研究成果報告書 J96H0220.HTM

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[H−2 開発途上国における人口増加と地球環境問題の相互連関に関する基礎的研究]

(2)人口と地球環境に関する包括的モデル構築に関する研究


[研究代表者]

国立公衆衛生院保健統計人口学部

●林 謙治

[厚生省 国立公衆衛生院]

保健統計人口学部

●林 謙治・土井 徹・高 建群

(委託先)アジア・人口開発協会

●前田福三郎


[平成6〜8年度予算額]

15,098千円

(平成8年度予算額 4,587千円)


[要旨]

 サブテーマとして「人口と地球環境に関する包括的モデル構築に関する研究」を行うに当たり、特定された地球環境問題を取り上げ、かつある程度の広がりを持った地域空間を対象とするのが適切であると思われる。本研究では地球環境問題のうち、特に温暖化現象を取り上げた。地域的に温暖化対策を考えた場合、今後、アジアのみならずグローバルレベルでも大きなインパクトを与えるのは、温室効果ガスを引き続き大量に排出するポテンシャルを持つ中国の動向が注目される。
 1982−90年までの中国の二酸化炭素排出総量の変化に対する人口増加の影響をBongaarts法を用いて分析した。また、1人当たりの国内総生産、エネルギー強度、炭素強度との関連についても明らかにした。この間の人口増加の影響は21%であり、1人当たりの二酸化炭素排出量の影響は70%である。
 Demographic transitionとIndustrial transitionの関連について検討した。demographic transitionのレベルについてはCho L.JのIndex:DTI(TFR、平均寿命、都市化率を加味した総合指標)を用いて、中国各省のそれを算出した。また、DTIがボンガツモデルを構成する各要素との関連について検討した。DTIはGDP/Pとの相関がもっとも高く、炭素強度(CI)と中程度の負の相関、エネルギー強度(EI)とはほとんど関連性が見られない。一方、GDP/Pと炭素強度は高い負の相関を示し、エネルギー強度と中程度の負の相関を示した。一人当たりの炭素排出量はGDP/Pと高い相関を示し、EIとDTIとは中程度の相関がみられた。
 以上から、1990年時点における状況を具体的に述べると、CO2/P排出量の多いのは収入が高い地域であり、この様な地域はエネルギーの熱効率はやや良い程度である。収入が低い地域では炭素強度が大きく、人口転換が進んでいない農村部である。人口転換の水準はおもに死亡率の差であり、死亡率の改善は都市化が進んだためよりも収入の増加がむしろ影響している。すなわち都市では経済成長、農村では炭素強度がCO2/P排出量を引っ張っている。
 中国のエネルギー需要から推計すると、2010年における二酸化炭素の排出量1992年の74%増、すなわち160万トン増加すると予測される。今後、二酸化炭素排出の安定化は内陸部と大都市の人口動向、産業構造の転換およびエネルギー転換とそれに伴う技術的な対応が鍵をにぎる。


[キーワード]

二酸化炭素、中国、経済成長、地球温暖化、人口転換