研究成果報告書 J98E0230.HTM

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[E−2.熱帯環境保全林における野生生物の多様性と維持管理のための指標に関する研究]

(3)動植物の種特異的関係に基づく生物種の生態特性の指標化に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所地球環境研究グループ

●奥田敏統

[環境庁国立環境研究所]

 

地球環境研究グループ森林減少・砂漠化チーム

●奥田敏統、唐艶鴻、足立直樹、横田岳人、梁乃申、山田俊弘、小沼明弘

(委託先)

 

東京都立大学

●可知直毅、沼田真也

自然環境研究センター

●石井信夫、安田雅俊

マレーシア森林研究所

●N.Manokaran,NorAzmanHussein、大沢直哉(現、京都大学農学部)


[平成8〜10年度合計予算額]

70,082千円

(平成10年度予算額23,287千円)


[要旨]

 野生生物多様性と熱帯林の維持管理のための指標を探ることを目的として、動物と植物にみられる多様な共生関係や、その基礎となる生物種の生態特性を把握するための調査を行った。同時にこうした相互関係は林内の微環境によって大きく影響を受けることから、林冠空隙(ギャップ)の分布、経時変化及び、ギャップ形成と稚樹の更新、実生の生残率、熱帯林主要構成種の空間的な伝的な交流範囲、4沖型哺乳動物の行動への影響などを調査した。具体的にはまず、パソ保護林の空中写真を元にギャップの分布、動態を解析した。ギャップ下では、欝閉林冠下に比べ、新規に出現する稚樹の個体密度が高く、また個体当たりの生長量も高いことが分かった。1995-1997の二年の間にギャップがどのように変化するかは・ギャップのはじめの面積によって異なっていることがわかった。フタバガキ科樹木を対象とした、種子散布・実生の定着過程に動物が及ぼす影響については、ギャップと通常の閉鎖林冠下という2つの異なる環境において種子・実生の動態に違いがみられることがわかった。さらに、フタバガキ科樹種の防御機構を検討したところ、種子や実生のでは、フェノール型タンニンの蓄積が化学的防御機構として作用し、その作用は生育地の光環境によって変化することがわかった。植食性昆虫による実生の食害が低地熱帯林内でどのように異なるか、植食性昆虫により食害された程度で実生に発生する昆虫数にどのような違いが見られるかを調べるたたところ、植食性昆虫やその捕食者は植物の生長の良いギャップに多く発生する傾向があり、植物の種類によって植食性昆虫の個体数に大きな違いがあることがわかった。人工的に実生の葉を切除した実験から、植食性昆虫は葉が切除された実生を避ける傾向がみられた。熱帯低地林の一次林内において林冠ギャップの存在が淋床性果実食者の活動性に与える影響を調査したところ、閉鎖林冠下と比較して林冠ギャップ内では林床性果実食者の活動性が低かつたが、その傾向は下層植生を除去した場合にさらに大きくることがわかった。Neobalanocarpus.heimii(フタバガキ科)を用いて、調査地内の4母樹から稚樹および実生を採集し、その遺伝子型を決定した結果、約70%の個体は調査区内に花粉親候補があることが明らかになった。しかし、約20%の個体は、調査区が半隔離状態にあるにも関わらず、花粉親候補が調査区内にはなかった。このことはN.heimiiが数百m離れた個体とも交配している可能性を示唆している


[キーワード]

熱帯雨林、動植物相互作用、生物多様性、植物の防御機能、林冠構造、林冠木の遺伝的交流