研究成果報告書 J96C0420.HTM

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[C−4 東アジアの酸性雨原因物質等の総合化モデルの開発と制御手法の実用化に関する研究]

(2)酸性雨の文化財及び材料への影響評価に関する研究


[研究代表者]

佛教大学  ●溝口次夫

[厚生省 国立公衆衛生院]

 

地域環境衛生学部

●後藤純雄・渡辺征夫

(委託先)

社団法人 大気環境学会

●溝口次夫・前田泰昭・辻野喜夫・古明地哲人


[平成7〜8年度合計予算額]

16,999千円

(平成8年度予算額 7,303千円)


[要旨]

 酸性降下物等が文化財、建築物および工業製品に及ぼす影響を評価するため、1)チャンバーによる基礎実験、2)日本、中国、香港および韓国におけるフィールド暴露調査、3)文化財の実態調査を行った。
1)チャンバー暴露実験では、温度20℃、湿度60〜80%、風速1.0m/sの条件下、暴露ガス(精製空気、O3(1ppm)、SO2(1ppm)、NO2(10ppm)、SO2+NO2、O3+SO2+NO2)による青銅、古銅、純銅および大理石への影響を定量的に評価した。SO2およびNO2の汚染ガスには、材料の腐食を促進させる働きがあり、湿度が高くなると、その効果が大きくなった。O3が共存すると、さらにその効果は大きくなった。東京での3ヶ月暴露試験に相当するように調製された混合ガス暴露実験では、東京での屋内暴露試験の結果にほぼ一致した。
2)フィールド暴露調査では、大気汚染レベルおよび気象条件の異なる日本(12地点)、中国(7地点)、香港(1地点)および韓国(2地点)において、青銅、古銅、炭素鋼、大理石、杉、桧、うるしを暴露試験した。暴露期間は3ヶ月、12ヶ月および21ヶ月とし、雨に曝した屋外暴露(曝雨)および雨を遮断した屋内暴露(遮雨)を実施した。SO2濃度の高い中国の試料からは塩基性硫酸銅が、NO2濃度の高い日本の都市の試料からは塩基性硝酸銅が検出された。腐食量は炭素鋼>大理石>古銅=青銅>純銅の順に大きな値を示した。不純物を多く含む銅製文化財は酸性雨に脆弱なことが明らかになった。腐食量を調査地点別に見ると、中国>韓国>日本海沿岸地域>日本の都市型汚染地域>日本の低汚染地域の順となった。
3)上野東照宮の調査では、関東大震災時(1923年)に破損し、脱落した青銅製灯籠(1651年鋳造)金具から腐食生成物を採取し、X線回析による結晶構造の解析と、蛍光X線による元素分析を行った。腐食生成物からは、塩基性硫酸銅、亜酸化銅、硫酸鉛を検出したが、表層から下層に行くに従って、亜酸化銅が減少し、硫酸鉛の存在量が増加した。また、日本の各地で施工後数十年経過した建造物の解体修理時に銅廃材を採取し、古い時代の銅の腐食生成物を調査した。中国の文化財調査では、北京、洛陽、西安において主に大理石文化財に注目し調査を行った。


[キーワード]

東アジア、酸性降下物、文化財、材料腐食、暴露試験