目的とする。同時に、他のサブテーマに対しては、CDMを想定する地域における将来のエネルギーバランス、ベースライングリッド排出係数等を提供する役割も担う。研究の主な成果は以下の通りである。日本MARKALモデルでは、長期エネルギー需給見通し、World
Energy Outlook等に基づいて、エネルギー需要、化石燃料価格、エネルギー技術データを設定した。マクロな対策費用に相当する、目的関数のトレードオフ係数をパラメータとする感度解析を通して、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出量を、2020年に1990年比約15%、2050年に2005年比おおむね60%削減可能であることを明らかにした。アジアGOALモデルに関しては、世界/アジアエネルギーアウトルックに基づいて、エネルギー需要を設定した。中国・インドをホスト国とする発電技術によるCDMを対象とし、CDMプロジェクトの成立要件である、追加性、事業収益性等に関する制約条件をモデルに組み込むことによって、ベースライン、クレジット価格、クレジット期間等を考慮できるCDM技術評価手法を開発した。CDM評価精度向上のために、中国については6大電力網の電源計画モデルを開発し、SOx、NOx排出制約という環境対策と、最適電源構成、ベースライングリッド排出係数との関係を明らかにした。得られた排出係数に基づいて、中国における再生可能エネルギー発電や先進的火力発電によるCDMを評価した。環境対策の強化でベースライングリッド排出係数は低下すること、クレジット価格が高いか電力買い取り価格が安いとCDMクレジット供給可能量は増加すること、および南方、華東での石炭ガス化複合発電によるCDMクレジット供給可能量が多いことを明らかにした。