研究成果報告書 J98E0310.HTM

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[E−3.熱帯林の環境保全機能の評価に関する研究]

(1)熱帯林における撹乱が土壌形成及び土壌構造に及ぼす影響の評価に関する研究

[研究代表者]

国立環境研究所

地球環境研究グルーブ野生生物保全研究チーム

●高村健二

[環境庁国立環境研究所]

地球環境研究グルーブ野生生物保全研究チーム

●高村健二

[農林水産省林野庁森林総合研究所]

森林生物部腐朽病害研究室

●服部力

[マレーシア森林研究所]

●Laurence G.Kirton、Lee Su See

(委託先)

自然環境研究センター

●石井信夫

[平成8〜10年度合計予算額]

35,547千円

(平成10年度予算額11,767千円)

[要旨]

 土壌形成過程に欠かせない植物遺体分解を担う木材腐朽菌とシロアリについて伐採による撹乱の影響を把握するために、マレーシア半島部パソ森林保護区の低地熱帯雨林に調査地を設けた。樹種の判明した倒木(落枝・折れた木などを含む)の調査から、そのサイズ・樹種・分解過程によりそこに発生する木材腐朽菌相が影響されることが明らかになった。集団的倒木の発生した地点で倒木発生後の木材腐朽菌相を経時的に調べたところ、発生後数年で種数が急激に増加した後、減少することが明らかになった。このことから、集団的倒木がしばしばおこる森林では木材腐朽菌多様性が高くなることが示唆された。自然林と再生林とで木材腐朽菌・シロアリ分布状況の比較調査を行うために、各林内に100m四方の調査区を各1個設定し、倒木の寸法・位置を記録して標識した。倒木は自然林に多く、またその直径も平均して自然林の方で大きいことが分かった。木材腐朽菌調査を行ったところ、自然林の方が種数・頻度ともに出現量が多かった。強度の伐採により後の木材腐朽菌の多様性が減少する可能性があることがわかった。倒木からのシロアリ採集種数は自然林で7種以上、再生林で6種であった。キノコシロアリ亜科の1種Macrotermes Malaccensisがどちらの林においても優占的に採集されたが、自然林の方が優先度が低かった。倒木より細い材でも自然林の方でシロアリ採集種数が多く、種組成の多様性は自然林の方が高い傾向にあった。一方ではシロアリによる植物遺体分解が樹木生長に与える間接的影響を検出するために、野外のシロアリを除去した区画で稚樹を植えて生長を測定し、シロアリの入れる区画のそれと比較した。実験条件が未整備だったために実験は成功しなかったが、実験条件を検討した上で対象シロアリを絞って再実験を行なう必要のあることが分かった。

[キーワード]

倒木、土壌、シロアリ、木材腐朽菌、植物遺体分解