研究成果報告書 J95C0230.HTM

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[C−2 酸性物質の生態系に与える影響に関する研究]

(3)樹木―酸性土壌系における重金属の動態に関する研究


[研究代表者]

森林総合研究所  ●丸山 温

[林野庁 森林総合研究所 北海道支所]

育林部

樹木生理研究室

●北尾光俊・森 茂太・丸山 温

(委託先)

北海道大学

●但野利秋


[平成5〜7年度合計予算額]

14,401千円

(平成7年度予算額 4,827千円)


[要旨]

 マンガン過剰害が北海道の主要な落葉広葉樹5樹種(シラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキ、ハルニレ、イタヤカエデ)の成長に与える影響を調べた。マンガンを過剰に供した水耕栽培をおこない、樹種ごとのマンガン過剰害の可視障害の様子、光合成活性への影響、成長量への影響を調べた。マンガン過剰害の可視障害は、樹種にかかわらず若い葉では黄化が、古い葉では褐色斑や褐変が見られる傾向があった。葉へのマンガン集積によって光量子収量、ルビスコ活性、RuBP再生速度のすべてに低下する傾向が見られたが、光合成の明反応系の活性を示す光量子収量よりも暗反応系の活性を示すルビスコ活性、RuBP再生速度の方がマンガン集積の影響を強く受けることが明らかになった。ルビスコ活性へのマンガン集積の影響から判断すると、ハルニレ、イタヤカエデに比べてシラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキは葉へのマンガン集積に対して高い抵抗性を持つことが示唆された。マンガン処理が相対成長量に与える影響を比較すると、シラカンバ、ダケカンバは高濃度のマンガン処理による成長量の低下も小さかった。また、葉の展開に関してもシラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキなどの順次展開型の樹種ではマンガン処理によって葉の展開数が抑えられることはほとんどなく、新しい葉を作ることでマンガン集積の影響を分散している可能性がある。以上のことから、森林遷移の初期に現れるシラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキは、森林遷移の中期、後期に現れるハルニレ、イタヤカエデよりもマンガン過剰害に対して抵抗性を持つことが示唆された。


[キーワード]

マンガン過剰害、光合成、成長、樹種間差、マンガン耐性