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[キーワード] 森林減少・劣化、二酸化炭素、京都議定書、タイ、住民

[B-072 森林減少の回避による排出削減量推定の実行可能性に関する研究]

(2)森林減少ベースラインの設定手法の検討[PDF](429KB)

 早稲田大学人間科学学術院
人間環境科学科

天野正博

 

日下部朝子

国際航業株式会社 

船橋 学

<研究協力者>

 

早稲田大学人間科学学術院

梅宮知佐

 

中村奈々子(平成19〜21年度)

タイ王室林野局

Teunchai Noochdumrong

 

Suchat Kalyawongsa

タイ・カセサート大学タイ・カセサート大学

Ladawan Puangchit

  [平成19〜21年度合計予算額] 41,210千円(うち、平成21年度予算額 13,000千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  当サブテーマでは、REDDにおける炭素クレジット評価の基本要素であるレファレンス・レベルの設定方法を開発することが目的である。そこで、開発するモデルの構造を具体的に設定し、モデルから推定される減少構造を検証するため、タイ国内の3カ所に設置した研究サイトでの調査も並行して行った。森林減少と政策・社会経済状況との関係を明らかにするマクロレベルでのアプローチでは、森林、農地、未利用区分という3つの土地利用間に非常に強い相関があることを重回帰モデルで証明することができた。これから、マクロレベルでの森林減少予測モデルは、3つの区分の間での、土地利用転換を表現できればよいことを確認できた。
  これとは別にレファレンス・レベルのモデル作成にあたって、森林減少に影響する要因とプロセスを調べるため、タイ北部、西部、東北部にスタディサイトを設けて、航空写真による土地利用の歴史的変遷を調べ、農法の違いが森林減少・劣化に与える影響、森林政策としての国立公園、野生生物保護区の設置が、森林減少・劣化に与える影響を、国立公園、野生生物保護区内外の森林減少・劣化トレンドを比較することにより明らかにした。区域外に分布する森林の減少傾向を比べたところ、後者の減少度合いが著しいことが解った。
  以上の傾向を踏まえて計量経済学手法を使ってモデルを開発し、タイの森林減少がどのような構造によって生じるかを推定することができた。また、モデルにより3つのシナリオに基づいてタイの将来の森林減少傾向を予測することができた。加えて、植林に対する農民の動機について分析し、REDD+の下で行政や事業体が植林を推進するための方策を明らかにした。最後に、REDD+においては炭素クレジットを扱う市場メカニズムだけでなく、森林減少と大きくかかわる農民の森林保全活動、行政のモニタリング活動、ガバナンスに関連した能力向上のための資金の提供も重要であることを示した。