研究成果報告書 J98A0420.HTM

検索画面に戻る Go Research



(378KB)

[A−4.紫外線の増加がヒトの健康に及ぼす影響に関する疫学的視点を中心とした研究]

(2)ライフスタイルを考慮した、標的部位における紫外線有効暴露量評価手法の開発に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所環境健康部環境疫学研究室

●小野雅司

環境庁国立環境研究所

 

環境健康部環境疫学研究室

●小野雅司

社会環境システム部情報解析研究室

●清水明


[要旨]

 紫外線暴露による白内障発症への寄与を考えるとき重要となる、標的臓器(水晶体)への暴露量評価と、白内障発症に至る生涯暴露量の評価、を目的に、1)紫外線暴露量を評価するための実験モデルの開発、2)モデル実験による紫外線防御に関するパラメータの決定と水眼部における紫外線暴露量推定モデルの開発、3)紫外線の生涯暴露量評価モデル開発、そして、4)サブテーマ(3)で対象とした地域住民の紫外線暴露量推定と白内障発症に及ぼす紫外線暴露の影響解明、に関する研究を行った。
 住民の紫外線暴露量測定と疫学調査へ応用可能な携帯可能な小型紫外線簡易測定装置の開発と、頭部マネキンモデル実験に供するための超小型紫外線計測システムを開発した。
 各種の条件下でヒトの頭の動きに疑似してマネキンを連続作動させ、紫外線暴露量を計測するシステムを開発した。システムは、前後・左右・回転と複雑な動きを繰り返す、ヒトの頭の動作パターンを一連のデータとして収集するためのシステムと、収集したデータを用いて、ヒトの頭の動きを実験的に再現するための頭部マネキンモデル(パソコン制御によるマネキンの駆動システム)からなる。ヒトの頭に本装置を装着して、その動き(3次元)を連続してモニターするとともに、収集したデータを用いて、ヒトの頭の動きを実験的に再現することが可能となった。
 本システムを使った実験により、眼部への紫外線暴露に関して、眼鏡の使用により85%、また帽子の使用により40%の紫外線をカットできることが明らかになった。
 地域住民の紫外線暴露量を簡易に推定する方法について検討し、時刻別の戸外生活時間調査に替わりうる方法として、春から秋にかけての、午前9時から午後3時までの戸外滞在時間が、紫外線暴露量の最良の推定値を与えることが明らかになった。
 最後に、本研究結果に基づいて、喜界島住民を対象に紫外線暴露量を推定した。比較的狭い範囲の地域に居住する人々であるにもかかわらず、推定値には大きな開きがみられた。さらに、得られた紫外線暴露量推定値と白内障発現との関連について予備的検討を行った。70歳以上の対象者についての結果では、皮質白内障、核白内障とも紫外線高暴露群に高率の傾向が見られた。


[キーワード]

頭部マネキン、紫外線防御、戸外活動時間、暴露量推定モデル、生涯暴露量