研究成果報告書 J95E0140.HTM

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[E−1 熱帯林生態系の環境及び構造解析に関する研究]

(4)昆虫相の群集動態に関する研究


[研究代表者]

森林総合研究所北海道支所  ●福山研二

[農林水産省 森林総合研究所]

北海道支所昆虫研究室

●福山研二

森林生物部昆虫管理研究室

●前藤 薫

[農林水産省 国際農林水産業研究センター]

林業部

●大角泰夫


[平成5〜7年度合計予算額]

23,972千円

(平成7年度予算額 7,413千円)


[要旨]

 孤島化した熱帯林において、送粉者である訪花性甲虫類と分解者であるキクイムシ類のコアーから林縁にかけての水平的分布と林冠部における垂直的分布を、おもに誘引トラップを用いて調査した。キクイムシ類の林冠部での役割について検討した。また、調査に先立ち、林冠部の昆虫調査のためのバルーンシステムの開発と訪花性甲虫類に有効な誘引剤の比較試験を実施した。その結果、バルーンを用いることにより、地表付近では捕獲することが出来ない昆虫類を比較的容易に捕獲できることがわかった。花の匂い成分であるリナロール、オイゲノール、ベンジルアセテート、メチルベンゾエートの4種類を誘引トラップで比較したところ、リナロールが最も多くの種類と個体数の訪花性甲虫類を誘引した。誘引トラップは、訪花性甲虫類の調査に極めて有用であることがわかった。キクイムシ類の垂直分布をみると、材食性の養菌性キクイムシ類では、地表から林冠上部にまで広く分布しており、サクキクイムシは地表部に多く、生きた組織を食害するキクイムシ類は林冠部に集中していた。訪花性コガネムシ類は主に林冠中央部に多かったが、種によって分布域が異なっていた。水平分布では、サクキクイが林外のヤシ園から1km以上も流入していることが明らかとなったほか、コガネムシ類では林縁に行くほどやや多くなる傾向が見られた。落下した枯れ枝の折れ口には、キクイムシの食害痕が認められるものが多く、林冠に付着していた枯れ枝の基部にもキクイムシが加害していた。キクイムシに基部を食害されている枝は容易に落下することから、林冠部で活動するキクイムシ類が熱帯の樹木の枯れ枝を早期に落下させ、物質循環を促進していることが予想された。


[キーワード]

甲虫類、送粉者、分解者、林冠生物、孤立林、空間分布