研究成果報告書 J98F0122.HTM

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[F−1.野生生物集団の絶滅プロセスに関する研究]

(2)寄生者・病原体の効果と伝播機構の解明

寄生虫抵抗性の種内変異に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所生物圏環境部

●owanE.Hooper


[平成9〜10年度合計予算額]

3,916千円

(平成10年度予算額2,000千円)


[要旨]

 カワトンボ Mnais costalis(Odonata:Calopterygidae)のオスは形態的にも行動的にも異なる多型を示し、典型的には透明翅で非縄ばりの'SNEAK'とオレンジ翅で縄ばりの'FIGHTER'が存在する。色彩色差計で測定した翅のオレンジ色の色素の量には個体変異があり、また、繁殖のシーズンの経過にともなって減少した。実験室で栄養条件を違えて若い成虫を飼育すると翅の色素の量が変わった。すなわち高栄養条件のオスは低栄養条件のオスに比べて翅の色がより速く濃く変化した。14Cでラベルしたトリプトファンとチロシン(それぞれオモクローム色素とメラニン色素の前駆物質)を若い両タイプのオスとメスに投与した。オモクロームはオスの両タイプの縁紋に限定して分布すること、メスには存在しないことがわかった。オレンジオスの翅のセルにチロシンが存在し、透明オスの翅のセルには存在しないことから、オレンジの色素にはメラニンが含まれていることがわかった。これらのデータから、オレンジオスの翅では色素が連続的に持続されなくてはならないことを示した。そして低い栄養レベルにおいて色の維持ができなくなることから、その維持にはコストを要することがわかる。以上の結果は、生体防御機構と性的形質の間にトレードオフ関係が二つのタイプの間で働いていることを示唆している。昆虫の生体防御機構に柔軟性があり、環境条件によって変化することは、保全生物学の文脈の中でという環境で重要である。ストレスの高い環境下では、昆虫は本来生体防御に使うべき資源を別の目的に使うよう変更しうることを意味し、集団の存在がそのまま集団の健全性を意味しないこともあるからである。


[キーワード]

多型、生体防御システム、繁殖成功度、カワトンボ