研究成果報告書 J95B1230.HTM

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[B−12 地球の温暖化が植物に及ぼす影響の解明に関する研究]

(3)植物に及ぼす複合影響に関する実験的研究


[研究代表者]

環境庁国立環境研究所  ●清水英幸

[環境庁 国立環境研究所]

生物圏環境部

環境植物研究室

●清水英幸・戸部和夫・大政謙次

地球環境研究センター

 

●藤沼康実

客員研究員

京都大学農学部

●堀江 武・松井 勤


[平成5〜7年度合計予算額]

8,441,000円

(平成7年度予算額 2,936,000円)


[要旨]

 二酸化炭素(CO2)など地球温暖化ガスの濃度増加は、また、気温上昇、乾燥化、大気汚染ガス濃度の増加などの環境変動を引き起こす。本研究では、地球温暖化の植物影響を解析するために、農作物(ナス、ピーマン、トマト、ダイズ、ハクサイ、ハツカダイコン、トウモロコシ、ソルガム)を材料として、その生長に及ぼすCO2濃度と乾燥化、及び、温度上昇と乾燥化の単独及び複合影響について実験的検討を行った。CO2濃度(500または1000ppm)×相対湿度(37%または79%)の4条件区、また、温度(28℃または31℃)×相対湿度(37%または79%)の4条件区を設定し、人工光型の環境制御室の液耕培養システムで、5〜10日間、生長実験を行った。ほとんどの農作物種の乾重生長、及び、葉面積生長は、CO2濃度増加によって促進され、一方、温度上昇や乾燥化によって抑制されたが、植物種によってその影響程度は異なった。生長パラメータを調べると、CO2濃度増加によって、相対生長率(RGR)や純同化率(NAR)は増加し、葉面積比(LAR)や比葉面積(SLA)は減少していた。温度上昇や乾燥化によって、RGRは減少したが、NARやLARへの影響は種によって異なった。CO2濃度増加によるC3植物の蒸散量への影響は明確ではなかったが、C4植物のトウモロコシの蒸散量は顕著に減少し、水利用効率は向上した。温度上昇は若干、乾燥化は顕著に植物の蒸散量を増加させ、特に乾燥化は水利用効率を低下させた。CO2濃度増加、気温上昇、乾燥化は相加的に影響している場合が多かったが、複合影響が存在することも示唆された。また、生殖生長に及ぼす気温上昇の影響検討では、開花期の高温処理によって穎花の受精率が低下し、品種によってその影響程度は異なることが判明した。この結果をイネの生育収量に関するシミュレーションモデル(SIMRIW)に当てはめ、3種の大循環モデル(GCM)の気候変動シナリオのもとで、2倍のCO2濃度時の日本におけるイネの収量に関する予測を行った。


[キーワード]

温度上昇、乾燥化、生長、地球温暖化、二酸化炭素