研究成果報告書 J97D0210.HTM

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[D−2 東アジア海域における有害化学物質の動態解明に関する研究]


(1) 有機ハロゲン化合物を中心とする有害化学物質の時空間変動機構に関する研究


[研究代表者]

国立環境研究所 地球環境研究グループ 海洋研究チーム

●功刀正行

[環境庁国立環境研究所]

地球環境研究グループ

海洋研究チーム

●功刀正行・原島 省

(委託先)

兵庫県立公害研究所

●藤森−男・中野 武


平成7〜9年度合計予算額

20,841千円

(平成9年度 7,246千円)


[要旨]

 人為起源の有害化学物質による海洋汚染は、様々な輸送過程を経て全球的な規模の汚染へと進みつつある。東アジア海域においても、近傍に発生源が存在しない地域で有害化学物質が検出される様になってきている。本研究は、東アジア海域における有害化学物質の存在状態とその動態を従来に比較して時間的・空間的に密な観測態勢を確立することにより明らかにするものである。海水中の低濃度有害化学物質を高密度に観測するために固相抽出法を用いたフェリー搭載型連続濃縮捕集システムを開発し、同システムにおける最適捕集条件を把握すると共に、大阪−沖縄間の航路における観測を実施した。また、システムの−部自動化を実施した。同航路上における有害化学物質は、主にHCH、クロルデン、ノナクロルなどの農薬を中心として、数pg/Lから数百pg/Lの広い濃度範囲で検出された。β−HCHは、瀬戸内海の大阪湾から数百pg/Lの比較的高い濃度で検出された以外は、太平洋沿岸域で100pg/L前後、黒潮および沖縄周辺で100pg/L以下と低濃度であり、季節や気象条件の変化に関係なくほぼこの傾向が見られた。一方、α−HCHの濃度分布は概ねβ−HCHと類似しているが、気象条件(輸送過程の変化)によりその濃度がかなり変化することが明らかとなった。また、クロルデンは、多くの観測域で数pg/L程度ときわめて低濃度であり、ほとんどの地点で検出限界近くであったが、瀬戸内海および沖縄近海で若干高い傾向が見られた。ノナクロルは、クロルデンよりもさらに濃度および変化が少ないが分布傾向は各物質と類似している。これらの濃度分布およびその変動は、使用が禁止された以後も様々なリザーバーに蓄積している有害化学物質が徐々に再析出しているか、あるいはより汚染度の高い地域から輸送されて来ていることを示唆している。


[キーワード]

 海洋汚染、有害化学物質、有機ハロゲン化合物、時間変動、空間変動、東シナ海、POPs、固相抽出